公取委は定員に見合った仕事をしているのか?
私も編集委員の1人をつとめる
『実務解説独占禁止法』(第一法規・加除式)
という書籍の質疑応答編のp10162に、
「公正取引委員会の事件処理件数および定員の推移」
という、興味深いデータが載っています。
(ちなみにこの本、今回紹介するような、ほかでは見られない記述がちりばめられていて、なかなか貴重だと思います。
たとえば下請法の減額の勧告基準について、
「減額分が1000万円を超えることが一つの勧告基準となっていると想定されます。」(p14583)
と、控えめな書き方ですが、ばっちり書いてあったりしますし、あとは、
「公取委と中企庁の〔下請法〕調査方法の相違点」(p14570)
なんていう、とても渋い設問もあります。)
この表では、①平4~平8、②平9~13、③平14~18、④平19~24、の4つの期間について、処理件数(法的措置件数)は、
①141件、②141件、③129件、④121件
公取委の定員(平均)は、
①507人、②558人、③673人、④786人
1人あたり処理件数は、
①0.278件、②0.253件、③0.192件、④0.154件
平4~8を「100」としたときの1人あたり処理件数は、
①100、②91、③69、④55
となっています。
つまり、定員は増えているのに処理件数は減っている、ということがわかります。
たぶん、最新の数字をとれば、もっと1人あたり処理件数は減るでしょう。
もちろん、正式事件だけが公取の仕事ではないですし、法的措置件数は事件数とは違うので(10社のカルテルが摘発されたら、事件数は1件だけれど、法的措置件数は10件)、処理件数が適切なベンチマークなのもかも議論はありうるのでしょうけれど、これだけ長期間にわたって減少傾向が明らかというのは、正直ショッキングです。
最近の公取は、消費税転嫁法とか、教科書問題とか、競争政策の本筋からすれば「色モノ」的な事件の執行ばかりが目立ちますが、それは数字にも表れているといえそうです。
一時期活発だった優越的地位の濫用も、当事者がほぼ例外なく審判で課徴金額を争うので公取も懲りたのか、正式事件がぱったりとなくなってしまいました。
(わたしに言わせれば優越的地位の濫用も色モノなので、事件が減るのはよいことですが、正式事件ではなく行政指導でお茶を濁そうとしているような気配も、なきにしもあらずです。)
やはり、正式事件が減っているというのは、定員に見合った仕事をしていないといわれても仕方ないのではないでしょうか?
昔ある会社の法務部の方と、最近公取の執行が少ないと雑談で話したら、
「公取が活発に活動することなんて、誰も望んでませんよ。」
といわれ、確かにそうだなぁ、と思いました(例外は独禁法弁護士と独禁法学者くらいか?苦笑)。
もちろん、定員を減らされたら困るから事件を増やすというのは本末転倒ですが、このままでは、公取委の活躍を望まない国民からも、
「公取にこんなにたくさん人はいるのか?」
「人手不足の消費者庁に回したほうがいいんじゃないか?」
という議論も出てくるのではないでしょうか。
公取委のみなさま、色モノばかりではなく、競争政策の本質にかかわるような事件の執行を、どうぞよろしくお願いいたします。
そうでないと、誇りをもって仕事をする優秀な人材が来なくなるのではないかと、他人事ながら心配しております。
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私達一般人が公取に申立てをした場合、相手にされるのでしょうか。
法は一般に普及し社会的認知度が高まらなければ一分の人たちだけの法律のような気がします。
公正取引と言うくらいですから、日頃の日常的にある契約にも目を向けてほしいと思います。
例えば携帯電話やアパート等の賃貸契約など。
投稿: 一人親方 | 2016年10月 5日 (水) 18時09分