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2014年12月

2014年12月24日 (水)

【お知らせ】『ビジネス法務』2月号に景表法の論文を執筆しました

2015年2月号の法律専門誌『ビジネス法務』の、「課徴金導入決定! 表示の注意点を再点検」という特集に、「食品・外食」というテーマで執筆しました。

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特集は業界別になっていて、ほかには、「ウェブマーケティングにおける表示の問題」とか、「不動産」とか、「ヘルスケア」とか、「広告」とか、それぞれの業界の方には興味深いのではないかと思われます。もちろん、消費者庁の方の改正法解説もあります。

今回あらためてメニュー表示ガイドラインとパブコメ回答を丹念に読み込んでみましたが、原案からも相当変わっている上に、一般化するとけっこう問題の多いことをこのガイドラインは言っているのではないかという思いを一層強くしました。

「表示の注意点を再点検」という特集の小見出しのイメージからは少し外れるかもしれませんが、この論文を読んでいただければ、素朴な常識だけに従っていたのでは景表法対策は不十分であることがご理解いただけるのではないかと思います。

食品・外食の業界の方はもちろんですが、その他にも、きらびやかな表示で消費者を引き付ける傾向のある業界や、イメージで売り込む商品役務の業界の方々は、自分の業界に当てはめると、「こんな表示もダメなのか?!」という疑問がけっこう湧いてくるのではないかと思います。

ご興味のある方はぜひご一読ください。

2014年12月23日 (火)

弘文堂(新版)『条解独占禁止法』の気になる記述

村上他編著『条解独占禁止法』p54の支配型私的独占の解説に、

「垂直的制限については共同行為として規制することが一般的なルールである。」

という記述がありました。

びっくりしました。

確かに、米国のシャーマン法や、それを下敷きにした欧州のTFEUでは、垂直的制限は共同行為として整理されています。

なぜなら条文がそうなっているからです。

たとえばシャーマン法1条では、

「Every contract, combination in the form of trust or otherwise, or conspiracy, in restraint of trade or commerce among the several States, or with foreign nations, is declared to be illegal.」

というように、複数の当事者を要する表現が並んでいますし、TFEU101条でも、

「The following shall be prohibited as incompatible with the internal market: all agreements between undertakings, decisions by associations of undertakings and concerted practices which may affect trade between Member States and which have as their object or effect the prevention, restriction or distortion of competition within the internal market, and in particular those which:...」

と、同様です。

しかし、日本の独禁法では、条文はそうなっていません。

たとえば再販に関する2条9項4号イでは、

「相手方に対しその販売する当該商品の販売価格を定めてこれを維持させることその他相手方の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束すること」

というふうに、「拘束する」ことが違反行為とされていて、拘束されることや、拘束されることに合意したことが違反だとはされていません。

なので、「一般的なルールである」というのは、日本の独禁法のコンメンタールの解説としてはいかがなものかと思います。

ちなみに、『条解』をみても、「一般的なルールである」という根拠は、よくわかりませんでした。

ところで、この『条解』には、旧版に相当する同名の書籍があり、だいぶ以前にこのブログでも、独禁法実務の必携図書として、手に入るうちに古本を手に入れることをお勧めしました。

私は今でも旧版(と便宜的に呼びますが)を折に触れて参考にしていますが、今回の本には「新版」とか、「第2版」とかいう文字がタイトルに見当たりません。

きっと執筆陣も総入れ替えで、出版社も別の書籍と位置づけたのでしょうね。

iPadが第2世代から第3世代になったときに、名前が「iPad 2」から、ただの「iPad」に変わって、何と呼んで第1世代と区別するのかが話題になったことが思い出されます(笑)。

2014年12月22日 (月)

表示の管理措置の勧告の公表

2014年6月改正で、事業者は景表法に違反しないような措置をとることを義務付けられ、そのような措置がとられていない場合には消費者庁が勧告をすることができることになりました(景表法8条の2第1項)。

また、事業者が勧告に従わない場合には消費者庁は公表できることになりました(同条2項)。

この公表措置について、法律の根拠が必要なのかについて議論があるようです(実際には、8条の2第2項があるので、あくまで理屈の問題ですが。)

