Yates Memoについて
今年の9月9日に、司法副長官から反トラスト局長を含め各局長にあてて出されたメモ(Yatesメモ)が話題になっています。
内容は、企業犯罪では個人の責任を積極的に追及していく、という方針を表明したものです。
元々、反トラスト局は、ハードコアカルテルの場合に個人の責任を追及するのに積極的だったので、このメモで何がどう変わるということもないのだと思うのですが、1つ注目されるのは、同メモの6つのポイントうち4つめで、
特段の事情ないし司法省で承認されたポリシーによるのでない限り、司法省は、企業と司法取引をするときには、個人を免責することはしない
とされていることです。
この、「司法省で承認されたポリシー」(departmental approved policy)というのに、リニエンシーポリシーが含まれることは同メモに明記されているのですが、反トラスト局のカーブアウトについては、明記されていないのでよくわかりません。
(カーブアウトというのは、特定の個人、典型的には違反の張本人を、免責の対象から除外(carve out)して、他の従業員・元従業員はまとめて会社との司法取引で免責する、という反トラスト局独自のポリシーです。)
でも、カーブアウトでも責任追及されるべき人は免責されないので、司法取引で明示的に免責対象に含められた人だけ免責される(カーブ・イン)と原則と例外が逆になるだけなので、(実質を問題にしていると思われる)Yatesメモにはカーブアウトポリシーは引っかからないのだろうと思います。
Arnold & Porterのウェブサイトの記事にも、カーブアウトはdepartmental approved policyに含まれるので今後も変わらないだろう、という論評がなされています。
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