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2015年4月

2015年4月27日 (月)

ガソリンカードの「一括加入方式」と優越的地位濫用

ちょっと古い事例(しかも、正式処分に至らず)ですが、

「新日本石油株式会社による発券店値付けカードに係る独占禁止法違反被疑事件の処理について」(平成20年10月3日)

「081003.pdf」をダウンロード

という事例があります。

問題の行為は2つあります。

1つめは、ガソリン元売がレンタカー会社にだけガソリンを不当に安く販売しているのが差別対価ではないか、という点ですが、こちらは簡単に違反なしとなっています。

興味深いのは2つめの優越的地位の濫用の部分です。

ガソリン給油カードを発券する発券店(ガソリンスタンド、ガソリン卸、レンタカー会社など)による「発券店値付けカード」というものが問題になっています。

「発券店値付けカード」というのは、その名のとおり、そのカードを持っているユーザーは全国どこでも発券店が決めた統一価格で給油ができる、というカードです。

この事例ではレンタカーですが、最近ではカーシェアで同じ構図がありそうです。

では「発券店値付けカード」の何が問題かというと、公取委のプレスリリースによると、

「この〔新日本石油のカードにより決済を行う〕カードシステムは、発券店値付けカードのほかに、給油店が付した価格で決済するカードなども対象としており、事業者〔ガソリンスタンドなど〕は自己の給油所におけるガソリンの販売に当たりカードを利用できるようにするためには、発券店値付けカードを含むすべてのカードを一括して取り扱うこととしてカードシステムに加入することとなっていた(以下「一括加入方式」という。)。」

ということだったようです。

つまり、スタンドが自前のカードを発行したい場合には、新日本石油のシステム上、「発券店値付けカード」も取り扱うことにしないといけない、ということが、優越的地位の濫用ではないかが問題になったものです。

そこでどうなったかというと、

「審査の過程において、当委員会が新日本石油に当該カードシステムの問題点を指摘したところ、新日本石油から、カードシステムについて一括加入方式を変更し、今後、給油所を運営する事業者が発券店値付けカードを取り扱うか否かを任意に選択できるようにする旨の申し出が当委員会にあった。

これによれば、今後、給油所を運営する事業者はカードシステムへの加入に当たり発券店値付けカードを取り扱うか否かについて任意に判断でき、選択の幅が広がることとなると評価できる。」

ということで、

「〔上記〕を踏まえれば、現時点においては引き続き審査を行う必要性は認められないと判断し、本件審査を終了することとした。」

とされています。

このように、1つのシステムに加入させる場合に、セットで余分な義務を負わせるというのはビジネスの世界によくありそうですが(不要品強要型の抱き合わせ類似の優越的地位の濫用)、そういうのは独禁法違反の可能性がある、ということです。

こういう、正式事件に至らない事例というのは、公取委の考え方がダイレクトに出ますし、正式処分と行政指導の境界も見えて、大変興味深いものがあります。

(この手の事例は公取委のホームページで

"に対する独占禁止法違反被疑事件の処理について"

でキーワード検索をかけるといくつかヒットしますので、ご興味のある方は試してみてください。)

この事例で興味深いのは、平成20年と、優越的地位の濫用に課徴金が導入された平成21年改正(平成22年1月施行)よりも前の事例である、ということです。

課徴金が導入される前だったからこそ、このような柔軟な対応ができたのかもしれません。

というのは、課徴金を課すのは公取委の義務なので、いったん調査を開始してしまうと、違反者が「今後」システムを変更したからといって、変更前の行為には課徴金を課さざるを得ないからです。

そうすると、変更前のシステムが本当に優越的地位の濫用に当たるのかを公取委は手間暇かけて調査しないといけませんし、企業側も、なかなか後には引けないかもしれません。

もっと恐れられるのは、この事例のような微妙な事件で公取委の側に、

「課徴金は面倒だから調査するのやめとこ」

とか、

「調査の結果処分しないことになっても、公表するのはやめとこ」

とか、今回のようなケースで、

「差別対価だけ事件化して、優越的地位の濫用はなかったことにしよう」

というインセンティブが働きはしないか?ということです。

公表が減れば、こういう限界事例について議論が深まらず、国民の側からみれば予測可能性が損なわれる、ということです。

公取委には、課徴金の手間暇を惜しまない、積極果敢でかつ柔軟な執行を望みたいと思います。

2015年4月21日 (火)