私は、法律の根拠が必要だと思います。

といいますか、法律の根拠が必要なのは当然で、根拠が不要だという考えがあると聞いて、正直びっくりしました。(中川丈久『平成26年改正景品表示法の評価と課題-行政法の見地から-」公正取引770号14頁)

法律の根拠が必要だと考える理由は、行政指導に関する行政手続法32条です。

同条には、

「(行政指導の一般原則)

第三十二条  行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、いやしくも当該行政機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならないこと及び行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることに留意しなければならない。

2  行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。 」

と規定されています。

そして、室井他『コンメンタール行政法Ⅰ 行政手続法・行政不服審査法』p240では、

「法律上、相手方が行政指導に協力しないときに、これに対して改善命令等の下命行為や氏名等の公表を行うことができる旨の規定が存在する場合は、これが優先し、本項〔行政手続法32条2項〕の適用はない。」

とされています。

つまり、公表できる旨の規定が存在しない場合には公表できないということです。

この解説を待つまでもなく、公表が「不利益な取扱い」に該当することは文言上明らかであり、議論の余地はないと思います。

(と思ったら、後述の『条解』のように、公衆への情報提供目的なら該当しないとか、細かい議論があるみたいです。ただし、ここでの管理措置の勧告の公表には影響しないと思われます。)

なお、ここでの、勧告(行政指導の一種)に従わない場合に明文の根拠なく公表してよいかという問題と、行政処分や行政指導を一般的に公表してよいかという問題は、まったく別の問題です。

例えば下請法の勧告には公表に関する明文の規定はありませんが、全件公表されています。

(ちなみに下請法の勧告の公表について、粕渕他『下請法の実務(第3版)』p187では、

「平成15年の法改正前は、親事業者が勧告に従わなかったときは、公正取引委員会がその旨を公表するものと下請法上規定されていたが、法改正により当該規定は削除され、公正取引員会は勧告した場合に直ちに公表できるようになった。」

と説明されています。)

なぜ下請法の勧告を明文の根拠なく全件公表してよいかというと、公表を、「その相手方が行政指導〔勧告〕に従わなかったことを理由として」行うわけではなく、勧告に従うか否かにかかわらず公表するからです。

つまり、行政手続法32条2項がなぜ「行政指導に従わなかったことを理由として」不利益な取扱いをすることを禁止しているのかといえば、本来任意であるべき行政指導が、不利益による脅しによって、事実上強制されてしまうからです。

これに対して、全件公表であれば、公表により勧告に従うことが事実上強制されるということはありません。(勧告に従っても従わなくても、公表されるので。)

公表は間違いなく「不利益な取扱い」だと思いますが(ただし、後述の『条解』のように、公衆への情報提供目的の場合は該当しないという整理あり)、かといって、法律に違反した者を明文の根拠なく公表してはいけないとか、法律に違反した者に明文の規定のない不利益を課してはいけないとかいう法律は、一般的にはありません。

公表の是非についてはいろいろ議論はあり得ますが、それはあくまで立法論です(ただし、行政法では、安易な公表は慎むべきとか、議論はあるようです。後記『条解』p322に引用される塩野『行政法Ⅰ』201頁、宇賀『解説』139頁)。

なので、行政上の公表制度一般と、行政指導に従わなかった場合の公表とは、区別して考えないといけません。

上記論文で引用されている国会提出資料でも、そのあたりの区別があんまりなされていないような気がします。

ちなみに、塩野『条解行政手続法』p321では、

「なお、立案過程の沿革に照らしてみると、ここでいう『不利益な取扱い』というのは、単に相手方にとって客観的に不利益な措置ということではなく、『不当な取扱い』、すなわち、報復的ないし制裁的な意図をもったもの、間接的に相手方に強制として機能するものに限定されるとも解される(小早川編『逐条研究』269頁参照)。

たとえば、行政指導に対する不服従の事実の公表は、それが、公衆に対する必要な情報の提供であるときは、ここでいう『不利益な取扱い』ではないが、それが制裁目的としてなされることは許されないという整理がある〔引用略〕。」

