« 2013年6月 | トップページ | 2013年8月 »

2013年7月

2013年7月31日 (水)

【公正取引協会勉強会】

本日、公正取引協会さんの下請法勉強会で、消費税転嫁特措法についてお話をさせていただきました。

先週木曜日にガイドライン案が出たところだったので、結果的にとてもタイムリーな勉強会になりました。

また、みなさん関心の高いテーマであることが反応からも見てとれて、たいへん気持ちよくお話しさせていただくことができました。

いろいろとご質問もいただき、こちらも勉強させていただきました。

このような勉強会では、発表者が最も勉強させていただく、一番ありがたい立場なのだということを改めて認識しました。

それに、話しているうちにいろいろアイディアが浮かぶもので、これも役得の1つでしたね。

公正取引協会さんでお話しするのは米国カルテル規制以来の2度目ですが、また面白いテーマがあればぜひお願いしたいと思います。

2013年7月29日 (月)

特措法の「大規模小売事業者」と大規模小売業告示の「大規模小売業者」

消費税転嫁特措法では、大規模小売業者が取引先かのら消費税の転嫁を拒否することが禁止されています。

そして、「大規模小売業者」の定義は、「大規模小売業者による納入業者との取引における特定の不公正な取引方法」(大規模小売店舗告示)の「大規模小売業者」(こちらは、「事」が入っていません。)と同じで、

「一般消費者により日常使用される商品の小売業を行う者・・・であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。

一 前事業年度における売上高・・・が100億円以上である者

二 次に掲げるいずれかの店舗を有する者

イ 東京都の特別区の存する区域及び〔政令指定都市〕の区域内にあっては、店舗面積・・・が3000平方メートル以上の店舗

ロ イに掲げる市以外の市及び町村の区域内にあっては、店舗面積が1500平方メートル以上の店舗」

と定義されています(「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法第2条第1項第1号の大規模小売事業者を定める規則案」)。

さて、特措法の転嫁拒否禁止の規定と大規模小売業告示の規定は、似ているところもありますが、実は結構異なります。

まず、大規模小売業告示の場合は、相手方が「納入業者」に限られていて、「納入業者」は、

「大規模小売業者又はその加盟者が自ら販売し、又は委託を受けて販売する商品を当該大規模小売業者又は当該加盟者に納入する事業者(その取引上の地位が当該大規模小売業者に対して劣っていないと認められる者を除く。)」

と定義されています。

これに対して、特措法の転嫁拒否の場合、大規模小売事業者の取引の相手方である「特定供給事業者」は、

「事業者が大規模小売事業者に継続して商品又は役務を供給する場合における当該商品又は役務を供給する事業者」

というだけで、継続的な取引先であることと、事業者であるということ以外、何の限定もありません。

なので、特措法の転嫁拒否規定の方が、相手方がはるかに広いということです。

例えば、

本社社屋の賃料

本社で使用するシステム開発

本社の清掃

宣伝広告

本社の引っ越し

有価証券の売買の委託

企業年金の受託機関との契約

なども、すべて転嫁拒否規定の適用対象になるように思われます。

つまり、転嫁法の規定は店舗の購買担当者にだけ理解させたのでは足りない、別の言い方をすれば、特措法は購買部マターでも各店舗マターでもなく、法務部または総務部マターである、ということです。

さらに、転嫁拒否禁止については、大規模小売店舗告示の納入業者の定義のような、

「その取引上の地位が当該大規模小売業者に対して劣っていないと認められる者を除く。」

という絞りがないことにも注意が必要です。

この点に関連して、粕渕功著『大規模小売業告示の解説』(商事法務・2005年)p37に興味深い解説があって、そこでは、

「なお、小売業者の総売上高が100億円以上であるものなので、例えば、事業者が小売業と製造業を営んでいる場合に、小売部門の売上が1億円で、製造部門の売上高が99億円であっても、形式的には第1号に該当することとなる。

しかしながら、後述のとおり、この告示〔大規模小売店舗告示〕における納入業者には、取引上の地位が当該大規模小売業者に対して劣っていないと認められる者は除かれることとなっているところ、小売部門の売上が1億円しかない小売事業者と取引する納入業者が、当該小売業者に対して取引上の地位が劣っていないとは認められないような場合は考えにくいのではないかと思われる。

このように、大規模小売業者の主たる事業が小売業以外であって、たまたま別途小売業も営んでおり、その売上高が小規模な場合には、第2号〔店舗面積基準〕に該当する場合を除き、運用上は問題とならないであろう。

と説明されています。

つまり、大規模小売業告示の場合には、小売部門の売上が1億円の企業も定義上「大規模小売業者」に該当するけれど、納入業者に対して優越的地位にあるとは通常いえないのだから、運用上は問題ない、ということです。

逆にいえば、転嫁特措法には「その取引上の地位が当該大規模小売業者に対して劣っていないと認められる者を除く。」というような相手方の絞りがないので、製造業メインの会社がたまたま小売業を営んでいる場合でも、もろに転嫁拒否禁止規定の適用がある、ということです。

さらに同書p35では、

「通信販売業者のように店舗を有しない者であっても、〔大規模小売店舗告示の〕対象となる。」

とされています。

これが特措法の「大規模小売事業者」の定義にも当てはまるとしたら、大問題ではないでしょうか。

というのは、今日どのメーカーでもネット直販をやっているでしょうから、ほとんどのメーカー(たとえば家電メーカー)が、「大規模小売事業者」に該当してしまいそうだからです。

(この点、販売会社を本体から分社化していれば、大丈夫なのでしょうね。)

同書p35では、サービス業の会社が付随的に商品を販売している場合(例えば書道の通信教育講座の会社が毛筆や硯を販売する場合)や、ホテルがホテルの売店で土産を販売する場合には「小売業を営む者」に該当しないと説明されていますが、サービス業が主なら該当しないけど、製造業が主なら該当するとも読め、ますます混迷は深まります。。。

実務上、以上の問題点によって影響のある企業がどれだけあるのかは未知数ですし、公取委が、そういう場合は積極的に摘発しない(お目こぼしをする)ということは十分に考えられます。

でも、今まで大規模小売業告示は事実上無関係だと思ってスルーしていた企業も、一度転嫁特措法についてはチェックしてみる必要があるのではないでしょうか。

それにしても、法律が成立してしまって後の祭りですが、やっぱり「大規模小売事業者」についての転嫁拒否の適用範囲は、もう少し絞るべきだったのではないでしょうか。

相手方を納入業者に限るというのも1つですし、小売業を主として営む者に限るというのも1つだったでしょう。

あ、でも「大規模小売事業者」の定義は公取委の規則事項ですから、まだパブコメ中なので、何とかなるかもしれませんね。

2013年7月28日 (日)

「全品3%値引き」セールと二重価格表示との関係

消費税転嫁特措法のガイドライン案が出て、たんに「全品3%値引き」というだけの表示はOKということになりました。

ただ、「消費税」分の値引きだと明記できないだけに、却って二重価格表示の問題が生じるという、悩ましい問題が出てきました。

そのことが、消費者庁の「消費税の転嫁を阻害する表示に関する考え方(案)」の「(参考)消費税率の引上げに伴う表示に関する景品表示法の考え方」で説明されています。

(以下では、

①来年1月から3月まで10,500円で販売(つまり、最近時相当期間販売価格は10,500円)、

②消費税率アップ直前(来年3月30日とか31日)に10,800円に口実作りの値上げ、

③4月1日から、10,800円で販売しながら、「価格据え置き」とか「3%値引き」といって販売する、

というケースを想定してください。)

