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2014年7月

2014年7月31日 (木)

Bowman, Patent and Antitrust, A Legal and Economic Appraisal

という本の前書きに、我が意を得たりという感じの解説がありましたので、紹介しておきます。

「この〔事情が許す限り最大限の請求を認めるという〕利益最大化テストは、一定の契約条項が特許権の保護を与えられた特定のイノベーションの利用を制限するか拡大するかに依存しない。それは、適法に与えられた独占権が存在しない場合に適切なテストである。有効な特許権に帰せられる収益の最大化を許すためには、報酬が(生産量の拡大につながる)効率性から生じたのか、(生産量の縮小につながる)取引の制限から生じたのかを評価する必要はない。」

要するに、期間などどの程度の独占権を技術に認めるかは特許法で政策判断をしているのだから、その範囲内では利益の最大化を認めるべきであって、さらに独禁法で生産量が増えるか減るかという基準で判断すべきではない、という主張です。

この本は、ロバートボークをして、Antitrust Paradoxの前書きで、「ボウマンのこの本があまりによく書けているので、自分の本では知財については全く触れなかった」と言わしめたという、すごい本です。

これで思い出すのは、日本の知的財産ガイドラインの、最高生産量の制限に関する次の記述です。

「製造数量又は使用回数の上限を定めることは、市場全体の供給量を制限する効果がある場合には権利の行使とは認められず、公正競争阻害性を有する場合には、不公正な取引方法に該当する(一般指定第12項)。」

これはまさに、特許法で認められたはずの独占権に、さらに、生産量を増やすか減らすかという点から絞りをかけようとしているのです。

私も何となく、「生産量が増えるのは一般的に競争的だから、ガイドラインの考え方にも一理あるのかな」と漠然と考えていましたが、ボウマンのいうとおり、生産量が増えるか減るかのテストは、法律上認められた独占権が存在しない場合のテストなわけです。

なので、このガイドラインの定めは、おかしいと言わざるをえません。

(後述のように、結果オーライの場合もあるので、実務的には結果的におかしくない、ということもあるかもしれませんが、理論的にはやはりおかしいです。)

またガイドラインの、「市場全体の供給量を制限する効果がある場合」というのも、意味がわかりません。

おそらくこういう意味ではないかと推測すると、たぶん次のようになるのでしょう。

まず、「市場全体の供給量を制限する」という以上、何を基準に減ったのか、というベンチマークをはっきりさせる必要があるでしょう。

このときに、単純に「最高数量制限の取り決めがない場合」をベンチマークにするのは、明らかに間違いです。

なぜなら、数量制限をしたほうが当該ライセンサーの技術を用いた製品の数量は、制限をしない場合に比べて減るに決まっているので、当該ライセンサーの商品も市場の供給量の一部をなす以上、

①当該数量制限が競争者の供給量を増やしてトータルでトントンにする効果がある場合か(そんなのあるのか?)、あるいは、

②競争者の供給能力や新規参入に制限がない、という場合

に限られることになり、そこそこ強い特許権だとまず間違いなく違法になってしまうからです。

これはまさに、ボウマンが冒頭に引用した前書きで戒めている間違いです。

とすると、考えられるベンチマークは、「具体的な事実関係に照らして本来あるべき供給量」から減ったかどうか、でしょう。

具体的にいえば、日之出水道事件では、本来は無償かつ無制限のライセンスをするという条件付きで入札使用に技術が採用されたのだから(当該事案でそう認定できたかはさておき、単純化のための説明です)、そのコミットにしたがった供給量がベンチマークになります。

アップル対サムスン事件のようなFRAND宣言をした標準特許の事案では、「ライセンサーがFRAND宣言に従った場合の供給量」がベンチマークになるでしょう。

ただ、この考え方は、何をもって「本来あるべき」というのかが非常に規範的というか、価値判断が入ってくるので、FRANDのようなわかりやすい例でないと、実際の適用に非常に苦労しそうです。

しかも、サムスンも日之出も同じですが、このようなベンチマークを考える場合には、単純にライセンス契約上の制限条項の競争効果を見ればいいのではなくて、その前の段階の、「標準に採用されるための競争」とか、「入札仕様に採用されるための競争」といった、2段階の競争の第1段階に目を向けなければなりません。

しかも、その第1段階の競争は、ふつう、知的財産権とは何の関係もありません。(限界費用がゼロに近いとか、固定費を回収させないと技術開発のインセンティブが削がれるとか、そういった知財独特の事情は、まったく考慮する必要がありません。)

なので、上記ガイドラインの最高数量制限の定めは、知財ガイドラインの中にありながら、本質的には(情報に独占権を与えるという)知財の本質とは何の関係もなく、知財の文脈で問題になることが多いから知財ガイドラインに書いてあるだけ、ということになります。

というわけで、だいぶ話が広がってしまいましたが、特許権で適法な独占権を認めておきながら、さらに生産量が増えるか減るかのテストを持ち出すのは、たぶん理論的に誤りなのでしょう。

ボウマンはバリバリのシカゴ学派のなので具体的な適用には慎重である必要があるかもしれませんが、私は非常に説得力があると思います。

少なくとも知財と独禁の議論は、ここからスタートすべきでしょう。

2014年7月29日 (火)

最近の中国期限切れ肉事件と景表法

最近、中国の工場で期限切れ肉を加工したものがマクドナルドやファミリーマートで使用されていたことが問題になっていますね。

この事件をみて私が思ったのは、「牛脂注入肉が景表法違反になるのだったら、期限切れ肉もなるのかな?」ということでした。

このブログでも過去何度か取り上げましたが、消費者庁のメニュー表示ガイドラインでは、

「Q-4

飲食店において、牛脂注入加工肉を焼いた料理のことを「ビーフステーキ」、「ステーキ」と表示することは景品表示法上問題となりますか。

A 問題となります。

<説明>

「ビーフステーキ」、「ステーキ」と表示した場合、Q-2の説明のとおり、この表示に接した一般消費者は、牛脂注入等の加工をしていない牛の生肉の切り身を焼いた料理であると認識するものと考えられます。したがって、実際には、牛脂注入加工肉を使用しているにもかかわらず、あたかも、牛の生肉の切り身を焼いた料理であるかのように示す表示は、景品表示法上問題となります。」

とされています。

私は、ガイドラインのこの部分はおかしいんじゃないか、と折に触れて訴えてきました。

牛脂注入肉を「牛肉」(「ステーキ」でもなんでもいいですが)と表示するのが景表法違反なら、期限切れ肉を「鶏肉」(「チキン」でもよいでしょう)も景表法違反にしないと辻褄が合わないでしょう。

でも、本事件を消費者庁が景表法違反で摘発することは、まず考えられないと思います(もし摘発したら、牛脂注入肉のガイドラインの定めがおかしいことが、ますます明らかになってしまうでしょう)。

上で引用したガイドラインの期限切れ肉バージョンを作ってみると、

「飲食店において、期限切れ鶏肉を用いた料理のことを「チキンナゲット」、「ガーリックナゲット」と表示することは景品表示法上問題となりますか。

A 問題となります。

<説明>

「チキンナゲット」、「ガーリックナゲット」と表示した場合、・・・この表示に接した一般消費者は、期限切れでない鶏肉を用いた料理であると認識するものと考えられます。したがって、実際には、期限切れ鶏肉を使用しているにもかかわらず、あたかも、期限切れでない鶏肉を用いた料理であるかのように示す表示は、景品表示法上問題となります。」

