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2015年8月17日 (月)

紹介者キャンペーンに関する消費者庁Q&Aの疑問

消費者庁のQ&Aに、

「Q19

紹介者キャンペーンとして,新規顧客を紹介してくれた人に提供する謝礼は,景品類に該当しますか。

A.

自己の供給する商品・サービスの購入者を紹介してくれた人(紹介者)に対する謝礼は,『取引に付随』する提供に当たらず,景品類には該当しません。

ただし,紹介者を自己の供給する商品・サービスの購入者に限定する場合には,『取引に付随』する提供となり,景品類に該当し,景品規制の対象となります。」

というのがあります。

しかし、この回答は疑問です。

(ちなみに、定義告示運用基準4(7)も同じ内容です。)

まず、ただし書では、

「紹介者を自己の供給する商品・サービスの購入者に限定」

すると、景品類に該当するとしていますが、これは、定義告示運用基準(「景品類等の指定の告示の運用基準について」)4(2)ウの、

「小売業者又はサービス業者が、自己の店舗への入店者に対し経済上の利益を提供する場合・・・。」

というように、取引を条件としなくても、サービス業者(たとえばスポーツジム)が自己の店舗への入店者に対して提供するだけでも取引付随性ありとしていることと矛盾するように思います。

私は、景表法の取引付随性の解釈としては定義告示運用基準の方が正しいと思いますが(なので、紹介者キャンペーンは店舗への入店者に対して謝礼を払う場合にも取引付随性はある)、消費者庁がわざわざQ&Aで、

購入者に限定する場合」

に限って取引付随性ありとしているのですから、実務上は、購入者に限定しない限り(たとえば入店者に限定して謝礼を支払っても)、景品類には該当しないと扱って問題ないのでしょう。

(他のありうる解釈としては、運用基準のほうは主体が「小売業者又はサービス業者」に限定されているので、小売業者またはサービス業者が行う場合には運用基準がQ&Aに優先する、ということが考えられます。

しかし、紹介キャンペーンというのはスポーツジムなどのサービス提供業者が行うのが典型的ですから、そんな典型例を無視したQ&Aであるというのは深読みのし過ぎなのでしょう。)

また、そもそも論ですが、上記Q&Aは、次の20番のQ&Aと矛盾しているように思います。

つまり、20番では、

「Q20

商品の購入者の中からモニターを募集し,当該商品の使用感について報告をしてくれた人にもれなく提供する謝礼は,景品類に該当するのでしょうか。

A.

事業者が,自己の供給する商品・サービスの購入者の中から募集したモニターに対して提供する謝礼については,モニターとしての作業内容が相応の労力を要するなど,その仕事の報酬などと認められる程度のものであれば,景品類には該当しません。」

とされており、モニターに対する謝礼は、購入者に限定しても、仕事の報酬と認められる程度であれば景品類には該当しません。

とすれば、紹介キャンペーンも、紹介の報酬と認められる程度であれば景品類に該当しない、というのが一貫するのではないでしょうか(私は、景表法の解釈としてはこちらの方が正しいと思います)。

紹介だってそれなりの労力を要するでしょうし、むしろ、紹介に対する「報酬」と考える方が、実態に合うことが多いような気がします。

今回の話に限らず、景表法の解釈は、細かいことを見ていくとこのように矛盾に満ちた変なものが多いです。

最近の牛脂注入肉事件やメニュー表示ガイドラインなどをみていて本当にそう思うのですが、法律解釈の基本を知らない官僚の場当たり的な解釈に唯々諾々としたがうのではなく、筋を通すべきところは筋を通すべきです。

私も、あるべき景表法の解釈を目指して、微力ながら情報発信して行きたいと思います。

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コメント

単に「購入者に限定する場合には」としているだけなので(「購入者に限定する場合に限り」ではなく)、紹介者を入店者に限った場合について取引付随性を否定しているものではないと思います。

紹介者を入店者に限るといったキャンペーンはあまり一般的ではないので、単に「購入者に限定する場合」を例示として挙げたに過ぎないのではないでしょうか。

Q&Aの性質上、取引付随性が発生しうる場合を全て列挙すると分かりづらくなってしまい、Q&Aの本来の趣旨にそぐわないと判断されたのではないでしょうか。

貴重なご指摘ありがとうございます。

そのような読み方も論理的には可能かもしれませんが、Q&Aでは、まず原則論として、紹介者キャンペーンは景品類に該当しないと述べた上で、「ただし」ということで例外的に景品類に該当する場合を挙げているので、「ただし」以下がたんなる例示というふうには、ちょっと読めないのではないか、と考えています。

もし回答が「ただし」以下だけなら、ご指摘のような読み方もあり得るのかもしれませんが(それでも、「等」をつけるなり、例示列挙であるとわかるようにすべきだとは思いますが)、「本文」→「ただし」という論理では、たとえただし書に「~に限り」と書いていなくても、ただし書に書いていない場合には本文(原則論)に戻る、というのが通常の読み方なのではないかと思います。

