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2015年9月 8日 (火)

薬機法(旧薬事法)と景表法の関係

真渕博編著『景品表示法(第4版)』p165に、薬機法(旧薬事法)の表示規制に関する簡単な説明があり、その中では、虚偽誇大広告の禁止(薬機法66条1項)と、医師による保証広告の禁止(同条2項)が挙げられています。

条文を確認すると、

「(誇大広告等)

第六十六条  何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。

2  医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当するものとする。

3  何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品に関して堕胎を暗示し、又はわいせつにわたる文書又は図画を用いてはならない。」

というものです。

しかし、薬機法と景表法の関係を考える際には、66条だけを挙げるのは、やや片手落ちのような気がします。

というのは、景表法の分野で一番問題になりそうな、医薬品でもないのに「ガンが治る」とかいう表示をしているものは、承認前の医薬品の広告禁止(薬機法68条)に該当するからです。

薬機法68条は、

「(承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止)

第六十八条  何人も、

第十四条第一項〔医薬品、医薬部外品及び化粧品の製造販売の承認〕

第二十三条の二の五第一項〔医療機器及び体外診断用医薬品の製造販売の承認〕

若しくは第二十三条の二の二十三第一項〔指定高度管理医療機器等の製造販売の認証〕

に規定する医薬品若しくは医療機器

又は

再生医療等製品であつて、

まだ第十四条第一項、

第十九条の二第一項〔外国製造医薬品等の製造販売の承認〕、

第二十三条の二の五第一項、

第二十三条の二の十七第一項〔外国製造医療機器等の製造販売の承認〕、

第二十三条の二十五第一項〔再生医療等製品の製造販売の承認〕

若しくは第二十三条の三十七第一項〔外国製造再生医療等製品の製造販売の承認〕

の承認

又は

第二十三条の二の二十三第一項〔指定高度管理医療機器等の製造販売の認証〕

の認証

を受けていないものについて、

その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。」

というものです。

ポイントは、薬機法での「医薬品」の定義で、薬機法2条1項では、

「(定義)

第二条  この法律で「医薬品」とは、次に掲げる物をいう。

一  日本薬局方に収められている物

二  人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であつて、機械器具等・・・でないもの(医薬部外品及び再生医療等製品を除く。)

三  人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であつて、機械器具等でないもの(医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品を除く。)」

とされています。

ここでさらにポイントは、医薬品の2条1項2号で、治療等に使用されることが

「目的とされている物」

というふうに定義されていることです。

つまり、治療等を「目的」としていれば、それは定義上、「医薬品」に該当することになります。

よくいわれる例として、ただのゴマでも、「ガンに効く」といえば、そのゴマは、「医薬品」になるわけです。

実際にはそこまで大雑把な議論ではなく、

無承認無許可医薬品の指導取締りについて」(昭和46年6月1日 薬発第476号)

という通達の別紙に、

「医薬品の範囲に関する基準」

というのがあり、その中で、何が医薬品に該当するのか、細かく定められています。

たとえば、

「1 野菜、果物、調理品等その外観、形状等から明らかに食品と認識される物

2 健康増進法(平成14年法律第103号)第26条の規定に基づき許可を受けた表示内容を表示する特別用途食品〔注・特定保健用食品(トクホ)、病者用食品、妊産婦用粉乳、嚥下困難者用食品がこれに入ります〕

3 食品表示法(平成25年法律第70号)第4条第1項の規定に基づき制定された食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)第2条第1項第10号の規定に基づき届け出た表示内容を表示する機能性表示食品

は、医薬品とはみなさない、とされていたり、

「新聞、雑誌等の記事、医師、学者等の談話、学説、経験談などを引用又は掲載することにより暗示するもの

(例) 医学博士○○○○の談

「昔から赤飯に○○○をかけて食べると癌にかからぬといわれている。………癌細胞の脂質代謝異常ひいては糖質、蛋白代謝異常と○○○が結びつきはしないかと考えられる。」等」

は医薬品的な効能効果を標ぼうしているものとみなす、とされていたり、

錠剤やカプセルといった形状のものでも、「食品」と明示されていれば形状だけで医薬品と判断されることはない、

とされていたりします。

というわけで本題に戻ると、たとえば健康食品を「ガンに効く」と広告すると、その健康食品は医薬品とみなされ、もちろん医薬品の承認は得ていないでしょうから、未承認の「医薬品」の広告(薬機法68条)に該当してしまうわけです。

法律上のポイントは、虚偽誇大広告の禁止の場合は、実際に表示内容通りの効き目があれば違反にはならないのに対して、未承認の医薬品の広告の場合は、表示内容通りの効き目があっても違反になる、という点です。

ちなみに、罰則は、66条の虚偽誇大広告の場合も(薬機法85条4号)、68条の未承認医薬品の広告の場合も(同条5号)、2年以下の懲役または200万円以下の罰金です(併科あり)。

なので、虚偽誇大広告と未承認医薬品の広告とで、どちらが悪いということはないのかもしれませんが、少なくともまともな事業者がより気を遣うのは未承認医薬品の広告のほうではないかと思います。(まともな健康食品で、表示通りの効果が確かにあっても、未承認医薬品の広告のほうには引っかかってしまうことがあるので。)

ですので、薬機法は消費者庁の管轄ではありませんが、緑本の解説にも68条を加えた方が、より親切ではないかと思います。

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