ある外国メディアからの取材
先日、とある競争法専門の外国メディアから取材を受けて、カルテルを行った従業員に対する日本企業の対応について意見を求められました。
自動車部品事件について、ある別のメディアに、日本企業ではカルテル参加従業員を解雇することもなく雇用を続けているというという記事が載り、それを見た(今回取材に来た)メディアの編集者(おそらく外国人)が驚いて、「本当にそうなのか」ということで、裏付け(?)の取材に来られた、という次第です。
確かに日本企業では、カルテルを行った従業員を懲戒解雇することまでは一般的ではなく、多くの場合はせいぜい降格とか、グループ会社への出向とかいったあたりではないかと思います。
私が驚いたのは、外国メディア(それも、競争法には詳しいはずのメディア)が、そういう日本企業の態度を異質なものだと考えた、ということです。
(ただ、このメディアが外国の意見を代表しているわけではもちろんないと思います。
先日、あるヨーロッパの競争法の弁護士が、
「古い欧州の企業では、リニエンシーを申請するときに、『競合他社に迷惑がかかるのではないか』と心配することもあるんだ」
ということを言っていて、案外、日本企業以上に日本的だなと思いました。)
よく言われるのは、
カルテルは従業員が私腹を肥やすためではなく会社のためにやったんだ、
とか、
カルテルが担当者から担当者に連綿と引き継がれていて、捕まった従業員はたまたま発覚した時の担当者に過ぎないんだ、だから解雇は重過ぎる、
という説明です。
これは確かにかなりのケースに当てはまりますが、もちろん、そうではないケースもあります。
というか、そうではないケース(会社は本当にカルテル撲滅に取り組んでいたのに、1人の従業員が独走してしまったというケース)も、いくらでもあると思います。
しかもそういう場合は、会社は、当たり前ですが、とても迷惑します。
そういったケースでは、私は、懲戒解雇も妥当だと思います。
とはいえ、一般的には、上で述べたような理屈で、外国から見ると甘い処分で済むことが、比較的多いのは事実だとは思います(もちろん、データはなく、あくまで感覚ですが。)
ですが、外国(欧米)ではカルテルはそれほどに重たいものだとみられているわけで、もちろん、その防止にも日本企業以上に時間とコストをかけているのですから、少なくとも外国で事業をする企業は、そういった欧米並みに手間暇をかけて、従業員も厳格に処分するという対応をしないと、結果的に、摘発されるのはいつも日本企業だ、というような不名誉なことにならないとも限りません。
外国メディアに日本の企業文化のことをとやかく言われるのは、正直、日本人としてあまり気分が良いものではないのですが、現実をありのままに見つめれば、やはり日本企業は脇が甘いと言われても仕方ないのだろうなと思った取材でした。
« 下請法の「業として」と有償性 | トップページ | 景表法の課徴金と違反行為の個数 »
コメント