という感じで、これはこれで何も違和感がなくなってしまいますね。

牛脂注入肉と期限切れ鶏肉を景表法上あえて区別するとしたら、

①牛脂注入肉は、一応、商品として市場で受け入れられているものなので、これを生肉として表示するのはグレードを偽っているものであるので景表法の優良誤認の問題である、

②期限切れ肉は、およそ市場で取引されるものではないので、これを通常の鶏肉として表示するのはグレード云々以前の問題であり(?)、刑法で罰せられるべきような明確な違法行為であって(?)、景表法の優良誤認の問題ではない、

ということでしょうか。

我ながら無理のある理屈だと思います(笑)。

ただ、何となく消費者庁を含む関係者の頭の中には漠然と、景表法で処理すべき問題(牛脂注入肉)と、そうでない問題(期限切れ鶏肉)、というのが、「優良誤認」という法律の要件とは別のところであるのかもしれません。

しかし、そんな印象論ではまともな法律論とはいえないでしょう。

もっとも、「労働契約は労働法の問題なので独禁法の問題ではない。」という見解を伝統的に採用している公取委の流れを汲む消費者庁であれば、「期限切れ肉は刑法の問題であって景表法の問題ではない。」ということを言い出しかねないような気もしますし、案外、それが実務的には受け入れられたりするかもしれません(もちろん、私は反対です)。

というわけで、牛脂注入肉の事件は、やはり世論に後押しされて解釈論の限界を踏み越えてしまった、と考えざるを得ないと思います。

もう1つのあり得る理屈としては、

①期限切れ肉は「肉」という表示を偽るものではない(期限が切れていても「肉」であることには変わりはない、あるいは、消費者は「肉」という表示をみて期限切れでないことを期待するわけではない)ので景表法の問題ではない、

のに対して、

②牛脂注入肉は「肉」とは呼べないものであり(あるいは、「肉」といえば消費者は牛脂注入肉でないものを期待するので)、表示の偽りがあるので、景表法の問題だ、

というものが考えられますが、そこがまさに問題で、私は、牛脂注入肉も「肉」だと思いますし、「肉」という表示で消費者がそこまで期待するというのも言い過ぎだと思います(「肉」という表示から期待するのではなく、牛脂注入肉がどういうものかもよく知らない、というのが実態でしょう)。

一つ注意点は、景表法違反は故意過失を問わず成立する、ということです。

これは、景表法違反に課徴金の導入が検討されている現在、さらに重要な問題です。

最後に念のためですが、私は期限切れ鶏肉事件が景表法違反だと言いたいのではありません。牛脂注入肉が景表法違反ではない、と言いたいのです。

2014年7月28日 (月)

(転嫁法)買いたたき・減額と購入強制等の「転嫁」の意義の不整合

消費税転嫁特別措置法3条1号では、

「商品若しくは役務の対価の額を減じ〔減額〕、

又は

商品若しくは役務の対価の額を当該商品若しくは役務と同種若しくは類似の商品若しくは役務に対し通常支払われる対価に比し低く定める〔買いたたき〕

ことにより、特定供給事業者による消費税の転嫁を拒むこと。」

が禁止されています。

これに対して同条2号では、

「特定供給事業者による消費税の転嫁に応じることと引換えに

自己の指定する商品を購入させ〔購入強制〕、若しくは自己の指定する役務を利用させ〔役務利用強制〕、

又は

自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること〔不当な利益提供の強制〕。」

が禁止されています。

さて、この1号と2号、同じ転嫁拒否行為というカテゴリーでくくられるものの、その内実はけっこう違うようにみえます。

つまり、1号の方は、公取委のガイドラインで、増税前105円で購入していたものを108円未満で購入することは、合理的な理由のない限り、減額・買いたたきに該当することになっています。

1円引いて107円で購入する名目が、消費税分を1円引いたのか、本体価格を1円引いたのかは問わず、いずれでも違法になる、ということです。

公取委ホームページの「よくある質問」でも、

「Q12 当事者間で既に取り決めた対価を事後的に減じて支払うことは「減額」として禁止されていますが,消費税分の減額であることを明示しなければ消費税転嫁対策特別措置法上の問題にはならないのでしょうか。

A 当事者間で既に取り決めた対価を,合理的な理由なく事後的に減じて支払った場合には,消費税分の減額であることを売手である特定供給事業者に明示しなくても,「減額」(消費税転嫁対策特別措置法第3条第1号前段)に該当し,違反となります。

なお,これと同様に,消費税率引上げ前の対価に消費税率引上げ分を上乗せした額よりも低い対価を定める場合には,消費税分の対価の引下げであることを明示しない場合であっても,合理的な理由がない限り「買いたたき」(消費税転嫁対策特別措置法第3条第1号後段)に該当し,違反となります。」

と回答されています。

条文の解釈としてこれが妥当か否かはさておき、公取委が言っているのだから仕方ありません。

(まあ、「本体価格を減額したのであって、消費税分を減額したのではない。」という言い訳を認めると、3条1号はまったく無意味になるので、仕方ないといえば仕方ないのですが、これは何をもって消費税の転嫁拒否というのか、という、理論的には非常に難しい、というか、答えの出ない問題です。)

これに対して2号の方は、「消費税の転嫁に応じることと引換えに」と条文で明示されているために、購入強制等と消費税の転嫁の受入れが対価関係に立つことが必要になっています。

なので、条文を素直に読む限りは、あくまで、

「○○を買ってくれたら消費税3%分上乗せしてあげる。」

という必要があり、

「○○を買ってくれたら(本体価格を)3%分値上げしてあげる。」

というのでは足りない、ということになりそうです。

幸い(?)、ガイドラインをみても、

「平成26年4月1日以後に特定供給事業者から供給を受ける商品又は役務について、消費税率引上げ分の全部又は一部を上乗せする代わりに、特定供給事業者に対し、商品の購入、役務の利用又は経済上の利益の提供をさせる行為である。」

とされており、このような解釈でよさそうにみえます。

しかし、本当にそのような解釈でよいのでしょうか?というのが今日のテーマです。

この点、当事務所の弁護士で執筆した長澤他『実務解説消費税転嫁特別措置法』p78では、2号でも潜脱防止のために1号と同様に形式的な解釈が採用されるのではないか、という考え方が示唆されています。

つまり、

「特定事業者が、平成26年4月1日以後に特定供給事業者から供給を受ける商品又は役務について、消費税率引上げ分の全部又は一部を上乗せするのに伴って商品購入又は役務の利用の要請をする場合には、特定事業者において商品購入又は役務利用の要請をする場合には、特定事業者において商品購入又は役務の利用の要請を行う取引上の合理的必要性を明らかにしない限り、消費税の転嫁に応じることと引換えに、購入強制・役務の利用強制を行ったものと判断されることが見込まれる。」(p79)

という指摘です。

共著者の私がいうのもなんですが、1号を公取のガイドラインやQ&Aのように解釈する以上は、2号もそのように解しないと辻褄が合わないと思います。

また、辻褄があうとか合わないとかの形式論の以前の問題として、もし、

「あくまで消費税の引き上げとは関係ないけれど、○○を買ってくれたら、今まで105円で買っていたものを108円で買ってあげる」

と特定事業者が持ちかけたら、どうするのでしょう?

