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2013年12月19日 (木)

「近畿日本鉄道株式会社、株式会社阪急阪神ホテルズ及び株式会社阪神ホテルシステムズに対する景品表示法に基づく措置命令について」について

一連の食品偽装事件について措置命令の第一弾が12月19日付で出ました

以前このブログでも取り上げた牛脂注入肉に関係する部分を抜き出すと、おおよそ以下のとおりです。

① 近鉄は、本件料理を一般消費者に提供するに当たり、・・・ホテル内に備え置いたチラシ(別添写し)に「牛ロース肉のステーキ」と記載するなど、・・・あたかも、当該記載された料理に牛の生肉の切り身を使用しているかのように示す表示をしていた。

実際には、別表「記載」欄記載の料理にあっては、いずれも生鮮食品に該当しない牛脂その他の添加物を注入した加工食肉製品を使用していた。

② 「ビーフステーキ フライドポテト添」と記載することにより、あたかも、記載された料理に牛の生肉の切り身を使用しているかのように示す表示

生鮮食品に該当しない牛脂その他の添加物を注入した加工食肉製品を使用していた。

③ 「やわらかビーフソテー 赤ワインソース」と記載することにより、あたかも、記載された料理に牛の生肉の切り身を使用しているかのように示す表示

生鮮食品に該当しない牛脂その他の添加物を注入した加工食肉製品を使用していた。

④ 「柔らか牛肉の鉄板焼き ナムルとコチジャンライス添え」と記載することにより、あたかも、記載された料理に牛の生肉の切り身を使用しているかのように示す表示

生鮮食品に該当しない牛脂その他の添加物を注入した加工食肉製品を使用していた。

要するに、

「牛ロース肉のステーキ」、

「ビーフステーキ フライドポテト添」、

「やわらかビーフソテー 赤ワインソース」、

「柔らか牛肉の鉄板焼き ナムルとコチジャンライス添え」

などの表示は、

あたかも、記載された料理に牛の生肉の切り身を使用しているかのように示す表示

なので、優良誤認表示だ、という理屈ですね。

おおむね消費者庁のQ&Aに従った内容なので、予想通りの結論ではありますが(消費者庁のQ&A自体が法律解釈として間違っているというのは、以前このブログで書いたとおりです)、細かく見ると、Q&Aよりもさらに踏み込んでいます。

というのは、

「ステーキ」

という表示が、

「牛の生肉の切り身を使用しているかのように示す表示」

というのは、まだ見解の相違ともいえなくもないですが(それでも、焼いて出しているのに生肉も何もないような気もしますし、牛脂注入肉だって「生肉」じゃないかという気もするので、ちょっと舌足らずな感じはします)、Q&Aをさらに逸脱しているのは、

「やわらかビーフソテー 赤ワインソース」、

「柔らか牛肉の鉄板焼き ナムルとコチジャンライス添え」

です。

これって、どこが問題と消費者庁は考えたのでしょうね。

おそらく、「やわらか(柔らか)」は問題ないでしょうから(牛脂注入肉の方がむしろ柔らかい)、問題にされたのは、

「ビーフソテー」、

「牛肉の鉄板焼き」

の部分なんだろう、もっといえば、

「ビーフ」

「牛肉」

と表示すること自体が問題だ、ということなのでしょう。

牛脂注入肉は「ビーフ」、「牛肉」と表示してはいけない、という説明ですね。

しかしそうすると、「ビーフ」、「牛肉」という表示が、

あたかも、当該記載された料理に牛の生肉の切り身を使用しているかのように示す表示

であるということになりますが、消費者庁の論理は、かなり無理があると思います。

きちんと論理的に説明するなら、

あたかも、当該記載された料理に牛の生肉の切り身を、焼く前には何らの加工を施さずに使用しているかのように示す表示

とか説明するべきでしょう。

「牛の生肉の切り身」では、牛脂注入肉をはじくことができていないように思います。

ただ、以上は形式論理だけの問題に過ぎず、そもそも「ビーフ」、「牛肉」という表示では、

あたかも、当該記載された料理に牛の生肉の切り身を、焼く前には何らの加工を施さずに使用しているかのように示す表示

とすらいえないのではないか、という、より実質的な問題が残るように思われます。(「ビーフ」、「牛肉」にそこまで読み込むのは無理。あるいは、「ソテー」、「鉄板焼き」に読み込むのか?)

ともあれ、消費者庁のQ&Aでは、

「霜降りビーフステーキ」、

「さし入りビーフステーキ」

という表示がいかん、と書いてあったわけですが、いけないのは

「ステーキ」

の部分でも、ましてや

「霜降り」、「さし入り」

の部分でもなく、

「ビーフ」

の部分だった、ということですね。

これではむしろ、Q&A自体が非常に誤解を招く内容になってしまいます。

普通の人がQ&Aを見たら、「霜降り」(←一番インパクトがある部分)とか、せいぜい「ステーキ」の部分がいけない、と思うのではないでしょうか。私は(何となくですが)そう思っていました。

というのは、牛脂注入肉は見た目は立派な霜降り肉なので、天然の霜降り肉であるかのように表示するのがいかん、というように読むのが素直な読み方のように思うのです。

まさか「牛肉」がいかんとは、少なくともこのQ&Aからは読み取れないように思います。

今回の排除命令のような運用をするのであれば、はっきりと、「牛肉」、「ビーフ」と表示すること自体が、「牛脂注入肉」と明記しない限りだめなのだと書くべきでしょう(私はそもそもQ&Aに反対ですが)。

今回の排除命令では、かろうじて、「牛肉」、「ビーフ」という表現を使わなければ問題ない、という線は守られたように思います(「豪華大地の恵み膳」に牛脂注入肉が使われたような場合)。

まあこの点は、たまたま「牛肉」、「ビーフ」という表現が使われた事例が摘発されたというだけのことかもしれません。

ひっとしたら消費者庁の本音は、「牛肉」、「ビーフ」という表示がなくても、ともかく牛脂注入肉は牛脂注入肉と明記しないと使ってはいかん、というところにあるのかもしれません。

それと、命令の主文も、

「前記・・・記載の表示と同様の表示を行うことにより、当該料理及び当該商品の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示す表示をしてはならない」

という紋切り型のもので、特定の表示を消極的に禁止するのではなくて、実質的に牛脂注入肉であることを積極的に表示することを義務付けているという特殊性がまったく反映されていません。

というわけで、法律解釈としてはいろいろな意味で問題の多い命令であると思われます。

この命令についてはきちんと論文を発表させていただきたいと思いますので、ご検討いただける法律誌のみなさま、ぜひご連絡ください。

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