【ご紹介】JARO『広告法務Q&A』

少し以前に、日本広告審査機構(JARO)さんから、

『広告法務Q&A』

という本をいただきました。

Img_0661

JAROに寄せられた質問を中心とした具体例が満載で、とても参考になります。

法律家や役人がこの手の本を書くと、どうしても措置命令が出た正式事件が中心で、無味乾燥なものになりがちですが、この本は、その点、とても生々しいです。

広告審査の実態がわかる、大変貴重な本だと思います。

景表法以外にも、健康増進法や薬機法(旧薬事法)にも、もちろん目配りしています。

「法務」とタイトルに入っていますが、法務部の方のみならず、広告にかかわるすべての方々必携の書(←こういう紋切り型の表現は好きではないですが、今回は心底そう思います)だと思います。

この本に、消費者庁の方や弁護士の書いた理論的な本も併せて参照すれば万全でしょう。

2015年4月20日 (月)

【ご紹介】赤本第2版が出ました

独禁法実務のバイブル、

菅久修一他編著『独占禁止法』(商事法務)

の第2版が出ました。

主に平成26年改正に対応するための改訂だそうです。

私も1部ご寄贈いただきました。ありがとうございます。

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初版の紹介記事はこちらをご覧ください。

ところでp362に、私が以前『公正取引』で連載していた域外適用に関する論文を、参考文献として挙げていただきました(「米国反トラスト法実務講座第11回 域外適用」)。

ちなみにこの論文の元ネタの記事は、こちらです。

著者の方々には学術論文でもない連載にまで目を通していただいて、とても恐縮しました。

シャーマン法の域外適用に関する邦語の論文は数多いですが、学者の先生方による論考が多いためか、条文の文言を無視した観念論が多く、とても実務の用には耐えなかったので、そのような状況に一石を投じたいと思い、連載の中でもかなり力を入れて書いた論文でした。

ですので、今回、このような形で触れていただいたことは、率直にうれしいです。

これをきっかけに、シャーマン法の域外適用(FTAIA)について、まともな解釈論が少しでも広まればと思います。

2015年4月15日 (水)

商社の口銭率と消費税転嫁法

メーカーと商社が、商社の受け取る口銭額を、顧客への販売価格の3%と合意していたとして、消費税が5%から8%に引き上げられた際には、この3%の口銭率も、3%相当分、引き上げないといけないのでしょうか。

(厳密には、増税前の口銭率3%の内訳は、

本体価格: 3%×100÷105=2.85714286%、

消費税分: 3%×5÷105=0.14285714285%、

なので、増税後の口銭率を、

本体価格×1.08=3.08571428571%

に引き上げないといけないのか、というのがここでの問題です。)

そんなことはないと思います。

理由を一言でいえば、顧客への販売価格が増税分値上げされていれば、口銭率据置きでも、口銭額は3%分増額することになるはずだからです。

計算の基礎になる金額(=顧客への販売価格)が値上がりすることで口銭も増額されることが予定されている以上、算定率のほうを上げる必要はない(上げなくても転嫁できるし、そういうかたちで転嫁されるべき)、というようにいってもよいでしょう。

念のため条文を確認しましょう。

転嫁法3条1号後段(買いたたき)では、

「・・・商品若しくは役務の対価の額を

当該商品若しくは役務と同種若しくは類似の商品若しくは役務に対し通常支払われる対価

に比し

低く定めることにより、特定供給事業者による消費税の転嫁を拒むこと」

が、禁止されています。

ここで、

「通常支払われる対価

の意味について、公取のガイドラインでは、

「『同種若しくは類似の商品若しくは役務に対し通常支払われる対価』とは,

通常は

特定事業者〔=買手〕と特定供給事業者〔=売手〕との間で取引している商品又は役務の

消費税率引上げ前の対価に消費税率引上げ分を上乗せした

をいう。」

と説明されています。

いずれにせよ、問題にされているのは、「対価」の額そのものであり、算定率は関係ありません。

なので、算定率が据置きであっても、結果的に、「対価」の額が3%分上がっていれば、問題ない、ということであろうと考えます。

ただ、以上の議論は、顧客への販売価格が3%上がっていることを前提にしているので、顧客への販売価格が据え置かれた場合には口銭も据え置かれることになり、それでも大丈夫か?というのはやや問題です。

この問題については、以下のように考えられるでしょう。

商社が顧客と価格を交渉して結果的に据置きになった場合には、商社のいわば自己責任なので、それをメーカーの転嫁拒否行為というのは、ちょっとメーカーに酷だと思います。

条文の解釈としては、メーカー(特定事業者)が「低く定め」たわけではない(商社が自分でやったことだ、あるいは、商社がうまくやってれば転嫁できたはずなのでメーカーが「定め」たわけではない)、ということで説明できそうです。

