景表法の「課徴金対象期間」について
課徴金導入に関する2014年11月改正景表法では、「課徴金対象期間」という概念が用いられており、その間の売上が課徴金の基礎になります。
「課徴金対象期間」の定義は、8条2項にあり、
「課徴金対象行為をした期間
(課徴金対象行為をやめた後
そのやめた日から六月を経過する日
(同日前に、
当該事業者が
当該課徴金対象行為に係る表示が不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれを解消するための措置として内閣府令で定める措置
をとつたときは、その日)
までの間に
当該事業者が
当該課徴金対象行為に係る商品又は役務の取引をしたときは、
当該課徴金対象行為をやめてから
最後に当該取引をした日
までの期間を加えた期間とし、
当該期間が三年を超えるときは、当該期間の末日から遡つて三年間とする。)
をいう。」
とされています。
なお、
「課徴金対象行為」
というのは、8条1項で、
「第五条の規定に違反する行為(同条第三号に該当する表示に係るものを除く。・・・)」
と定義されており、要するに不当表示をした期間です。
かなり複雑ですが、要するに、
①原則として、課徴金は不当表示が終了してから6か月以内の最後の売上までにかかる、
②ただし、不当表示終了後、誤認解消措置を講じれば、誤認解消措置の採られた日までの最後の売上にまでかかる、
③いずれの場合でも、課徴金対象期間は最長3年間(独禁法と同じ)、
ということです。
不当表示発覚後ただちに(例えば同日)不当表示も販売もやめ、誤認解消措置もとる、という理想的なケースでは、不当表示をやめた日が課徴金対象期間の末日になります。
仮に不当表示をやめた日の前の数か月間売上がなかったとしても、課徴金対象期間が数か月間遡ることはありません。
解消措置の具体的内容は内閣府令で今後定められることになっていますが、形式的に算定する課徴金の期間の終期を定めるものなので、かなり形式的な内容になるのではないかと予想されます。
(さすがに、「全国紙2紙以上に広告に限る」とかは、お金がかかりすぎて、ないと思いますけど。
逆に、「自社ホームページでの告知でも足りる」というのは、きっと無理でしょう。)
ちょっと気になるのは、例えばメニュー表示の不当表示のような場合だと、発覚したらメニュー名を変更するのは簡単そうですが、メニュー名を変更したのに6か月間は効果が残存しているとして課徴金の対象とするというのは、ちょっと厳しすぎるような気がします。
誤認解消措置を採ればいいのでしょうけれど、レストランの場合、お客さんはその日のメニューで誘引されるのであって、6か月前のメニューに誘引されるということはないでしょうから、6か月もお客さんに不当表示の説明をし続けないといけないというのも、ちょっと格好が悪いなぁと思うわけです(誤認解消措置で何が求められるか次第ですが)。
不当表示発覚後、料理の中身の方を変えて、バナメイエビではなくてちゃんと芝エビを使うようにした場合、同じメニュー名でもそれは別の商品だということになるのでしょう。そうしないと、6か月間は芝エビにまで課徴金がかかってしまいます。
条文解釈としては、芝エビは8条1項ないし2項の「当該課徴金対象行為に係る商品又は役務」に該当しない、ということなのでしょう。
それと、今の措置命令でも不当表示の内容は媒体とともに特定されていますが、課徴金納付命令でも不当表示の内容・媒体は特定されるでしょうから、そこで特定された以外の媒体で不当表示が残っていても(うっかりミスかどうかにかかわらず)、課徴金対象行為は終わっていると認めるのでしょう。
逆に、課徴金納付命令で特定された媒体にうっかり不当表示が残っていた場合(例えば、古いチラシを間違って配ってしまったような場合)、課徴金対象行為は終了していないということになるのでしょう。
あと、不当表示の効果が原則6か月続き、しかも課徴金対象期間は常に3年という制度だと、課徴金の額を減らすために、例えば不当表示発覚後直ちに販売も表示も止めるけど、6か月ぎりぎりのところで売上をちょこっと上げて、約3年前の6か月分売上を対象外にしてしまう、というような対象期間の操作ができてしまうような気がします。
とすると、直ちに誤認解消措置を採ることがためらわれるかもしれません。
レピュテーションを気にするまともな企業ならそんなことは考えないのかもしれませんが、景表法に違反するのはまともでない企業も(が?)多いですから、けっこう現実的な問題だと思います。
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