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2013年7月20日 (土)

消費税転嫁特措法の施行時期と適用範囲についての留意点

消費税転嫁特措法が6月5日に成立し、6月12日に公布されました。

そして、特措法の施行期日を定める

「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法の施行期日を定める政令」

が、6月11日に閣議決定され、6月14日に公布されました。

同政令を、短いので全文引用すると、

「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法(附則第1条ただし書に規定する規定を除く。)の施行期日は平成25年10月1日とし、同条ただし書に規定する規定の施行期日は同年6月15日とする。」

となっています。

括弧書きで「除く」とされている規定(特措法附則1条ただし書に規定する規定)というのは、

特措法14条3項(広報等の体制整備)

「国及び都道府県は、今次の消費税率引上げに際し、この法律に違反する行為の防止及び是正を徹底するため、国民に対する広報、この法律に違反する行為に関する情報の収集、事業者に対する指導又は助言等を行うための万全の態勢を整備するものとする。」

と、

特措法附則3条(内閣府設置法の一部改正)

「第三条 内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)の一部を次のように改正する。(以下省略)」

なので、これら広報等体制整備と内閣府設置法改正以外の、特措法の大部分の規定は、今年の10月1日から施行される、ということになります。

さて、特措法の各条文はその適用対象を時期で区切っているのですが、そのことと、特措法の施行日が10月1日になったこととの関係を、ちょっと整理してみましょう。

まず、特措法3条(減額等の禁止)では、同条の適用対象が、

「平成26年4月1日以後に特定供給事業者から受ける商品又は役務の供給に関して」

とされています。

なので、特措法施行日である本年10月1日以降に、来年4月1日以降の取引に関して減額等を行うと違反になる、ということになります。

今年の10月1日に来年4月1日以降の取引に関する取り決めをするというのも気が早い話ですが、ともかく特措法の規定はそうなっています。

なお、今年の9月30日に同じ取り決めをしたら特措法に違反しないのか、といえば、たしかに特措法施行前なので違反のしようもないのですが、だからといって問題が無いというわけではなく、独禁法の優越的地位の濫用に該当するおそれがあります(むしろ、特措法が適用される今年10月1日以降の方が、軽い勧告で済む(重い排除措置命令や課徴金は免れる)というのが、少なくとも法律の建前です)。

次に、特措法4条(消費税還元セール等の表示の禁止)では、同条の適用対象が、同じく、

「平成26年4月1日以後における自己の供給する商品又は役務の取引について」

の表示とされています。

なので、今年の10月1日以降に、来年4月1日以降の取引に関する表示について、「消費税還元セール」のような表示をすると違反になる、ということです。

来年4月のセールを今年10月から宣伝するというのは、さらに考えにくいですが、ともかく特措法の条文はそうなっています。

次に、特措法10条(総額表示義務の緩和)では、適用対象がとくに時期によって限定されていないので、今年10月1日から、いつ販売する商品の価格表示であるかにかかわらず、総額表示をしなくてよくなります。

なので、今年の10月1日から、外税のみの表示が街中にあふれることが予想されます。

なお、特措法10条により総額表示義務が緩和されるのはあくまで今年の10月1日からなので、例えば今年の9月30日に、「明日からの価格」として外税のみの表示をすると、緩和前の外税のみ表示なので、総額表示義務違反になります。

最後に特措法12条(転嫁・表示カルテル)については、独禁法の適用除外になる共同行為が、

「平成26年4月1日から平成29年3月31日までの間における商品又は役務の供給に係る次に掲げる共同行為」(3年間)

となっていいるので、今年の10月1日に、公取委に届け出た上で、「来年4月1日から2017年3月31日までの販売分について消費税分を転嫁する」という合意をするのは独禁法に違反しません。

それに対して、同じ合意を今年の9月30日にすると独禁法違反になります(もちろん、公取委への届出も受け付けられないと思われます)。

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