これを2号違反でないといったら、2号が適用される場面なんて、ほとんどなくなってしまうのではないでしょうか?(そういう点では、1号と全く同じです。)

「3円だから、何も言わなくても消費税のことなんだ」と強引に事実認定してしまうという解決もあり得るのかもしれませんが、

「○○を買ってくれたら、今まで105円で買っていたものを109円で買ってあげる」(→3円分は消費税なので、やっぱり対価性あり?)

とか、

「○○を買ってくれたら、今まで105円で買っていたものを107円で買ってあげる」(→2円は消費税なので、購入強制と1円分の買いたたきが成立?)

など、謎は深まるばかりです。

というわけで、共著者というのは抜きにして、私個人も、長澤他p79の考えに賛成で、実に適切な分析だと思います。

といいますか、解釈論としてそう考えざるを得ないと思いますし、そういうふうにはっきり書いていない公取委のガイドラインやQ&Aは、実に不親切だと思います。

ガイドラインでは、1号の説明では、買いたたきの「通常支払われる対価」が108円なのだという文言解釈を通じて107円では買いたたきになるのだ、という結論を導いているのですが、たまたま「通常支払われる対価」という文言がない2号でも理屈は全く同じはずです。

つまり、2号の場合でも、108円で購入することの条件として商品を購入させれば、消費税に明示的に言及していなくても、

「消費税の転嫁に応じることと引換えに

に該当するというほかないと思います。

つまり、

108円で購入する=転嫁を受け入れる

ということです。

1号では、「通常支払われる対価」という文言がたまたまあったためにこの点が明示的にガイドラインで規定されることになっただけで、理屈は2号も同じはずです。

言い換えますと、

消費税の転嫁に応じることと引換えに」

というのは、

消費税率引上げ前の対価に消費税率引上げ分を上乗せした額で購入することと引換えに」

と読み替えるのが、論理的だということです。

この問題は、1号と2号で「転嫁」という意味を統一的に解釈すればこのように解さざるを得ないという問題であり、「通常支払われる対価」という文言があるかないかに左右されるべき問題ではありません。

少なくとも私には、「購入強制が転嫁受入れと対価関係にない場合には違反にならない。」という意見を出すことはできません。

私自身、公取委がここまで真剣にこの法律を執行するとは予想していなかったので、2号も甘く考えていたのですが、昨今の活発な執行をみると、転嫁法適用対象の取引をしている相手方には少なくとも増税のタイミングでは強制的に物を買わせたりしてはいけない、というアドバイスにならざるを得ないような気がします。

2014年7月23日 (水)

【お知らせ】日本公認不正検査士協会(ACFE)主催『グローバル・ビジネスにおける不正リスク』のお知らせ

日本公認不正検査士協会さんから、

第5回 ACFE JAPAN カンファレンス 10月10日(金)

『グローバル・ビジネスにおける不正リスク』

のご案内とご招待をいただきましたので、このブログでも告知させていただきます。

ご興味のある方は、同協会のホームページから申し込みできます。

私も講演とレセプションに出席してこようと思います。

2014年7月18日 (金)

1円未満の消費税切り捨てと代金減額

6月27日に出された(株)ヒマラヤに対する下請法違反の勧告で、

「ヒマラヤは,

平成24年3月から平成26年1月までの間,

下請事業者から受領した給付について,

複数の伝票に分けて消費税相当額を計算し,

その際,伝票ごとに1円未満の端数を切り捨てていた。」

というのが違反行為として認定されています。

しかし、これがどうして違反になるのかは、ちょっと考えてみる必要があります。

というのは、平成25年版の下請法講習テキストp46では、

「下請代金の支払に際し、端数が生じた場合、端数を1円以上の単位で切り捨てて支払うこと」

というのが減額に該当するとされているからです。

これをみると、「1円以上」の切り捨てがいけないのだから、「1円未満」の切り捨ては構わないように見えます。

同様に、Q76では、

「下請代金の支払に際し端数が生じた場合、当該端数を四捨五入の方法によって処理することは問題ないか。」

という質問に対して、

「支払時点において、円未満を四捨五入することは問題ない。

また、支払うべき下請代金の額に円未満の端数があった場合、これを切り捨てて支払ったとしても、下請代金の額を減ずる行為とはみなされない。」

と回答されています。

つまり講習テキストでは、切り捨てが円未満かどうかが判断の分かれ目になっています。

ところが前記ヒマラヤの事例では、切り捨てていたのは1円未満だったようです。

とすると、なぜ違法とされたのかといえば、「複数の伝票に分けて消費税相当額を計算し」としたことがいけないと判断されたのだろう、と推測されます。

つまり、例えば本体価格10万円の下請代金について、そのまま消費税を支払えば、総額は10万8000円ですが、これを7枚の伝票に分ければ、

①1万4285円の伝票が2枚と

②1万4286円の伝票が5枚

できあがり、それぞれに消費税8%を上乗せすると、

①’1万5427.8円の伝票が2枚と

②’1万5428.88円の伝票が5枚

できあがり、これから1円未満を切り捨てると、

①’’ 1万5427円の伝票が2枚と

②’’ 1万5428円の伝票が5枚

できあがり、合計10万7994円ということになり、10万8000円から6円減額した、という理屈です。

でも本当に、こんなものを下請違反に問わないといけないものでしょうか?

そもそも講習テキストでは1円未満の切り捨ては許されるとされており、別に減額したいからという理由ではなく(6円惜しさに手間をかけて伝票を分けるとは思えないので。)、何らかの別の経理上の理由で伝票を2枚以上に分けたいということはありそうな話で、こういうのを全部代金減額に当たると言われたら親事業者はたまらないのではないでしょうか?

伝票1枚あたり10円とか、よっぽど極端なことをしない限り、伝票をN枚に分けて節約できる消費税は(N-1)円に過ぎないわけです。

ともかく親事業者としては、経理上の理由で伝票を分けるときには減額(消費税分に限りません!)されていないか注意が必要になります。

それに、そもそも論ですが、1円以上の切り捨ては代金減額に該当するという理屈も、今一つよくわかりません。

3条書面に端数処理について明記していなくても1円未満の切り捨ては大目に見る、というならわかりますが、もしそういうルールなら、3条書面に、

「代金の10円未満の端数(消費税に限りません)は切り捨てます。」

と明記されていれば、何ら減額には該当しないように思います(3条書面通り払っているので)。

(ちなみに、ヒマラヤの件は消費税分を満額払っていないということなので消費税転嫁法が優先適用されそうですが、減額対象が今年1月まで(つまり4月の増税前)なので、転嫁法の適用はありません。)

ともあれ、この事例も担当官が解説を書くでしょうから、注目しておきたいと思います。

2014年7月17日 (木)