同ガイドライン案(参考)の(注8)では、

「『価格据え置き』など過去の販売価格等のままで販売しているかのような表示や

『3%値引き』など過去の販売価格等から一定率値引きしているかのような表示について、

一般消費者は、通常、同一の商品が

当該価格〔セール中の実際の販売価格〕で

当該表示〔『価格据え置き』や『3%値引き』などの表示〕が行われる前の相当期間販売されていたと認識するものと考えられる。

したがって、消費税率引上げ直前≪例えば来年3月30日とか31日≫に値上げを行った場合の値上げ後の価格≪10,800円≫・・・など、

同一の商品について相当期間にわたって販売されていた価格≪10,500円≫とはいえない価格≪10,800円≫を前提に消費税率引上げ〔4月1日〕以降

『価格据え置き』

『3%値引き』

等の表示を行う場合

(もちろん、『価格据え置き』セールの場合は口実値上げ価格10,800円を前提に据え置きなので10,800で販売し、『3%値引き』セールの場合は口実値上げ価格10,800円を前提に3%引きなので10,500円で販売するわけです(厳密には10,800円の3%引きではなくて、10,000円の3%引きなのですが、その辺は大目に見てください)。)

一般消費者に

消費税率引上げ以降における販売価格〔『価格据え置き』セールの場合は10,800円、『3%値引き』セールの場合は10,500円≫が、

同一の商品が

消費税率引上げ前の相当期間にわたって販売されていた価格〔最近時相当期間販売価格=10,500円〕と同じ価格である〔『価格据え置き』の場合〕

又は

その価格〔最近時相当期間販売価格=10,500円〕から表示された率〔3%〕が値引きされている〔『3%引き』の場合〕

との誤認を与え、不当表示に該当するおそれがある・・・。」

と説明されています。

ちょっと分かりにくいですね。

まずこの(参考)が「価格据え置き」セールについて言っているのは、増税前ずっと10,500円(本体価格1万円)で売っていたものを、増税直前に10,800円に口実作りで値上げして、4月1日から10,800円で売って、「ほら、同じ10,800円で、据え置きでしょ。」といってもダメですよ、ということです。

まあ、これはその通りでしょうね。「価格据え置き」というなら、ちゃんと10,500円で売りなさい、ということです。

さて問題は、「3%値引き」のほうです。

(参考)では、

「その価格〔最近時相当期間販売価格〕から表示された率〔3%〕が値引きされている」

との誤認を与えることが前提とされています。

しかし、これは、(いわれてみれば理屈はそのとおりかもしれないのですが)消費税増税の文脈では、そうとも限らないのではないでしょうか。

つまり、来年4月1日から「3%値引き」と表示すれば、消費者は、「ああ、消費税増税分を引いているんだな」と思う(そう思われるからこそ、ガイドラインでさんざん具体例が挙げられている)のではないでしょうか。

つまり、「3%値引き」の意味は、

現在の本体価格+消費税8%-値引き3%・・・①

と考えるのではないか、と思うのです。

ところが、消費者庁は、来年4月からの「3%値引き」セールも、

過去の最近相当期間販売価格-値引き3%・・・②

だと消費者は考えるだろう、というわけです。

確かに、「消費税」とはどこにも表示していないので(というか、特措法で表示したらいけないことになっているので)、消費者が①と考える根拠はないじゃないか、そういういみでは、通常の「全品10%値下げ」というのと何も変わらないじゃないか、といわれればそうなのですが、むしろ今までの議論は、①であることを前提に進んでいたのではないでしょうか。

でも、消費者庁の見解はそうではない、ということです。

例えば、来年1月1日から3月31日まで10,500円で販売していた商品を、4月1日に引き続き10,500円で販売し続けたとします。

この場合に、「全品3%引き」と表示することは、ガイドラインが想定しているであろうまさに典型例であるので認められるのかと思いきや、「消費税」とは表示してないので特措法には反しないけれども、景表法違反の二重価格表示になる、ということです。

いずれにせよ、この点はちょっと盲点でしたね。

国会でさんざん議論されたときも、「3%値引き」なら問題ないとしきりに消費者庁はいっていたのに、「だけど景表法には反するよ」と後から言うのは、確かに理屈の上ではそうかもしれませんし、国会の議論の対象は特措法であって景表法ではなかったにせよ、ちょっとだまし討ち的な感じがしますね。

以上に対して、「価格据え置き」なら問題ありません。

なので、消費税増税直後は、それまで10,500円で売っていたものを引き続き10,500円で売る場合には、「価格据え置き」セールにしておくのが無難です。

もし「3%値引き」と表示するなら、3月までの販売価格10,500円から、本当に3%引いて、10,200円(厳密には、10,500×0.97=10,185円)で販売しないと景表法違反になってしまいます。

では、「本体価格3%値引き」という表示をして10,500円で売るのは景表法に反しないでしょうか。

この場合、増税前の来年1月から3月までは、

①本体価格10,000円+消費税500円=10,500円

で販売していたのを、4月からは、

②本体価格9,700円+消費税800円(正確には、9700×0.08=776円)=10,500円

で販売する、という表示をして、実際に10,500円で販売するのですから、大きな問題はなさそうです(厳密に言うと、10,476円以下で販売しないといけませんが・・・)。

それにしても、これは「消費税還元セール」という表示が禁止されたことの、いわば副作用のようなものではないかと思われます。

実は、前回の消費税増税時に、イトーヨーカ堂が「消費税分還元セール」を実施した際に、直前のセールより高い価格の商品が一部にあったので、公取委が、不当表示には該当しないが、消費者に適切な情報を提供するよう注意した、ということがありました(1999年8月13日日本経済新聞朝刊)。

ここで、「不当表示には該当しない」とされた理由はおそらく、値引きの対象が「消費税分」であることが明記されていたからではないかと思います。

つまり、「消費税分還元」と明記している以上、「消費税分還元セール」という表示の意味は、

現在の本体価格+消費税5%-消費税分5%・・・①

と考えるほかなく、

過去の最近相当期間販売価格-値引き5%・・・②

と捉えることはできない(消費者も②とは考えない〕、と考えたのではないかと思います。

今後事業者としては、「消費税還元セール」の趣旨で「3%値下げ」と表示する際には、

過去の最近相当期間販売価格-値引き3%・・・②

という(本来の)意味ではなくて、

現在の本体価格+消費税8%-消費税増税分3%・・・①

という(消費税増税の文脈における特殊な)意味であると消費者に分かるような表示を考えることに頭をひねることになるのでしょう(でもそれって、ますます特措法の消費税転嫁阻害表示に近づきますね・・・)。

マスコミでは、「『消費税』という言葉が使われていなければ大丈夫」みたいな報道のされ方がしていますが、それを鵜呑みにして

「消費税還元セール」・・・×

「3%値引きセール」・・・○

と考えるのは危険です。

ガイドライン案では、来年3月まで10,500円で売っていたものを4月からも10,500円で売り続ける場合に、「消費税還元セール」という表示の代わりに「3%値引きセール」と表示するのは、特措法違反ではないけれど景表法違反になる、とされているのです。

2013年7月27日 (土)

