« グループ単位の表示等管理担当者について | トップページ | EUの企業結合届出基準 »

2015年4月 1日 (水)

流通取引慣行ガイドラインの改正

流通取引慣行ガイドラインが改正されました。

とくにパブコメ回答について、いくつか気が付いたことを記しておきます。

パブコメ93番では、

「最高再販売価格維持行為についても本指針における再販売価格維持行為についての考え方に従って判断されます。」

と回答されています。

相変わらずの建前論ですが、私は、これは間違いだと思います。

最高再販売価格維持には二重限界化(double marginalization)を防ぐという、最低再販売価格維持にはない効果があるのは経済学の定説で、競争法上も両者の取り扱いは異なるべきです。

あるいは、同じ考え方に従った結果、最高再販売価格維持は違法になることはないという考え方がむしろ示されたのだ、ととらえるのが正しいと思います。

私が実際に相談を受けた事例でも、最高再販売価格の拘束は、メーカー希望小売価格にプレミアムを乗せて売りたがる販売店をメーカーが抑え込む、という事例で、典型的な、二重限界化防止の事案ばかりでした。

そういうこともあって、世の中で最高再販売価格が独禁法違反になる場合というのは、実際にはかなり考えにくいのではないかと考えています。

94番では、「正当な理由」は事業者の側に主張責任があるとされています。

「主張責任」という言い方にとどめ、「立証責任」という言葉を使っていないことからすると、主張する責任は事業者にあるけれど、正当な理由がないことの立証責任は公取が負うということなのかな?と考えられなくもないですが、同パブコメ回答で、立証責任が不明確との質問に対して、

「これは、本指針の記載から明らかであると考えます。」

と、そっけない回答であることからすると、そこまで深い意味はないのではないかという気がします。

109番では、「再販売価格の拘束以外のより競争阻害的でない他の方法・・・」という再販正当化の基準が、「これは従来の運用や考え方を変更するものではありません。」と明記されています。

厳しくなったように読めるのが、そうではないとされたのは喜ばしいことです。

127番で、「対面販売の義務付けによってインターネット販売を禁止することについて、どう考えるのか。(学者)」という質問に対し、

「化粧品メーカーについても自社の商品のインターネット販売を行っている現在の実態を踏まえ、それなりの合理的な理由に基づくものかどうかを判断することとなります。」

と回答されています。

自社でネット販売をしならがら販売業者のネット販売は禁止する、というのは「それなりの合理的な理由」がないとみられるおそれがある、ということのようです。

分からなくもないですが、せっかく最高裁判例に併せて「それなり」と入れたのに、かえって厳しくなってしまったような気もします。

でも、自社のネット販売なら契約書に書ききれないような細かいことまでコントロールできるけど、販売業者がネット販売をやるとコントロールできない、ということもあるはずで、自社がネット販売をやったら販売店への禁止は合理性なし、というのは行き過ぎだと思います(パブコメ回答も、そこまで厳しいことをいうのではないのでしょう)。

選択的流通については、なかなか興味深い回答が続きます。

まず132番で、

「小売業者の販売方法に関する制限が、

『当該商品の適切な販売のためのそれなりの合理的な理由』

の例示として

『商品の安全性の確保、品質の保持、商標の信用の維持等』を記載しているのに対し、

いわゆる『選択的流通』については、消費者の利益の観点からのそれなりの合理的な理由の例示として、

「当該商品の品質の保持、適切な使用の確保等』

としているものであり、両者は異なるものとして記載しています。」

と、観点が違うのだと回答されています。

でも、競争を確保することによる消費者の利益の保護が独禁法の目的なので、あまりこのような些末な区別をするのは意味がないことのように感じます。

133番では、

「メーカーが、いわゆる『選択的流通』を、単なる安売り業者の排除、値上げ交渉の材料とすることは、「それなりの合理的な理由」には該当しない」

と回答されています。

「安売り業者の排除」と「値上げ交渉の材料」というのは質問の文言をそのまま承けたものなのであまり深い意味はないのかもしれませんが、「値上げ交渉の材料としてメーカーに利用される」という質問の趣旨がそもそもわかりません。

おそらく、「お店の雰囲気も高級にするので、高く売れるはずだから、卸価格も高くする」とメーカーがいってくる、ということかと思いますが、それ自体は別に悪いこととは思われません。

現に137番では、

「一定の基準を流通業者に課すことによって、基準の設定によるコストが結果として商品に転嫁されること自体は問題となりません。」

と回答されているのも、そのような趣旨でしょう。

133番の回答のポイントは、「単なる」というところで、「これだけでは合理的な理由になりません」、あるいは、「合理的な理由としてカウントしません(加点事由にはなりません)」ということなんじゃないかと思います。

「安売り業者の排除」も、選択的流通のために結果的に安売り業者が排除されることは十分あり得ることで、結果的に排除されること自体が悪いわけではないけれど、排除だけを(「単なる」)目的にするのは、「それなりに合理的」とはいえない、ということなのでしょう。

ところが、これに関連して微妙な回答が138番で、

「御指摘のような場合〔当該基準が、商品を適切に販売することが可能な流通業者(例えばオンラインでのみ販売する業者)の市場へのアクセスを困難にし、それによって流通を既存の経路に制限し、消費者に不利益を与える場合〕は、消費者の利益の観点からのそれなりの合理的な理由に基づくものと認められないことから『通常、問題とはならない』場合に該当しません。」

と、ネット販売の禁止に対してかなりネガティブな回答がされています。

まあ、「通常」というのは、「特段の事情のない限り」という意味だということなので(71番)、ネット販売の禁止は「通常、問題とはならない」とまではいえなくても、ケースバイケースで判断する、ということなのでしょう。

ただし、138番でも、選択的流通の「それなりの合理的な理由」は「消費者の利益の観点」から判断するとされているので、安くて便利なネット販売の禁止は「消費者の利益の観点」から許されない、と公取委が匂わせているのだと考えられなくもありません。

ちょっとどう扱ったらいいのか困る回答に、134番での、

「いわゆる『選択的流通』においては、商品を取り扱う流通業者に関して設定された基準の目的に関係なくその違法性が判断されます。」

というのがあります。

個人的には、独禁法では行為者の主観的意図・目的で違法性を判断すべきでないと思いますので、この回答は歓迎すべきなのですが、公取委が「目的に関係なく」と明言すると、却って面喰ってしまいます。(基準の目的が安売り業者排除でもいいのか、と突っ込みたくなります。)

135番で、

「実店舗販売を行う流通業者とインターネット販売を行う流通業者の間で、取扱いを希望する流通業者に対する基準が完全に同一である必要はありません。」

と回答されているのも注目です。リアルの店舗とネット業者で異なる基準で構わない、ということでしょう。

最後に、「その他」の151番で、

「非価格競争より価格競争の方が重要だと考えているものではなく、いずれも重要であると考えます。」

と回答されていますが、これは、せいぜいリップサービス(あるいはたんなる建前)ですね。

むしろこの書きぶりでは、価格競争の制限と同じくらい非価格競争の制限も厳しくみますよ、というメッセージとも捉えられかねません。

公取委が非価格競争よりも価格競争を重視していることは、再販売価格拘束ばかりが摘発され、テリトリー制や排他条件付取引がほとんど摘発されないことからも、明らかだと思われます。

« グループ単位の表示等管理担当者について | トップページ | EUの企業結合届出基準 »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 流通取引慣行ガイドラインの改正:

« グループ単位の表示等管理担当者について | トップページ | EUの企業結合届出基準 »

フォト
無料ブログはココログ