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2014年11月28日 (金)

下請法の「業として」と有償性

下請法運用基準では、

「この法律で『業として』とは、

事業者が、

ある行為を反復継続的に行っており、

社会通念上、事業の遂行とみることができる場合

を指す

(修理委託、情報成果物作成委託及び役務提供委託においても同様である。)。」

(第2-1(2))

とされています。

これだけみると、下請法上の「業として」というのは、反復継続と同義であり、有償無償を問わないかのように見えます。

ところがややこしいのは、下請法運用基準には「業として」の説明とは別に「業として行う提供」の説明もあり、

「『業として行う提供』とは、反復継続的に社会通念上、事業の遂行とみることができる程度に行っている提供のことをいい、純粋に無償の提供であれば、これに当たらない。」(第2-3(3)情報成果物作成委託)

「『業として行う提供の目的たる役務』のうち『業として行う提供』とは、反復継続的に社会通念上事業の遂行とみることができる程度に行っている提供のことをいい、純粋に無償の提供であればこれに当たらない。」(第2-4(2)役務提供委託)

ということになっています。

同様の説明は下請違法講習テキストにもあり、

「『業として行う提供』とは、反復継続的に社会通念上、事業の遂行とみることができる程度に行っている提供のことをいい、純粋に無償の提供であれば、これに当たらない。」(情報成果物作成委託についてp10、役務提供委託についてp13)

とか、

「Q11: 景品の製造を委託した場合も本法の対象となるか。

A: いわゆる景品は、商品に添付されて提供される場合、有償で提供している商品の一部として提供がなされているため製造委託(類型1)に該当する。また、純粋に無償で提供している景品であっても、自家使用物品として当該景品を自社で業として製造している場合には、製造委託(類型4)に該当する。」(p18)

などとされていて、親事業者が純粋に無償で提供する景品は「業として行う提供(正確には「業として行う販売」)には含まれない)と考えられていることが分かります。

つまり、「業として」は有償無償を問わないけれど、「業として行う提供」は有償に限る、ということです。

もちろん、「業として行う提供」と似たような書きぶりになっている、製造委託類型1の「業として行う販売」、類型2の「業として請け負う製造」、類型3の「業として行う物品の修理」、も、「業として行う提供」と同様、有償に限ると解釈するものと思われます。

別の言い方をすると、

親事業者が顧客に対して行う事業の業務性(「業として行う提供」)は有償に限る

のに対して、

親事業者の自己使用目的の物品等の委託の要件である業務性(「業として」)は有償無償問わない(というか、自ら製造等するので無償に決まってます)、

ということです。

ちなみに、運用基準やテキストの「業として行う提供」が無償であるとの説明が情報成果物作成委託と役務提供委託だけにあるのは、

製造委託の「業として行う販売」、「業として請け負う製造」、「業として行う物品の修理」

とか、

修理委託の「業として請け負う

とかが、「販売」、「請け負う」などとあるので、有償であることが明らかであるから、という理由ではないかと想像します(「物品の修理」も、業として行うといえば有償だ、ということなのでしょう)。それでもちょっと不親切な印象は残ります。

ともあれ、「業として」は無償も含む(と明言はしていないけれど社内でやっている以上無償に決まっている)けれど、「業として行う提供」などは有償に限る、という説明は、「業として行う提供」の中にも「業として」という言葉があるので、非常に分かりにくいと思います。

下請法のこういった条文の「ノイズ」は、立法技術的に見れば未熟だということなのかもしれませんが、私などは、いかにもコピペしまくりで作った平成の会社法に比べれば、手作り感と言いますか、人肌の温もりを感じて、案外、嫌いではなかったりします。

デジタルな平成の会社法と、アナログな昭和の下請法の違い、というところでしょうか。

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