今回の記事は、そのような論理的な読み方をしたうえで、Q&Aに対して、表題のとおり、「疑問」を呈してみた次第です。

景表法を知っている人はご指摘のような「例示である」という読み方ができるのかもしれませんが、Q&Aを読む人は、たぶんグーグルで「紹介キャンペーン、景表法」などと検索して、ヒットしたところだけを読むのでしょう。

そうすると、このQ&Aだけをみて例示だと読み取れるかというと、よほど深読みできる人か、景表法を知っている人でないと、無理ではないかと思うのです。(少なくとも、そういう読み方ができる人は国民の半分以下だと思います。)

たしかに取引付随性のある場合を全部列挙するのはたいへんかもしれませんが、紹介キャンペーンで紹介者が来店するということはよくあることでしょうから(これは私がたまたま経験したのがスポーツクラブのたぐいのキャンペーンだからかもしれませんが)、そのような大事なことを書いても(「購入者に限定する場合」を、「購入者や来店者に限定する場合」とすればよいでしょう)、分かりにくくなることはないのではないでしょうか。

(来店者を対象とすると取引付随性が生じるのは販売店やサービス店が提供する場合でメーカーが提供する場合は異なるので、そこまで書き込むと複雑ですが、メーカーが紹介キャンペーンをやるというのはあまりなさそうですから、そこは端折ってもよいと思います。)

ところで、少し深読みをすると、紹介キャンペーンで来店したというだけで取引付随性ありとすると、紹介するときには通常紹介者は店舗まで被紹介者に同行するでしょうから、取引付随性が広くなりすぎるような気もします。

そうすると、被紹介者に同行するために店舗に赴くことはあくまで紹介のためであって取引とは関係なく、取引付随性なしという結論の方が、結果的に妥当なのかもしれません。

消費者庁がそこまで考えて(だけれど以上のような論理をQ&Aで書くと分かりにくいので)、結論だけ「購入者」に限るという回答にしているのであれば、実はものすごくよく考えられたQ&Aなのかもしれません。

ともあれ、貴重なご指摘を頂いてたいへん議論が深まりました。これからもお気づきの点があればどうぞご指摘いただければと思います。

お返事ありがとうございます。

私も「購入者に限定する場合などには」と書けばそのような誤解も生じないだろうと思います。

もっとも、「入店者に限定する場合」を明確に排除していない以上、入店者を含めて取引付随性の認められるような紹介者に景品を提供する場合には景品類に該当するという趣旨として読むべきなのだろうとは思います。

「もっと明確に書くべきだ」というご指摘であれば分かりますが、このQ&Aの記載をもって運用基準と矛盾しているですとか、法律解釈の基本を知らない官僚の場当たり的な解釈とまで言ってしまうのは言い過ぎではないかと思います。先生が解釈されたような考え方で消費者庁が運用しているわけではないと思いますから。

確かに、先生がご指摘するように、景表法の解釈が場当たり的なものになっている場面もあるようには思います。クレジットカード取引に付随する景品提供の場合の取引価額の算定の仕方ですとか・・。もっとも、法律のあるべき解釈は承知していながらも、(様々な力学が働く中で)現実的な落としどころを探らないといけないという行政の苦悩もあるようには思います。

消費者庁に確認したところ、購入者に限定する場合だけでなく、入店者に限定する場合など、取引付随性の認められる紹介者に景品提供する場合には景品類に該当しうるとのことです。Q&Aの記載も、購入者に限定した場合に限って取引付随性が認められるとする趣旨ではないとのことです。

様々な意見があって良いと思いますが、辛辣な言葉を使われるのであれば、もう少しよく確認をされた方が良いのではないかと思います。

それが事実とすると、店頭で企画を告知するだけでも取引付随性ありとなり(緑本第3版p166)、およそ紹介キャンペーンで取引付随性なしとなる事例はなくなってしまいますね。

とすると、このQ&Aは、実はまったく逆のことを言っていることになりますね。

一段と、ひどい話だという思いを強くいたしました。

ちなみに、私はブログでは、「消費者庁がこういっていた」ということは書かないようにしています。

新聞や雑誌からの質問ではなく弁護士からの質問の場合には、答えるほうも、公開は想定していないでしょうし、消費者庁(や担当者)に迷惑がかかるといけない、というのが一番の理由ですが、あとは、担当者によって(あるいは聞き方によって?)答えがけっこう変わることがあるのでそもそもあまりあてにしていないのと、そのようなものを公開するといらぬ誤解と混乱をまねくことをおそれるからです。(ただ、今回は聞いていただいたということで議論が深まってよかったと思います。)

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