とされています。

表示の管理措置の勧告の公表が「公衆に対する必要な情報の提供」であるとは考えにくいので、いずれにせよ、明文の規定なしには公表できないということになるのでしょう。

(個人的には、以上の条解の説明も疑問と思っていて、仮に公表が公衆に対する必要な情報の提供であっても、行政指導に従わないことを理由として公表するのは、やっぱりまずいんじゃないかと思います。公衆に対する情報の提供が必要なら、行政指導に従うとか従わないとかつべこべ言わず、さっさと公表すべきです。さっさとやらない公表なら、やはり制裁というべきでしょう。制裁と情報提供が入り混じった公表もあるのかもしれませんが、そういう日本的な湿っぽい実務は、やめた方がいいと思います。)

以前も別の場所で似たような混同をみた記憶があり、今回また見当たりましたので、指摘しておく次第です。

なお、以上の観点から上記粕渕他の解説を検討すると、平成15年の公表規定が削除されたことでただちに公表できるようになったというのは、間違いではないですが、行政手続法32条2項の観点からは、平成15年改正後は、「勧告に従わなかったことを理由として公表する」という、改正前にはできたことが、当該規定が削除されたために、かえってできなくなった、と理解すべきでしょう。

つまり、現行下請法でも、「勧告に従わなかったら公表する」ということ(公表をテコに勧告に従わせること)は、認められないというべきです。

たとえば、こんな実務は下請法では実際には行われていないと思いますが、

「勧告は全件公表だけど、今回は情状が軽いから特別に公表しないであげるけど、その代り、勧告には従ってね(従わないと公表するぞ)。」

というような取扱いをしてはいけません。

さらにいえば、行政手続法32条2項の観点からは、平成15年改正前も、全件公表することはできたはずだけれども、下請法の、「勧告に従わない場合に公表する」という規定があったために、その反対解釈として、従う限りは公表できなかったのだ(全件公表はできなかったのだ)、という整理になるのでしょう。

つまり、平成15年改正前に全件公表ができなかった根拠は、行政手続法32条2項ではなく、下請法の改正前7条4項の公表規定(の反対解釈)だった、ということです。

2014年12月20日 (土)

ある独禁法弁護士さんの講演

以前、ある大手事務所の、公取出向経験もある独禁法の弁護士さんが、主に外国人を対象にした講演で、

「国際カルテルの被害者になったときには、日本で勝訴判決を得てレバレッジにして他の国でも訴訟提起するのが有効な選択肢である。」

というようなことをおっしゃってました。

でも、違約金条項のある入札談合ならまだしも、一般的な価格カルテルについては、日本の裁判所はまだまだ損害額の認定が渋いので、この方法は私はおすすめしません。

また、同じ弁護士さんが別の講演で、

「日本企業は、日本企業である以上、リニエンシーの申請は日本を優先してするべきである。」

といっていたそうです。

知り合いの欧州の独禁法弁護士がこの話を聞いてびっくりして、「こいつは誰なんだ」と聞くので、どういう人か教えてあげました。

これも実態と大きくかけ離れていて、国際カルテルでは制裁が桁違いに大きいアメリカや欧州を優先せざるを得ないのが通常だと思います。

確かに、日本は欧米と違って、マーカーが何度も延長されるということがないので、最初のころにやたらと慌ただしくなるということはありますが、ただそれだけのことです。欧米で要求される情報量や作業量は、日本の比ではありません。

もし、このようなコメントに出会ったら注意しましょう。

とともに、私も、自分に仕事を呼び込まんがための、マッチポンプ的な情報発信は慎むようにしたいと思います。

2014年12月19日 (金)

【お知らせ】JAROで改正景表法の講演をしました

昨日、公益社団法人広告審査機構(JARO)の「改正景品表示法対策セミナー」で講演をさせていただきました。

2部構成で、私は消費者庁の方の後に、「改正景品表示法の留意点と対策」というタイトルで、お話ししました。

200名を大幅に超える、たくさんのみなさまにご出席いただき、本当にありがとうございました。

来年1月23日には、私の故郷の大阪で、もう一度行われる予定です。

大阪の皆様にもお目にかかれるのを、楽しみにしています。

2014年12月18日 (木)

【お知らせ】公正取引に改正景表法についての論文を掲載していただきました

雑誌『公正取引』の12月号の、「特集 平成26年改正景品表示法」に、

「平成26年改正景表法の留意事項」

という論文を執筆しました。

同じ特集には、平成26年6月改正(表示に関して事業者が講ずべき管理措置など)と11月改正(課徴金)についての消費者庁の方の論文も掲載されています。

執筆中に11月改正が成立したりと、ある意味ではタイムリーな、ある意味では慌しい執筆でしたが、ご関心のある方は、一読いただけると幸いです。

2014年12月17日 (水)

