« 【お知らせ】Chambers Asia | トップページ | 事業譲受の届出の「譲受け後の総資産」の不思議 »

2014年3月29日 (土)

ABA Antitrust Spring Meeting 2014

今週ワシントンDCで恒例のABAのSpring Meetingに参加してきましたので、以下メモしておきます。

◆合理の原則は合理的に適用可能か

JVでも立証責任の転換のアプローチ。最終ステップまで行くのは2~4%。

スポーツリーグの集団的ライセンス。「そのJVがなければ商品が存在しないか。」(例、プロ野球のテレビゲームでは各チームのロゴを使う必要あり。)

クイックルック(被告に有利)。市場画定不要。

①競争への現実の害があるか(NCAA事件)

②競争促進的利益があるか(それがなければ商品が存在しないか、さもなくばスライディングスケールで判断。フリーライドは起こるか。相互依存関係にあるか。証明度は訴訟の段階による)

③より非制限的な方法はあるか(後知恵はだめ)

トランケットルールオブリーズン

行為の性質上競争を抑制するか。市場画定は不要

直接証拠はあるか。

ポリグラム事件(←マサチューセッツボード事件と対比)、ノーステキサス事件、デトロイトオート事件(週末の夜間販売を禁止)、インディアナデンティスト事件、

no cold call事件(JVの一部としてなされた)→DOJは当然違法と判断。

抱き合わせ

明示的な抱き合わせ(ジェファーソンパリッシュ事件)、経済的抱き合わせ、アフターマーケットの抱き合わせ

抱き合わせは強制されたものか?

再販売価格維持

Activas事件

小売段階でのダイナミズム、グローバリゼーション、インターネットなどのためRPMは以前ほど必要にされない。

IPと再販(消尽、タイの教科書の事件)

経済学では性質の異なるプラスとマイナスを比較することはできない。

◆クラス認証

コムキャスト事件は先例を変更したのか?変更はしていないが変更したと受け止められている。

MCI対AT&T(1982)

擬陽性の問題。

帰納的方法と演繹的方法。

集積と平均には意味がない。ノイズの除去。

問題が原告団への影響なのか損害なのか(ポズナー判事の意見)

ドゥベア事件のゲートキーパーとしての役割(要求水準が高い)

裁判官を助けてあげるつもりで。弁護士はますます多くのことについて少しずつ知り、ついに全てについて何も知らなくなる。専門家証人(経済学者)は、ますます少ないことについてますます多くを知り、ついに、全てについて知っていることが何もなくなる。

◆アップル電子書籍判決

アップルは出版社1社ずつにコンタクトしたに過ぎないが共謀を知っていたといえるのか?(モンサント事件参照)

アマゾンという巨像が部屋にいるのに、触れないわけにはいかない。

川上市場への影響は?二面市場

MFNの経済学

必ずしも有害とは限らない。あまりに内容が違うので、ケースバイケースで判断せざるを得ない。

平均価格を見るだけでは十分ではない(DOJの調査でベストセラーは値下がりしたが、全体的には値上がりしたという話もある)。厚生は価格だけで測れるものではない。

MFNがある場合とない場合を比べるべき。実証研究の重要性(ベストバイ、天然ガス、オービッツなど)。

反競争効果はレントのextractionか、参入の阻害か。

アップルは新規参入者である。アマゾンがMFNをするのとはわけが違う。

アップルは電子書籍市場に参入する必要があり、そのためにはコンテンツを集める必要があり、そのためにはエージェンシーモデルが必要であり、その最低限のプロテクションとしてMFNが必要だっただけではないのか。

リージン事件の議論の活用(アマゾンは低サービス低価格の競争者か、アマゾンはフリーライドしているのか)。

参入にはクリティカルマスが必要。

アップルは価格競争を阻害するもう1つのプラットホームを提供したに過ぎないのか?

◆反トラスト法とデュープロセス

擬陽性の問題。反トラスト法事件は市場へのシグナルとなる。

最大の競争が競争法の目的ではない。最適な競争が目的である。

適正手続は他の価値とトレードオフの関係にない。

特定の制度が他の制度に対して優れている、あるいは劣っている、ということはない。

第三者へのアクセスの保証、独立した判断者。

①不当に遅延しないこと、②意思決定者が直接聴聞すること(FTCは?)、③提出された証拠のみに基くこと、④反対尋問の保証

EUのマリンホース事件では裁判所が暗に制裁金額を増額した。

適正手続には、品質管理(ガイドラインの必要性、意義ある開示、ステートオブプレイ)、コスト最小化(規律ある情報要求、スピード、予見可能性)、正統性が必要。

2011年KNE事件。

confrontation biasの問題。

◆ホットトピック

ドイツは合併でSIECテストを放棄しドミナンステストへ。RPM、最善価格保証(アマゾン、price parityなど。水平合意の要素)、selective distribution。

米国では、電子書籍、セントルークス病院の合併、IP(PAE、トロール、SEP)、リバースペイメント、Activas事件、LIBORカルテル。

中国では、合併審査の簡易手続、合併でのIPへの注目(グーグル・モトローラ、Thermo Fisher Scientific/Life Technology)、SAICの知財ガイドライン(13条)。

ブラジルでは、カルテルの新たな和解手続、エアカーゴ(最初の国際事件のリニエンシー)

→ブラジル当局は国際事件でリニエンシーの申し立てがないので、過去の事件を掘り返している模様。ただし人手が足りないので処理は停滞気味(ブラジル弁護士の弁)。

◆パテントトロール

(クロスライセンスをしていた4社のうち1社が特許権をトロールに譲渡した設例に基づくディベート)

パテントトロールの経済学。ex post substituteか?典型的なRRCか?

