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2014年9月 8日 (月)

流通取引慣行ガイドラインの「(付)親子会社間の取引」のなお書きについて

流通取引慣行ガイドラインの「(付)親子会社間の取引」は、グループ会社間の取引について独禁法が適用されるのかについて公取委が公式に述べた数少ない文献として実務上珍重されていますが、その最後に、

「なお、親会社が子会社以外の取引先事業者に対しても同様の制限を課している場合には、通常は、子会社に対しても一取引先事業者として制限を課していると認められ、原則として不公正な取引方法による規制の対象となる。」

という記載があります。

しかし、これは明らかにおかしいと思います。

あるいは、結論としては無視してよい記述と言ってもよいかもしれません。

まず、子会社(100%子会社を含む)は競争上は親会社と一体なのが通常であり、他の事業者にも同様の制限を課しているかどうかで独禁法上の評価が変わるはずがありません。

理由づけとしても、「一取引先として制限を課していると認められ」というのでは、まったく説得力がありません。

「一取引先として」というのは、おそらく、「独立の事業者としての取引先として」という意味かと思いますが、そうすると親子会社であることと矛盾します。

こういう制限は、例えば自動車メーカーが直営ディーラーに対しても非直営ディーラーと同じ陳列方法やテリトリー制をとる場合が思い浮かびますが、それは流通政策上の判断でそのようにしているだけであって、経済的に一体である直営店に対して他の非直営店と同一の制限を課したからといって、直営店が突如として「一取引先」になるわけがありません。

「結論として無視してよい」といったのは、要するに、形式的に「不公正な取引方法による規制の対象となる」としても、結論としては、親子会社は競争上一体なので、公正競争阻害性はなく、違法ではない、ということになると考えられるからです。

例えば、優越的地位の濫用の課徴金事件でも、さすがに子会社との取引については課徴金は課さないのではないでしょうか。

再販売価格拘束などがもし2度目の命令を受けて課徴金の対象になれば、「直営店を通じた再販売価格拘束も独禁法違反か」(もちろん、違反ではないと思います)という形で論点になりそうです。

ともあれ、この「なお書き」は、実務上は無視して差し支えないでしょう。

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