« 3条書面の「支払期日」の「~日以内」という記載 | トップページ | 自己物の修理行為の全部の委託 »

2013年7月26日 (金)

消費税転嫁阻害表示ガイドライン案について

消費税の転嫁を阻害する表示に関する考え方(案)」が出ました。

(転嫁法の独禁法の特例に関する部分のガイドラインも公取委のホームページに出ていますが、それについてはまた後日。)

いくつか感想を記します。

消費者庁菅久審議官の国会答弁でも話題になった、「『消費税』という文言を含まなければいいのか。」という点については、

「なお、「消費税」といった文言を含まない表現については、

宣伝や広告の表示全体から消費税を意味することが客観的に明らかな場合

でなければ、禁止される表示には該当しない(注5)。」

と一般的な考え方述べ、具体例として、

「(注5)例えば、「消費税」といった文言を含まない表現であっても、

「増分3%値下げ」、

率引上げ対策、8%還元セール」など、

「増税」又は「税」といった文言を用いて

実質的に消費税分を値引きする等の趣旨の宣伝や広告を行うことは、通常、本条で禁止される表示に該当する。」

というのが例示されています。

でも、この具体例って、本文の一般論とあんまりリンクしていないような気がします。

つまり、本文の一般論の方は、「表示全体から」という表現を用いることによって少しでも適用範囲を広げて脱法を防ぎたいという意図(執念?)を感じるのですが、来年4月に「税」といえば消費税のことに決まっているんであって、表示の「全体」をみて判断しようが一部の文言を取りだして判断しようが、「消費税」のことを意味することは「客観的に明らか」であるように思われます。

裏から言えば、(注5)の具体例からは、「税」という言葉が使われていなければOKと読めるのですが、そうするとそれに対応する一般論はむしろ、

「税」

という言葉が用いられているかという、極めて局地的な判断による、という一般論になるはずで、「表示全体から」というのとは逆の方向に行っているように思います。

「表示全体から」具体例が判断しているのだとすれば、「3%」、「8%」の部分が消費税を連想させる、ということかもしれませんが、では、

「増税分のうち2%値下げ」

「税率引き上げ対策、7%還元セール」

あるいは逆に、

「税率引き上げ対策、20%還元セール」

ならいいのか?という疑問がわきます。

「還元」という文言がダメなのだ(「値下げ」といえば本体価格の値下げかもしれないけれど、来年4月に「還元」といったら消費税の還元しかあり得ないだろう)、という考えはあり得るところですが、(注5)の説明は、「税」という言葉の有無を問題視しており、「還元」の方には注目していないようです。

次に、「禁止されない表示の具体例」でも、

「宣伝や広告の表示全体からみて消費税を意味することが客観的に明らかな場合でなければ」

という留保が付いているのも気になりますね。

「禁止されない表示の具体例」に挙げられている、

「春の生活応援セール」

なんていうのは、それだけ見たらOKに決まってるんであって、では「春の生活応援セール」というのであっても「宣伝や広告の表示全体からみて消費税を意味することが客観的に明らかな場合」というのはどういう場合なんだ、というのを示さないと意味がないのではないでしょうか。

あまり批判ばかりしても何なので、良いところも触れておくと、

「3%値下げ」、「3%還元」、「10%値下げ」、「8%還元セール」

というのが基本的にOKと明確にしたのはそれなりに意味のあることだと思います。

とくに「還元」という言葉は、消費税の還元を連想させますが、基本的にOKとしたのは結構なことです。

あと地味ですが、

「(参考)消費税率の引上げに伴う表示に関する景品表示法の考え方」

というのが付いています。

これは、このブログでもちょっと前に紹介した「規制の事前評価書 消費税の円滑かつ適正な転嫁を阻害する表示への対応」を実質的に撤回するものでしょう。

私も解釈論としては、今回の「(参考)」の考え方の方が正しいと思います。

ただよくよく考えてみると、消費税転嫁阻害表示で実現しようとしている立法目的を表示規制として定めるのが果たして妥当であったのか、疑問がわいてきますね。

つまり、消費税転嫁阻害表示というのは、極論すれば、本当に消費税分を還元していても、所定の表示が違法になる、という仕組みです。

実体と表示が違っているから規制する、というのが普通の表示規制です。

例えば、不良な商品を優良だと表示するから景表法に反するわけです。

不良な商品を不良だと表示するのは、景表法違反ではありません。

そいいう商品は、競争に負けて売れなくなるだけです。

ところが、特措法は、そういう考えではありません。

特措法のホンネは、むしろ消費税を還元しないでね、ということでしょう。

それなら、景表法のような表示規制で対応するのではなくて、消費税法で転嫁を義務付けるのが本筋ではないでしょうか

つまり、不良な商品を優良だと表示するのを禁止するだけではなくて(あるいは、不良な商品を優良だと表示するのを禁止するか否かはともかくとして)、そもそも不良な商品を売ることを禁止するのが本筋だと思うのです。

なのに、消費税法で転嫁を義務付けないのに表示規制で転嫁しないという表示だけを禁じるというのは、考えてみるとおかしな話です。

例えば、特措法の建て付けでは、「消費税分ポイント還元します」という表示をせずにだまって消費税相当額のポイントを付与する行為は、違反に問えないことになります。

細かく見ると、いろいろ疑問のわいてくる法律だと改めて感じます。

« 3条書面の「支払期日」の「~日以内」という記載 | トップページ | 自己物の修理行為の全部の委託 »

消費税転嫁特措法」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 消費税転嫁阻害表示ガイドライン案について:

« 3条書面の「支払期日」の「~日以内」という記載 | トップページ | 自己物の修理行為の全部の委託 »

フォト
無料ブログはココログ