経済産業省から「平成25年度我が国経済構造に関する競争政策的観点からの調査研究(消費インテリジェンスと競争法の垂直的制限規制に関する調査研究)」報告書が公表されました

12月11日に、標題の報告書が公表されました

一言でいうと、流通取引慣行ガイドラインはこのままでよいのか?という提言です。

この報告書の元になった研究会の委員に私もなっておりまして、その意味で大変感慨深いものがあります。

著名な独禁法学者や経済学者の先生方にまじって私ごときが名を連ねていてよいのかという、大変気恥しい思いをしながら研究会に参加しておりましたが、実務家の視点から、ガイドラインのどういう点が問題なのかをいろいろと指摘できたのではないかと思います。

第一線の研究者の先生方と議論させていただいたのは毎回とてもエキサイティングでしたし、企業の方々のご意見・ご指摘にも大きく頷くこと度々で、本当に良い勉強をさせていただきました。

ご興味のある方はぜひご一読頂ければと思います。

2014年12月15日 (月)

日本版国家補助(state aid)

11日の日経夕刊一面トップに、「企業公的支援 ゆがみ是正」、「公取委、来年にも指針」という記事が出ていましたので、少々感想を述べておきます。

今回の指針は、欧州では国家による企業への補助が競争をゆがめることが競争法の問題とされており、それの日本版というところです。

記事にもあるように、この動きの背景にはJALへの支援が競争をゆがめているという根強い批判があります。

私もJALの公的支援のときに、これが独禁法上問題ないのかという質問をいろいろな形で受けましたが、正面から独禁法違反に問うのはかなり難しいという印象を持っています。

その理由を一言でいえば日本には国家補助に関する明文の規定が独禁法にないからだということですが、もう少し具体的にいえば、例えば民間銀行がJALを支援して強くなりすぎたとしてもそれを独禁法違反だというのはたぶん無理だというのは争いのないところだと思いますが、では民間企業がやってかまわないことを国家がやると競争法になるのかというと、そのような民間と国家とで違法性の判断を変えるような仕組みが日本の独禁法の中にはないからです。

つまり、通常、競争法というのは、競争をゆがめる行為がないと違法には問わないわけですが、たんに資金を供給するだけでは、通常は競争をゆがめることにはならないと考えられるからです。

もちろん、支援を受けた企業がその資金を原資に不当廉売とかをやれば違法になるわけですが、それは一応、資金援助とは別の話です。(資金援助を違法とするのではなく、不当廉売を違法とすればよいだけの話です。)

さらに、競争法がなぜ競争を保護するのかといえば、競争が害されると消費者が不利益を被るからであり、国家補助で支援を受けた企業が生き返って消費者が不利益を受けるということがあるのか、仮にあるとしても、ゆがんだ競争のせいで競合他社が市場から排除されて市場が支援を受けた企業に独占されてしまう(またはそれに近い状態になる)というような、かなり例外的な場合に限られるのではないか、という発想があります。

もしそうだとすると、通常の競争法の基準で国家補助を違法としようとすると、かなりハードルが高い基準になってしまいそうです。

欧州で行われているような国家補助の規制というのは、おそらくそれよりもかなり低いハードルで違法になる(競争を保護するのではなく、競争者を保護する)というように運用されているのではないかと思います。

そのように低いハードルでも違法にする実質的根拠というのは、国家補助は税金が使われているということと(なので使い道は公平平等でなければならない)、額も民間の融資よりも多額になる傾向があるということや、政治的思惑のために損得勘定での縛りが効かない、というようなことがあるのかもしれません。

いずれにせよ、通常の競争法の発想には収まりきらないところがあるので、欧州では、明文の規定を置いているのでしょう。

欧州で国家補助が通常の競争法とは別の発想でできている証拠の1つとして、欧州機能条約107条1項では、

「Save as otherwise provided in the Treaties, any aid granted by a Member State or through State resources in any form whatsoever which distorts or threatens to distort competition by favouring certain undertakings or the production of certain goods shall, in so far as it affects trade between Member States, be incompatible with the internal market.」