自己物の修理行為の全部の委託

修理委託の類型2(自己物の修理行為の委託・下請法2条2項後段)は、

「事業者がその使用する物品の修理を業として行う場合に

その修理の行為の一部

他の事業者に委託すること」

というものです。

ここで気になるのが、委託対象行為が修理行為の「一部」と限定されていることです。

このことは、同じ条文の修理委託の類型1(他人物の修理行為の委託・下請法2条2項前段)に、

「事業者が業として請け負う物品の修理の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること」

とされているのと対比すると、よりはっきりします。

おそらく類型2(「自己物」)で「一部」と限定しているのは、「全部」を委託すると、自己物の修理を自らやっていないことになるので、「修理を業として行う場合」(2条2項後段)の要件と矛盾する、ということではないかと想像します。

しかし、果たしてそのように律義に「一部」と限定する必要があるのでしょうか。

むしろ、修理行為の「全部」か「一部」かは、ある物品の修理を完成させたら「全部」で、完全に修理するための修理行為の一部(一部といえども、やりかけという意味ではなくて、それ自体意味のある修理行為)だけでもやれば「一部」、なのではないでしょうか。

それに、情報成果物作成委託の第3類型(自己使用情報成果物の作成の委託・2条3項)では、

「事業者がその使用する情報成果物の作成を業として行う場合に

その情報成果物の作成の行為の全部又は一部を

他の事業者に委託することをいう。 」

とされているのと、バランスが悪いように思います。

つまり、情報成果物作成の「全部」を委託すると自己使用情報成果物の作成を業とすることと矛盾する(=「全部」は社内で行われる作成行為の全部だという意味だ)、というなら、情報成果物作成委託の類型3に「全部」が入っているのはおかしいことになります。

なので、情報成果物作成委託の類型3の「全部」、「一部」というのは、まとまった1つの情報成果物を完成させたら全部、その一部を作成したなら「一部」という差だと考えざるを得ないと思うのです。

だとすると、やっぱり修理委託の類型2(「自己物」)も、同様に解するのが自然だと思われます。

結局、修理委託の類型2で、修理行為の「一部」に限定しているのは、意味が無い、ということになります。

2013年7月26日 (金)

消費税転嫁阻害表示ガイドライン案について

消費税の転嫁を阻害する表示に関する考え方(案)」が出ました。

(転嫁法の独禁法の特例に関する部分のガイドラインも公取委のホームページに出ていますが、それについてはまた後日。)

いくつか感想を記します。

消費者庁菅久審議官の国会答弁でも話題になった、「『消費税』という文言を含まなければいいのか。」という点については、

「なお、「消費税」といった文言を含まない表現については、

宣伝や広告の表示全体から消費税を意味することが客観的に明らかな場合

でなければ、禁止される表示には該当しない(注5)。」

と一般的な考え方述べ、具体例として、

「(注5)例えば、「消費税」といった文言を含まない表現であっても、

「増分3%値下げ」、

率引上げ対策、8%還元セール」など、

「増税」又は「税」といった文言を用いて

実質的に消費税分を値引きする等の趣旨の宣伝や広告を行うことは、通常、本条で禁止される表示に該当する。」

というのが例示されています。

でも、この具体例って、本文の一般論とあんまりリンクしていないような気がします。

つまり、本文の一般論の方は、「表示全体から」という表現を用いることによって少しでも適用範囲を広げて脱法を防ぎたいという意図(執念?)を感じるのですが、来年4月に「税」といえば消費税のことに決まっているんであって、表示の「全体」をみて判断しようが一部の文言を取りだして判断しようが、「消費税」のことを意味することは「客観的に明らか」であるように思われます。

裏から言えば、(注5)の具体例からは、「税」という言葉が使われていなければOKと読めるのですが、そうするとそれに対応する一般論はむしろ、

「税」

という言葉が用いられているかという、極めて局地的な判断による、という一般論になるはずで、「表示全体から」というのとは逆の方向に行っているように思います。

「表示全体から」具体例が判断しているのだとすれば、「3%」、「8%」の部分が消費税を連想させる、ということかもしれませんが、では、

「増税分のうち2%値下げ」

「税率引き上げ対策、7%還元セール」

あるいは逆に、

「税率引き上げ対策、20%還元セール」

ならいいのか?という疑問がわきます。

「還元」という文言がダメなのだ(「値下げ」といえば本体価格の値下げかもしれないけれど、来年4月に「還元」といったら消費税の還元しかあり得ないだろう)、という考えはあり得るところですが、(注5)の説明は、「税」という言葉の有無を問題視しており、「還元」の方には注目していないようです。

次に、「禁止されない表示の具体例」でも、

「宣伝や広告の表示全体からみて消費税を意味することが客観的に明らかな場合でなければ」

という留保が付いているのも気になりますね。

「禁止されない表示の具体例」に挙げられている、

「春の生活応援セール」

なんていうのは、それだけ見たらOKに決まってるんであって、では「春の生活応援セール」というのであっても「宣伝や広告の表示全体からみて消費税を意味することが客観的に明らかな場合」というのはどういう場合なんだ、というのを示さないと意味がないのではないでしょうか。

あまり批判ばかりしても何なので、良いところも触れておくと、

「3%値下げ」、「3%還元」、「10%値下げ」、「8%還元セール」

というのが基本的にOKと明確にしたのはそれなりに意味のあることだと思います。

とくに「還元」という言葉は、消費税の還元を連想させますが、基本的にOKとしたのは結構なことです。

あと地味ですが、

「(参考)消費税率の引上げに伴う表示に関する景品表示法の考え方」

というのが付いています。

これは、このブログでもちょっと前に紹介した「規制の事前評価書 消費税の円滑かつ適正な転嫁を阻害する表示への対応」を実質的に撤回するものでしょう。

私も解釈論としては、今回の「(参考)」の考え方の方が正しいと思います。

ただよくよく考えてみると、消費税転嫁阻害表示で実現しようとしている立法目的を表示規制として定めるのが果たして妥当であったのか、疑問がわいてきますね。

つまり、消費税転嫁阻害表示というのは、極論すれば、本当に消費税分を還元していても、所定の表示が違法になる、という仕組みです。

実体と表示が違っているから規制する、というのが普通の表示規制です。

例えば、不良な商品を優良だと表示するから景表法に反するわけです。

不良な商品を不良だと表示するのは、景表法違反ではありません。

そいいう商品は、競争に負けて売れなくなるだけです。

ところが、特措法は、そういう考えではありません。

特措法のホンネは、むしろ消費税を還元しないでね、ということでしょう。

それなら、景表法のような表示規制で対応するのではなくて、消費税法で転嫁を義務付けるのが本筋ではないでしょうか

つまり、不良な商品を優良だと表示するのを禁止するだけではなくて(あるいは、不良な商品を優良だと表示するのを禁止するか否かはともかくとして)、そもそも不良な商品を売ることを禁止するのが本筋だと思うのです。

なのに、消費税法で転嫁を義務付けないのに表示規制で転嫁しないという表示だけを禁じるというのは、考えてみるとおかしな話です。

例えば、特措法の建て付けでは、「消費税分ポイント還元します」という表示をせずにだまって消費税相当額のポイントを付与する行為は、違反に問えないことになります。

細かく見ると、いろいろ疑問のわいてくる法律だと改めて感じます。

2013年7月25日 (木)

3条書面の「支払期日」の「~日以内」という記載

3条書面(発注書)には、「支払期日」を記載することになっています(3条書面規則1条1項4号)。

ところが、公取委の検査でよく指摘される事項なのですが、この支払期日として、

「納品後○日以内

という記載は認められないという運用になっています。

3条書面記載例の解説(下請法講習テキスト76頁)に、

「※『納品後○日以内』との記載は、支払期日が特定されないので認められない。」

と、その旨が説明されています。

つまり、

「納品後○日」と特定日で書いた上でそれよりも早く支払う・・・①

のはいいけれど、

「納品後○日以内」と書いた上でその日よりも早く払う・・・②

というのはダメだ、ということです。

しかし、これはちょっとおかしいのではないでしょうか。

まず、①も②も、実質的には何も変わりません。

「納品後○日以内」だと、どうして特定されていないということになるのでしょうか?

