« 2015年2月 | トップページ | 2015年4月 »

2015年3月

2015年3月30日 (月)

グループ単位の表示等管理担当者について

景表法の2014年6月改正(12月施行済み)で、すべての事業者が、消費者向けの表示を管理するための措置を講じることが義務付けられました。

その1つとして、消費者庁の

事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針

では、表示を管理する担当者を置け、といっています。

そこで、グループ会社がある会社の場合、グループ各社に担当者を置かないとうけないのか、親会社だけに置くことで足りるのか、ということが問題になります。

この問題に関して、ビジネスロージャーナル2015年2月号に掲載されている、

池田毅・松田知丈「いま必要とされる景表法コンプライアンス実現のカギ」

という論文の「表示等管理担当者の選任」のところで、

「なお、管理担当者の選任を含め、景表法コンプライアンス体制の整備につき、個々の法人単位で行わなければならないのか、企業グループ単位で管理担当者を選任すること等で足りるのかについて、指針は明確な記載をしていない。

改正法の趣旨は、不当表示等を防止するための適正な仕組みを機能させるということに尽きるので、企業グループ単位でしか管理担当者を置いていなかったからといって、改正法違反となるとは考えられない。」

と述べられています。

しかし、景表法では「事業者」は法人単位で考えることが定説であることからすると(片桐『景品表示法』37頁で、景表法の「事業者」は独禁法の事業者と同じ意味であると解説されていることを参照)、「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」の「事業者」も同様に考えるのが自然(少なくとも、それがお役所的発想というもの)であり、この解説にはちょっと難があります。

(なので、余談ですが、鉄道グループの子会社がホテルを運営して、その中のレストランの運営をさらに外部に委託していたりすると、措置命令の対象者について消費者庁は非常に気を遣うことになります。)

現に、指針のパブコメ回答6ページでは、

「「表示等をする事業者」は法人単位で確定されるのか。例えば、親会社(持株会社を含む。)は自ら表示等を行っていない限り対象外であるのか。(団体)」

という質問に対して、

「事業者は個人・法人単位で考え、親会社であっても自ら商品又は役務を供給せず、表示等を行っていない場合には、必要な措置を講じることが求められるものではありません。」

と、指針は法人単位で考えていることが明確にされています。

しかし、管理措置は各事業者の実情に合わせたものであるべきであり、管理担当者の設置が明確に法律上の義務とまではいえない以上(私は、ほとんど義務に近いのではないかと考えていますが)、グループ会社で管理担当者をどのように置くかは、悩ましい問題です。

もちろん、各会社で管理担当者を置けば、問題ありません。

では、親会社だけで管理担当者を置いて、子会社の表示にも目を配らせる、ということは許されるのでしょうか。(上記論文は、当然に許されるという見解です。)

私は、子会社も表示をする以上は、子会社に担当者がいないと、やはりまずいのではないかと思います。

まず、前述のように、「指針」が法人単位という考え方を採っている、というのが1つの理由です。

より実質的な理由として、親子会社とはいえ、親会社の従業員が子会社の表示にまで目を配るというのは、事実上も法律上も、難しいのではないか、ということがあります。

オフィスが離れているから、とかいう物理的な理由もさることながら、より法律的な理由として、親会社の従業員が、「指針」で要求されているような管理監督権限を子会社に対して有する、というのは通常考えられないし、もしそのような権限を与えるのであれば、親子会社間でそのような契約書を締結しておく必要があると思います。

管理担当者が自社の社内の表示について内部の取決めだけで管理監督できるようになるのは、まさに同じ法人内部だからであるわけで、法人の枠を飛び越えて、内部の取決め(親会社の社内ルール)や、抽象的な支配関係だけで、そのような権限を付与するのは、法的に無理な気がします。

そして、仮に親子会社間でそのような契約書を締結するとしても、やっぱり、子会社自身が表示を行っているのに、当の子会社の中にだれも管理担当者がいないというのは、妥当性の問題として問題ではないでしょうか。

もちろん、親子会社両方でそれぞれ自社の管理担当者を選任して、相互に情報交換するとかは、あってしかるべきでしょう。

なお、以上は、子会社が自ら表示をする場合が前提です(パブコメ回答も、親子が逆ですが、その前提です)。

なので、たとえば子会社が親会社の事実上の工場のようなものであって、子会社自体が消費者向けの表示をすることはない(表示は販売を担当する親会社がする)、というのであれば、子会社はそもそも管理措置を採る必要がないのは当然です。

そして、当該子会社が製造した商品を親会社が自己の商品として販売するにあたり表示をする場合には、親会社が管理措置を採る必要がある(ひいては、表示等管理担当者を置く必要がある)というのも、また当然です。

