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2015年9月 3日 (木)

転嫁阻害表示の一例

インターネットで調べものをしていたら、たまたま、こんな表示を見つけました。

Img_0700

「昨年4月1日から、多くの商品で8%OFFを継続中」

と書いてあります。

「昨年4月1日から」

というのは消費税の引き上げ時期を意識していることが明らかですが、転嫁阻害表示ガイドラインで、たんに8%値引きという表示のみでは問題ないとしているので、それでこういう表示を考えられたのでしょうね。

事業者の方はいろいろな表示を工夫されるものだなあと、ほんとうに感心します。

でも、消費税転嫁阻害表示にはあたらないとしても、こういう「8%OFF」とかいう表示(二重価格表示)は、最近相当期間の過半数(基本的には、直近8週間のうち4週間超)で販売実績がないといけないので、昨年4月1日からずっと8%OFFというのは、二重価格表示として問題なのではないでしょうか。

たしかに、最近相当期間については、価格表示ガイドラインに、

「当該価格〔注・比較対象価格〕がいつの時点でどの程度の期間販売された価格であるか等その内容を正確に表示しない限り」

という限定があるので、

「昨年4月1日から」

と時期を明示しているからいい、という整理なのでしょうか。

私は、直感的には、いくらなんでも1年半近く前の価格を比較対象にするのはまずいのではないかという気がしますが、ではそれで消費者が「著しく有利」と誤認するのか、といわれれば、誤認しないような気もします。少なくとも私は誤認しませんでした。

(そもそもあえて1年半も前の価格を比較対象にするなんてことは、今回の消費税増税のような背景がなければ、だれもやろうと思わないでしょうから、そういう意味では特殊な事例なのかもしれません。)

でも消費者庁に聞いたらダメといわれるかもしれません。

誤認するとすれば、消費税分安くなってるんじゃないかという誤認でしょうが、上述のように、ガイドラインでは8%という表示だけではOKになっています。

いろいろ考えると、実は本当によく練られた表示なのかもしれません。

ところで写真の表示がそうだというわけではないのですが、たんに「8%引き」という表示をすることは、消費税転嫁法は問題ないとしても、景表法上は注意が必要です。

というのは、転嫁阻害表示ガイドラインの最後に

「(参考)消費税率の引上げに伴う表示に関する景品表示法の考え方」

というのがあり、その「禁止される表示例」の1つに、

「実際には、その小売事業者が過去の販売価格等より消費税率の引上げ幅又は消費税率と一致する率の値引きをしていないにもかかわらず、これらの率を値引きしているかのような『3%値引き』、『8%値引き』等の表示」

というのがあるからです。

たとえば、税率引き上げ前に105円(税込)で販売していた商品ついて、税率引き上げ後に、「8%引き」という表示をするためには、105×{(100-8)÷100}=96.6円で販売していないといけないことになります。

「8%引きと表示しているのだから文字通り8%引きと表示しないといけない」という、当たり前といえば当たり前の理屈ですね。

なので、もし写真の表示の事業者が、増税前に税込み105円で売っていたものを増税後100円で売っていたとすると、景表法違反になります。

ただ私はこの見解にはやや異論があって、拙著『実務解説消費税転嫁特別措置法』p161にも書いたのですが、多くの消費者は、むしろ、増税前に税込105円で売っていたものを増税後は税込み100円で売っているんだな、と感じるのではないか、と思うのです。

ちなみに、パブコメ回答8番では、

「消費税率の引上げの直後においても、「3%値引き」との表示をした場合、消費税率引上げ後の税込価格から3%値引きされている旨を明瞭に表示していない限り、消費者は最近相当期間にわたって販売されていた税込価格から3%値引きされていると認識し得ることから、景品表示法上の有利誤認表示に該当するおそれがあります。」

と、はっきり回答されています。

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