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2015年10月 9日 (金)

不実証広告規制の措置命令の理由

景表法4条2項の不実証広告規制を利用した措置命令については、

「消費者庁長官は、前記○○の表示について、景品表示法第4条第1項1号に該当する表示か否かを判断するため、同条第2項の規定に基づき、〔名宛人〕に対し、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、

〔名宛人〕は、当該期間内に表示に係る裏付けとする資料を提出したが、

当該資料は、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであるとは認められないものであった。」

という一文が入るのが一般的です。

しかし、この程度の理由では、理由の提示として不十分で、行政手続法14条1項に違反するのではないでしょうか。

行政手続法14条(不利益処分の理由の提示)1項では、

「行政庁は、不利益処分をする場合には、その名あて人に対し、同時に、当該不利益処分の理由を示さなければならない。ただし、当該理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合は、この限りでない。」

と定められています。

そして、どの程度詳しい理由を書かないといけないのかについて、室井他『コンメンタール行政法Ⅰ 行政手続法・行政不服審査法(第2版)』(日本評論社)p161では、少なくともこれまでの判例を踏まえるなら、理由提示の最低限の要求として、以下の①~③のことが求められる、としています。

① 理由の提示は、単に根拠法条を示すだけでは足りず、いかなる事実関係に基づき、いかなる法規を適用して処分がなされたかを明らかにするものでなければならないこと。

② 処分根拠となる事実に関しては、処分の名あて人にとって十分理解し得る程度に詳しく示すこと。

③ 処分理由は、その記載自体から、名あて人の知りうるところとならなければならず、名あて人がたまたま理由を知りえたかどうかは、理由の提示にあたって考慮されてはならないこと。

ところが、上に掲げたような、

「当該資料は、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであるとは認められないものであった。」

というのでは、景表法4条2項の、

「当該〔合理的な根拠を示す〕資料を提出しない」

という事実を述べているだけ、つまり、結論だけを述べているに過ぎないのであって、理由を述べていることにはならないと思います。

少なくとも、十分理解し得る程度に詳しいとはいえないので②に違反しますし、自分が提出した資料なんだから言われなくても分かるだろうというのも③に違反します。そしてたぶん、①にも違反するのでしょう。

まったく資料が出てこなかったなら、資料が提出されなかったという以上に理由は説明のしようがありませんが、出てきた資料が合理的でなかったというのが理由なら、どの点が合理的でなかったのか、なぜ合理的でなかったのかを、「名あて人にとって十分理解し得る程度に詳しく示すこと」が必要だと思います。

実質的に考えても、このような理由では、当事者は争うべきかどうかの判断も付きかねるのではないでしょうか。

不実証広告規制では迅速性が必要なので詳しい理由を書いている暇がない、ということはきっとないのだと思いますが、仮にそうなら、行政手続法14条1項ただし書の、

「ただし、当該理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合は、この限りでない。」

で処理すれば足りることであり、一般的に理由を書かない理由にはならないと思います。

それに、実際には、問題の商品の効果効能を調査するのと異なり、提出された資料だけをみてその合理性を判断するだけなので、時間も大してかからないはずです。

ちなみに、不実証広告規制では、合理的な資料が出なかった場合には優良誤認とみなす、という、いわば法律上の擬制をする制度なので、「著しく有利と誤認」するかどうか(実際には、表示どおりの性能がなかったこと)を処分の理由に書く必要がないのは当然です。

しかし、だからといって、擬制の根拠である資料の合理性についてまで、理由を書かなくて良いことにはならないでしょう。

景表法では措置命令に不服を申し立てる事業者がほとんどいないので問題が表面化していませんが、争う場合には、ぜひ理由不備も取消理由に加えるべきでしょう。

もし理由がきちんと書かれることになったら、どのような資料が出されてどのような理由で消費者庁が合理的でないと判断したのかもわかるので、実務の参考になるという副次的な効果も期待できます。

消費者庁には運用の改善(私の立場では、違法な運用の是正)を期待したいと思います。

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