いずれにせよ、口銭率を上げろというのは、商社がうまく値上げ交渉に成功したら二重取りになってしまいますし、値上げ交渉がうまくいったら口銭率は上げなくてもいいけれどうまくいかなかったら口銭率は上げないといけない、というようなややこしいことを言い出すと、実務は回っていかない(管理不能)と思います。

ちょっと悩ましいのは、メーカーが指値で販売している場合です。

この場合には、メーカー自身が価格を決めている以上、必然的に、具体的な口銭額もメーカーが決めており、「低く定め」ていないとはいいにくいような気がします。

しかし、私はこの場合も、口銭率は上げる必要はないのではないかと考えます。

というのは、メーカーが指値を指示している場合(あるいはメーカーが価格を決定している場合)と、商社が価格交渉をしている場合というのは、実は区別はあいまいで、実際には商社がメーカーと相談しつつ、事実上の承認を得ながら決めていることが多いと思われるからです。

また、前述の理屈の言い換えですが、当事者の期待としても、消費税が上がったからといって口銭率まで上がることは通常期待していないのではないか(口銭額を販売価格を基準に定めている以上、販売価格が上がらなかったら口銭額が上がらなくても仕方ないと当事者は考えているのではないか)と思います。

また、たとえば顧客に高く売った(うまく交渉した)という役務と、安く売った役務が、果たして「当該商品若しくは役務と同種若しくは類似の商品若しくは役務」であるといえるのか、とという切り口もあると思います。

つまり、少なくとも商社が価格交渉をするケースでは、「高く売る」ということも、役務の「品質」の1つなのではないでしょうか。

1万円で売れても10万円で売れても、物理的な作業内容は同じだ、というので「当該商品若しくは役務と同種若しくは類似の商品若しくは役務」であるというのは、さすがに無理でしょう。

ただこの議論は、メーカーが指値を指示している場合には使えない(価格交渉をうまくやることは商社の役務の内容ではない)、というのが、ちょっと悩ましいところです。

もっと使い勝手のよい理屈としては、ガイドラインも、

「通常は」

と、断っているので、価格の定め方など諸々の事情で、厳密に3%上がってなくてもよい場合があるはずで、商社の口銭はまさにそのような場合だ、ということも可能かもしれません。

なお以上の例では、顧客への販売価格に一定率を乗じるという口銭額の定め方を想定しましたが、口銭額が商社の売値と買値の差額で決まる、というのでも、考え方は基本的に同じだと思います。

ただ、売値と買値の差額で決まる場合には、そもそも、口銭「率」を上げるべきか?という視点が見えにくいので、問題が顕在化しないだけでしょう。

そして、そう考えると、たまたま「率」で定めていたからといって、「率」を上げないと転嫁拒否だと言い出すのは、かなり筋の悪い議論であると、一層思われてきます。

なお今回は商社の口銭の例で説明しましたが、同じ理屈は、不動産仲介業者の手数料とか、いろいろなケースに応用が利くのではないかと思います。

2015年4月 3日 (金)

EUの企業結合届出基準

EUの企業結合の届出基準をまとめておきます。

届出が必要な場合(「共同体規模」(Community dimension)を満たす場合)は、以下の通りです(企業結合規則1条2項)。

①〔企業結合に参加する〕すべての関係企業(undertakings concerned)〔グループ単位。以下同じ〕の全世界総(aggregate)売上を合算した(combined)額が50億ユーロ超であり、

((a) the combined aggregate worldwide turnover of all the undertakings concerned is more than EUR 5000 million;)

かつ、

②関係企業の少なくとも2つの企業の域内における総売上が、それぞれ2億5000万ユーロ超であること。

((b) the aggregate Community-wide turnover of each of at least two of the undertakings concerned is more than EUR 250 million,)

ただし、関係企業のいずれもが、その共同体内売上合計額の3分の2超を、同一の1国内で上げている場合を除く

(unless each of the undertakings concerned achieves more than two-thirds of its aggregate Community-wide turnover within one and the same Member State.)