2015年3月25日 (水)

自己使用の金型の製造委託

親事業者が自ら使用する金型の製造委託は、下請法の対象になるでしょうか。

自己使用物については、親事業者が自ら業として社内で製造する場合に限り、製造委託の類型4に該当するので、これに引きずられて、もし、

「自己使用の金型は、親事業者が自ら業として社内で金型を製造している場合に限り、下請法の適用がある。」

という解説があったら、それは間違いです。(そんなこといったら、金型の製造委託のかなりの部分が下請法の対象外になってしまうでしょう。)

では、条文を確認してみましょう。

下請法2条1項では、

「この法律で『製造委託』とは、

事業者〔=親事業者〕が業として行う販売若しくは業として請け負う製造(加工を含む。以下同じ。)の目的物たる物品〔=販売等目的の物品〕若しくは

その〔=販売等目的の物品の〕半製品、〔販売等目的の物品の〕部品、〔販売等目的の物品の〕附属品若しくは〔販売等目的の物品の〕原材料若しくはこれら〔=販売等目的の物品+販売等目的の物品の半製品+販売等目的の物品の部品+販売等目的の物品の附属品+販売等目的の物品の原材料〕の製造に用いる金型

又は

業として行う物品の修理に必要な部品若しくは原材料

の製造を他の事業者〔=下請事業者〕に委託すること

及び

事業者〔=親事業者〕がその〔=親事業者の〕使用し又は消費する物品〔=自己使用目的の物品〕の製造を業として行う場合にその物品〔=自己使用目的の物品〕若しくはその〔=自己使用目的の物品の〕半製品、〔自己使用目的の物品の〕部品、〔自己使用目的の物品の〕附属品若しくは〔自己使用目的の物品の〕原材料又はこれら〔=自己使用目的の物品+自己使用目的の物品の半製品+自己使用目的の物品の部品+自己使用目的の物品の附属品+自己使用目的の物品の原材料〕の製造に用いる金型

の製造を他の事業者〔=下請事業者〕に委託することをいう。 」

と定義されています。

つまり、親事業者が販売等する物品(半製品や部品等を含む)の製造に用いる金型であれば、下請法の適用があります。(類型1または2に該当します。)

親事業者自身が金型を製造しているかどうかは関係ありません。

さらに、類型4(「及び」以下)には注意が必要で、ここでは、親事業者が自己使用目的で業として製造している物品や、その半製品、部品等の製造に用いる金型に限り、下請法の適用があります。

なので、親事業者が自己使用目的の物品や、その半製品、部品等の製造に用いる金型を下請事業者に製造させたとしても、当該自己使用目的の物品やその半製品、部品等を親事業者自身が製造するのではなく、当該物品等の製造行為は第三者に委託する場合には、「業として」の要件を満たさず、当該金型の製造には下請法の適用がないことになります。

たとえば、親事業者の自己使用目的の物品を製造するための金型を製造させた下請事業者と同じ下請事業者に、親事業者の自己使用目的の物品自体の製造もさせた場合には、親事業者が当該物品を「業として」製造していないので、金型の製造委託には下請法は適用されません。(当たり前ですね。)

以上を整理すると、

①親事業者の業としての販売・請負目的の物品等を製造するための金型の製造委託には、常に下請法の適用がある(類型1および2)

②親事業者の自己使用目的の物品等を製造するための金型の製造委託には、親事業者自身が当該物品(ここは「等」は付かない)を製造している場合に限り、下請法の適用がある(類型4)

ということになります。

なお、類型3には金型はないので、業としての物品修理に必要な部品・原材料の製造のための金型を製造させても、下請法の対象にはなりません。

あくまで親事業者自身が物品の「製造」を業として行っている点に優越的な地位の根拠を求め、「修理」をしているだけでは一概に優越的な地位にあるとはいえない、という価値判断の表れと思われます。

そこで最初の、

「親事業者が自ら使用する金型の製造委託は、下請法の対象になるでしょうか。」

という質問に戻ると、親事業者が当該金型を自ら使用するということは、とりもなおさず、親事業者自身が(おそらくは業として)製造していることにほかなりませんから、金型を用いて作った物品が、

他者へ(通常は、業として)販売されるものであっても(類型1または2)、

親事業者の自己使用目的であっても(類型4)、

下請法の適用がある、ということになります。

このように、親事業者自身が金型を作っているかは関係ありません。

逆に、親事業者が自ら使用しない金型(金型を用いた製造行為は第三者にさせる場合)の製造委託には、下請法の適用はない、というと不正確です。

というのは、自己使用物品等(類型4)の場合はそれでよいですが、類型1または2の場合は、親事業者が業として「販売」(類型1)または「請負」(類型2。必ずしも親事業者自身が製造する場合に限りません)していればいいので、親事業者自身が「製造」している必要はないからです。