カルテル非参加者に対する不当利得返還請求

外国では、カルテル非参加者(カルテル参加者の競争者)から購入した購入者がカルテル参加者に対して損害賠償請求をすることができるかが議論されており、米国でもだいたいは原告適格のレベルで否定されることが多いのですが、これを肯定する欧州司法裁判所の中間判決が最近出ました(2014年6月5日)。

いわゆるumbrella effects(アンブレラ効果)に基づく請求で、カルテルにより市場価格が吊り上げられたのだから、カルテル非参加者から購入した者もカルテルにより損害を被った、という理屈です。

日本の不法行為法(民法709条)では、

①加害者の故意・過失、

②被害者の権利侵害、

③因果関係のある損害、

があれば損害賠償は認められます。

なので、原告適格(standing)のようなカチッとした理屈で縛られない柔軟な解釈が可能なので、案外、欧米の裁判例よりもこの請求は認められやすいかもしれません。

まず、被告はカルテル参加者なので故意はあるでしょう(①)。

②の権利侵害も問題ないでしょう。

カルテル参加者から買った購入者の場合でも、カルテル参加者の本音としては、「契約で納得して買ったんだから損害はない。」といいたいところですが、消費者には公正な競争で形成された価格で購入する権利があるというのが、競争法の視点からみた不法行為法の一般的な解釈なのではないかと思います。この点は、購入者がカルテル非参加者から購入した場合でも左右されないでしょう。

問題は因果関係(③)ですね。

カルテル参加者から購入した場合には、因果関係は直接的だといえますが、非参加者から購入した場合には、非参加者との交渉というステップが介在しているので、果たして因果関係が認められるのか?ということです。

しかし、これを一律に否定する必要はないのではないでしょうか。

市場価格を基準に取引価格が形成されていることが明らかな場合には、むしろ因果関係は否定しづらいと思います。

それに対して、相対で価格が決まり、価格のバラツキが大きい商品の場合だと、因果関係の立証は難しいですね。

実は今回検討したいのは、以上の話とは似て非なる話で、カルテル非参加者自身が損害賠償請求や不当利得返還請求を受けることはないのか、ということです。

まず、カルテル非参加者には故意・過失はないので、不法行為は無理でしょう(参加してないけど薄々カルテルの存在を認識していた、というような場合は・・・難しいので割愛します)。

でも、不当利得はどうでしょう。

民法703条では、

「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。 」

と規定されています。

少なくとも、受益者の故意過失は要件になっていません。(ただし、悪意の受益者はその受けた利益に利息を付して返還しなければならず、なお損害があるときは、その賠償もしなければいけない、という限りで意味があります。民法704条)。

なので善意の受益者(カルテル非参加者)も不当利得返還請求を受けることがあり得るわけです。

そこでポイントは、「法律上の原因なく」の意味で、我妻他『コンメンタール民法(補訂版)』p1211では、

「『法律上の原因なく』とは、財産的価値の移動をその当事者間において正当なものとするだけの公平の理念からみた実質的・相対的な理由がないという意味である。」

と説明されています。

つまり、カルテル非参加者とそれからの購入者の間に、競争価格を超えた価格の移動を正当とするだけの公平の理念からみた実質的・相対的な理由があるかどうか、が問題です。

私は、「公平の理念からみた実質的・相対的な理由」はあると思いますね。

理由は、詐欺も強迫もなく、お互い納得の上で購入しているから、というので十分だと思います。

実務的な感覚としては、カルテル非参加者に面と向かって不当利得返還請求を行うことなど思いつきもしないのではないでしょうか。

(でも、共同被告で何人か訴えた場合に、そのうちの一人が、「うちは大手に追随しただけで、カルテルには参加していない」という反論をしてきたときに、原告が予備的に、以上のような理屈で不当利得返還請求をする、という形で争点になることはあるかもしれません。)

別の理由は、カルテル非参加者がカルテルに追随することは単なる利益最大化行為である場合が多く、それ自体は非難すべきではない、ということです。

消費者の利益の観点からすれば、カルテル非参加者にも本来の競争価格で販売する義務を負わせるという理屈もあり得ますが(前述の競争価格で購入する消費者の権利の裏返し)、それでは非参加者にあまりに酷でしょう。

というわけで、カルテル非参加者に対する不当利得返還請求(および不法行為に基づく損害賠償請求)は認められないと考えます。

こういう角度から独禁法と民法を眺めると、独禁法と民法の保護法益(あるいは役割)は何なのか、ということが見えてくるような気がします。

2014年7月16日 (水)

代理店を変更したユーザーに変更理由を尋ねるルールについて(平成17年事例1)

平成17年度の相談事例集の事例1

「電子機器メーカーが,取引先販売代理店を変更しようとするユーザーに対し,販売代理店変更理由の提出を求めることが,独占禁止法上問題となるおそれがあると回答した事例」

というのがあります。

事案は、あるメーカー(相談者)が、複数の販売代理店を通じてある電子機器を販売していたところ、ある販売代理店の既存のユーザーに別の販売代理店が売り込みをかけて契約獲得に成功した場合、正式契約前に、契約を獲得した販売代理店は当該ユーザーから代理店の変更理由書を取得するというルールを定める、というものです。

結論として公取委は、

「通常,販売代理店からの売り込みに応じ,取引条件等を勘案してユーザーが販売代理店を自由に選ぶことで, 販売代理店間の競争が促進されるところ,本件ルールにより,ユーザーから書面の提出を得られない場合,販売代理店間の競争が阻害される可能性がある。」

という理由で独禁法上問題ありとしました。

しかし、私はこの判断は大いに問題があり、少なくとも限定的に読むべきと考えます。

つまり、本事例では需要の代替性の観点からは市場シェアが1社で100%(つまり独占)だった、という点に特殊性があり、一般化はできないと考えます。

まず根本的に、ブランド内競争を重視し過ぎです。

また、代理店変更の理由を尋ねるくらいで有意な競争制限効果が生じるのかも疑問です。

相談者も、

「ユーザーから変更理由を聞くことによりサービスが改善されるなど,ユーザーの利便性向上に資する」

と主張していたようですが、実際、アフターサービスに不満で代理店を変更されたとかいう事実があれば、メーカーとしても黙っていられないはずで、そういう情報は極めて重要な営業情報であると思います。

公取委は、

「そのような目的を達成するために,本件ルールが不可欠であるとは認められない。」

という理由で違法としていますが、効率性達成のためにその制限条項が「不可欠」でなければならないなどという規範は聞いたことがありません。

それに、他の代替的な手段というのも、ちょっといいアイディアが思いつきません。

つまり、ユーザーから理由を聞くというのが、最も安価で合理的な情報収集方法だったんじゃないかと思われます。

おそらく本件では、

「特に,本件ルールの制定は,顧客略奪を防ぐ目的で販売代理店側から求められたという経緯があり,A社による本件ルールが,販売代理店の間で競争回避の目的で利用される可能性が高く,販売代理店間の競争を阻害するおそれがある」

という部分が、いかにも俗受けしそうな事情で、公取委もこれに飛びついたんじゃないかと推測されますが、「競争回避の目的で利用」って、どういう意味なのか私には理解できません。

どうやってこのルールを「競争回避の目的で利用」できるのでしょう?

理由を問われたユーザーは、「こっちの代理店の方が安かったから。」と答えれば足りるのではないでしょうか?