となっていて、名宛人が加盟国になっています。

つまり、非加盟国による補助は、域内市場に影響があっても107条の問題にはならない、ということです。

欧州で国家補助が競争法の一部になっているのは、EUは国家の連合体だという事情もあるのでしょう。

つまり、加盟国を縛るために、EU法(条約)で、国家補助を規制する意味があります。

今回の公取委の指針は、あくまで、法的拘束力はないということのようです。

こんな大事なことを法的拘束力のない指針でやってしまってよいのか、という疑問もありますが、EUと違って日本は単一国家なので、法律にするまでもない、ということなのかもしれません。

法的拘束力のない指針であるとはいっても、さすがに競争当局が定めた指針を政府も無視することはできないであろうことが期待され、それで十分ということなのでしょう。

もし法律にすると、今までの独禁法から1歩も2歩もはみ出したものにならざるをえないので、それなりに抵抗も予想されるでしょうし。

ただ、この指針ができても、実際に適用される場面はかなり限られたものになると思われます。

あるとすれば、NTTや郵便局が破綻したときくらいでしょうか。

でも日経記事によると、

「公取委は中小企業に対する公的な支援については、競争上の問題が小さいと判断している。」

とされていて、JALなみの大型支援に適用場面を限る発想ではないみたいです。

しかし前述のように、国家補助は競争法の通常の枠組みでは説明のつかないことをやっているのですから(お金を出すだけで競争がゆがむのは例外的)、超大型規模の支援だけでなくそこそこの大型案件にまで同指針の適用を広げるのはあまり好ましくないように思います(国民の利益になる支援を同指針を根拠にできなくしてしまうのは本末転倒です)。

また、通常の競争法の枠組みには乗らないことを忘れないようにすべきであって、本来競争上の問題でないものをあたかも通常の競争上の問題であるかのように擬制するような指針にはならないこと(逆にいえば、なぜ国家補助が競争をゆがめるのかの説得力のある説明)を期待したいと思います。

2014年12月12日 (金)

景表法の課徴金と違反行為の個数

2014年11月改正で導入が決まった景表法の課徴金の算定方法の問題の1つに、違反行為を何個と数えるか、という問題があるように思います。

例えば、レストランでメニューの虚偽表示があった場合に、

①それぞれの料理ごとに不当表示は1個と数えるのか(「芝エビとイカの炒め物」と「九条ネギのロティ」で2個と数える)

それとも、

②料理の不当表示である以上、すべてまとめて1個と数えるのか、

という問題です。

私は、これはまとめて1個と数えるのは条文上無理があって、別々に数えるほかないと思います。

なぜこの問題にこだわるのかといえば、課徴金の150万円の据切り額に届くか届かないかが、全く異なってくるからです(もちろん、行為が多数に分かれる①の方が、据切りに届かず課徴金が課されないケースが増えてきます)。

では条文を確認してみましょう。

2014年11月改正景表法8条では、

「事業者が、第五条〔不当な表示の禁止〕の規定に違反する行為(・・・以下「課徴金対象行為」という。)をしたときは、

内閣総理大臣は、当該事業者に対し、

当該課徴金対象行為に係る課徴金対象期間に取引をした当該課徴金対象行為に係る商品又は役務の政令で定める方法により算定した売上額に百分の三を乗じて得た額に相当する額の課徴金

を国庫に納付することを命じなければならない。

ただし、当該事業者が当該課徴金対象行為をした期間を通じて当該課徴金対象行為に係る表示が次の各号のいずれかに該当することを知らず、かつ、知らないことにつき相当の注意を怠つた者でないと認められるとき、

又は

その額が百五十万円未満であるとき

は、その納付を命ずることができない。」

とされていて、ただし書が150万円の据切りです。

そこで、「その〔=課徴金の〕納付を命ずることができない」場合としての、「その額が150万円未満であるとき」というときの、「その額」とは何の額なのか、が問題となります。

これは明らかに、

「当該課徴金対象行為に係る課徴金対象期間に取引をした当該課徴金対象行為に係る商品又は役務の政令で定める方法により算定した売上額に百分の三を乗じて得た額に相当する

というのが、「その額」です。

そして、課徴金算定の基礎となる売上額が、

当該課徴金対象行為に係る課徴金対象期間に取引をした当該課徴金対象行為に係る商品又は役務」

の売上額だとされていて、「当該」という文言で特定した課徴金対象行為(=不当表示)に「係る商品又は役務」が課徴金の対象ということになります。

「係る」という表現は私は好きではないので言い換えると、「当該課徴金対象行為に係る商品又は役務」というのは、当該不当表示を使って消費者に買わせた(誘引した)商品役務、ということです。

