今年のノーベル経済学賞
2014年のノーベル経済学賞を、ジャン・ティロール教授が受賞されましたね。
いつかは取るだろうと言われていた人による順当な受賞、なのだそうです。
独禁法を専門とする者としては、産業組織論の分野(ティロール教授の研究分野は極めて広く、産業組織論に限りませんが)から受賞者が出たのは、何だか嬉しいです。
ティロール教授といえば、独禁法の世界では、
"The Theory of Industrial Organization"
が、産業組織論の古典的名著として有名です。
私も持っていますが、正直、私の経済学の理解のレベルでは、到底全部理解することはできません
数学が難しいというよりも、説明がミニマムで、モデルの仕組みを頭の中で噛み砕いて理解しないと、どうしてそういう説明になるのか理解できないことが多いです。
つまり、論理が飛んでいるように見えるところを自分の頭で補って読める人、あるいは、産業組織論の基礎を分かっている人でないと、理解できません。
そういう意味では、入門用では決してありません。
説明のていねいさという点では、新しい教科書の方が優れいていると思います。
それから、やはり英語のネイティブではないせいか、文章自体もちょっと読みにくい気がします。
(入門用という意味では、
Dennis W. Carlton, Jeffrey M. Perloff, "Modern Industrial Organization"
の方が、ずっとわかりやすいです。)
それでも、ミニマムな説明の中に凝縮された鋭い視点が示されていることがあり、はっとさせられます。
例えば、「1期だけのモデルでは時間の概念をとらえられず、そのためには2期以上のモデルを作る必要がある。」(まあ大体そんな感じです)という説明には、「むむむ!」と唸ってしまいました。
この本にはそういう、「噛めば噛むほど味が出る」という魅力があるので、ついつい、格闘したくなります。
ノーベル経済学賞が発表されると大手書店が受賞者の特集をしたり、便乗して関連本が出版されたりするので、この受賞を機に日本の独禁法実務の中でも産業組織論が盛り上がったりしないかな(ついでに、もっと広く、日本の社会の中で独禁法が注目されたりしないかな)、とちょっと期待したりしています。
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