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2013年7月28日 (日)

「全品3%値引き」セールと二重価格表示との関係

消費税転嫁特措法のガイドライン案が出て、たんに「全品3%値引き」というだけの表示はOKということになりました。

ただ、「消費税」分の値引きだと明記できないだけに、却って二重価格表示の問題が生じるという、悩ましい問題が出てきました。

そのことが、消費者庁の「消費税の転嫁を阻害する表示に関する考え方(案)」の「(参考)消費税率の引上げに伴う表示に関する景品表示法の考え方」で説明されています。

(以下では、

①来年1月から3月まで10,500円で販売(つまり、最近時相当期間販売価格は10,500円)、

②消費税率アップ直前(来年3月30日とか31日)に10,800円に口実作りの値上げ、

③4月1日から、10,800円で販売しながら、「価格据え置き」とか「3%値引き」といって販売する、

というケースを想定してください。)

同ガイドライン案(参考)の(注8)では、

「『価格据え置き』など過去の販売価格等のままで販売しているかのような表示や

『3%値引き』など過去の販売価格等から一定率値引きしているかのような表示について、

一般消費者は、通常、同一の商品が

当該価格〔セール中の実際の販売価格〕で

当該表示〔『価格据え置き』や『3%値引き』などの表示〕が行われる前の相当期間販売されていたと認識するものと考えられる。

したがって、消費税率引上げ直前≪例えば来年3月30日とか31日≫に値上げを行った場合の値上げ後の価格≪10,800円≫・・・など、

同一の商品について相当期間にわたって販売されていた価格≪10,500円≫とはいえない価格≪10,800円≫を前提に消費税率引上げ〔4月1日〕以降

『価格据え置き』

『3%値引き』

等の表示を行う場合

(もちろん、『価格据え置き』セールの場合は口実値上げ価格10,800円を前提に据え置きなので10,800で販売し、『3%値引き』セールの場合は口実値上げ価格10,800円を前提に3%引きなので10,500円で販売するわけです(厳密には10,800円の3%引きではなくて、10,000円の3%引きなのですが、その辺は大目に見てください)。)

一般消費者に

消費税率引上げ以降における販売価格〔『価格据え置き』セールの場合は10,800円、『3%値引き』セールの場合は10,500円≫が、

同一の商品が

消費税率引上げ前の相当期間にわたって販売されていた価格〔最近時相当期間販売価格=10,500円〕と同じ価格である〔『価格据え置き』の場合〕

又は

その価格〔最近時相当期間販売価格=10,500円〕から表示された率〔3%〕が値引きされている〔『3%引き』の場合〕

との誤認を与え、不当表示に該当するおそれがある・・・。」

と説明されています。

ちょっと分かりにくいですね。

まずこの(参考)が「価格据え置き」セールについて言っているのは、増税前ずっと10,500円(本体価格1万円)で売っていたものを、増税直前に10,800円に口実作りで値上げして、4月1日から10,800円で売って、「ほら、同じ10,800円で、据え置きでしょ。」といってもダメですよ、ということです。

まあ、これはその通りでしょうね。「価格据え置き」というなら、ちゃんと10,500円で売りなさい、ということです。

さて問題は、「3%値引き」のほうです。

(参考)では、

「その価格〔最近時相当期間販売価格〕から表示された率〔3%〕が値引きされている」

との誤認を与えることが前提とされています。

しかし、これは、(いわれてみれば理屈はそのとおりかもしれないのですが)消費税増税の文脈では、そうとも限らないのではないでしょうか。

つまり、来年4月1日から「3%値引き」と表示すれば、消費者は、「ああ、消費税増税分を引いているんだな」と思う(そう思われるからこそ、ガイドラインでさんざん具体例が挙げられている)のではないでしょうか。