ともあれ、「当該」という言葉で「課徴金対象期間」を限定しているので、「課徴金対象期間」は、課徴金対象行為(=不当表示)ごとに確定する、ということになります。

このようなことを考えていくと、課徴金対象期間は課徴金対象行為ごとに決まり、それぞれ決まった課徴金対象期間の中で販売された商品役務が課徴金の対象になる、ということになります。

いわれてみれば当たり前のことですが、ここに、課徴金対象期間を合算するとか、「当該課徴金対象行為に係る商品又は役務の・・・売上額」を合算するということを読み込む余地はないように思われます。

(ちなみに、「課徴金対象期間」は、8条2項に定義があって、おおまかにいって、不当表示をした期間プラスその後の6か月の期間、ただし6か月経過前に誤認解消措置を採ればその日までの期間、です。)

さらに言えば、不当表示は1回でも不当表示なので、例えば、「芝エビ・・・」という表示を、店のメニューでも、ホームページでも、新聞広告では朝日と読売と毎日と日経の朝刊と夕刊でも出していた、という場合は、それぞれのメニューや広告の1つ1つが、「当該課徴金対象行為」に該当する、ということになると思われます。

ただ、対象商品役務が「芝エビ・・・」(と表示したところの、実はバナメイエビとイカの炒め物)の1つであるので、結果的に、売上額が重複してカウントされることはないに過ぎないのだ、というのが論理的な説明なのでしょう。

いずれにせよ、異なる商品役務の売上額について合算するという規定はないので、個別にカウントせざるを得ません。

とすると、8条1項ただし書の「その額」というのは、「芝エビとイカの炒め物」という表示(「当該課徴金対象行為」)については、バナメイエビとイカの炒め物の売上額に100分の3を乗じた額であると考えざるを得ず、したがって、バナメイエビとイカの炒め物の売上額だけで5000万円ないと、据え切りにより課徴金は課せられない、ということになります。

この点について似たような問題が生じる場面として、優越的地位の濫用がありますが、そこでは公取委の見解は、

「優越的地位の濫用には様々な行為類型があり、2条9項5号にも様々なものを掲げているが、実際にはそれだけで優越的地位の濫用に当たり得るような様々な行為が混然として行われることが多く、これらが1つの行為と評価できるような場合には、全体として1つの違反期間が認定される。」

ということだと思われます(菅久他『独占禁止法』226頁)。

私は、独禁法の条文をよく読めばこの公取委の解釈はおかしいと前々から言っているのですが、それでも、実質的には、公取委の解釈の方が妥当だとも思います。(出来の悪い条文を解釈で回している。)

それはまさに、上記引用した赤本に書いてあるとおり、優越的地位の濫用は、一連の取引先いじめとして混然一体としてなされるのが通常だからです。

数々の濫用行為の背後に、取引先をいじめるという統一的な意思がはたらいている、といえるかもしれません。

しかし景表法の場合は、そのようにいえる場合はむしろ極めて例外的ではないかと思われます。

例えば阪急阪神ホテルズの事例をみても、傘下の様々なレストランで、それぞれ別々にメニューの作成が行われていて、しかも、現場の確認ミスとか、納入業者の詐欺的行為とか、いろいろなものが含まれていて、とても「統一的な意思」といったものは見いだせなさそうです。

課徴金の大元になったカルテルでは、「統一的な意思」的なものがあることが明らかなので、複数案件をまとめて課徴金を課すことに何の問題もありませんでした。

それが、優越的地位の濫用では、かなり怪しくなってきました。

そして、今回の景表法の課徴金です。

さすがに、景表法については合算は無理でしょう。

少なくとも、優越的地位の濫用と同様に、「混然として行われる」行為が「1つの行為と評価できるような場合」に合算する(1つの違反期間を認定する)というのでは、ほとんど合算できる場面はないように思われます。