もともと「支払期日」というのは、その日までに払ってね、というこで、その日以外には払ったらいけないということではないので、「以内」というのは、その「その日までに」という部分を表しているだけでしょう。

つまり、

納品後○日以内

という支払日の記載は、文字通りの

支払期日(=「この日までに支払ってね」という日)が「納品後○日以内」だ・・・×

という意味ではなくて、

納品後○日までに支払う・・・○

という意味であり、

納品後○日

の部分で支払日は特定されていて、

以内

の部分は、

「までに支払う」

という意味を表していると考えるのが合理的だと思うのです。

つまり、「以内」の部分は3条規則の観点からは余事記載(?)で、「支払期日」という言葉の意味の一部と重複している(「支払期日」の意味の中に必然的に含まれる「その日までに支払ってね」ということを、「以内」で繰り返し言っている)だけに過ぎない、と考えるわけです。

あるいは、

納品後○日以内

という記載は、

「納品後○日以内に支払います。

という意味、つまり

に支払います。

の部分が省略されているだけ、というふうに説明してもよいと思います。

(まさか公取委も、「納品後○日以内に支払います。」という記載が違法だとは言わないでしょう。それなのに「納品後○日以内」はダメだというのは、わけがわかりません。)

それをわざわざ律儀に、

「納品後○日」以内の範囲内で支払期日はどのように決めてもいいのだ(だから不特定だ)

と読むのは、形式的に過ぎます(というか、日本語の通常の読み方と違います)。

本当にそういう読み方しかできない人がいたら、「あなた本当に日本人ですか?」と聞きたくなります。

ちなみに、この問題は「期日」という日本語が国語辞典的に何を意味するかということとは関係がありません。

例えば、最近参議院選挙が自民党の圧勝で終わりましたが、「投票期日」が7月21日であれば、投票できるのは7月21だけなのであり(「期日前投票がある」とか言わないでくださいね。笑)、「期日」がピンポイントでその日を指すことが明らかです。

これに対して「支払期日」というのは、支払う日がその日より前であれば良いという意味が、「期日」という言葉ではなく、「支払」のほう、ないしは「支払期日」という熟語全体に含まれるので、「納品後○日以内」と書いても不特定とは言えないんじゃないか、という趣旨です。

また「○日以内という記載は、実質的にも問題はありません。というより、下請事業者にとって有利にはなり得ても不利にはなり得ません。

例えば、仮に公取委の指導に従って、

「納品後10日」

と、ピンポイントで記載したとしましょう。

すると、その意味するところは、初日不算入(民法140条本文)として、8月1日に納品された商品の下請代金が支払われるべき日は、

8月1日(0日目)、2日(1日目)、・・・・11日(10日目)、

の11日の候補日のいずれか、ということになります。

これに対して公取委が、「『納品後10日以内』では不特定だ」という意味は、支払期日が、

8月1日(0日目)

8月2日(1日目)

・・・

8月11日(10日目)

のいずれであるか分からないからだめだ、ということでしょう。

しかし、仮に「以内」という言葉の意味をそのように解しても、8月1日に納品された商品の下請代金が支払われるべき日は、

8月1日(「支払期日」が「納品日から0日目」という意味と解した場合)、・・・①

または、

8月1日、2日(同じく「納品日から1日目」)・・・②

または、

8月1日、2日、3日(同じく「納品日から2日目」)・・・③

・・・

または、

8月1日、2日、・・・11日(同じく「納品日から10日目」)・・・⑪

ということになり、結局、支払われるべき日は⑪になるわけです。

これは、支払期日をピンポイントで定めた場合と同じです。

このように、(いささかくどいですが)「以内」をつけてもつけなくても、意味は変わらないわけです。

仮に「以内」では不特定だという見解に立っても、不特定になった結果、①~⑩の可能性があるだけ、⑪の余地しかない場合よりも絞られているとすらいえます。

最後にもう1つダメ押しをすれば、発注時点で決められない事項(3条規則では「特定事項」と呼ばれています。)の「内容を定めることとなる予定期日」の記載(3条規則1条3項)では、

「発注日から○日以内」

という記載が認められているのと辻褄が合いません。(講習テキストp28、Q&A38番)

いつまでも国民の常識から離れた解釈をしていると、そのうち国民から見放されてしまうと思います。

2013年7月24日 (水)

情報成果物作成委託の公取委解釈の誤り(情報の「化体」)

下請法講習テキストp10に、情報成果物作成委託(いわゆる類型1)の例として、

「衣料品製造業者が、消費者に販売する衣料品のデザインの作成を他の事業者に委託すること。」

というのが挙げられています。

しかし、私はこれは間違いだと思います。

まず、情報成果物作成委託の類型1というのは、

「事業者が

業として行う提供・・・の目的たる情報成果物

作成の行為の全部又は一部を

他の事業者に委託すること」

というものです。

つまり、親事業者自らが提供する情報成果物の作成を下請に出すことです。

(なお「類型2」は、親事業者がその顧客から請け負って作成するものを下請けに出すものです。)

そこで、上記設例が情報成果物作成委託(類型1)に該当するためには、「衣料品製造業者」が、何らかの「情報成果物」を業として顧客に提供していることが必要です。

ところが、上記設例では、親事業者はたんなる「衣料品製造業者」なので、「業として」「提供」しているのは、おそらく衣料品です。

そして、衣料品は、情報成果物ではありません。

念のため条文をみてみると、情報成果物は、

「この法律で『情報成果物』とは、次に掲げるものをいう。

 プログラム(電子計算機に対する指令であつて、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。)

 映画、放送番組その他影像又は音声その他の音響により構成されるもの

 文字、図形若しくは記号若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合により構成されるもの

 前三号に掲げるもののほか、これらに類するもので政令で定めるもの」

と定義されています(下請法2条6項。なお4号の政令で定められているものはありません)。

衣料品が1号(プログラム)に該当しないことは明らかでしょう。

2号(映画等)にも該当しないでしょう。

そして、まさか3号に該当するということもないでしょう。たしかに、衣服には図形や色彩が組み合わされているかもせいれませんが、ここでの情報成果物は、デザインなどを指すのでしょう(講習テキストp9)。

あえていえば、衣料品は、製造委託の条文に出てくる「物品」でしょう。

なので、上記設例では、親事業者は「物品」を製造しているものであり、

「〔親事業者が〕業として行う提供・・・の目的たる情報成果物」

という要件を満たさない(親事業者は業として情報成果物を提供していない)ことが明らかです。

続けて講習テキストでは、

「不動産会社が、販売用住宅の建設にあたり、当該住宅の建設設計図の作成を設計会社の委託すること。」

というのが挙げられていますが、同じ理由でこれも間違いです。

というのは、親事業者である不動産会社(なお厳密には、製造委託等を行わない者は定義上「親事業者」には該当しないのですが、そこは分かりやすさ重視ということでご容赦ください。)が提供しているのは「住宅」という物品です。業として情報成果物は提供していません。

