自己物の修理行為の全部の委託
修理委託の類型2(自己物の修理行為の委託・下請法2条2項後段)は、
「事業者がその使用する物品の修理を業として行う場合に
その修理の行為の一部を
他の事業者に委託すること」
というものです。
ここで気になるのが、委託対象行為が修理行為の「一部」と限定されていることです。
このことは、同じ条文の修理委託の類型1(他人物の修理行為の委託・下請法2条2項前段)に、
「事業者が業として請け負う物品の修理の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること」
とされているのと対比すると、よりはっきりします。
おそらく類型2(「自己物」)で「一部」と限定しているのは、「全部」を委託すると、自己物の修理を自らやっていないことになるので、「修理を業として行う場合」(2条2項後段)の要件と矛盾する、ということではないかと想像します。
しかし、果たしてそのように律義に「一部」と限定する必要があるのでしょうか。
むしろ、修理行為の「全部」か「一部」かは、ある物品の修理を完成させたら「全部」で、完全に修理するための修理行為の一部(一部といえども、やりかけという意味ではなくて、それ自体意味のある修理行為)だけでもやれば「一部」、なのではないでしょうか。
それに、情報成果物作成委託の第3類型(自己使用情報成果物の作成の委託・2条3項)では、
「事業者がその使用する情報成果物の作成を業として行う場合に
その情報成果物の作成の行為の全部又は一部を
他の事業者に委託することをいう。 」
とされているのと、バランスが悪いように思います。
つまり、情報成果物作成の「全部」を委託すると自己使用情報成果物の作成を業とすることと矛盾する(=「全部」は社内で行われる作成行為の全部だという意味だ)、というなら、情報成果物作成委託の類型3に「全部」が入っているのはおかしいことになります。
なので、情報成果物作成委託の類型3の「全部」、「一部」というのは、まとまった1つの情報成果物を完成させたら全部、その一部を作成したなら「一部」という差だと考えざるを得ないと思うのです。
だとすると、やっぱり修理委託の類型2(「自己物」)も、同様に解するのが自然だと思われます。
結局、修理委託の類型2で、修理行為の「一部」に限定しているのは、意味が無い、ということになります。
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昨日、先生の講習会に参加させていただきました。
仰せの類型に関するご指摘について、少し考えを異とする内容を提議させていただきます。
情報成果物と修理は対象物の特性が異なるということです。
修理は対象物が特定されますが、情報成果物は対象物が特定できません。(無体物故の特性)
例えば、自社のホームページを作成はした(する)のだけど、メンテは丸投げで下請にやらせることができます。業と認定されるかどうかがポイントになるので、含みをもたせているとは考えられないでしょうか。
ご意見を拝聴いたしたく。
投稿: 稲葉浩志 | 2013年8月24日 (土) 08時29分
中小企業庁の講習会にお越しいただきありがとうございます。
講習会の私のどのコメントに対するご意見なのか、私も記憶が定かでないのでよく分からないのですが(それとも、上記ブログ記事に対するご意見でしょうか)、ともかく、情報成果物は無体物なので限界がはっきりしない、というのはおっしゃる通りだと思います。
実務上は、自家使用の情報成果物の作成委託において、当該情報成果物を自ら反復しているといえるのかどうか、別の言い方をすれば、どこまでが1つの「情報成果物」で、どこから先が別の「情報成果物」なのか、はっきりしない、という問題がよく起こります。
この問題については、いずれこのブログでも検討したいと思っているところです。
投稿: 弁護士植村幸也 | 2013年8月28日 (水) 12時09分