その程度の手間で、どうして「競争回避の目的で利用」しているとまでいえるのでしょうか?

安い方から買うのはユーザーとしてある意味当然なので、「安かったから」と答えるのに何ら躊躇があるとは思われません。

躊躇しそうな場合を無理やり考えてみると、ユーザーの購買担当者が新しい代理店のほうから接待攻勢を受けた、とかいう場合でしょうか。でもそれって、競争法の話ではありません。

確かに取引先を乗り換えるコスト(スイッチングコスト)を上げることは競争抑制につながりますが、一筆書くことがそれほど大きなコストとは思えません。

まして、その一筆を書きさえすれば新しい代理店から安い価格で同じ商品が安く買えるということになれば、乗り換えを抑制するようなコストとは到底思われません。

公取委の回答では、そのような分析がまったくなされていません。

スイッチングコストの点以外に本件ルールが乗り換えを抑制するメカニズムとしては、本件ルールにより代理店が他の代理店の既存顧客に対して安値を提示するインセンティブが下がる、ということが理屈の上では考えられますが、現実には、安売りをする代理店は、こんなルールくらいで安売りをやめることはないでしょう。

それとも、「初めてのお客さんに一筆もらうのは気が引ける。」と代理店は考えるだろう、と公取委は考えたのでしょうか?

しかしそんなことはありません。営業マンというのは口がうまいので、いくらでも説明の仕方は考えるでしょう。

あるいは、「一筆書いてもらったらさらに1000円値引きします!」というかもしれません(もちろん、一筆書いてもらおうともらわなかろうと、最初から1000円値引きするつもりなわけです。)

あるいは公取委は、「一筆書いてください。」と言われたらへそを曲げて、「そんなこというならお宅からは買わない。」というような、経済的に不合理な、子供じみたユーザーを想定していたのでしょうか。

・・・などといろいろ考えると、本件ルールの真の目的は顧客のクレームを効果的に吸い上げることだった可能性がかなりあると思います。

少なくとも公取委のこの判断によって、効果的なクレームの吸い上げが阻害された可能性があるように思われます。

(ひょっとしたら、代理店からのクレームに対して、メーカーが「ここまでやってます。」という態度を示すための「ポーズ」だったのかもしれませんが(ありそうな話です)、もし反競争効果のないポーズに過ぎないなら、独禁法で禁止する必要はないでしょう。)

ある行為が独禁法違反かどうかは、行為の客観的効果(本件では、販売代理店を乗り換えることをユーザーが控えるようになる効果、あるいは代理店が安値を提示するインセンティブを抑制する効果)を重視すべきであって、行為者の主観(競争回避の目的で利用(?))を重視すべきではありません。

それに、本件に当てはまるのかはわかりませんが、一般論としては、メーカーにとって、代理店同士が既存の顧客を食いつぶしあうのは非常につらいものがあります。

つまり、メーカーとしては、既存の顧客を食いつぶしあってもトータルの売上は伸びないので、代理店には新規顧客を開拓してほしいわけです。

とくに、商品によっては最初の説明や説得にコストを要するものもあり、そのような場合には、最初に売り込みに成功した代理店の労力に別の代理店がただ乗り(フリーライド)することになってしまい、販売政策上非常に大きな問題です。

もちろん、フリーライドの防止だけが独禁法の目的ではなく、ブランド内競争も無視していいわけではないのですが、相当微妙なバランスが必要な事案であるはずなのに、公取委はルール導入の経緯(動機)だけに乗っかって違法と判断したようにみえ、分析として稚拙です。

こういう大雑把な、エピソードを重視した、義理人情に訴える浪花節的な分析をしていると、もっと微妙な事案がでてきたときに整合性が取れないのではないでしょうか。

例えば、

①メーカーが、A代理店の既存ユーザーへB代理店が販売するときに仕切り価格を上げることは違法でしょうか。

あるいは、

②メーカーが新規顧客を開拓した代理店にだけリベートを払うことは違法でしょうか。

①と②は経済的には同値なので、②が合法(これを違法という人はいないでしょう)なら、①も合法になるはずです。なので私は①も合法と考えます。

本件ルールは、①②に比べれば価格に対する影響が小さいことは明らかであるように思いますが、公取委の判断では、①②のような場合も、「顧客略奪を防ぐ目的で販売代理店側から求められたという経緯」さえあれば違法ということにならざるを得ないように思います。

少々古い相談事例を蒸し返して恐縮ですが、類似の相談事例が今後あった場合には、公取委にはぜひ慎重に判断してほしいものです。

2014年7月15日 (火)

効果的なコンプライアンスプログラムによる減刑(「米国法上のカルテル事案における対応実務」商事法務2036号)

商事法務2036号25頁の、森村佳奈「米国法上のカルテル事案における対応実務-企業・個人の防御の観点から-」という論文に、

「企業が効果的なコンプライアンスプログラムを備えていたにもかかわらず違反行為が生じた場合には3ポイントが減算される。」

との記述があります(p26)。

また、p34でも、

「・・・有効なコンプライアンスプログラムが存在することが認められれば、有責性スコアが3ポイント減算される可能性がある。」

と述べられています。

つまり、効果的なコンプライアンスプログラムを備えておけば、違反行為が生じても刑が減軽されるという説明です。

この説明は日米問わずいろいろなところでされるのですが、ガイドラインの文言の説明としては正しいものの、実務的には額面通り受け取ることはできません。

というのは、実際に効果的なコンプライアンスがあったという理由で減刑がなされた事例は存在しないからです。

それはDOJが摘発した企業の中にたまたま「効果的なコンプライアンスプログラム」を持っている企業がなかったからではなくて、そもそもDOJが、「違反が起こったという事実こそが、コンプライアンスプログラムが機能していなかった(有効でなかった)ことの何よりの証拠だ」というスタンスを取っているからです。

有効なプログラムがあっても違反をする従業員は存在するでしょうから、このDOJの考えは理屈としていかがなものかという気もしますが、ともかくそういうことなのだから仕方がありません。

DOJも折に触れてスピーチなどでそのことを述べていたはずですし、今まで会った何人もの元DOJの方々や米国弁護士も同じことを言っていました。

ですので、「有効なコンプライアンスプログラムを作ればカルテルで罰金が安くなります。」という売り文句で法律事務所が売り込みをかけてきた場合には、割り引いて聞く必要があります。

(なお上記論文の趣旨は、そういうことでないのだろうと私は理解していますし、論文自体は大変ためになるので一読をお勧めします。)

以前経験したところでは、ある米国法律事務所が、DOJの調査を受けた日本企業に対して、「コンプライアンスプログラムを作れば罰金が安くなる」といってプログラムの作成を勧めてきたことがありましたが、捜査が始まった後に作っても、なおさら意味はありません。

ただし、私はコンプライアンスプログラムが無意味だと言っているわけではありません。

むしろその逆で、有効なコンプライアンスプログラム(その後の継続的な社内教育も含む)は、カルテルを防ぐ上で極めて有効だと思います。

ただ、そういうと少々コンプライアンスプログラムを持ち上げ過ぎで、もうちょっと現実に即した言い方をすれば、「コンプライアンスプログラムがない会社はズブズブでカルテルをやっている傾向がある(しかも長期間、担当者間で引き継がれながらやっている)」というのが適切かもしれません。ともあれ、言いたいことは同じです。