講習テキストの他の例では、親事業者が業として提供するものが、「ゲームソフト」、「汎用アプリケーションソフト」、「テレビ番組」、「制御プログラム」、「取扱説明書」というふうに、いずれも情報成果物に該当するので、

「〔親事業者が〕業として行う提供・・・の目的たる情報成果物」

という要件を満たすのですが、上記2つだけは、「衣料品」、「住宅」という物品であり、この要件を満たさないのです。

講習テキストp11の表の用語を使えば、情報成果物作成委託が成立するためには、

①最終的な情報成果物(=親事業者が顧客に提供するもの)

 例)ゲームソフト

②最終的な情報成果物を構成することとなる情報成果物⇒この委託は下請法の対象

 例)プログラム、画像データ

③最終的な情報成果物の作成に必要な役務⇒この役務の委託は下請法の対象外

 例)監修

の①と②が必要なわけです。上記2つの例は、①が抜けています。

別の言い方をすれば、情報成果物作成委託は情報成果物の作成委託ではありません

たんに親事業者が納品を受けるのが情報成果物であるというだけで、情報成果物作成委託になるわけではないのです。

このような間違いの大元になっているのが、p10の、

「『提供』とは、・・・商品の形態、容器、包装等に使用するデザインや商品の設計などを商品に化体(かたい)して提供する場合(例:ペットボトルの形のデザイン、半導体の設計図)も含まれる。」

という解説です。

さらに講習テキストp21でも、

「Q26: 商品の『設計図』は情報成果物に該当するとのことだが、半導体の回路の設計図、建設工事図面のようなものまでも本法の対象となるか。

A: これらの設計図、工事図面に従って、半導体、建築物が製造・建築されるものなら、当該設計図、当該工事図面は、半導体、建築物に化体して顧客に提供されているものなので、情報成果物作成委託(類型1)として本法の対象となる。」

と解説されています。

しかし、「化体して」いようがいまいが、親事業者が提供する「最終的な情報成果物」が存在しないと、情報成果物作成委託に該当しないことは明らかであり、この解説は間違っています。

Q26で親事業者が顧客に提供するのは、「半導体」、「建設物」という物品であり、「情報成果物」でないことは明らかです。

もしこのような行為を下請法で規制するなら、むしろ製造委託の、「物品」、「半製品」、「部品」、「附属品」、「原材料」、「金型」のあとに、「設計図」とか、「その他物品の製造に必要なもの一切」というのを加えるべきでしょう。(逆にいえば、公取委の解釈はこれをやっているに等しいわけです。)

しかも、「化体して」いるからという理由で情報成果物作成委託に該当するとすると(←この考え方には条文の根拠がありません)、情報成果物作成委託の範囲が際限なく広がっていく(「情報成果物」の作成委託に限りなく近づく)ことになり、不当です。

もし下請事業者の情報が「化体」された親事業者の物品

「情報成果物」(典型的には、「文字、図形若しくは記号若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合により構成されるもの 」)

だというなら、下請事業者の情報が「化体」している下請事業者作成の部品

「情報成果物」(「文字、図形若しくは記号若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合により構成されるもの」)

だということになり、すべての製造委託は情報成果物作成委託に含まれる、というとんでもないことになってしまいそうです。

類型1の定義には、「情報成果物」という用語は1個しかないので、下請事業者から親事業者に提供される「情報成果物」も、親事業者からその顧客に提供される「情報成果物」も、同じ意味に解するしかないでしょう。

(細かいですが、もうちょっと正確に言うと、下請事業者が提供するのは、情報成果物の「作成の行為の全部又は一部」なので、それ自体情報成果物である必要はありません。これに対して、親事業者がその顧客に提供するのは、条文上明らかに「情報成果物」でなければなりません。)

下請法の製造委託等の定義は、下請事業者が何を納めるかという点も大事ですが、親事業者が納められたものをどう使うのか、あるいは、何のために納めさせているのか、というところでも絞っていることを忘れてはいけません。

上記の間違った設例に共通するのは、完成品に対して情報成果物が占める地位が大きい(例えば半導体は設計図で性能が決まる)ことから、なんとなく下請事業者から提供された情報成果物のフレイバーが色濃く最終商品に残っているので下請法の対象っぽい、ということなんだと想像しできます(だからこそ「化体」という言葉を使っているのでしょう)。

しかし、フレイバーが残っていようがいまいが、条文の要件とは何の関係もありません。

とくに、半導体回路の設計図なんて、これを下請法の対象とするかしないかで、実務的な影響はかなり大きいのではないでしょうか。

もちろん、発注書をちゃんとつくるとかは、下請法の適用が無くても守るのが望ましいですから、半導体メーカーが今のプラクティスをあえて変える必要もないでしょうが、一度、「この情報成果物には下請法が適用されるのか」を見直してみる価値はあるのではないでしょうか。

公取委の「化体して提供する」という理屈は、下請法運用基準第2の3(3)にも規定されているので、間違いなく確信犯ですが、ひどい解釈をするものです。

続きを読む "情報成果物作成委託の公取委解釈の誤り(情報の「化体」)" »

2013年7月22日 (月)

「消費税還元セール」という表示には景表法の適用がないことについて

消費者庁の「規制の事前評価書 消費税の円滑かつ適正な転嫁を阻害する表示への対応」という文書によると、「消費税還元セール」といった、消費税の転嫁を阻害する表示には、景表法の適用がないことが明言されています。

つまり、同文書では、

「・・・景品表示法は、実際のものより著しく優良・有利と一般消費者に誤認される表示を不当表示として禁止するものであり、特定の表現について一律に禁止するものではない。そのため、消費税率の引上げ時に行われる消費税の負担等に係る不適切な表示が、一般消費者に誤認を与えるものではない場合(※)、景品表示法で対応することができない・・・という問題点がある。」

「※ 景品表示法で規制できない消費税率の引上げ時に行われる消費税の負担等についての不適切な表示の例としては、消費税引上げ後において事業者が『消費税還元セール』と表示し、通常税込み108 円で販売されるものを実際に100 円で販売する場合がある。」

と現状の問題点を説明した上で、

「消費税率引上げ時に行われる消費税の負担等についての不適切な表示は、消費税の円滑かつ適正な転嫁を阻害するものであるところ、上記・・・のとおり現状の規制では対応できない場合があり、この点を踏まえると、消費税の円滑かつ適正な転嫁を確保するため、規制を新設し、消費税の円滑かつ適正な転嫁を阻害する表示を禁止する必要性が高いと考えられる。」

と述べています。

要するに、「消費税還元セール」という表示は、消費税転嫁特措法には違反するけれども、景表法には違反しないというのが消費者庁の公式見解だ、ということです。

しかし、特措法の仕組みに照らすとこれは驚くべきことです。

なぜなら、特措法では消費税転嫁阻害表示に対して消費者庁ができるのは勧告を出すことですが、勧告の意味(効果)というのは、勧告に従った場合には景表法の排除命令は出しませんよ、ということだからです。

勧告に違反したこと自体には、罰則はありません。

なので、条文の仕組みとしては、「勧告に任意に従わなかったら、景表法上の排除命令が待ってるぞ」という、いわば間接的な脅しによって、勧告を守らせようとしているわけです。

