景品表示の管理上の措置と有利誤認(平成26年景表法改正)
平成26年改正後の景表法7条1項では、
「事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、〔対象取引〕
景品類の提供又は表示により不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害することのないよう、〔究極の目的〕
景品類の価額の最高額、総額その他の景品類の提供に関する事項
及び
商品又は役務の品質、規格その他の内容に係る表示に関する事項〔管理対象〕
を適正に管理するため〔措置の目的〕
に必要な体制の整備その他の必要な措置〔なすべき行為〕
を講じなければならない。」
とされています。
これを素直に読む限り、景品と、商品役務の内容の表示に関する事項つまり優良誤認だけが管理すべき対象であり、取引条件についての有利誤認は対象外と読めます。
おかしいなぁと思っていたら、国会審議でこの点が議論されていました(平成26年4月22日衆院消費者問題特別委)。
政府答弁は、優良誤認は例示であって有利誤認も指定告示も含むということのようです。
以下、長いですが議事録の該当箇所を引用しておきます。私は、政府答弁は相当無茶な解釈で、結いの党の井坂議員のおっしゃることが非常に説得力があり、これ以上付け加える必要はないと思います。
「○井坂委員 結いの党の井坂信彦です。
本日は、景品表示法の第七条について、それから、先週の金曜日に発表されました総務省の消費者取引に関する政策評価の内容について主にお伺いをしたいというふうに思います。
まず、今回の法改正の一つの目玉というか肝であります景品表示法第七条について伺います。
今回、七条の改正というよりは、七条が丸ごと新たに新設をされたというような形になっております。どういう内容かといいますと、この第七条で、事業者が、自己が供給する商品、役務、取引について、これこれこういうことをやらないように管理体制を整えなければいけない、こういう七条の内容でありますが、よく見ますと、七条の前にある第四条、以下の表示をしてはならないと、やってはいけない表示が第四条に三つ並べて書かれております。いわゆる優良の話、それからあと有利誤認の話、そして三つ目に、そのほか総理大臣が指定した内容、この三つがやってはいけない表示として並んで列挙されて四条にはあるわけであります。
一方で、七条の方には、この優良誤認のことしか法文上は書かれていないように見えます。私は、この七条にも、四条一項に記載してある有利誤認表示と、それから総理大臣による指定告示事項、これを七条にも追加をするべきだというふうに考えますが、恐らく御答弁は、その他に含まれていますということではないかと思います。しかし、ここは、本当によくよく見ると、やはり入れなければおかしいというふうに思うわけでありますが、その点について大臣の見解を伺います。
○森国務大臣 七条第一項に基づいて事業者が講ずべき措置は、「景品類の提供又は表示により不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害すること」を防止するために「必要な体制の整備その他の必要な措置」でありまして、これは、優良誤認表示のみならず、有利誤認表示、指定告示事項等、景品表示法で規制される事項全般、全てが当てはまるものとして規定をされております。
前段で、景品表示法全体に係る目的規定の文言を引用することによって、後段の「必要な措置」には、法の目的を達成するために必要な措置として法に規定されるものは全て含まれるということを想定させた上で、禁止される過大な景品類の提供と不当な表示の例について、条文上、それぞれ簡潔に示すこととしております。
本規定の趣旨については、今後、第七条二項に基づく指針の策定等において明確に示していくとともに、事業者等に対して丁寧に説明して、広く周知してまいりたいと思います。
○井坂委員 七条の「その他」に入るんだろうなということで、ただ、実際、事が起こって、最後の最後、裁判などになったときに、では、そういうときに、「その他」の中に本当に有利誤認とか指定告示が入るのかどうかというのが曖昧になるのではないかという指摘を、私も地元の法律家から受けまして、議論をさせていただいているわけであります。
これは、七条をやはりよく見ますと、少なくとも、「その他」には、有利誤認あるいは指定告示は入らないというふうに思うわけでありますが、どういうことかといいますと、四条の一項の一でどう書いてあるかというと、商品または役務の品質、規格その他の内容について、実際より優良な表示はだめですよ、こういうふうに書いてあるわけです。四条一項二には、また別建てで、商品や役務の価格その他の取引条件について有利なものはだめですよというふうに書いてあります。
こういうふうに、同じ「その他」でも、「品質、規格その他の内容」、「その他の内容」となっているのが四条の一項の一で、四条の一項の二は「価格その他の取引条件」ということで、「その他の取引条件」、「その他の内容」ということで、「その他の内容」を全然違うふうに書き分けてあるわけであります。
ところが、七条の方にはどう書いてあるかというと、「商品又は役務の品質、規格その他の内容に係る表示に関する事項を適正に管理するため」の体制を整えなさいということで、少なくとも、この「その他」の中には有利誤認や指定告示は入らないというふうに思うわけでありますが、その点、私はやはり三つここに、コンパクトでもいいんですけれども、併記すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○菅久政府参考人 お答え申し上げます。
少し繰り返しになってしまうかもしれませんが、七条では、「事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、景品類の提供又は表示により不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害することのないよう、」「必要な措置を講じなければならない。」というのが全体でございまして、その例として、その間に「景品類の価額の最高額、」云々「その他の」というのが入っているというふうにこの条文はつくったということでございまして、そういう意味で、この規定でございましても、先ほど大臣から御答弁がございましたように、景品表示法上の対象となる全てのものについての必要な措置ということを講じなければならないというふうな意味というふうに考えているものでございます。
