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2017年2月10日 (金)

JASRACが音楽教室から著作権料徴収するとの報道について

JASRACが音楽教室から著作権料徴収する方針だ、という報道がなされていますが、2月2日付の朝日新聞電子版によるとJASRACは、

「著作権料を年間受講料収入の2・5%とする案を検討している。」

とのことです。

これって、公取委から私的独占で排除措置命令を受けた、テレビ・ラジオ局からの包括徴収と同じ仕組みのようにみえますが、大丈夫なのでしょうか?

個別徴収と併用する手もありえますが、テレビ・ラジオの場合でも個別徴収は可能だった(ただ、その値段が高すぎた)わけで、併用すれば問題ないともいいにくそうですし、音楽教室だと、どの曲を何回使ったのか数えるのが放送の場合よりも面倒な気がします。

また個別徴収にするとして、1回の「教室」での使用は1回とみなすのか、1回の「教室」で3回演奏したら3回とみなすのか(もし3回とみなすなら演奏の回数を数えておかないといけないのでかなり面倒そうです)など、いろいろな問題がありそうです。

なお、

テレビラジオと異なり競争者は音楽教室へのライセンスに参入していないので競争を制限しない

という理由は成り立ちません。

それを言ってしまうと、JASRAC自身これまではライセンス料を取っていなかったわけですし、今後同業者が参入しようとすることもありうるわけで、少なくとも潜在的競争には影響がありそうだからです。

ちなみに著作権法22条(上演権及び演奏権)では、

「著作者は、その著作物を、公衆に直接見せ又は聞かせることを目的として(以下「公に」という。)上演し、又は演奏する権利を専有する。 」

とされており、

「公衆」

は著作権法2条5項で、

「特定かつ多数の者を含むものとする」

とされています。

そこで、先生が生徒さんに聞かせる目的で演奏するのは「公に」に該当するかが問題となるわけですが、この点については、ダンス教室事件でのCDの演奏が著作権侵害にあたるとされた判決(名古屋地判平成15年2月7日)があり、その判決では、

「被告らは、ダンス教師の人数及び本件各施設の規模という人的、物的条件が許容する限り、何らの資格や関係を有しない顧客を受講生として迎え入れることができ、このような受講生に対する社交ダンス指導に不可欠な音楽著作物の再生は、組織的、継続的に行われるものであるから、社会通念上、不特定かつ多数の者に対するもの、すなわち、公衆に対するものと評価するのが相当である。」

と判断されています。

これに従えば、音楽教室の個人レッスンの場合にも、「公に」に該当することになるのでしょう。

(個人的には、それぞれの演奏を公衆(=多数)に聞かせる必要があるように読め、個人レッスンや少人数のレッスンはそれをたんに多数回行っただけでは「公衆」に対して演奏したことにはならない、と解するのが条文に素直じゃないかという気もしますが、上記判決は

「組織的、継続的に行われるものであるから、社会通念上、不特定かつ多数の者に対するもの、すなわち、公衆に対するものと評価する」

という理屈ですね。)

これに対して、生徒さんが演奏するのは練習のためなので、「聞かせることを目的として」には該当せず、演奏権侵害にはならないと思われます。

同じ教室でレッスンを受けている他の生徒にも聞こえるのは結果的に聞こえるだけで、「聞かせることを目的として」いるわけではないでしょう。

先生に聞かせる(聞いてもらう)目的は認められるかもしれませんが、先生は「公衆」(著作権法2条5項では、「特定かつ多数の者を含むものとする」とされています)にはあたらないでしょう。

そこで、前記記事で、

「音楽教室では、1人または数人の生徒と教師が練習や指導のために楽曲を演奏する。JASRACは、生徒も不特定の「公衆」にあたるとして、この演奏にも演奏権が及ぶと判断。」

というところの、「この演奏」というのは、その前の、

「1人または数人の生徒と教師」

がする演奏を指しているようにみえるのはやや不正確で、厳密には、教師の演奏だけが演奏権の対象なのでしょう。

ともあれ、まだ議論の段階のようですので、公取委の対応をふくめ、なりゆきを見守りたいと思います。

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» JASRACが音楽教室から演奏権を理由に利用料を徴収しようとしている件について [れこえぬ。]
概要 最近、JASRACが音楽教室から演奏権を理由に利用料を徴収しようとしている件が巷で話題になっています。今までは、JASRAC含め、権利管理団体は音楽教室からは利用料を演奏権を理由には徴収してきませんでした。例えば、楽曲を録音したCDを演奏のお手本として販売したり、楽譜を販売したときにはもちろん利用料が支払われていたはずですが、今回は演奏そのものに対して利用料を徴収すると言うものです。音楽教室は音楽を練習するところですから、当然に先生なり生徒なりが管理曲を演奏し得るわけです。そこを根拠に利用料を... [続きを読む]

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