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2017年1月12日 (木)

倒産品処分セール(ないし閉店セール)に関する緑本の記述について

真渕博編著『景品表示法〔第4版〕』(通称、緑本)のp295で、

「Q9 倒産処分品、工場渡し価格等の安さを強調する用語を用いた表示は問題があるか。」

という設問に対して、

「・・・実際には倒産品の処分のための販売でなかったり、

倒産品処分ではあるが通常の販売価格で商品が販売されている場合、

・・・このような表示を行い、一般消費者に著しく有利な価格で販売していると誤認されるときは、不当表示となるおそれがある。」

と回答されています。

しかし、

倒産品処分ではあるが通常の販売価格で商品が販売されている場合

も不当表示というのはおかしいと思います。

なぜなら、倒産処分品であるという表示自体は事実だからです。

それ以上に、通常より安くなきゃいけないということはないでしょう。

事実をありのままに書いているのに不当表示になるというのは、景表法がぜったいに超えてはいけない一線です。

もちろん、その場合の表示の意味は消費者の視点から考える必要がありますが、事実をありのままに書いたものが不当表示というのはよっぽどの場合でしょう。

たとえば、「倒産処分品!」という表示と併せて「激安!」とか書いていれば、不当表示になるかもしれませんが(それでも私は、抽象的な「激安!」程度の表示では、不当表示とすべきではないと思います)、「倒産処分品」という表示だけで不当表示となるというのはありえないと思います。

以前、消費税増税前は、駆け込み需要のために実は家電は割高だった(税込みでも増税後のほうが安かった)、ということを書きましたが、たとえばそういう場合に、

「消費税増税直前セール」

という表示をしただけで、「セール」という文言のために、不当表示になるのでしょうか?

私はそれは行き過ぎだと考えます。

緑本では上記回答の理由として、

「一般消費者は、倒産品処分という表示から、通常、事業者の倒産に伴い、採算を度外視した安い価格で販売されている商品との認識を・・・持つと考えられる。」

と述べていますが、これも決めつけすぎではないでしょうか。

ちなみに倒産品処分セール(ないしは類似の閉店セール)については消費者庁の考えも揺れていて、たとえば二重価格表示ガイドラインでは、

「・ A寝具店が、「製造業者倒産品処分」と強調して表示しているが、実際には、表示された商品は製造業者が倒産したことによる処分品ではなく、当該小売店が継続的に取引のある製造業者から仕入れたものであり、表示された商品の販売価格は従来と変わっていないとき。」

というように、価格が従来と変わっていないことが要件とされていたり、消費者庁ホームページのQ&Aでは反対に、

「Q42

当店は,販売価格の安さを一般消費者に対してアピールするために,閉店時期は未定ですが,「閉店セール」と称したセールを長期間実施しようと考えていますが問題ないでしょうか。

A. 「閉店」する場合に,「閉店セール」と称して,在庫商品を処分するために通常販売価格(もしくは自店旧価格)よりも安い価格で販売を行うことがあります。

このような処分セールに係る表示は,社会通念上,一般的には閉店までの「一定期間のみ特別に値引きが行われている」という認識を一般消費者に与えます。

しかし,実際には閉店し,廃業する予定がなかったり,閉店する時期が確定していないにもかかわらず,「閉店セール」と称したセールを長期間行っているような場合には,

一般消費者に対し,あたかも「今だけ特別に値引きが行われている(購入価格という取引条件が著しく有利である)のではないか」という誤認を与え,不当表示に該当するおそれがあります。 」

というように、価格が安いか高いかは問題にしていません。

私はホームページのQ&Aの立場が正しいと考えています。

倒産品でなくても実際に格安になっているなら事件化しない、というのはたんに消費者庁の執行方針の問題で、法律解釈論ではありません。

もちろん緑本は建前の上では執筆者の個人的見解であると、4版はしがきにも明記されてはいるのですが、いずれにせよ、これだけ結論が割れるというのはいかがなものかと思います。

ただこれをみても、景表法が「ウソさえ書かなければいいんだろ?」というほど単純な法律ではないことがうかがえます。

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