「有効なコンプライアンスプログラムがあったおかげでカルテルを防げた実例があるのか」、と問われると、完全に防げてしまうとそもそもDOJの目にも弁護士の目にも触れないので正直よくわからないのですが(笑)、一部カルテルをやってしまっていても、コンプライアンスプログラムのおかげで被害の拡大を防げた、と実感できるケースは結構あります。

要は、量刑ガイドラインでコンプライアンスプログラムが有利に斟酌されるという説明をする場合には、併せて、実際に減刑された例はない(し、今後もないであろう)ことも一緒に伝えないと、事実の片面しか伝えていないことになるのではないか、ということです。

2014年7月 8日 (火)

試作品と下請法

財団法人全国中小企業取引振興協会作成の、『下請かけこみ寺相談概要』の事例7に、以下のような事例があります。

「《相談内容》

A社(資本金2億円)は、B社(資本金15億円)から製品の部品の製造委託を受けていますが、商品化を予定した製品の試作品の製作を依頼されました。

当社は苦心の末、試作品を納品しましたが、その部品の製造は他社に委託され、結局試作品の費用も支払ってもらえませんでした。

B社のこのような行為は下請代金法に違反しないのでしょうか。

《下請かけこみ寺アドバイス内容》

A社とB社の取引は「製造委託」に該当し、B社の資本金は3億円を超え、A社の資本金は3億円以下(2億円)であることから、下請代金法の資本金基準(3億円)を満たしており、下請代金法が適用されます。

本事例では、A社が試作品を納品したにもかかわらず、その代金を支払ってもらっておらず、下請代金法の「支払遅延」(法4条1項2号)となっていると考えられます。

また、A社は、無償で試作品を作らされたことになるので、「不当な経済上の利益提供」(下請代金法4条2項3号)に該当するおそれもあります。

B社に対し、このような行為は、下請代金法に違反することになるので、見直してもらうよう交渉してはいかがでしょうか。」

私はこの回答にはいくつかの問題があると思います。

まず、試作品の製造の委託が製造委託に該当するかですが、この点については、粕渕他編著『下請法の実務(第3版)』p39に、

「Q6 試作品の製造を委託することは、製造委託に該当するのか。

A 商品化することを前提にしており、最終商品と同等のレベルにあるような商品化の前段階にある試作品の製造を委託する場合には、製造委託(類型1)に該当する。

また、研究開発の段階等で商品化に至らない試作品の製造を委託する場合には、自家使用物品の製造委託として、貴社が研究開発段階の試作品製造を業として行っていれば、製造委託(類型4)に該当することとなる。」

とされています。

なので、実務上は、

①最終商品と同等レベルの試作品→類型1に該当、

②そこまでではない試作品→親事業者自身が業として製造している場合に限り類型4に該当、

ということで、一応整理されていると思います。

なお、この解釈が下請法2条1項の製造委託の定義に照らして正しいのかを一応チェックしておくと、2条1項の製造委託の類型1は、

「事業者が業として行う販売・・・の目的物たる物品若しくはその半製品、部品、附属品若しくは原材料若しくはこれらの製造に用いる金型・・・の製造を他の事業者に委託すること・・・をいう。」

とされています。

ですので文言上は、試作品が、

「販売・・・の目的物たる物品」

に該当するかどうかです(半製品、部品、付属品、原材料、金型、は無理でしょう)。

文字通りに条文を読めば、試作品はあくまで試作品であって、それをそのまま親事業者がユーザーに売ることは考えられません。

なので、試作品を「販売・・・の目的たる物品」に該当するというのは、文言上相当無理があると思います。

さらに粕渕他の説明もよく読むとかなり適用範囲が狭く、とくに、

「商品化することを前提にしており、・・・」

という部分は、その試作品がそのまま商品化されることが試作品の発注時に前提にされている場合を想定していると読まざるを得ません。

ですので、例えば複数の事業者に試作品を作らせてその中から一番良い物を商品化するという場合には、結果的に商品化された試作品も含めて、「商品化することを前提」にしているとはいえないでしょう。(結果的に商品化したら遡って「商品化することを前提にしていた」というのは、理屈として無理でしょう。)

ともあれ、文言上は厳密にいえば試作品を「販売の目的たる物品」というのは相当無理はありますが、適用範囲を相当狭く解釈する限り(「商品化することを前提」というのを上述のように解することや、他には、物理的に最終製品と同じでも、発注者の量産化に向けた最終試験にパスすることまで委託の内容に含まれている場合に限って「最終商品と同等のレベルにあるような商品化の前段階にある試作品」の製造を委託したといえる、と解するなど)、まあ、許される拡張解釈の範囲なのかなと思います。

さて、「かけこみ寺」の事例に話を戻すと、「かけこみ寺」では、

「A社とB社の取引は、『製造委託』に該当し」

といきなり述べており、試作品であることの問題意識がまったく出ていません。その時点で、問題ありです。

ある取引が製造委託に該当するかどうかはその取引ごとに決まるのであり、資本金が2億と15億だったらすべての物品の製造の委託が製造委託になるわけではありません。

次に、支払遅延の説明で、

「A社が試作品を納品したにもかかわらず」

と述べていますが、これも余分です。

支払遅延は、決められた期日を過ぎても代金を支払わなければ成立するのであり、納品の有無は関係がありません。

(最終段階の試作品でない限り、粕渕他の立場ですら「製造委託」には該当しないわけですから、一般的に試作品の製造委託について支払遅延が成立するはずがありません。)

ただ、その次の、

「A社は、無償で試作品を作らされたことになるので、『不当な経済上の利益提供』(下請代金法4条2項3号)に該当するおそれもあります。」

というのはそのとおりで、注意すべき点です。

しかし、より注意すべきなのは、不当な経済上の利益提供が成立するのは、当該試作品の発注が製造委託に該当するからではなく、それよりも以前からある製造委託が存在するためです。

逆にいうと、今回の試作品の発注が本当に初めてである場合や、以前から取引があるがいずれも下請取引には該当しない取引ばかりである場合には、試作品を無償提供させることは「不当な経済上の利益提供」には該当しません

事例7の≪相談内容≫で、

「A社(資本金2億円)は、B社(資本金15億円)から製品の部品の製造委託を受けていますが

というところが従前からの下請関係を表しており、ここが決定的に重要です。

(なお、不当な経済上の利益提供の要請は、下請取引と関係した利益の提供の要請である必要はなく、むしろそれとはまったく無関係な、例えば運送契約の下請先にラーメンを買わせるような場合の方がむしろ不当性が大きいということには注意が必要です。)

なお最後に蛇足ですが、以上は下請法だけに限った分析であり、例えば量産品を発注するつもりもないのに発注するかのように誤信させて無償で試作品を提供させたりすると、民法上の債務不履行や不法行為が成立する可能性があると思います。(これは資本金の額などは関係ありません。)

2014年7月 7日 (月)