○井坂委員 全部入る、ただ、いわゆる優良誤認だけをここに例として表示したんだということでありますが、もしそうであれば、私はやはり、せめて、本当に書かないとしても、では、七条の中に、「商品又は役務の品質、規格その他の内容に係る表示」の後に、その他なのか表示等なのか、何かその辺が入らないと、何か本当に限定され過ぎているような気がするんですけれども、これは大丈夫なんでしょうか。
○森国務大臣 「その他」という文言が七条一項の中に二カ所ございますね。委員の方が前半の方の「その他」の内容を引いて今御質問なさっていますけれども、私が一番最初の答弁でお答えしたのは最後のところにある「その他の必要な措置」の部分でございまして、こちらで全部読めるというふうに御答弁を申し上げているところでございます。
○井坂委員 何かちょっと最初の「その他」は対象に係る「その他」だと思うんですね。最後の「その他」はやることに対する「その他」だと思うんですけれども、何か、普通に素直に読むと、最後の「その他」には、「体制の整備その他の必要な措置」ということであって、対象が何かそこの「その他」で拡大されるようには読めないんじゃないかと思うんですけれども、どうなんでしょうか。
○森国務大臣 いいえ、そういうことではございませんで、対象も含みます。
○井坂委員 地元の法律家の方からは、なかなか出た法案は変わらないだろうから、しつこく聞いて、そうではないということぐらいは最悪確認をしてくれ、こういうことでありましたので、では、最後の「その他」の方で対象も、あくまで、最初に列挙されているもの以外も全部含まれるということで、ちょっと不満ではありますけれども、時間もありますので、以上とさせていただきたいというふうに思います。」
それでもあえて若干補足しますと、7条1項の条文では、
「講じなければならない」
のは、
「・・・景品類の提供に関する事項及び商品又は役務の・・・内容に係る表示に関する事項を適正に管理するために必要」
な、
「体制の整備その他の必要な措置」
であると、普通は読めるわけです。
これに対して政府答弁は、7条1項を、
「事業者は、
自己の供給する商品又は役務の取引について、景品類の提供又は表示により不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害することのないよう、
・・・
必要な措置を講じなければならない。」
と読むんだと、間の、「・・・」の部分、つまり、
「景品類の価額の最高額、総額その他の景品類の提供に関する事項及び商品又は役務の品質、規格その他の内容に係る表示に関する事項を適正に管理するために必要な体制の整備その他の」
の部分は例示なんだと、いうふうにいうわけです。
まあ、有利誤認をあえて管理措置の対象から除く合理的理由はないわけですから、結論は誰も争わないのでしょうけれど(争う実益も普通はないですし)、いかにも稚拙な条文の造りではあります。
でも、森まさ子大臣が、
「景品表示法で規制される事項全般、全てが当てはまる」
と答弁されている部分は、二重の意味で難があります。
まず、もし、7条1項が、
「自己の供給する商品又は役務の取引について、景品類の提供又は表示により不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害することのないよう」
にするための措置をすべて含む(政府答弁による文言解釈に忠実な解釈)とすると、7条の規制は、対象が景表法違反に限られなくなってくるように思います。
というのは、ここでの「表示」は、優良誤認表示や有利誤認表示、あるいは指定告示に基づく表示に限るとの限定はないからです。
なので、例えばJAS法違反の表示も「一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害」しないかといえばするわけで、7条は景表法の中にありながら実は景表法を超えた体制の整備を義務付けている、ということになってしまいそうです。(そこは法律の体系的解釈ということで、乗り切るのでしょうけれど。)
ほかには、指定告示で指定されてもよさそうだけれど指定されていない不当な表示、なんていうのも、景表法違反には(有利誤認や優良誤認に該当しない限り)ならないけれど管理措置の対象にはなる、ということになってしまいそうです。
たとえば、優良誤認に該当するかどうかかなり微妙な、いわゆるステルスマーケティング(口コミサイトのなりすまし投稿など)などが、例として考えられるかもしれません。
つまり、条文からは、
「景品表示法で規制される事項全般、全てが当てはまる」
というのは不正確で、政府答弁のような区切り方をする条文の読み方に従ったとしても、
「表示により不当に顧客を誘引し一般消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害する事項全般、全てが当てはまる」
と答弁すべきであった、ということになるわけです。
もう一つの難点は(こちらは大したことないですが)、もし景表法で規制されている事項全般というのを文字通りに解釈すると、例えば検査妨害罪(現行法15条)が起きないようにする措置も講じないといけなくなりそうです。(こちらは、検査妨害そのものが消費者の選択を阻害するわけではないと説明するのでしょうか。)
重箱の隅をつつくようなことばかり申し上げて何ですが、条文を作るというのはまさに重箱の隅をつつく作業ですから、もう少ししっかりやってもらいたいと思います。
【11月12日追記】
私の周りでは、これは確信犯ではないか(消費者庁は、意図的に景表法以外もカバーしようとしているのではないか)という説が上がっております。
そうだとしたら、消費者庁おそるべし!ですね。
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