つまり、「3%値引き」の意味は、

現在の本体価格+消費税8%-値引き3%・・・①

と考えるのではないか、と思うのです。

ところが、消費者庁は、来年4月からの「3%値引き」セールも、

過去の最近相当期間販売価格-値引き3%・・・②

だと消費者は考えるだろう、というわけです。

確かに、「消費税」とはどこにも表示していないので(というか、特措法で表示したらいけないことになっているので)、消費者が①と考える根拠はないじゃないか、そういういみでは、通常の「全品10%値下げ」というのと何も変わらないじゃないか、といわれればそうなのですが、むしろ今までの議論は、①であることを前提に進んでいたのではないでしょうか。

でも、消費者庁の見解はそうではない、ということです。

例えば、来年1月1日から3月31日まで10,500円で販売していた商品を、4月1日に引き続き10,500円で販売し続けたとします。

この場合に、「全品3%引き」と表示することは、ガイドラインが想定しているであろうまさに典型例であるので認められるのかと思いきや、「消費税」とは表示してないので特措法には反しないけれども、景表法違反の二重価格表示になる、ということです。

いずれにせよ、この点はちょっと盲点でしたね。

国会でさんざん議論されたときも、「3%値引き」なら問題ないとしきりに消費者庁はいっていたのに、「だけど景表法には反するよ」と後から言うのは、確かに理屈の上ではそうかもしれませんし、国会の議論の対象は特措法であって景表法ではなかったにせよ、ちょっとだまし討ち的な感じがしますね。

以上に対して、「価格据え置き」なら問題ありません。

なので、消費税増税直後は、それまで10,500円で売っていたものを引き続き10,500円で売る場合には、「価格据え置き」セールにしておくのが無難です。

もし「3%値引き」と表示するなら、3月までの販売価格10,500円から、本当に3%引いて、10,200円(厳密には、10,500×0.97=10,185円)で販売しないと景表法違反になってしまいます。

では、「本体価格3%値引き」という表示をして10,500円で売るのは景表法に反しないでしょうか。

この場合、増税前の来年1月から3月までは、

①本体価格10,000円+消費税500円=10,500円

で販売していたのを、4月からは、

②本体価格9,700円+消費税800円(正確には、9700×0.08=776円)=10,500円

で販売する、という表示をして、実際に10,500円で販売するのですから、大きな問題はなさそうです(厳密に言うと、10,476円以下で販売しないといけませんが・・・)。

それにしても、これは「消費税還元セール」という表示が禁止されたことの、いわば副作用のようなものではないかと思われます。

実は、前回の消費税増税時に、イトーヨーカ堂が「消費税分還元セール」を実施した際に、直前のセールより高い価格の商品が一部にあったので、公取委が、不当表示には該当しないが、消費者に適切な情報を提供するよう注意した、ということがありました(1999年8月13日日本経済新聞朝刊)。

ここで、「不当表示には該当しない」とされた理由はおそらく、値引きの対象が「消費税分」であることが明記されていたからではないかと思います。

つまり、「消費税分還元」と明記している以上、「消費税分還元セール」という表示の意味は、

現在の本体価格+消費税5%-消費税分5%・・・①

と考えるほかなく、

過去の最近相当期間販売価格-値引き5%・・・②

と捉えることはできない(消費者も②とは考えない〕、と考えたのではないかと思います。

今後事業者としては、「消費税還元セール」の趣旨で「3%値下げ」と表示する際には、

過去の最近相当期間販売価格-値引き3%・・・②

という(本来の)意味ではなくて、

現在の本体価格+消費税8%-消費税増税分3%・・・①

という(消費税増税の文脈における特殊な)意味であると消費者に分かるような表示を考えることに頭をひねることになるのでしょう(でもそれって、ますます特措法の消費税転嫁阻害表示に近づきますね・・・)。

マスコミでは、「『消費税』という言葉が使われていなければ大丈夫」みたいな報道のされ方がしていますが、それを鵜呑みにして

「消費税還元セール」・・・×

「3%値引きセール」・・・○

と考えるのは危険です。

ガイドライン案では、来年3月まで10,500円で売っていたものを4月からも10,500円で売り続ける場合に、「消費税還元セール」という表示の代わりに「3%値引きセール」と表示するのは、特措法違反ではないけれど景表法違反になる、とされているのです。

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