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2014年7月28日 (月)

(転嫁法)買いたたき・減額と購入強制等の「転嫁」の意義の不整合

消費税転嫁特別措置法3条1号では、

「商品若しくは役務の対価の額を減じ〔減額〕、

又は

商品若しくは役務の対価の額を当該商品若しくは役務と同種若しくは類似の商品若しくは役務に対し通常支払われる対価に比し低く定める〔買いたたき〕

ことにより、特定供給事業者による消費税の転嫁を拒むこと。」

が禁止されています。

これに対して同条2号では、

「特定供給事業者による消費税の転嫁に応じることと引換えに

自己の指定する商品を購入させ〔購入強制〕、若しくは自己の指定する役務を利用させ〔役務利用強制〕、

又は

自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること〔不当な利益提供の強制〕。」

が禁止されています。

さて、この1号と2号、同じ転嫁拒否行為というカテゴリーでくくられるものの、その内実はけっこう違うようにみえます。

つまり、1号の方は、公取委のガイドラインで、増税前105円で購入していたものを108円未満で購入することは、合理的な理由のない限り、減額・買いたたきに該当することになっています。

1円引いて107円で購入する名目が、消費税分を1円引いたのか、本体価格を1円引いたのかは問わず、いずれでも違法になる、ということです。

公取委ホームページの「よくある質問」でも、

「Q12 当事者間で既に取り決めた対価を事後的に減じて支払うことは「減額」として禁止されていますが,消費税分の減額であることを明示しなければ消費税転嫁対策特別措置法上の問題にはならないのでしょうか。

A 当事者間で既に取り決めた対価を,合理的な理由なく事後的に減じて支払った場合には,消費税分の減額であることを売手である特定供給事業者に明示しなくても,「減額」(消費税転嫁対策特別措置法第3条第1号前段)に該当し,違反となります。

なお,これと同様に,消費税率引上げ前の対価に消費税率引上げ分を上乗せした額よりも低い対価を定める場合には,消費税分の対価の引下げであることを明示しない場合であっても,合理的な理由がない限り「買いたたき」(消費税転嫁対策特別措置法第3条第1号後段)に該当し,違反となります。」

と回答されています。

条文の解釈としてこれが妥当か否かはさておき、公取委が言っているのだから仕方ありません。

(まあ、「本体価格を減額したのであって、消費税分を減額したのではない。」という言い訳を認めると、3条1号はまったく無意味になるので、仕方ないといえば仕方ないのですが、これは何をもって消費税の転嫁拒否というのか、という、理論的には非常に難しい、というか、答えの出ない問題です。)

これに対して2号の方は、「消費税の転嫁に応じることと引換えに」と条文で明示されているために、購入強制等と消費税の転嫁の受入れが対価関係に立つことが必要になっています。

なので、条文を素直に読む限りは、あくまで、

「○○を買ってくれたら消費税3%分上乗せしてあげる。」

という必要があり、

「○○を買ってくれたら(本体価格を)3%分値上げしてあげる。」

というのでは足りない、ということになりそうです。

幸い(?)、ガイドラインをみても、

「平成26年4月1日以後に特定供給事業者から供給を受ける商品又は役務について、消費税率引上げ分の全部又は一部を上乗せする代わりに、特定供給事業者に対し、商品の購入、役務の利用又は経済上の利益の提供をさせる行為である。」

とされており、このような解釈でよさそうにみえます。

しかし、本当にそのような解釈でよいのでしょうか?というのが今日のテーマです。

この点、当事務所の弁護士で執筆した長澤他『実務解説消費税転嫁特別措置法』p78では、2号でも潜脱防止のために1号と同様に形式的な解釈が採用されるのではないか、という考え方が示唆されています。

つまり、

「特定事業者が、平成26年4月1日以後に特定供給事業者から供給を受ける商品又は役務について、消費税率引上げ分の全部又は一部を上乗せするのに伴って商品購入又は役務の利用の要請をする場合には、特定事業者において商品購入又は役務利用の要請をする場合には、特定事業者において商品購入又は役務の利用の要請を行う取引上の合理的必要性を明らかにしない限り、消費税の転嫁に応じることと引換えに、購入強制・役務の利用強制を行ったものと判断されることが見込まれる。」(p79)

という指摘です。

共著者の私がいうのもなんですが、1号を公取のガイドラインやQ&Aのように解釈する以上は、2号もそのように解しないと辻褄が合わないと思います。

また、辻褄があうとか合わないとかの形式論の以前の問題として、もし、

「あくまで消費税の引き上げとは関係ないけれど、○○を買ってくれたら、今まで105円で買っていたものを108円で買ってあげる」

と特定事業者が持ちかけたら、どうするのでしょう?

これを2号違反でないといったら、2号が適用される場面なんて、ほとんどなくなってしまうのではないでしょうか?(そういう点では、1号と全く同じです。)

「3円だから、何も言わなくても消費税のことなんだ」と強引に事実認定してしまうという解決もあり得るのかもしれませんが、

「○○を買ってくれたら、今まで105円で買っていたものを109円で買ってあげる」(→3円分は消費税なので、やっぱり対価性あり?)

とか、

「○○を買ってくれたら、今まで105円で買っていたものを107円で買ってあげる」(→2円は消費税なので、購入強制と1円分の買いたたきが成立?)

など、謎は深まるばかりです。

というわけで、共著者というのは抜きにして、私個人も、長澤他p79の考えに賛成で、実に適切な分析だと思います。

といいますか、解釈論としてそう考えざるを得ないと思いますし、そういうふうにはっきり書いていない公取委のガイドラインやQ&Aは、実に不親切だと思います。

ガイドラインでは、1号の説明では、買いたたきの「通常支払われる対価」が108円なのだという文言解釈を通じて107円では買いたたきになるのだ、という結論を導いているのですが、たまたま「通常支払われる対価」という文言がない2号でも理屈は全く同じはずです。

つまり、2号の場合でも、108円で購入することの条件として商品を購入させれば、消費税に明示的に言及していなくても、

「消費税の転嫁に応じることと引換えに

に該当するというほかないと思います。

つまり、

108円で購入する=転嫁を受け入れる

ということです。

1号では、「通常支払われる対価」という文言がたまたまあったためにこの点が明示的にガイドラインで規定されることになっただけで、理屈は2号も同じはずです。

言い換えますと、

消費税の転嫁に応じることと引換えに」

というのは、

消費税率引上げ前の対価に消費税率引上げ分を上乗せした額で購入することと引換えに」

と読み替えるのが、論理的だということです。

この問題は、1号と2号で「転嫁」という意味を統一的に解釈すればこのように解さざるを得ないという問題であり、「通常支払われる対価」という文言があるかないかに左右されるべき問題ではありません。

少なくとも私には、「購入強制が転嫁受入れと対価関係にない場合には違反にならない。」という意見を出すことはできません。

私自身、公取委がここまで真剣にこの法律を執行するとは予想していなかったので、2号も甘く考えていたのですが、昨今の活発な執行をみると、転嫁法適用対象の取引をしている相手方には少なくとも増税のタイミングでは強制的に物を買わせたりしてはいけない、というアドバイスにならざるを得ないような気がします。

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