平成25年度相談事例集について

6月18日に平成25年度の相談事例集が公表されました。

今年も突っ込みどころ満載ですが、いくつか気が付いたことをメモしておきます。

事例1

玩具メーカーによる店舗販売業者の過去1年間の販売価格の調査が独禁法違反ではないとするものです。

メーカーが小売店の価格を調査することについては、流通取引慣行ガイドラインで、

「メーカーの示した価格で販売しているかどうかを調べるため、販売価格の報告徴収、店頭でのパトロール、派遣店員による価格監視、帳簿等の書類閲覧等の行為を行うこと」

が違法であるとされており、実務上必要以上に萎縮効果を生んでいるという批判があるので、これに公取として答えようとしたものではないかと思われます。

ともかく、単なる価格の調査は違法ではない(「メーカーの示した価格で販売しているかどうかを調べるため」という目的がある場合に限り違法となる)ということをはっきりさせたということで、意義のある相談事例だと思います。

事例2

健康食品メーカーによる代理店の厳格な地域制限が問題なしとされた事例ですが、回答の理由で、

「本件は,X社が,販売代理店に対し,一定の販売地域を割り当て,地域外での販売を禁止するという厳格な地域制限を行うものであり,当該販売代理店の割り当てられた地域では,当該販売代理店はX社の健康食品Aのみを販売することとなるが・・・」

と述べられています。

しかし、これは間違いではないでしょうか。

厳格な地域制限なのだから、代理店は、割り当てられたテリトリー外で販売できなくなるだけで、X社以外の健康食品Aを販売することは自由なはずです。(公取の回答では、まるで排他条件付取引への回答みたいです。)

上記下線部分は、

「当該代理店は、割り当てられた地域外ではX社の健康食品Aを販売できないが」

が正しいのでしょう。

(ただ、いずれにせよブランド内競争の制限が問題となっている事案であるという肝心な点の分析がなされていませんが。。。差別化がなされていない商品だということは、事実認定のところで述べられています。)

事例3

メーカーの小売店に対する陳列方法の指定が問題ないとされた事例ですが、要は価格さえ制限しなければよい(「合理的な理由」は、高級感とか、品質に対する信頼性とかいった、漠然としたもので十分であり、安全性の確保などは要求されない(あってもよいが))という立場を公取委がより一層鮮明にした事例として意味があると思います。

事例4

福祉用具メーカーがインターネット販売業者にはリベートを払わないこととした事例です。

リベートの条件として、「適切な商品説明を行うための販売員教育」が必要とされている事案ですが、もちろん、「適切な商品説明を行うこと」をダイレクトにリベートの条件にしても全く問題ないでしょう。

気になるのは、理由の中で、

「X社はインターネット販売業者に対する卸売価格を引き上げるものではなく,・・・」

とされている点です。

これではまるで、卸売価格を引き上げてはいけないかのように読めます。

販売員教育のためのコストの補償を実質的にリベートで行うか卸価格の引き下げで行うかはメーカーの自由のはずです。

インターネット販売業者が実店舗販売に変更して商品説明をすることを条件に卸価格の引き下げをすることは、何ら問題ないはずで、その反面として、そういう変更に応じないネット業者への卸売り価格を上げることも問題ないはずです。

この点の事例集の理由付けは、私は大いに問題があると思います。事例集は実務上の影響力が大きいのですから、一言一言に気を配って書いてほしいものです。

事例6

不動産情報サイト運営業者が共同で、不当表示を行う不動産業者を排除するルールを統一することが問題なしとされた事例です。

これも結論は正しいと思うのですが、理由づけで、

「5社が,不当表示が判明した場合に,当該不当表示に係る不動産物件及び不動産業者に係る情報を共有することは,違法行為による一般消費者への被害拡大を防止するために行われるものであって,競争を阻害するものではないことから,」

としているのは、荒っぽいですね。

この理由づけでは、

「違法行為による一般消費者への被害拡大を防止するために行われるもの」

であれば、必然的に、

「競争を阻害するものではない」

ということになりそうですが、そんなことはまったくありません。

消費者への被害と競争の制限をどうバランスさせるのかがまさに問われるところなのであり、被害拡大防止のためなら競争制限してもOKというのであれば、何も悩みはなくなってしまいます。

また、似たような批判ですが、「競争を実質的に制限」ではなく、「競争を阻害」といっているのも問題です。これでは、被害拡大のための共同行為であれば何ら競争への悪影響はないといっているように読めます。

本来この事例は、誰が供給者で、誰が需要者で、どういう競争が制限されているのかを、丁寧に認定すべきでしょう。

その際、この情報サイトサービスが無料で提供されていますが、無料でも「市場」が成立するのか、という問題もありますし、不動産業者が需要者にアクセスするためにこれらの情報サイトサービスがどれほど重要なのか(他にアクセスの手段はないのか)といったことも、きちんと分析すべきでしょう。

事例7

事務用機器の消耗品をメーカーの商標を巧みに利用して消耗品の互換品を排除しようとした事例ですが、手動設定で互換品も使えるならOKということになっています。

これは、使いようによってはプリンタメーカーやコピー機メーカーにも参考になりそうですね。

というのは、事例集では、手動設定がどれだけ面倒なのかとかは問題していないし、手動設定できることを分かりやすく表示することを求められているわけでもないので、やりようによっては、けっこう互換品メーカーを排除できるのではないかと思えるからです。

この事例では現状独立系事業者は存在しないということで、ちょっと公取委も甘くなったのかもしれません。

事例8

新聞で大きく報じられた国内自動車メーカーのエンジン基礎技術の共同研究開発の事例を思わせる事例です(笑)。

私はマツダの大ファンで、今の愛車も赤のアテンザ・セダンのディーゼルですが(多くの専門家がおっしゃるとおり、このエンジンは間違いなく傑作だと思います)、ぜひ、スカイアクティブの優位は保ってもらいたいものです。

それはさておき、この相談事例では、共同研究開発の成果を外国メーカー(ヒュンダイとか、上海汽車とか)にも開放すべきとか、余計なことを言っていないのは大変潔くて結構だと思います。

もちろん、私もそんな義務はないと思います。

事例9と10

事例9は、自由化分野の電気料金の値上げは優越的地位の濫用にあたる、として、事例10は、でも消費税分の値上げは問題ない、とするものです。

でもそれだったら、事例9のほうで、どのくらいの上げ幅なら濫用になるのか、もうすこし詳しく述べるできではないでしょうか。

この説明では、値上げは一切認められないかのように読めてしまいます(消費税の上げ幅と同じ3%でもダメなのでしょうか?)

