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2017年1月30日 (月)

三菱自動車の課徴金納付命令について

1月27日、三菱自動車の燃費偽装に対する措置命令と課徴金納付命令が出ました

課徴金納付命令(と報道)を読んで気が付いたことを書き留めておきます。

■対象車種について

課徴金の対象になっているのはいわゆる普通車だけであり、軽自動車は対象になっていません。

同日日経記事によると、

「返金計画が未提出、または不十分と判断した三菱自の普通車など5車種の売上高の3%相当額とした。

軽自動車については両社の返金計画を認め、その実施状況を踏まえて判断する。」

ということです。

■表示媒体について

違反が認定されたのは、カタログとウェブサイトだけになっています。(これは三菱と日産の排除措置命令でも同様です。)

広告としてはほかにも、テレビCMや新聞広告、新聞チラシ、雑誌広告、などが考えられ、広い意味での表示には、自動車本体に貼られる

「平成30年燃費基準20%達成車」

などのステッカー(?)なども思いつきますが、これらは対象になっていません。

これらの媒体では燃費について表示していなかった、ということは考えにくいので、なぜカタログとウェブサイトだけが対象になったのかはわかりません。

■返金計画について

前記日経記事によれば、軽自動車については三菱と日産が消費者庁に返金計画を提出していることがわかります。

また、「未提出」なのは、各社それぞれの判断なのでよいのですが、「不十分」というのは、どのような点が不十分と判断されたのか、気になるところです。

■日産への課徴金について

日産も返金計画を提出しているということは、おそらく過失の有無は争わない立場なのであろう、とうかがえます。

不当表示であることを知らずに不当表示をしていた場合には、知ってから速やかに不当表示をやめれば課徴金はかからない、というのが消費者庁の見解です。

OEM先にだまされたという気の毒な場合にはまさに「速やかに」やめたかどうかが問われるわけですが、本件の日産のような場合でも課徴金がかかりうるということは、消費者庁に、「速やかに」やめたと認めてもらうのは、実際にはかなり大変なのだろうと想像されます。

とくに本件の場合には、日産も自動車メーカーなので、自社で検査をしたら表示どおりの燃費が出なかったと分かった時点で、「知った」ということになるのではないかと考えられます。

報道によれば2015年11月に日産は実測値と届出値との間に明らかな差があることに気づいたとされていますが、その時点で「知った」ことになるわけです。

その後三菱に原因を問い合わせたとか、その原因が三菱の偽装であることがわかったとかいう事実は、日産がいつ「知った」かとは関係のないことです。

というのは、不当表示は表示と実際が異なれば成立するのであり、その原因が納入業者の偽装であるか計測ミスであるかといったことは関係がないからです。

・・・と、理屈は以上のとおりなのですが、知ってから「速やかに」やめるのが本件では事実上きわめて困難であったであろうことは、容易に想像できます。

不当表示の原因がまだ分からないのに、ともかく公表して販売も中止する、というのは、かなり勇気がいるからです。

日産としては、記者会見なり、プレスリリースなりをするとしても、できれば、「わが社には責任はないんですよ(悪いのは三菱ですよ)」といった内容にしたいところでしょう。

それは人情としては非常によく理解できます。

このあたりは消費者庁による実態に即した柔軟な解釈を期待したいところです。

■課徴金対象行為について

課徴金対象期間については、カタログ上の不当表示について、始期はカタログをディーラーに最初に出荷した日、終期は最後に出荷した日、とされています。

カタログがディーラーに届いた日でもなければ、カタログが消費者の目に触れた日でもありません。

つまり、課徴金対象行為は「カタログの出荷」ということです。

課徴金ガイドラインでも同様のことが述べられていますので、それを確認した形になっています。

■誤認解消措置について

命令では、三菱自動車が平成28年9月11日に誤認解消措置をとったことが認定されています。

誤認解消措置をとったあとの売上には課徴金はかかりませんが、本件では、取引をした最後の日が8月12日と認定されているので、結果的には、誤認解消措置が課徴金の減額には結び付いていません。

■自主申告について

命令では、三菱自動車が平成28年8月31日午後に消費者庁に自主申告したことが認定されています。

ただ、それは調査開始の通知を受けた時(平成28年5月27日又は同年8月31日午前)よりもあとなので、課徴金納付命令があるべきことを予知してなされたものとして、課徴金の半額減額は認められていません。

「午前」「午後」とわざわざ明記していることからもわかるように、日付ではなく、時間的な前後で「予知」していたかどうかが認定されます。

当たり前にみえるかもしれませんが、類似の制度の独禁法上のリニエンシーでは、条文上、「調査開始日」の前には1位全額免除で同日以後は3割減額、というふうに、日を単位にしています。

それと比べると、景表法の条文に忠実な運用をしているといえます。

またそのような時間的前後関係が問題となりうることから、消費者庁では調査の開始の通知をして「予知」の有無を明確にしていることがうかがえます。

■調査開始の通知について

それと関連して、命令では、

「前記1の課徴金対象行為についての調査の開始」

を通知した、と記載されていますが、おそらく、「前記1の課徴金対象行為」とはいっても、命令の対象26車種を具体的に特定して通知したのではないのでしょう。

どの車種で不当表示がなされたかは調査をしてみてわかるのであり、調査開始時に通知することは不可能または困難だからです。

もし具体的に対象車種まで特定して通知していたら、後から分かった車種についてはさらに通知をされるまでは自主申告して半額免除されてしまい、不都合でしょう(でも場合によっては、そのような減額を認めることが「不都合」でない、という事案も、今後はあるかもしれません。)

それから、本件では調査開始の通知が平成28年5月27日と同年8月31日午前の2回なされているようですが、なぜ2回になったのかは不明です。

ちなみに、日経新聞電子版2016年5月25日では、

「三菱自動車の燃費データ不正問題で、消費者庁が不当表示を禁じた景品表示法に違反していないか調査を始めたことが25日、関係者への取材で分かった。」

と報じられているので、新聞報道があってすぐに消費者庁に駈け込めば、間に合う(調査開始前に消費者庁からリークされる?)可能性もありそうです。

なお、自主申告の減額の有無を判断するためだけであれば最初の調査開始通知よりも後に自主申告がなされたことさえ認定できればいいはずですが、なぜ5月27日の通知に加えて8月31日の通知にまで言及されているのかは定かではありません。

■不当表示期間について

全26商品(※普通の意味での車種ではなく、1グレードで1商品と数えています)のうち、「デリカD:5」の「CHAMONIX」についてだけは、不当表示期間が8月12日までと認定されています(他の25商品は8月30日)。

理由はわかりません。たぶん、事実がそのとおりだった、ということなのでしょう。

このように、課徴金が導入されたためにいままでにはない細かいところが気になってきます。今後、「公正取引」に載るであろう担当官解説に期待しましょう。

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