なので、親事業者が自ら使用しない金型の製造委託は、その金型を用いて作った物品の販売、請負を親事業者が業として行っていれば(あるいは、当該金型で作った部品等を用いた物品を親事業者が業として販売・請負していれば)、下請法の対象になります。

類型4でさらに細かいことをいえば、親事業者自身は自己使用物品自体を業として社内で製造していればよい(下請法の適用がある)のであって、金型の使用自体を親事業者自身が行う必要はありません。

たとえば、自己使用物品の部品の金型の製造を委託して、当該部品は第三者に作らせ(=当該第三者に金型を使用させ)、親事業者は当該部品を購入して社内で組み立てる(=製造する)という場合、親事業者が自己使用物品を業として製造していることは明らかですから、類型4に該当することになります。

2015年3月23日 (月)

景表法平成26年6月改正の施行日

景表法の平成26年6月改正の施行日をまとめておきます。(基本的には、平成26年12月1日に既に施行されています。附則1条本文)

「不当景品類及び不当表示防止法等の一部を改正する等の法律(平成二十六年六月十三日法律第七十一号)附則

(施行期日)

第一条

この法律〔=6月改正〕は、公布の日〔=平成26年6月13日〕から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日〔=平成26年12月1日・政令第242号〕から施行する。

ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。

 

次条〔=罰則に関する経過措置〕及び附則第五条〔=政令への委任〕の規定 

公布の日〔=平成26年6月13日〕

二 

第一条〔=不当景品類及び不当表示防止法の一部改正〕中

不当景品類及び不当表示防止法第十条〔=適格消費者団体の差止請求権〕の改正規定

及び

同法〔=景表法〕本則〔の最後〕に一条を加える改正規定〔=情報を目的外利用した適格消費者団体の過料・21条〕、

第二条〔=消費者安全法の一部改正〕の規定(次号に掲げる改正規定を除く。)

並びに

附則第三条〔=消費者安全法の一部改正に伴う経過措置〕

及び

第七条から第十一条まで〔7条=地方自治法の一部改正、8条=登録免許税法の一部改正、9条=登録免許税法の一部改正に伴う調整規定、10条=消費者契約法の一部改正、11条=消費者教育の推進に関する法律の一部改正〕の規定 

公布の日〔=平成26年6月13日〕から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日

 

第二条〔=消費者安全法の一部改正〕中消費者安全法第十条の次に三条〔=10条の2・消費生活センターの組織及び運営等、10条の3・消費生活相談員の要件等、10条の4・指定消費生活相談員〕を加える改正規定(第十条の四〔=指定消費生活相談員〕に係る部分に限る。) 

公布の日〔=平成26年6月13日〕から起算して五年を超えない範囲内において政令で定める日」

2015年3月18日 (水)

転嫁阻害表示の例

先日、関東の某所で、こんな看板を見つけました。

Img_0654

「店内全品!! 消費税分当店がご負担致します!!」

と書いてあります。

今まで、転嫁阻害表示の実物を目にしたことがなかったので、「こんなことやるお店が、本当にあるんだ」と、妙に新鮮でした。

でもこれは、消費税転嫁法8条で禁止されています。

8条では、(事業者の遵守事項)として、

「第八条 事業者は、平成二十六年四月一日以後における自己の供給する商品又は役務の取引について、次に掲げる表示をしてはならない。

一 取引の相手方に消費税を転嫁していない旨の表示

二 取引の相手方が負担すべき消費税に相当する額の全部又は一部を対価の額から減ずる旨の表示であって消費税との関連を明示しているもの

三 消費税に関連して取引の相手方に経済上の利益を提供する旨の表示であって前号に掲げる表示に準ずるものとして内閣府令で定めるもの」

と規定されています。

転嫁法に関する消費者庁のガイドラインにも、

「消費税は当店が負担しています。」

というのが、違反例として挙げられています。

なぜこういう表示が禁止されるのかというと、

①消費税制度に対する誤解を招く(いくら値引きしても、対価の108分の8は必ず消費税)

②消費税還元セールをやると、納入業者にしわ寄せが行きがち

③大手が消費税還元セールをやると、周辺の中小小売店も追随せざるを得なくなる、

ということが言われています。

違反をすると、消費者庁から勧告を受けるかもしれません。

やっているお店は、おそらく転嫁法を知らずにやっているのだろうと推測しますが、そういうわけですので、こういう表示はやめておきましょう。

ところで、同じ転嫁法でも、転嫁拒否行為(買いたたきなど)については、公取委が大変熱心に取り締まりをしているのに、転嫁阻害表示については、消費者庁の勧告例が未だに1件もありません。