しかし、消費税転嫁阻害表示が景表法に反しないとすると、景表法の排除命令による間接的な強制というものが、そもそも存在しないことになります。

つまり、特措法上の勧告は、純粋に、法的拘束力を有しない行政指導に過ぎない、ということになります。

いわば、景表法上の排除命令は「空脅し」に過ぎないわけです。

もちろん、行政指導であっても、名前も公表されるし、多くの企業は任意に従うでしょうから、景表法による間接的な強制がなくても、勧告には十分意味があるということもできるでしょう。

しかしそれにしても、特措法の仕組みを素直に眺めれば、消費税転嫁阻害表示は景表法の有利誤認表示にも該当するという前提で法律はできていると考えるのが普通でしょう。

そういう意味で、特措法の消費税転嫁阻害表示に関する規定は、何ともちぐはぐな感じはします。

なお念のため、上記事前評価書では、

「※ 景品表示法で規制できない消費税率の引上げ時に行われる消費税の負担等についての不適切な表示の例としては、消費税引上げ後において事業者が『消費税還元セール』と表示し、通常税込み108 円で販売されるものを実際に100 円で販売する場合がある。」

といっているので、例えば、消費税引上げ後において事業者が「消費税還元セール」と表示しながら、通常税込み108 円で販売されるものを108 円で販売すると、景表法違反になる、ということには注意が必要です(ただし、そのような分かりやすい違反のケースは実際には少ないのではないかと思われます)。

2013年7月21日 (日)

返品可能期間(6か月)とやり直し要求可能期間(1年)の違い

下請法では、不当な返品(下請法4条1項4号)とやりなおし要求(4条2項4号)が禁止されていますが、直ちに発見できない瑕疵があった場合にそれぞれの行為をすることが許される期間が、なぜか異なります。

つまり下請法講習テキストp51では、返品に関する解説として、

「通常の検査で発見できない瑕疵で、ある程度期間が経過した後に発見された瑕疵については、

その瑕疵が下請事業者に責任があるものである場合は、

当該物品等の受領後6か月以内の返品は問題ないが、

6か月を超えた後に返品すると本法違反〔注:不当な返品の禁止〕となる。」

とされているのに対して、p61では、やり直しに関する解説として、

「通常の検査で瑕疵等のあること

又は

委託内容と異なること

を直ちに発見できない下請事業者からの給付について、

受領後1年を経過した場合」

は、

「親事業者が費用の全額を負担することなく」

やり直しを命じることは認められない(4条2項4号の不当なやり直しに該当する)とされています。

(なお親事業者が顧客に対して1年を超えて瑕疵担保責任を負っている場合には例外がありますが、今回は割愛します。)

つまり、

①返品は6か月以内に限りOK

②やり直しは1年以内までOK

ということです。

なので、例えば受領後10カ月後に瑕疵が発見された場合には、返品はできないけれどもやり直しは命じることができる、ということになります。

しかし、考えてみるとちょっと変な気がしますね。

瑕疵のある商品を返品できないけれどもやり直しを命じることはできる、とすると、やり直して納入された新たな物品受領後、前に納入された瑕疵ある物品はどうすればいいのでしょう?

それとも、瑕疵のある旧物品をやり直しのために一時的に返品することは、不当な返品(4条1項4号)には該当しないと考えるのでしょうか?

このような差がある理由を考えてみると、

①返品の場合には当然下請代金も返金することが予定されているので下請事業者へのインパクトが大きいので6か月に区切ったけれども、

(ただし、返品しない限り返金を求められないわけではありません。ユーザーに販売済みであったり、親事業者の手元に既に商品がなくて返品できないことは、6か月以内であってもいくらでもありえます。)

②やり直しの場合には、追加代金こそもらえないものの、当初の下請代金は受け取ったままでいられるので、1年までは認めることにした、

さらにいえば、

③1年しかやり直しを命じられないというのは親事業者が費用を全額負担しない場合なので(上記テキストp66引用部分参照)、全額費用負担する限りは1年を超えてやり直しを命じることができる、

ということで、一応の辻褄は合っている、と考えるのでしょう。

なので、

①返品は6か月以内に限りOK

②やり直しは1年以内までOK

という整理はやや本質をはずしていて、本当は、

①返品して代金を返してもらうのは、6か月以内に限りOK

②やり直しは、1年を超えても可能だが、その場合には費用負担が必要

ということなのでしょう。

少しすっきりしましたね。

2013年7月20日 (土)

消費税転嫁特措法の施行時期と適用範囲についての留意点

消費税転嫁特措法が6月5日に成立し、6月12日に公布されました。

そして、特措法の施行期日を定める

「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法の施行期日を定める政令」

が、6月11日に閣議決定され、6月14日に公布されました。

同政令を、短いので全文引用すると、

「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法(附則第1条ただし書に規定する規定を除く。)の施行期日は平成25年10月1日とし、同条ただし書に規定する規定の施行期日は同年6月15日とする。」

となっています。

括弧書きで「除く」とされている規定(特措法附則1条ただし書に規定する規定)というのは、

特措法14条3項(広報等の体制整備)

「国及び都道府県は、今次の消費税率引上げに際し、この法律に違反する行為の防止及び是正を徹底するため、国民に対する広報、この法律に違反する行為に関する情報の収集、事業者に対する指導又は助言等を行うための万全の態勢を整備するものとする。」

と、

特措法附則3条(内閣府設置法の一部改正)

「第三条 内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)の一部を次のように改正する。(以下省略)」

なので、これら広報等体制整備と内閣府設置法改正以外の、特措法の大部分の規定は、今年の10月1日から施行される、ということになります。

さて、特措法の各条文はその適用対象を時期で区切っているのですが、そのことと、特措法の施行日が10月1日になったこととの関係を、ちょっと整理してみましょう。

まず、特措法3条(減額等の禁止)では、同条の適用対象が、

「平成26年4月1日以後に特定供給事業者から受ける商品又は役務の供給に関して」

とされています。

なので、特措法施行日である本年10月1日以降に、来年4月1日以降の取引に関して減額等を行うと違反になる、ということになります。

今年の10月1日に来年4月1日以降の取引に関する取り決めをするというのも気が早い話ですが、ともかく特措法の規定はそうなっています。

なお、今年の9月30日に同じ取り決めをしたら特措法に違反しないのか、といえば、たしかに特措法施行前なので違反のしようもないのですが、だからといって問題が無いというわけではなく、独禁法の優越的地位の濫用に該当するおそれがあります(むしろ、特措法が適用される今年10月1日以降の方が、軽い勧告で済む(重い排除措置命令や課徴金は免れる)というのが、少なくとも法律の建前です)。

次に、特措法4条(消費税還元セール等の表示の禁止)では、同条の適用対象が、同じく、

「平成26年4月1日以後における自己の供給する商品又は役務の取引について」

の表示とされています。

なので、今年の10月1日以降に、来年4月1日以降の取引に関する表示について、「消費税還元セール」のような表示をすると違反になる、ということです。

来年4月のセールを今年10月から宣伝するというのは、さらに考えにくいですが、ともかく特措法の条文はそうなっています。

次に、特措法10条(総額表示義務の緩和)では、適用対象がとくに時期によって限定されていないので、今年10月1日から、いつ販売する商品の価格表示であるかにかかわらず、総額表示をしなくてよくなります。

なので、今年の10月1日から、外税のみの表示が街中にあふれることが予想されます。

なお、特措法10条により総額表示義務が緩和されるのはあくまで今年の10月1日からなので、例えば今年の9月30日に、「明日からの価格」として外税のみの表示をすると、緩和前の外税のみ表示なので、総額表示義務違反になります。

最後に特措法12条(転嫁・表示カルテル)については、独禁法の適用除外になる共同行為が、

「平成26年4月1日から平成29年3月31日までの間における商品又は役務の供給に係る次に掲げる共同行為」(3年間)

となっていいるので、今年の10月1日に、公取委に届け出た上で、「来年4月1日から2017年3月31日までの販売分について消費税分を転嫁する」という合意をするのは独禁法に違反しません。

それに対して、同じ合意を今年の9月30日にすると独禁法違反になります(もちろん、公取委への届出も受け付けられないと思われます)。

2013年7月19日 (金)

工場内における仕掛品の運搬を外部に委託すると製造委託か?

