課徴金に関する改正景表法案について
不当表示に対する課徴金についての景表法改正案が閣議決定されて国会に提出されました。
そこで改正案について気が付いたことを述べておきます。
8条では、「課徴金対象期間」という概念を用いています。
これは単に不当表示をした期間ということではなくて、「課徴金対象行為」(要するに不当表示行為のこと。後述)が終了してから原則6か月の期間ということになっています(8条2項)。
不当表示が終了しても、しばらくは消費者の誤認が続くので、6か月延ばしたのでしょう。
なので、誤認を解消するための措置(内閣府令で具体化されます)を採れば、その日で、「課徴金対象期間」は終わります。
なお細かくいうと、6か月当然に延びるわけではなく、課徴金対象行為終了後に取引を最後にした日が末日になります。
これは、売上もないのに当然に6か月延びると、課徴金対象期間は最長3年である関係上、売上のない最後の6か月がカウントされてしまって、本来カウントされるべき最初の6か月がカウントされなくなってしまう、という事態を避けようとしたものでしょう。
表示者が不当表示であることを知らず、かつ、相当な注意を尽くしていた場合には課徴金がかかりません(8条1項柱書ただし書)。
ですが、不当表示をした「期間を通じて」知らず、かつ相当な注意を尽くしていることが免除の要件なので、表示をしている途中で知ってしまった場合には、全期間について課徴金がかかってしまいます。
なので、例えば、消費者庁や公取の立入調査を受けて違反を初めて知った、という場合でも(それまでは相当な注意は尽くしていたことが前提)、課徴金対象期間中に知ったことになるので、「期間を通じて」知らないという要件を満たさず、課徴金の免除は受けられないことになりそうです。
文言上はこのように解するほかありませんが、消費者庁の実際の運用がどうなるのか注目です。
でも本来であれば、無過失だった期間は課徴金がかからないようにする(途中で不当表示であることを知った場合は、知った後も不当表示を続けていた期間だけ課徴金がかかるようにする)ような条文にすべきだったのではないでしょうか。
課徴金免除の要件の、「相当の注意」というのは、要は無過失という意味です(民法715条など参照)。
さて、改正法案では、「課徴金対象行為」(8条1項柱書)という用語を、
「第5条〔不当な表示の禁止〕の規定に違反する行為」
という意味で使っています。
そして、5条では、「〔同条各号に該当する〕表示をしてはならない。」と規定されているので、「第5条の規定に違反する行為」というのは、「5条各号に該当する表示をすること」であると読み取れます。
そして、上述のように8条2項では、
「課徴金対象期間」≒「課徴金対象行為」をした期間+その後の6か月(原則)
であるとされています。
独禁法の課徴金との関係で興味深いのは、独禁法(例えば不当な取引制限)の課徴金対象期間は、
「当該行為の実行としての事業活動を行つた日から当該行為の実行としての事業活動がなくなる日までの期間」(「実行期間」(独禁法7条の2第1項柱書)
であるとされているのと対比すると、いろいろ興味深いものがあります(長くなるので割愛します)。
9条は景表法版リニエンシーとでもいうべきもので、
「その報告が、当該課徴金対象行為についての調査があったことにより当該課徴金対象行為について課徴金納付命令があるべきことを予知してなされたものであるとき」
を除き、違反者が自主的に不当表示を内閣総理大臣に申告した場合には、課徴金の額が半額になります。
「予知して」という見慣れない用語に面喰いますが、同じ用語は例えば国税通則法61条1項(延滞税の計算の基礎となる期間の特例)でも使われています。
ここで「調査」の定義はないので、任意の調査も含まれると解する余地がありますが、きっと、改正法案29条(現行法9条)の、法律上の正式な調査を指すのではないでしょうか。
そうしないと、例えば景表法では正式処分に至らないような不当表示に対して当局が電話やメールで注意しているような場合もありますが、そのような電話やメールですら「調査」には該当して、課徴金減額の利益が失われる、ということになり、不都合であるように思われます。
また、「当該課徴金対象行為についての調査」というように、「予知」した原因を特定しているので、例えばある商品について立入検査があったので社内調査をしたら別の商品でも不当表示が見つかった、という場合、当該別の商品については減額の利益は失われないと考えられます。
改正法施行後は、このような芋づる式の申告が増えるかもしれません。
10条と11条は返金措置による課徴金の減額についてです。
自主的に消費者に返金した分、課徴金の額が減額される、という、言っていることは単純なのですが、条文は非常に長大なものになっています。
細かく見出すときりがないので今回は割愛しますが、同様の制度が他の法律にも将来導入される場合には、改正景表法案の制度はきっと参考にされることでしょう。
【2014年12月18日追記】
上で、景表法版リニエンシーの予知事由(?)としての「調査」は強制調査に限るんではないか、と書きましたが、『公正取引』12月号の消費者庁の方の論文では、
「この『調査』は、いわゆる間接強制に係る調査(第29条)のみならず、間接強制調査権限を行使せずに相手方の協力の下で報告を求めるなどのいわゆる任意調査も含まれる。」(p12)
とされており、任意調査も含むそうです。
任意の調査だと、それだけで常に「課徴金納付命令があるべきことを予知」できるのか、本当に、「ちょっとお話聞かせてください」的な連絡もあるような気もしますが、ともあれ、実務的には、消費者庁から問い合わせの電話が一本かかってきただけで、リニエンシーの可能性はなくなる運用になりそうです。
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