知るべき事実→どのようにトロールは権利を取得したのか?オークションか?

技術市場における排除が起こる可能性は低い。問題は商品市場。

トロールは評判を気にしない?反訴がないので不均衡が生じる?

(妨害をする)インセンティブと能力の両方が必要なはず。その脅しはクレディブルか(市場価格の60倍の請求はクレディブルではない)。

トロールはアウトソース(あるいは仲介者)と同じではないか。

しかし技術市場の不完全性に注意すべき(市場の信頼性は高いか?)

トロールの怖さは、ポートフォリオが明らかでない点にある(「当方の1000の特許の1つを侵害しています」という警告だけ)

patent equilibrium

特許調査をしない不注意な特許権者は保護されるべきか(特許制度に問題があり、調査すると藪蛇なのでみな調査しないという現実)

陪審のリスク

大数の法則。宝くじもたくさん買えば、1つは当たる。トロールは1つ当たれば十分。代替的とか補完的とかは関係ない。

◆エンフォーサーズラウンドテーブル

DOJ

電子書籍、自動車部品、不動産入札カルテル(オークショニアは無罪)、Bazzarvoice事件、金融市場(差し押さえの談合)

FTC

今年100周年(ちなみに現在5名の委員のうち、なんと委員長を含む4名が女性です。)

プロパンガス事件、ヘルスケア(セントルークス病院、ワークショップ)、オフィスデポ事件(97年ステイプル事件からの市場の変化)、Activas事件(IPO)、PAEの問題(欺瞞的警告状)

プライバシーとデータセキュリティ(EU-USセーフハーバー)、アップルのアプリ事件、mobile cramming。

企業のデータセキュリティに対する投資は過小。

EU

アルムニア委員は今年退任。

任期を振り返り、集団訴訟、適正手続、金融分野などに注力。

国家補助(金融部門)、コントローラー、新たなガイドライン(2,3カ月中)

エネルギー(power exchange、ルーマニアでの調査、ガスプロム)

LIBORその他のベンチマーク

SEP(サムスン・アップル事件)

自動車部品、電気通信(デジタル時代)、Visa Master、

州政府

ヘルスケア(病院の合併、ジェネリック)

ソフトウェアのパイラシーの問題(不正ソフトを用いて安いコストで競争することを州不正競争法で規制。州内企業が被害を受けており、国際事件として問題)

NAAGの活動として、AUO事件、CAFA

カナダの石油会社との採掘テリトリー分割をカルテルで調査(ミシシッビー州)

Q&A

民事救済の有効性

中国の適正手続は注視する。

DOJは国際事件だけでなく国内事件にも注力。半分は国内事件(地方債事件)、スタッフの3割は国内担当。フィールドオフィスを7つから3つに。

EUでは企業結合がナショナルチャンピオンの誕生を阻害しているとの批判があるが、当たらない(アルムニア委員)。

多額の投資(周波数など)が必要だから規模が必要であるとの議論には説得力がない(アルムニア委員)。

価格差などを踏まえると、無線通信の市場は国ごとである。

EUは目的による当然違法があるが、Pay-for-delayで効果は問題か?

J&J事件、TEVA事件、合意の届け出制度

【ランチでの出来事】

会場でのオフィシャルのランチのときにたまたま席が隣になった女性が、実は元ポーランドの競争当局のトップの方で、最近やめたというので理由を聞くと、「私の場合は政府にやめさせられたのよね。」とおっしゃっていました。

なんでも、政府が推進する合併に反対したからだということでした。

さて、そのランチでのスピーチ(この手のランチでは、ゲストがスピーチをするのが恒例)で、まさにその話題が触れられ、スピーカーの方が私の隣のその女性を見つけると、起立を促され、会場中に拍手が巻き起こりました。

自分の地位をかけてでも信念を貫いた、ということで、欧州では大変有名な事件なんだそうです。

すごい方にお目にかかることができました。

【その他】

ベンチマークをとりあげた別のセッションでは、経済分析で共謀が証明できることに衝撃を受けたと、あるオーストラリアの弁護士さんがおっしゃっていました。

DOJが、司法取引の成立した企業にも外部コンプライアンスモニターの設置をする方針を発表したそうです。

どのセッションか忘れてしまいましたが、パネリストの1人が、「FTCは自身の5年前の審決のことも忘れてしまう。」と、裁判所のように厳密に判例法に従うわけではないことを指して言っておられたのが、(行政機関なので裁判所と違うのは当然かもしれませんが)興味深かったです。

« 【お知らせ】Chambers Asia | トップページ | 事業譲受の届出の「譲受け後の総資産」の不思議 »

外国独禁法」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ABA Antitrust Spring Meeting 2014:

« 【お知らせ】Chambers Asia | トップページ | 事業譲受の届出の「譲受け後の総資産」の不思議 »

フォト
無料ブログはココログ