下請法講習テキストp18に、

「Q11: 工場内における運送作業を外部に委託する取引は、「製造委託」と「役務提供委託」のどちらに該当するか。」

という質問に対して、

「A: 運送は役務の提供に該当する行為であるが、同一工場内における製造工程の一環としてとしての運送(ライン間仕掛品の移動等)を他の事業者に委託する場合には、製造委託に該当する。」

という回答が載っています。

しかし、これは製造委託の条文の定義を超えているのではないでしょうか。

というのは、製造委託の委託の対象はあくまで、「物品」、「半製品」、「部品」、「附属品」、「原材料」、「金型」の「製造」というふうに限定列挙されており、こられの「製造」工程の作業の一部の委託がこれらに含まれるとは読めないからです。

また、製造工程の作業の一部の委託は製造委託に含まれないという解釈の根拠として、その他の委託類型との違いが挙げられます。

つまり、修理委託(下請法2条2項)では、

「・・・物品の修理の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること・・・」

情報成果物作成委託(同法2条3項)では、

「・・・情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること・・・」

役務提供委託(同法2条4項)では、

「・・・役務の提供の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること・・・」

というように、すべて、「修理」、「作成」、「行為」の一部の委託も含まれることが明記されています。

それに対して製造委託では、「の全部又は一部」の文言がないので、当然、「物品」、「半製品」、「部品」、「附属品」、「原材料」、「金型」をきっちり完成させて、モノとして引き渡すことが予定されていると読むのが自然だと思います。

「物品」に、「半製品」、「部品」、「附属品」、「原材料」、「金型」が加えられたのは、完成品(条文上は「物品」)の全部の製造の委託に限ると部品等の製造の委託が含まれなくなるので、「半製品」、「部品」、「附属品」、「原材料」のレベルまでブレイクダウンしてバランスを取った、というのが実態でしょう(金型は政策的理由から別途追加されたものです)。

しかも、製造委託の場合には、規格品の購入と区別するため(逆に言えば、受注生産に限るため)に、「委託」という言葉が用いられたことがやたらと強調されますが、物品等は特注品でないと製造委託にあたらないのに、ライン間の仕掛品の移動は「特注役務」であるか否かを問わず(あるいは、常に「特注役務」とみなして)製造委託にあたる、というのもちょっと釈然としません(役務は常にオーダーメイドということでしょうか?)。

この「委託」の意義とも関係しますが、製造工程の一部の委託は製造委託に該当しないと考えるべき実質的な理由としては、製造委託というのは、そもそも親事業者が規格や仕様を指示して、それに従った物が納入されることを想定しているのではないか、ということが挙げられます。

ライン間の仕掛品の移動は、規格や仕様の指示というのと、ちょっと馴染まない気がします。

「物品」、「半製品」、「部品」、「附属品」、「原材料」、「金型」を、下請事業者が責任をもってぜんぶ製造しきるからこそ、規格や仕様の指示ということが意味を持つのではないでしょうか。

もし製造に関連する役務がすべて製造委託の対象だとすると、「原材料の調達行為はどうなんだ」、「倉庫から工場までの原材料の運搬はどうなんだ」、「商品の企画は?」など、際限なく疑問が膨らんでいきます。(物理的な「製造」以降のみ、含まれる?)

上記QAは、作業油のニオイのする工場の中の作業なので、「製造」に含めても違和感ないというイメージなのかもしれませんが、解釈論としてはナンセンスです。

結局、上記QAの回答は、「『製造委託』と『役務提供委託』のどちらに該当するか。」という質問の仕方から伺われるように、

「ライン間の仕掛品の移動は役務っぽいので、役務提供委託かなぁ」

「でも待てよ。親事業者が『ライン間の仕掛品の移動』自体を業として第三者に提供しているわけじゃないから、役務提供委託は無理だな」

「じゃ、製造行為の一部の委託ということで、製造委託に入れてしまえ!」

という思考過程が透けて見えます。

このような思考過程から容易に連想できるように、このQAの考え方は、自己のためにする役務の委託(たとえばホテルがベッドメイキングを外部委託する場合や、運送会社が運送の便宜のためにする梱包を梱包業者に委託する場合)が役務提供委託に含まれないと解されていることとも矛盾します。

私は、立法論としては、製造工程の作業の一部の委託も下請法の対象にする選択肢もあり得ると思いますが、現行法の解釈論としては相当無理があると思います。

下請法というのは、細かいところは不必要に作りこんであるけれど、けっこう肝心なところで大きな穴のある法律だと、つくづく思います。

2013年7月18日 (木)

自己使用目的情報成果物の作成委託の「業として」に関する公取委解釈の疑問

情報成果物作成委託のいわゆる第3類型(自己使用目的の情報成果物の作成委託)は、

「事業者がその使用する情報成果物の作成を業として行う場合にその情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること」(下請法2条3項)

というものですが、その例として、下請法運用基準では、

「事務用ソフトウェア開発業者が、自社で使用する会計用ソフトウェアの一部の開発を他のソフトウェア開発業者に委託すること。」

というのが挙げられています。

しかし、この例は端的にいって間違っている、控え目に言って不適切だと思います。

というのは、この例では、

①「事務用」ソフトウェア開発業者なので、販売目的の「会計用」ソフトは業として作成しているだろう、

ということを前提に、

②販売目的の会計用ソフトを業として作成しているなら、自己使用目的の会計用ソフトも業として作成しているであろう(あるいは、作成しているとみなす)、

という理屈に立っているからです。

この理屈をより端的に述べているのが下請法講習テキストで、同テキストのp12では、「事業者がその使用する情報成果物の作成を業として行っている場合」の説明として、

「例えば、社内にシステム部門があっても、他の事業者に作成を委託しているソフトウェア〔注:下請事業者に作成委託するソフトウェアのこと〕と同種のソフトウェアを自社のシステム部門においては作成していない場合など、単に作成する能力が潜在的にあるにすぎない場合は「業として」行っているとは認められない。」

とされています。

つまり、親事業者が自社で例えば会計パッケージソフトを販売目的で作成している場合には、

①自己使用目的の会計ソフトも同じ「会計ソフト」なんだから「同種」のソフトだ、そして、

②同種のソフトを販売目的で作成している場合は、自己使用目的か販売目的かは問わず、「業として」作成していることになるのだ、

という理屈です。

しかし、この理屈はおかしいです。

条文では明らかに、

「事業者がその使用する情報成果物の作成を業として行う場合」

といっているのですから、自己使用目的情報成果物自体の作成を業として行うことを要することは条文上明らかであり、同種の情報成果物の作成を(販売目的で)業として行っているだけでは足りないはずです。

