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2013年7月19日 (金)

工場内における仕掛品の運搬を外部に委託すると製造委託か?

下請法講習テキストp18に、

「Q11: 工場内における運送作業を外部に委託する取引は、「製造委託」と「役務提供委託」のどちらに該当するか。」

という質問に対して、

「A: 運送は役務の提供に該当する行為であるが、同一工場内における製造工程の一環としてとしての運送(ライン間仕掛品の移動等)を他の事業者に委託する場合には、製造委託に該当する。」

という回答が載っています。

しかし、これは製造委託の条文の定義を超えているのではないでしょうか。

というのは、製造委託の委託の対象はあくまで、「物品」、「半製品」、「部品」、「附属品」、「原材料」、「金型」の「製造」というふうに限定列挙されており、こられの「製造」工程の作業の一部の委託がこれらに含まれるとは読めないからです。

また、製造工程の作業の一部の委託は製造委託に含まれないという解釈の根拠として、その他の委託類型との違いが挙げられます。

つまり、修理委託(下請法2条2項)では、

「・・・物品の修理の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること・・・」

情報成果物作成委託(同法2条3項)では、

「・・・情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること・・・」

役務提供委託(同法2条4項)では、

「・・・役務の提供の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること・・・」

というように、すべて、「修理」、「作成」、「行為」の一部の委託も含まれることが明記されています。

それに対して製造委託では、「の全部又は一部」の文言がないので、当然、「物品」、「半製品」、「部品」、「附属品」、「原材料」、「金型」をきっちり完成させて、モノとして引き渡すことが予定されていると読むのが自然だと思います。

「物品」に、「半製品」、「部品」、「附属品」、「原材料」、「金型」が加えられたのは、完成品(条文上は「物品」)の全部の製造の委託に限ると部品等の製造の委託が含まれなくなるので、「半製品」、「部品」、「附属品」、「原材料」のレベルまでブレイクダウンしてバランスを取った、というのが実態でしょう(金型は政策的理由から別途追加されたものです)。

しかも、製造委託の場合には、規格品の購入と区別するため(逆に言えば、受注生産に限るため)に、「委託」という言葉が用いられたことがやたらと強調されますが、物品等は特注品でないと製造委託にあたらないのに、ライン間の仕掛品の移動は「特注役務」であるか否かを問わず(あるいは、常に「特注役務」とみなして)製造委託にあたる、というのもちょっと釈然としません(役務は常にオーダーメイドということでしょうか?)。

この「委託」の意義とも関係しますが、製造工程の一部の委託は製造委託に該当しないと考えるべき実質的な理由としては、製造委託というのは、そもそも親事業者が規格や仕様を指示して、それに従った物が納入されることを想定しているのではないか、ということが挙げられます。

ライン間の仕掛品の移動は、規格や仕様の指示というのと、ちょっと馴染まない気がします。

「物品」、「半製品」、「部品」、「附属品」、「原材料」、「金型」を、下請事業者が責任をもってぜんぶ製造しきるからこそ、規格や仕様の指示ということが意味を持つのではないでしょうか。

もし製造に関連する役務がすべて製造委託の対象だとすると、「原材料の調達行為はどうなんだ」、「倉庫から工場までの原材料の運搬はどうなんだ」、「商品の企画は?」など、際限なく疑問が膨らんでいきます。(物理的な「製造」以降のみ、含まれる?)

上記QAは、作業油のニオイのする工場の中の作業なので、「製造」に含めても違和感ないというイメージなのかもしれませんが、解釈論としてはナンセンスです。

結局、上記QAの回答は、「『製造委託』と『役務提供委託』のどちらに該当するか。」という質問の仕方から伺われるように、

「ライン間の仕掛品の移動は役務っぽいので、役務提供委託かなぁ」

「でも待てよ。親事業者が『ライン間の仕掛品の移動』自体を業として第三者に提供しているわけじゃないから、役務提供委託は無理だな」

「じゃ、製造行為の一部の委託ということで、製造委託に入れてしまえ!」

という思考過程が透けて見えます。

このような思考過程から容易に連想できるように、このQAの考え方は、自己のためにする役務の委託(たとえばホテルがベッドメイキングを外部委託する場合や、運送会社が運送の便宜のためにする梱包を梱包業者に委託する場合)が役務提供委託に含まれないと解されていることとも矛盾します。

私は、立法論としては、製造工程の作業の一部の委託も下請法の対象にする選択肢もあり得ると思いますが、現行法の解釈論としては相当無理があると思います。

下請法というのは、細かいところは不必要に作りこんであるけれど、けっこう肝心なところで大きな穴のある法律だと、つくづく思います。

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