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2013年7月18日 (木)

自己使用目的情報成果物の作成委託の「業として」に関する公取委解釈の疑問

情報成果物作成委託のいわゆる第3類型(自己使用目的の情報成果物の作成委託)は、

「事業者がその使用する情報成果物の作成を業として行う場合にその情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること」(下請法2条3項)

というものですが、その例として、下請法運用基準では、

「事務用ソフトウェア開発業者が、自社で使用する会計用ソフトウェアの一部の開発を他のソフトウェア開発業者に委託すること。」

というのが挙げられています。

しかし、この例は端的にいって間違っている、控え目に言って不適切だと思います。

というのは、この例では、

①「事務用」ソフトウェア開発業者なので、販売目的の「会計用」ソフトは業として作成しているだろう、

ということを前提に、

②販売目的の会計用ソフトを業として作成しているなら、自己使用目的の会計用ソフトも業として作成しているであろう(あるいは、作成しているとみなす)、

という理屈に立っているからです。

この理屈をより端的に述べているのが下請法講習テキストで、同テキストのp12では、「事業者がその使用する情報成果物の作成を業として行っている場合」の説明として、

「例えば、社内にシステム部門があっても、他の事業者に作成を委託しているソフトウェア〔注:下請事業者に作成委託するソフトウェアのこと〕と同種のソフトウェアを自社のシステム部門においては作成していない場合など、単に作成する能力が潜在的にあるにすぎない場合は「業として」行っているとは認められない。」

とされています。

つまり、親事業者が自社で例えば会計パッケージソフトを販売目的で作成している場合には、

①自己使用目的の会計ソフトも同じ「会計ソフト」なんだから「同種」のソフトだ、そして、

②同種のソフトを販売目的で作成している場合は、自己使用目的か販売目的かは問わず、「業として」作成していることになるのだ、

という理屈です。

しかし、この理屈はおかしいです。

条文では明らかに、

「事業者がその使用する情報成果物の作成を業として行う場合」

といっているのですから、自己使用目的情報成果物自体の作成を業として行うことを要することは条文上明らかであり、同種の情報成果物の作成を(販売目的で)業として行っているだけでは足りないはずです。

運用基準の例に話を戻すと、事務用ソフトウェア開発会社だからといって、自己使用目的の会計用ソフトを「業として」行っているとは限りません。

というか、むしろ「業として」といえるほど反復継続して行っていない場合も多いのではないでしょうか。(ただこれは場合によっては微妙で、とくにソフトのアップデートまで「作成」に含めて考えると、細かいアップデートまで入れれば「業として」にあたることが多いかもしれません。)

少なくとも、販売目的の会計ソフトを業として作成していることで当然に、同種の自己使用目的の会計ソフトまで業として作成していると考えるのは、根拠がありません。

運用基準の例は、事務用ソフトウェア開発業者なら自己使用目的会計ソフトも反復継続して作成しているだろう、という経験則(?)に基づいているのかもしれませんが、いずれにせよ、大いに誤解を招く設例だと思います。

そもそも第3類型で「業として」という縛りをかけているのは、全ての自己使用目的情報成果物作成委託を下請法の対象にするのは広すぎる(少なくとも、販売目的情報成果物作成委託とバランスを取る必要がある)、という理由でしょう。

だとすると、たまたま販売目的で「業として」作成しているからといって、自己使用目的で「業として」作成したことになってしまうとすると、第3類型で自己使用目的の作成自体を「業として」行うという独自の縛りをかけているのが外れてしまい、条文を離れた解釈になってしまいます。

「提供」(第1類型)目的の「業として」と、自己使用(第3類型)目的の「業として」とを区別しない今の公取委の解釈だと、2条3項の条文を、

「業として行う〔第三者への〕提供または〔第三者提供目的か自己使用目的かを問わず〕作成の目的たる情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること」

というふうに書き換えたのと同じことになってしまいます(ちなみに、この条文には第2類型(請負作成目的)も含まれます)。

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