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2016年10月 5日 (水)

テレビ局と検索エンジンと「業として」の有償性

平成27年11月版の下請法講習テキストp19に、

「Q16: 放送番組に使用する番組のタイトルCG,BGM等の音響データの作成は情報成果物作成委託に該当するとのことだが,これらについては,プロダクションの担当者が放送局に来て,ディレクターの指示のままに作業をする場合には,情報成果物作成委託には該当しないと考えてよいか。」

「A: 放送局がプロダクションに委託する業務の内容が,放送局においてディレクターの指示のままに作業をすることというものであれば,それは情報成果物作成委託でなく,放送局が専ら自ら用いる役務の委託であることから,本法の対象とはならない(情報成果物作成委託にも役務提供委託にも該当しない。)。

なお,それが労働者派遣法の対象となるような場合には,本法の対象とはならない。」

というQ&Aがあります。

この考え方自体、そんなこと言いきって大丈夫かという疑問がないではないのですが(指示のまま作業するといっても、プロダクションの担当者のスキルや専門性が反映されることがあるのではないか?)、今回それはひとまず措いて、設問の本筋とは違うところでちょっと疑問があります。

それは何かといえば、情報成果物作成委託の類型1は、

「情報成果物を業として提供している事業者が,その情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託する場合」

という場合ですが、下請法運用基準の役務提供委託に関する説明(第2-4(2))では、

「『業として行う提供の目的たる役務』のうち『業として行う提供』とは、

反復継続的に社会通念上事業の遂行とみることができる程度に行っている提供のことをいい、純粋に無償の提供であればこれに当たらない。」

と、有償でなければならないことが明記されています。

そうすると、放送局の放送は、地上波なら無償なのですから、タイトルCGを番組で使って視聴者に提供しても無償の提供なので、「業として」にあたらないのではないか?という疑問がわきます。

考えられる理屈としては、地上波放送でもテレビ局は広告主から収益を得ているのだから「純粋に無償」とはいえない、というのが考えられますが、心情的には理解できるものの、運用基準の説明では、

「業として行う提供の目的たる役務」

の説明として、

「純粋に無償の提供であればこれに当たらない」

といっているのですから、「提供」(←当然、視聴者への提供のことでしょう)が無償かどうかを問題にしているのであって、つまりは、提供の相手方からお金を採るかどうかを問題にしているのであって、提供の相手方からお金は取らないけれどほかの第三者からお金を取る場合を、

「有償の提供」

と解釈するのは、相当無理があるように思われます。

つまり「有償の提供」というのは、提供の相手方からお金を取らない提供のことではないのか、ということです。

無償の提供は業としての提供に当たらないことが表れているテキストのQ&Aとして、p18に、

「Q11: 景品の製造を委託した場合も本法の対象となるか。」

「A: いわゆる景品は,商品に添付されて提供される場合,有償で提供している商品の一部として提供がなされているため製造委託(類型1)に該当する。また,純粋に無償で提供している景品であっても,自家使用物品として当該景品を自社で業として製造している場合には,製造委託(類型4)に該当する。」

というのもあります。

でもこのQ11をみても、やはり景品提供の相手方から実質的にお金を取っている(本体商品の代金として取っている)から有償なのだ、とは読めても、まったく異なる第三者からお金を取っても有償と解釈するのだとは読めないと思います。

さらに言えば、

テレビ番組制作の取引に関する実態調査報告書

でも、

放送コンテンツの製作取引適正化に関するガイドライン

でも、テレビ局と番組制作会社との間の取引に下請法が適用されることは、当然の前提にされています。

(実態調査報告書のときに何か議論があったのか、ぜひ公取委の人に聞いてみたいところです。)

ですが、もし第三者からお金を取るのも有償の提供だとすると、たとえば、ある商店街が、町内のお祭りのときに、自己の店舗にお客さんを呼びこむために団扇(うちわ)を通行人にただで配ることを企画して下請に製造委託したときに、その団扇の費用の一部に充てるために、ある都市銀行の広告を団扇に載せて、その広告代をその都市銀行から徴収したら、その団扇の提供も「有償」の提供になってしまいそうな気がします。

それはいくらなんでも非常識でしょう。

(「非常識」といいましたが、もっと考えてみると、団扇代の一部に充てるくらいなら可愛らしいものですが、団扇代を超える広告料を都市銀行から取って商店街に利益が出たりすると、テレビ局とどこが違うのか、という気もしてきます。)

ですが他方で、民放の地上波放送が無料だからといって、「純粋に無償」だというのは、かなり引っかかるのも事実です。

(NHKなら問題なく有償なのでしょうけれど。)

民放の地上波放送を「純粋に無償の提供」というのは心情的に抵抗があるとしたら、では、インターネットの検索エンジンは「純粋に無償の提供」なのでしょうか?

われながら理屈ではうまく説明できませんが、インターネットの検索エンジンのほうがまだ、「純粋に無償の提供」というのに抵抗感はないような気がします。

いずれにせよ、テレビ局(NHKを除く)の放送をすべて「純粋に無償の提供」として、番組の一部を構成する映像や音声の下請がすべて下請法の対象外というのはさすがに受けいれがたい結論だと思いますので、結論としては、下請法の対象と解するのでしょう。

実際には、テレビ局は自分でもタイトルCGは作っているでしょうから、情報成果物作成委託の類型3(自家使用の情報成果物)に該当することが多いので、実際には問題ないのかもしれませんが、では自社で作っていないときにはテレビ局と制作会社の取引は下請法の対象外と割り切ってもいいのかというと、なかなかそういうわけにもいかないでしょう。

しかしそもそも、「業として」が有償のものに限るとは下請法には書いていないのですから、運用基準のほうを改正すべきではないでしょうか。

運用基準制定時は商品役務の提供の相手方以外からお金を取る(相手方からはお金を取らない)ビジネスはテレビやラジオくらいだったかもしれませんが、インターネット時代にはいろいろなビジネスが出てくるでしょうから、時代に合わない運用基準はこまめに改正すべきだと思います。

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