さらに、以上の要件を満たさない場合でも、以下の要件を満たす場合には、届出が必要です(企業結合規則1条3項。つまり、届出基準が2段構えになっています)。

すべての関係企業の全世界の総売上を合算した額が、25億ユーロ超であり、

((a) the combined aggregate worldwide turnover of all the undertakings concerned is more than EUR 2500 million;)

かつ、

②少なくとも〔任意の〕つの加盟国のそれぞれにおいて、すべての関係企業の総売上を合算した(combined)額が、1億ユーロ超であり、

((b) in each of at least three Member States, the combined aggregate turnover of all the undertakings concerned is more than EUR 100 million;)

かつ、

③②の少なくとも当該カ国のそれぞれにおいて、関係企業の少なくとも〔任意の〕つのそれぞれ(each of at least two)の総売上が2500万ユーロ超であり、

((c) in each of at least three Member States included for the purpose of point (b), the aggregate turnover of each of at least two of the undertakings concerned is more than EUR 25 million; )

かつ、

④関係企業のうち少なくとも〔任意の〕つの共同体内における総売上が、それぞれ1億ユーロ超であること。

((d) the aggregate Community-wide turnover of each of at least two of the undertakings concerned is more than EUR 100 million,)

ただし、関係企業のいずれもが、その域内売上合計額の3分の2超を、同一の1国内で上げている場合を除く

(unless each of the undertakings concerned achieves more than two-thirds of its aggregate Community-wide turnover within one and the same Member State)

原文を読むと、

combined(合算)というのは、複数の当事企業(グループ)の売上を合算する場合に用いられており、

aggregate(総)というのは、同一当事企業(グループ)の総売上の意味で用いられている

ということが分かります。

以上を、枝葉の部分を端折って、しかも通常の2者間の結合を前提にざっくり要約すれば、

① 2当事者の世界売上合算額が、まとめて50億ユーロ超、

かつ、

② 2当事者の域内売上が、2社いずれも、2億5000万ユーロ超、

または、

① 2当事者の世界売上合計額が、まとめて25億ユーロ超、

かつ、

〔②、③省略〕

④ 2当事者の域内売上が、2社いずれも、1億ユーロ超、

の場合に、基本的に届出を要することになります。

2015年4月 1日 (水)

流通取引慣行ガイドラインの改正

流通取引慣行ガイドラインが改正されました。

とくにパブコメ回答について、いくつか気が付いたことを記しておきます。

パブコメ93番では、

「最高再販売価格維持行為についても本指針における再販売価格維持行為についての考え方に従って判断されます。」

と回答されています。

相変わらずの建前論ですが、私は、これは間違いだと思います。

最高再販売価格維持には二重限界化(double marginalization)を防ぐという、最低再販売価格維持にはない効果があるのは経済学の定説で、競争法上も両者の取り扱いは異なるべきです。

あるいは、同じ考え方に従った結果、最高再販売価格維持は違法になることはないという考え方がむしろ示されたのだ、ととらえるのが正しいと思います。

私が実際に相談を受けた事例でも、最高再販売価格の拘束は、メーカー希望小売価格にプレミアムを乗せて売りたがる販売店をメーカーが抑え込む、という事例で、典型的な、二重限界化防止の事案ばかりでした。

そういうこともあって、世の中で最高再販売価格が独禁法違反になる場合というのは、実際にはかなり考えにくいのではないかと考えています。

94番では、「正当な理由」は事業者の側に主張責任があるとされています。

「主張責任」という言い方にとどめ、「立証責任」という言葉を使っていないことからすると、主張する責任は事業者にあるけれど、正当な理由がないことの立証責任は公取が負うということなのかな?と考えられなくもないですが、同パブコメ回答で、立証責任が不明確との質問に対して、

「これは、本指針の記載から明らかであると考えます。」

と、そっけない回答であることからすると、そこまで深い意味はないのではないかという気がします。

109番では、「再販売価格の拘束以外のより競争阻害的でない他の方法・・・」という再販正当化の基準が、「これは従来の運用や考え方を変更するものではありません。」と明記されています。

厳しくなったように読めるのが、そうではないとされたのは喜ばしいことです。

127番で、「対面販売の義務付けによってインターネット販売を禁止することについて、どう考えるのか。(学者)」という質問に対し、

「化粧品メーカーについても自社の商品のインターネット販売を行っている現在の実態を踏まえ、それなりの合理的な理由に基づくものかどうかを判断することとなります。」

と回答されています。

自社でネット販売をしならがら販売業者のネット販売は禁止する、というのは「それなりの合理的な理由」がないとみられるおそれがある、ということのようです。

分からなくもないですが、せっかく最高裁判例に併せて「それなり」と入れたのに、かえって厳しくなってしまったような気もします。

でも、自社のネット販売なら契約書に書ききれないような細かいことまでコントロールできるけど、販売業者がネット販売をやるとコントロールできない、ということもあるはずで、自社がネット販売をやったら販売店への禁止は合理性なし、というのは行き過ぎだと思います(パブコメ回答も、そこまで厳しいことをいうのではないのでしょう)。