それと、燃料費が大幅に上がっているのに値上げをすることが濫用になるというのは、一般論としては相当問題があると思います。

従来の公取の運用例に照らしてこれほどエキセントリックな結論でありながら、理由づけは極めてあっさりとしており、全く説得力がありません。

公取委のエコノミストの方々は、ぜひ相談指導室の方々に、「資源の効率的分配」という言葉を教えてあげてください。

また、この事例を事前相談に持っていかずに値上げしたら、公取委は調査したのですかね。

電力会社は公共的な企業なのでそういうわけにもいかなかったのでしょうが、公取委に事前相談に行くことは慎重にも慎重を重ねるべきという思いを強くする事例ではあります。

事例12

事業者団体が火器器具の消耗品の使用期限を設定することが問題ないとされた事例です。

ちょっと気になるのは、理由づけで、

「会員に遵守を強制しない限り」

という留保が付けれらていることです。

この事例で問題になっている事業者団体の行為は、

①使用期限の設定

②使用期限の表示の要請

ですが、

①の設定には強制も何もないので、②の強制が問題といっているのだと思いますが(「要請」なのでよい)、表示くらいは強制してもよいのではないでしょうか。

事例13

協同組合が、共同購入で余った接着剤を第三者に売る際の参考価格を設定することを問題ありとした事例です。

これも、違法とするほどのものかという気がします。

まず、余った接着剤を売るくらいのことは、接着剤の販売市場全体から見れば微々たるものでしょうから、8条1号の「競争の実質的制限」はないでしょう。

4号と5号も挙げられていますが、参考価格の設定くらいで「不当に制限」(8条4号)とはいえないのではないでしょうか。

5号になると、なおさら当たらないような気がします。

2014年7月 2日 (水)

コンペと下請法

下請法講習テキストでは、

「自らデザインを作成している広告会社〔=親事業者〕が、

新製品のデザインコンペ(試作競技)に参加するに当たり、

デザインの作成を

デザイン業者〔=下請事業者〕に委託すること。」

というのが、情報成果物作成委託の類型3(自社で業として作成している自家使用の情報成果物の作成の委託)の例として挙げられています(p12)。

同じことは、下請法の運用基準にも書かれています。

さて、このような講習テキスト・運用基準の考え方には、

コンペ参加者(広告会社)がデザインコンペに参加するためのデザインというのは、あくまでコンペ参加者の自家使用(=自らがコンペに参加するという目的)のためのデザインだ、

という理解あるいは前提があります。

逆にいえば、

コンペ参加者がデザインコンペに参加するためのデザインは、コンペ参加者がコンペ主催者に納入するためのものではない、

ということです。

というのは、もしコンペに参加するためのデザインが、

「親事業者(=コンペ参加者)が発注元(=コンペ主催者)に納入するための情報成果物」

だとすると、その情報成果物の作成を下請事業者に委託すると、情報成果物作成委託の類型2に該当してしまうからです(そうすると、コンペ参加者が社内で業として(=反復継続して)デザインを行っているかどうかにかかわらず、情報成果物作成委託に該当してしまいます。)。

つまり、上記テキスト・運用基準の設例は、

①コンペ参加者がコンペに参加するためのデザインは、コンペ参加者が(自らがコンペに参加するという)自家使用の目的でのデザインであり、

②当該コンペ参加者(広告会社)は、自社で業として(反復継続して)デザインを作成している、

という理解が前提になっているのです(②が満たされないと、当然、類型3には該当しません)。

さてここで気になるのは、コンペ主催者が親事業者とみなされる可能性はないのか?ということです。

つまり、上記設例とは異なり、デザインコンペというのは、

①コンペ主催者(デザインを必要としている者)が親事業者、

②コンペ参加者が下請事業者

であるとみなされるおそれはないのか、ということです。

(もちろん、コンペ主催者はそのデザインを使ってその顧客に商品を提供する(つまり、当該デザインが化体された商品を顧客に提供することがコンペ主催者の業である)というのが前提です。)

講習テキストのようなデザインコンペの理解を前提にすれば、デザインコンペでのデザインはあくまでコンペ参加者が(コンペに自ら参加するという)自家使用目的のデザインなので、コンペ主催者がコンペ参加者にコンペへの参加を呼びかけることは、デザインの作成を委託していることになるはずがない、ということになりそうです。

ですが世の中は教科書よりも複雑で、実際には、「コンペ」という名前は付けていても、そこで提供されたデザインや設計に係る知的財産権はコンペ主催者のものになる、というのが参加条件であったりすることがあります。

本来の「コンペ」というのは、あくまで複数のコンペ参加者から試作品を提供させて、その中から最も優れたコンペ参加者のデザイン(設計)が正式契約につながる、というもので、あくまで正式契約の前段階に過ぎません。

そういう本来のコンペを考えると、コンペに参加するだけでは本契約は成立しないので、コンペ主催者がコンペ参加者にデザインの作成を「委託」していると考えるのは、無理があると思います。

しかし実際には、多数のコンペ参加者のうち、正式契約に至るのは1社だけだけれども、負けた参加者の設計にも一部優れたところがあったりして、いわば「いいとこ取り」をしたいがために、コンペ参加者が提出したデザインに係る知的財産権は主催者のものになる、という条件を付けたくなることがあるわけです。

(ちょっと例は違いますが、サラリーマン川柳の募集で、入選しなかった作品の著作権も主催者に帰属する、というようなものですね。(本当のサラリーマン川柳がどうだかは、知りません。))

では、知的財産権がコンペ主催者に帰属するようにしているからといって、コンペ主催者がコンペ参加者に情報成果物の作成を「委託」していることになるのでしょうか。

私はならないと思います。

知的財産権の帰属がどうあれ、コンペはあくまで本契約の相手方を選ぶ手続に過ぎないと考えるべきでしょう(講習テキストも同じ理解でしょう)。

というわけで、知的財産権がコンペ主催者に帰属するルールでコンペを行う場合であっても、例えばコンペ主催者はコンペ参加者に対して3条書面を交付する必要はありません。

もちろん、そもそも情報成果物作成委託ではないのですから、無償で知的財産権を譲り受けても、不当な利益提供の要請(下請法4条2項3号)にも該当しません。

では優越的地位の濫用には該当しないのか、といえば、少なくともこれまで取引関係にない相手方との関係では、難しいでしょうね(該当しない可能性が高い)。

というのは、優越的地位の濫用が成立するためには、「継続して取引する相手方」(独禁法2条9項5号イ)でなければならないからです。

条文では、「新たに継続して取引しようとする相手方を含む。」とされていますが、コンペをやっている段階で、まだ本契約に進めるかどうかも分からない相手方を、「新たに継続して取引しようとする相手方」というのは無理でしょう。

なので、たとえコンペ参加者が「このコンペに入賞すれば名を上げられる」と期待して、コンペ主催者の無理難題(例えば知的財産権の無償譲渡とか)を呑まざるを得なかったとしても、優越的地位の濫用には該当しないというべきでしょう。

これに対して、コンペ主催者とコンペ参加者との間に既に別のところで継続的な取引があって、優越的地位が認められる、という場合であれば、優越的地位の濫用に該当する可能性はあるでしょう。

ただしその場合でも、「自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して」(独禁法2条9項5号柱書)いることが必要です。

つまり、コンペ参加者が既存の取引との関係で無理難題を聞かざるを得なかった、という関係が必要です。

したがって、単に「このコンペで勝てば大きな取引が見込める」とか、「名を上げられる」といった理由で無理難題を聞いた、というだけでは、優越的地位の濫用には該当しないでしょう。

なお、以上はコンペの実態があることが前提であって、例えば、最初から発注する先は決めているのに、いわば出来レースで形だけ「コンペ」の体裁をととのえ、参加者の知的財産権を取得してしまう、というような極端なことをすると、下請法や優越的地位の濫用はさておき、民法の不法行為が成立するかもしれません。

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