仮にそういう場面があったとしても、合算できる場面とできない場面の区別は相当難しいでしょう。

優越的地位の濫用あたりで、カルテルの課徴金の条文をコピペすると問題だと気づいていれば、景表法の課徴金ではもう少し工夫の余地があったのかもしれません。

あるいは、素直に考えれば、違反行為はそれぞれ別なので、それぞれ150万円に達しなければ課徴金はかさなくていいんだ、という立案担当者の政策判断なのかもしれません。

ただ、それでは国民感情にそぐわない気もしないではありません。

また、命令の実物をみたら、据え切りばかりでけっこうカッコ悪そうです。

命令には出ないとしても、今までの排除措置命令では不当表示のメディアや日付まで特定しているので、据え切りになるのが分かっていながら据え切りになることを確認するために延々と細々とした売上額の算定をしないといけないというのも、ずいぶんと余分な手間(消費者庁にとっても違反企業にとっても)だと思われます。

消費者庁は立法にあたり、どの辺まで考えていたのでしょうか。現実の運用が注目されます。

最後に蛇足ですが、このブログでは最近エンフォースメントについての細かい指摘ばかりしているような気がします。

こんな指摘は条文をしっかり読めば、独禁法や景表法の専門家でなくてもできることなので、正直、個人的には少々ウンザリです。

ではやめておけばいいのにという声が聞こえてきそうですが(苦笑)、これはこれで何かの議論の糧になればと願っておくことにして、公取委や消費者庁には、本当に議論のし甲斐のあるところで、骨太の立法、運用、ガイドラインの策定等を期待したいと思います。

2014年12月 5日 (金)

ある外国メディアからの取材

先日、とある競争法専門の外国メディアから取材を受けて、カルテルを行った従業員に対する日本企業の対応について意見を求められました。

自動車部品事件について、ある別のメディアに、日本企業ではカルテル参加従業員を解雇することもなく雇用を続けているというという記事が載り、それを見た(今回取材に来た)メディアの編集者(おそらく外国人)が驚いて、「本当にそうなのか」ということで、裏付け(?)の取材に来られた、という次第です。

確かに日本企業では、カルテルを行った従業員を懲戒解雇することまでは一般的ではなく、多くの場合はせいぜい降格とか、グループ会社への出向とかいったあたりではないかと思います。

私が驚いたのは、外国メディア(それも、競争法には詳しいはずのメディア)が、そういう日本企業の態度を異質なものだと考えた、ということです。

(ただ、このメディアが外国の意見を代表しているわけではもちろんないと思います。

先日、あるヨーロッパの競争法の弁護士が、

「古い欧州の企業では、リニエンシーを申請するときに、『競合他社に迷惑がかかるのではないか』と心配することもあるんだ」

ということを言っていて、案外、日本企業以上に日本的だなと思いました。)

よく言われるのは、

カルテルは従業員が私腹を肥やすためではなく会社のためにやったんだ、

とか、

カルテルが担当者から担当者に連綿と引き継がれていて、捕まった従業員はたまたま発覚した時の担当者に過ぎないんだ、だから解雇は重過ぎる、

という説明です。

これは確かにかなりのケースに当てはまりますが、もちろん、そうではないケースもあります。

というか、そうではないケース(会社は本当にカルテル撲滅に取り組んでいたのに、1人の従業員が独走してしまったというケース)も、いくらでもあると思います。

しかもそういう場合は、会社は、当たり前ですが、とても迷惑します。

そういったケースでは、私は、懲戒解雇も妥当だと思います。

とはいえ、一般的には、上で述べたような理屈で、外国から見ると甘い処分で済むことが、比較的多いのは事実だとは思います(もちろん、データはなく、あくまで感覚ですが。)

ですが、外国(欧米)ではカルテルはそれほどに重たいものだとみられているわけで、もちろん、その防止にも日本企業以上に時間とコストをかけているのですから、少なくとも外国で事業をする企業は、そういった欧米並みに手間暇をかけて、従業員も厳格に処分するという対応をしないと、結果的に、摘発されるのはいつも日本企業だ、というような不名誉なことにならないとも限りません。

外国メディアに日本の企業文化のことをとやかく言われるのは、正直、日本人としてあまり気分が良いものではないのですが、現実をありのままに見つめれば、やはり日本企業は脇が甘いと言われても仕方ないのだろうなと思った取材でした。

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