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2017年2月 9日 (木)

2月1日の事務総長会見について(JASRAC)

1月26日にJASRACに対する課徴金の可能性について、

「記者さんもどうせ事務象徴会見で質問するならこの点を質問すればいいのにね」

といったことを書きましたが、まさに2月1日の事務総長会見で、

「(問) 昨年,JASRACの審判が,JASRAC側の審判請求取下げによってということが9月にあったと思うんですけれども,排除措置命令が出た当時,私的独占自体は課徴金の対象になってなくて,その後,審判とか裁判で争っている間に,JASRACの行為というか,私的独占自体が課徴金の対象になったと思うんですけども,JASRACの事件がということにはどうしてもなってしまうんですが,いわゆるあの事件で課徴金というのは取れるものなのか,取れないものなのか,どちらともつかないものなのか,その辺りというのはどういう仕組みになっているんでしょうか。

(事務総長) まず,確定した排除措置命令が対象としたJASRACの事案については,平成21年に私どもが排除措置命令を出した事案でございますので,それまでの事実に基づいて命令を出したということでございます。

一方で,独占禁止法改正・施行により私的独占に課徴金が導入されたのは平成22年1月でございます。したがって,この前確定した命令が認定した事実の時点と異なるものでございます。個別事案について,全く別の事案ということになりますから,今後どうするかとか,やるとか,やらないというのは,ここの場面では,私の方からはコメントは差し控えさせていただきたいと思います。」

という質疑応答がありました。

「全く別の事案ということになります」

というのは、まったく同じ契約でまったく同じことをやっていてるのに、いくらなんでも形式論にもほどがあります。

優越的地位の濫用の場合にはバラバラに見える行為でも全期間まとめて平然と課徴金を課しているのと比べると、本当に、場当たり的な理屈だなあと感じます。

なにか社会的事実として区別する事情があるなら区別することも合理的でしょうけれど、ここで区別する理由は、ホンネのところでは、課徴金が施行されたかされてなかったか、という違いしかないのではないでしょうか?

それって、違反かどうかの認定には、何の関係もありません。

もしも今回の事務総長会見が、課徴金納付命令後の行為には改めて課徴金納付命令を出さない(「全く別の事案」なので)ということを公取の運用として確立してしまうものだとしたら、それも大問題です。

そんなことしたら、命令を受けても儲かる限りは違法行為を続けるインセンティブが違反者に生じるからです。

(かといって、争っている当事者に訴訟の期間中ずっと課徴金がかかるというのも、逆の意味で大問題なのですが。)

解釈論上の問題の本質は、

課徴金納付命令には公取の裁量がない(「命じなければならない」独禁法7条の2第1項)のに、まったく同じことを続けていながら命令後の行為だからといって(あるいは改正後の行為だからといって)そちらのほうには命令を出さない、というのは許されないのではないか

ある行為自体を正式事件として取り上げるか取り上げないかという裁量は当然認められるにしても、排除措置命令まで出しておきながらその後の行為については「別の行為だから」というのは、「取り上げるか取り上げないか」という裁量とはまったく異なっていて、公取が自ら取り上げるという判断をしておきながら社会的には1つの行為の一部だけを取り上げないというのは、まさに7条の2が禁じる露骨な裁量権の行使であって許されないのではないか

ということですから、記者さん方も、こういう切り口から聞いていただければよいと思います。

こういう細かい問題が生じてしまうのも、もとをたどれば非裁量型課徴金制度のせいだともいえます。

ともあれ、公取はJASRACに対する課徴金にはかなり否定的であることが見て取れます。

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