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2015年7月26日 (日)

村上他編著『条解独占禁止法』の連続して提供する役務の支払期日の起算点に関する説明

下請法運用基準では、

「・ 下請代金の額の支払は、下請事業者と協議の上、月単位で設定される締切対象期間の末日までに提供した役務に対して行われることがあらかじめ合意され、その旨が三条書面に明記されていること。

・ 3条書面において当該期間の下請代金の額が明記されていること、又は下請代金の具体的な金額を定めることとなる算定方式(役務の種類・量当たりの単価があらかじめ定められている場合に限る。)が明記されていること。

・ 下請事業者が連続して提供する役務が同種のものであること。」

という3つの要件が満たされている場合には、月単位で設定した締切対象期間の末日に連続した役務が提供されたと扱ってよい(それを支払期日の起算点にしてよい)と書いてあります。

これに対して、村上他編著『条解独占禁止法』p918では、2つめの要件について、

「②3条書面に当該機関の下請代金の額(算定方法も可)が明記されていること」

と説明されています。

しかし、これは端折りすぎではないでしょうか。

下請法運用指針によれば、下請法上認められている下請代金の額の算定方法は、

「下請代金の額の算定の根拠となる事項が確定すれば、具体的な金額が自動的に確定することとなるものでなければなら(ない)」

ものの、単価が定められている必要は必ずしもなく、たとえば、

「原材料費等が外的な要因により変動し、これに連動して下請代金の額が変動する場合」

でも、算定方法の記載が認められるわけです。

その他の例は、

「プログラム作成委託において、プログラム作成に従事した技術者の技術水準によってあらかじめ定められている時間単価及び実績作業時間に応じて下請代金の総額が支払われる場合」

で、最後がまさに、

「一定期間を定めた役務提供であって、当該期間における提供する役務の種類及び量に応じて下請代金の額が支払われる場合(ただし、提供する役務の種類及び量当たりの単価があらかじめ定められている場合に限る。)」

です。

しかも、2つめの例では単価は「時間単価」であるのに対して、3つめの例では単価は「種類及び量当たりの単価」で、わざわざ書き分けられています。

それなのに、たんに「算定方法も可」と書いたのでは、誤解が生じかねません。

とくに、下請法講習テキストには、労賃単価(役務の単位量当たりの単価ではありません)、原材料単価、為替相場、など様々なパラメーターが例示されており、許される算定方法の記載例がたくさん書いてあるのですから(平成26年11月版ではp25)、下請法を知っている人ほど、これらの多様な算定方法が認められるのだという誤解をしかねないと思います。

たしかに運用指針の例はあくまで例に過ぎないわけで、これ以外はだめだといっているわけではありませんし、そもそも指針に過ぎず法律ではないわけですから、これが絶対的な下請法解釈というわけでもないのですが、実務的には、一定の配慮をしなければならないのが現実です。

実務家向けのコンメンタールが、それを無視するのはいかがなものでしょうか。

もしたんに端折っているだけなら、せめて脚注なりで運用指針の該当箇所に言及するのが親切というものではないかと思います。

反対にもし万が一執筆者が、

「役務の種類・量当たりの単価があらかじめ定められている場合に限らず、あらゆる算定方法が認められるべきだ」

と考えて書いているなら、なおのこと、運用指針に言及したうえで、きちんと自説の根拠を示すべきだと思います。

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