運用基準の例に話を戻すと、事務用ソフトウェア開発会社だからといって、自己使用目的の会計用ソフトを「業として」行っているとは限りません。

というか、むしろ「業として」といえるほど反復継続して行っていない場合も多いのではないでしょうか。(ただこれは場合によっては微妙で、とくにソフトのアップデートまで「作成」に含めて考えると、細かいアップデートまで入れれば「業として」にあたることが多いかもしれません。)

少なくとも、販売目的の会計ソフトを業として作成していることで当然に、同種の自己使用目的の会計ソフトまで業として作成していると考えるのは、根拠がありません。

運用基準の例は、事務用ソフトウェア開発業者なら自己使用目的会計ソフトも反復継続して作成しているだろう、という経験則(?)に基づいているのかもしれませんが、いずれにせよ、大いに誤解を招く設例だと思います。

そもそも第3類型で「業として」という縛りをかけているのは、全ての自己使用目的情報成果物作成委託を下請法の対象にするのは広すぎる(少なくとも、販売目的情報成果物作成委託とバランスを取る必要がある)、という理由でしょう。

だとすると、たまたま販売目的で「業として」作成しているからといって、自己使用目的で「業として」作成したことになってしまうとすると、第3類型で自己使用目的の作成自体を「業として」行うという独自の縛りをかけているのが外れてしまい、条文を離れた解釈になってしまいます。

「提供」(第1類型)目的の「業として」と、自己使用(第3類型)目的の「業として」とを区別しない今の公取委の解釈だと、2条3項の条文を、

「業として行う〔第三者への〕提供または〔第三者提供目的か自己使用目的かを問わず〕作成の目的たる情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること」

というふうに書き換えたのと同じことになってしまいます(ちなみに、この条文には第2類型(請負作成目的)も含まれます)。

2013年7月17日 (水)

情報成果物作成委託の定義の疑問

情報成果物作成委託の第1類型は、

「事業者が業として行う提供・・・の目的たる情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること」

というものであり、第2類型は、

「事業者が・・・業として請け負う作成の目的たる情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託すること

というものですが(下請法2条3項)、実はこの2つの区別には意味がありません。

なぜなら、第2類型は第1類型に完全に含まれるので、第1類型だけで事足りるからです。

式で示すと、

「提供」(第1類型)>「作成」(第2類型)・・・①

ということです。

そのことは定義の文言だけからみて明らかで、「作成」(第2類型)を業として行っている場合は、「提供」(第1類型)も業として行っているからです(逆に、「提供」(第1類型)だけ行っているけど製造はしていない、ということはいくらでもあります。)。

なお、「作成」は行っているけれど「提供」は行っていない、という場合は、自己使用のために作成していることになりますが、その場合は、次の第3類型に落ちていきますので、いずれにせよ、「作成」(第2類型)を独立して切り出す必要はありません。

式で表すと、

「作成」(第2類型に限らない)≡提供目的の「作成」(第2類型)+自己使用目的の「作成」(第3類型)・・・②

といったところでしょうか。

第2類型は第1類型に含まれることは、下請法運用基準の具体例をみてもよくわかります。

つまり、下請法運用基準では、第1類型(提供)の例として、

「ソフトフェア開発業者が、ユーザーに提供する汎用アプリケーションソフトの一部の開発を他のソフトウェア開発業者に委託すること」

というのがあるのに対して、第2類型(作成)の例として、

「ソフトウェア開発業者が、ユーザーから開発を請け負うソフトウェアの一部の開発を他のソフトウェア開発業者に委託すること」

というのがありますが、両者は下線部が異なるだけで、他は同じです。

そして、第2類型の意味を実質的に変えずに少し加筆して、

「ソフトウェア開発業者が、ユーザーから開発を請け負った上で当該ユーザーに提供するソフトウェアの一部の開発を他のソフトウェア開発業者に委託すること」

としてやれば、第2類型の行為があら不思議、第1類型にも当てはまることが分かるはずです。

強いて第1類型(提供)と第2類型(作成)の違いをいえば、親事業者の顧客が、

①汎用品(あるいは親事業者が内容を決めた製品)を購入するような顧客であるのか(一般消費者は、すべてこちらに含まれるでしょう)→第1類型(提供)、

②親会社の顧客自身が中身を決めるようなオーダーメイドの商品を購入するような顧客であるのか(通常このような顧客は事業者でしょう。スーツのオーダーメイドが思いつきますが、そもそも「情報成果物」ではないですね。)→第2類型(作成)、

という区別となりますが、下請法の立法目的実現(下請保護)のためにこの区別に意味があるとは思えません。

なので、第1類型と第2類型の区別で悩む必要は、まったくありません(論理パズルとしては面白いかもしれませんが)。

このように、第2類型(作成)を削除して第1類型(提供)にまとめてしまった上に、さらに第3類型も整理すれば、情報成果物作成委託の定義も、

「事業者が、業として行う提供の目的たる情報成果物、又は業として作成する自己使用の情報成果物の作成の行為の全部又は一部を他の事業者に委託することをいう。」

というように、だいぶすっきりするのではないかと思います。

2013年7月 4日 (木)

『独占禁止法の経済学』の気になる記述(資生堂花王事件)

岡田・林編『独占禁止法の経済学 審判決の事例分析』(東京大学出版会・2009年)は、公取委関係者を中心とした法律家および経済学者の合作として日本では非常に貴重な文献で、私もしばしば参考にしているのですが、同書の資生堂花王事件に関する解説に、ちょっと引っかかるところがあります。

同書p145で、二重限界化(double marginalization. メーカーと販売店が共に市場力を有する場合に独占利潤が二段階で積み上がること。およびその反面として、社会的厚生の喪失が二段階で生じること)の説明がなされているのですが、p146において、

「よって、〔資生堂・花王事件において〕もし二重の限界化が起きているのであれば、小売価格維持効果を持ちうること自体は社会的にむしろ望ましい可能性があり得る。」

と解説されています。

しかし、この点はちょっと引っかかります。

というのは、二重限界化を防ぐためには、最高再販売価格維持は有効であっても、最低再販売価格維持は有効ではないからです(と、一般的には説明されていると思います)。

そして、資生堂・花王事件の販売店で販売店が市場力を持っている(ということは多分現実には無いのでしょうけれど、それは仮定の話なのでさておいて)と仮定しても、資生堂・花王事件で問題になった販売方法の拘束というのは、対面販売を義務付けるという、どちらかというと販売店のコストが上がることを内容とする拘束だったのですから、その効果は最低再販売価格維持に近いように思えます。

(もし拘束の内容が、例えば「オマケをつけて販売することは禁止する」みたいな、販売店のコストを下げるようなものであったら、あるいは小売価格を下げる効果があったかもしれませんが、それでも、オマケ販売を禁止したからといって市場力を有する販売店が値段を下げるとも思えません。)

ですので、資生堂・花王事件が仮に二重限界化のケースだとしても、対面販売の義務付けで社会的厚生が増すということは、ちょっと考えにくいような気がします。

ただこの点は、ひょっとしたら「最低」再販売価格維持と「最高」再販売価格維持を区別して議論するのは法律家だけであって、経済学者は再販売価格維持といえばピンポイントで価格を拘束するものしか議論の対象としない、ということなのかもしれませんし、そうすると、法律学と経済学でたんに議論の作法が違うだけ、ということなのかもしれません。

現公正取引委員会委員の経済学者である小田切先生が執筆されている部分ですし、単純に間違っているということも考えにくいですから、悩みは深まるばかりです。

どなたか答えが分かる方は、ぜひ教えてください。

« 2013年6月 | トップページ | 2013年8月 »