きっと景表法の改正(昨年)やら、食品表示法のガイドライン作成やらで、人手が足りないからではないかと推測しますが、注意の件数くらいは公表しても良いのではないでしょうか。(まさか注意も1件もない、ということでもないでしょうし。)

ちなみに消費者庁のホームページによれば、「消費税転嫁阻害表示調査員」というのを募集しており、「消費税転嫁阻害表示監視調査システム」というのも稼働しているようです。

2015年3月10日 (火)

消費税転嫁法のポイント4ヶ条

消費税転嫁法の勧告事例が積み上がってきたので、気を付けるべき点をまとめておきます。

1.一定期間、価格を固定している取引は要注意

こういってしまうと、ほとんどのBtoBの取引は該当してしまいそうですが、当該一定期間の途中に消費税率の引き上げがあると、即転嫁法違反になってしまいます。

賃料なんかが典型例ですが、最近では、今年の2月26日に広島カープが受けた勧告事例が、グッズのシーズンが毎年2月から翌年1月までだった(その間に消費税が上がった)というのが、象徴的です。

ちなみに広島カープのケースでは、シーズン中に消費税率が上がることが分かったうえで当事者は1年分の価格を決めているはずなので、こんなものまで違法になるのか、という、ちょっと意外な事案でした。

2.消費税込みで価格を合意している取引は要注意

一定期間固定額で取引している場合でも、本体価格で合意していれば、当該期間中に消費税率が上がった時には自動的に総額が上がるので、転嫁拒否は生じないはずです。

反対に、税込みで合意している取引は要注意です。

契約上、どういう場合に税込で合意していて、どういう場合に税別で合意しているかは、実は意思解釈の絡む微妙な問題ですが、例えば賃貸借で、

「賃料は月108万円(内消費税8万円)」

と書いてあるだけだと、通常は、108万円の総額で合意した、ということで、消費税が10%に上がっても自動的に110万円にはならないと考えられます(「内消費税8万円」というのは、あくまで内訳の説明です。)つまり、転嫁法違反のリスクがあるということです。

現に、多くの賃貸借では同時に、「公租公課により賃料を合意で見直す」という規定があり、逆にいえば、自動的に値上がりするわけではないという意思が表れているといえます。

これに対して、

「賃料は月100万円(消費税別途)」

と書いてあれば、消費税が10%に上がれば賃料は110万円になると合意している、と考えられます。

3.個人事業者に要注意

スポーツクラブのインストラクター(エスフォルタ事件)や、家庭教師(トライグループ事件)、といった人たちが、「個人事業者」ということで、転嫁拒否の保護対象になっています。

会社側は従業員と異ならない感覚かもしれませんが、法律上事業者なのであれば、消費税が上がったら取引価格も上げなければなりません。

ちなみに、大学生がやる家庭教師のバイトは、通常は雇用契約なのではないかと思います。

4.免税事業者に要注意

個人事業者ともかぶりますが、免税事業者に対しては、企業は消費税分を上乗せしなければならないという意識が乏しいですし、免税事業者の側も、消費税分をもらう気がない、あるいは、「消費税分くださいというと、『あなた免税業者でしょ』と言われそうでいやだ」ということもあるかもしれません。

なので、企業(特定事業者)としては、免税事業者側が要らないといっても、増税分上乗せしてあげる必要があります。

ちなみに、免税事業者でも転嫁法で保護されるのは、転嫁法上免税事業者を特定供給事業者から除外する規定がないから、というのが形式的な理由ですが、実質的な理由は、免税事業者でも仕入れには消費税が載っているから、ということのようです。

・・・・・・

以上、整理してみると、

「サプライヤーとの価格交渉の時期と消費税引き上げの時期が重なった場合には、メーカーは値引き交渉はできないのではないか」

という、実務で最も懸念された問題は、摘発される気配がありません。

自由な価格交渉を阻害するような運用が公取委によって差し控えられているのは賢明なことだと思います。

しかし、その反面で、「1年のシーズンの途中で消費税が上がっちゃった」というような、「うっかりミス型」や、家庭教師とかフィットネスクラブのインストラクターとか、本来の転嫁法のイメージ(メーカーによるサプライヤいじめや、大規模小売店による納入業者いじめ)とはかなり異なる、「外角低めぎりぎりいっぱい」みたいな事例ばかりが目につきます。

しかしそれだけに、転嫁法をまったくノーマークだった企業が摘発されるリスクがあるわけで、引き続き、転嫁法には要注意だと思います。

もちろん、「ど真ん中のストライク」みたいな事例は、引き続き要注意です。

« 2015年2月 | トップページ | 2015年4月 »