選択的流通については、なかなか興味深い回答が続きます。

まず132番で、

「小売業者の販売方法に関する制限が、

『当該商品の適切な販売のためのそれなりの合理的な理由』

の例示として

『商品の安全性の確保、品質の保持、商標の信用の維持等』を記載しているのに対し、

いわゆる『選択的流通』については、消費者の利益の観点からのそれなりの合理的な理由の例示として、

「当該商品の品質の保持、適切な使用の確保等』

としているものであり、両者は異なるものとして記載しています。」

と、観点が違うのだと回答されています。

でも、競争を確保することによる消費者の利益の保護が独禁法の目的なので、あまりこのような些末な区別をするのは意味がないことのように感じます。

133番では、

「メーカーが、いわゆる『選択的流通』を、単なる安売り業者の排除、値上げ交渉の材料とすることは、「それなりの合理的な理由」には該当しない」

と回答されています。

「安売り業者の排除」と「値上げ交渉の材料」というのは質問の文言をそのまま承けたものなのであまり深い意味はないのかもしれませんが、「値上げ交渉の材料としてメーカーに利用される」という質問の趣旨がそもそもわかりません。

おそらく、「お店の雰囲気も高級にするので、高く売れるはずだから、卸価格も高くする」とメーカーがいってくる、ということかと思いますが、それ自体は別に悪いこととは思われません。

現に137番では、

「一定の基準を流通業者に課すことによって、基準の設定によるコストが結果として商品に転嫁されること自体は問題となりません。」

と回答されているのも、そのような趣旨でしょう。

133番の回答のポイントは、「単なる」というところで、「これだけでは合理的な理由になりません」、あるいは、「合理的な理由としてカウントしません(加点事由にはなりません)」ということなんじゃないかと思います。

「安売り業者の排除」も、選択的流通のために結果的に安売り業者が排除されることは十分あり得ることで、結果的に排除されること自体が悪いわけではないけれど、排除だけを(「単なる」)目的にするのは、「それなりに合理的」とはいえない、ということなのでしょう。

ところが、これに関連して微妙な回答が138番で、

「御指摘のような場合〔当該基準が、商品を適切に販売することが可能な流通業者(例えばオンラインでのみ販売する業者)の市場へのアクセスを困難にし、それによって流通を既存の経路に制限し、消費者に不利益を与える場合〕は、消費者の利益の観点からのそれなりの合理的な理由に基づくものと認められないことから『通常、問題とはならない』場合に該当しません。」

と、ネット販売の禁止に対してかなりネガティブな回答がされています。

まあ、「通常」というのは、「特段の事情のない限り」という意味だということなので(71番)、ネット販売の禁止は「通常、問題とはならない」とまではいえなくても、ケースバイケースで判断する、ということなのでしょう。

ただし、138番でも、選択的流通の「それなりの合理的な理由」は「消費者の利益の観点」から判断するとされているので、安くて便利なネット販売の禁止は「消費者の利益の観点」から許されない、と公取委が匂わせているのだと考えられなくもありません。

ちょっとどう扱ったらいいのか困る回答に、134番での、

「いわゆる『選択的流通』においては、商品を取り扱う流通業者に関して設定された基準の目的に関係なくその違法性が判断されます。」

というのがあります。

個人的には、独禁法では行為者の主観的意図・目的で違法性を判断すべきでないと思いますので、この回答は歓迎すべきなのですが、公取委が「目的に関係なく」と明言すると、却って面喰ってしまいます。(基準の目的が安売り業者排除でもいいのか、と突っ込みたくなります。)

135番で、

「実店舗販売を行う流通業者とインターネット販売を行う流通業者の間で、取扱いを希望する流通業者に対する基準が完全に同一である必要はありません。」

と回答されているのも注目です。リアルの店舗とネット業者で異なる基準で構わない、ということでしょう。

最後に、「その他」の151番で、

「非価格競争より価格競争の方が重要だと考えているものではなく、いずれも重要であると考えます。」

と回答されていますが、これは、せいぜいリップサービス(あるいはたんなる建前)ですね。

むしろこの書きぶりでは、価格競争の制限と同じくらい非価格競争の制限も厳しくみますよ、というメッセージとも捉えられかねません。

公取委が非価格競争よりも価格競争を重視していることは、再販売価格拘束ばかりが摘発され、テリトリー制や排他条件付取引がほとんど摘発されないことからも、明らかだと思われます。

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