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2016年2月 1日 (月)

TPP第16章(競争政策)について

甘利大臣の辞任で先行きに暗雲垂れこめてきた(ということもないようですが)TPPですが、競争法に関連するのは16章です。

いわゆる欧州型のコミットメントを義務付けているといわれるのが16.2条の5項で、原文では、

「Each Party shall authorise its national competition authorities to resolve alleged violations voluntarily by consent of the authority and the person subject to the enforcement action.

A Party may provide for such voluntary resolution to be subject to judicial or independent tribunal approval or a public comment period before becoming final.」

となっています。

政府仮訳はちょっと硬いので、私なりに訳すと、

「締約国は、調査対象者との合意により任意に違反被疑事件を解決する権限を自国競争当局に付与するものとする。

締約国は、かかる任意の解決が確定する前に、裁判所もしくは独立審判所による承認またはパブリックコメントの期間を要するものとすることもできる。」

ということです。

条約で決められている枠組みはこれだけですので、とくに欧州型にこだわる必要もないのでしょう。

(ちなみに、こんな条項がTPPに入っていたなんて、最終合意まで独禁法の専門家でもほとんど知らなかったのではないでしょうか。)

ところであらためて16章をみてみると、16.1条の2項に、

「Each Party shall endeavour to apply its national competition laws to all commercial activities in its territory.[note 2]

However, each Party may provide for certain exemptions from the application of its national competition laws provided that those exemptions are transparent and are based on public policy grounds or public interest grounds.」

という規定があります。

これも私なりに訳すと、

「締約国は、その領土内におけるすべての商業的な活動に自国の競争法を適用するよう努力するものとする(注2)。

しかし、締約国は、自国の競争法の一定の適用免除を定めることができる。ただし、その適用免除が透明で、かつ、公共の理由または公益の理由に基づく場合に限る。」

という感じでしょうか。

注2は原文では、

「For greater certainty, nothing in paragraph 2 shall be construed to preclude a Party from applying its competition laws to commercial activities outside its borders that have anticompetitive effects within its jurisdiction.」

となっており、訳すと、

「より明確にするために述べると、第2項は、締約国の法域内に反競争的な影響を及ぼす国外の商業的活動に対して自国の競争法を適用することを妨げるものと解されてはならない。」

ということです。

少なくともTPPでは、努力義務ではあるものの、基本的には属地主義がとられていることがわかります。

先週金曜日にブラウン管事件の判決が出て属地主義が基本であることが明らかにされましたが、そういった目でTPPをみると、「こんなことになっていたのかぁ」と、なかなか趣深いものがあります。

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