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2016年2月 6日 (土)

返金措置の認定要件の「不当に差別的でない」の意味

今年4月から施行される改正景表法(課徴金制度の導入)では、消費者に自主的に返金した額を課徴金から差し引く制度(返金制度)が導入されています。

ただ、どんな返金の仕方をしてもいいわけではなくて、

「特定の者について不当に差別的でないものであること」

が必要であるとされています(改正法10条5項2号)。

では「不当に差別的でない」とは具体的にどういう意味でしょうか。

立案担当者解説である黒田他編著『逐条解説平成26年11月改正景品表示法 課徴金制度の解説」p73では、

「例えば、1個の課徴金対象行為の対象となった商品または役務に係る最終需要者の購入額が、販売者、販売時期、地域等によって異なる事案において、事業者が、当該『商品又は役務の購入額×課徴金算定率』以上となり得る一律の金額を定めることにより、各最終需要者の購入額に占める返金額の割合が異なるという場合はあり得ると考えられる。」

という例があげられています。

つまり、一定額の返金は(各購入者の購入額が異なると一定率ではなくなるものの)認められる、ということです。

ただこの説明は、基本的に同じ(同量の)商品役務を購入している場合を想定していると思われます。

たとえば、必ずやせると謳った健康食品について返金する場合、「30錠入り」、「70条入り」、「150状入り」では価格は異なるでしょうが、このような場合、どれを購入しても一律の金額というのはさすがにまずいのではないかと思います。

やはり、「30錠入り」、「70錠入り」、「150錠入り」、それぞれについて一定金額を定めるべきでしょう。

もちろん、各購入者に対して購入額全額を返金する(そのため具体的な返金額は各購入者ごとにことなりうる)、というのは問題ないでしょう。

またたとえば、天然温泉と称して入浴剤を使っていた旅館が返金する場合には、宿泊プランによって価格は大いに異なりえますが、この場合は一律(一定額)の返金でかまわないと思います。

というのは、温泉旅館の宿泊には、宿泊そのものの対価(部屋の広さで異なる)や、食事の対価、温泉の対価、布団の上げ下げなどのサービスの対価、などさまざまなものが含まれますが、返金対象は温泉の部分だけと考えられるからです。

つまり、同じ旅館の宿泊プランで、1泊5万円、3万円、2万円、というのがあっても、温泉が温泉でなかった分の埋め合わせとしては一律1000円として、1000円を返金する、というのでもかまわないと思います。

(同様の問題は、商品役務の一部について不当表示があった場合には常に生じるのでしょう。)

これに対して、1泊した人と3泊した人で返金額が同じ1000円でも不当に差別的でないといえるかというと、やや微妙ですが、私は不当に差別的だと思います。

というのは、3泊する人は1泊する人の3倍お風呂に入るだろうからです。なのに同じ額の返金というのは、やはり不公平だと思います。

でも、3泊した人には1泊した人の3倍返金しないといけないか、というとそこまで厳密に考える必要もなくて、消費者が被った損害におおむね見合うような定め方(たとえば、宿泊代金合計が3万円以下なら1000円返金、5万円以下なら2000円返金、10万円以下なら3000円返金、10万円以上なら一律5000円返金)というのでも、まあいいのかな、と思います。

では逆に、何泊したかにかかわらず、すべての宿泊者に宿泊料金全額を返金する、というのは不当に差別的でしょうか。

宿泊料金に占める温泉の対価はわずかだとすると、高額購入者ほど焼け太りになるような定め方は不公平な気がしますが、良心的な旅館であるほど、顧客の信頼を取り戻すために全額返金したいと考えるかもしれません。

それを法律が禁じることもないと思います。

条文も、「不当に」差別的といっており、「不当」でないなら「差別的」でもかまわない、と読めます。

なので、このような、信用を回復するための、経済的には過剰な返金は、認められるべきと考えます。

基本的な考え方としては、ともかく消費者が被った損害を填補していれば、それ以上の過剰な返金の部分は、あまり「不当に差別的」かどうかを気にするべきではない、と思います。

反対に、消費者が被った損害を填補するに足りない返金の場合は、平等かどうかを厳しくみるべきでしょう。

たとえば、痩せない健康食品の場合は、経済的には無価値なので全額返金するのが筋だと思いますが、それでも一部しか返金しない返金計画というものが考えられます(このような返金も、各購入者の購入額の3%以上を返金する限り、課徴金からの控除の対象にはなります)。

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