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2013年6月13日 (木)

下請代金の減額と3条書面記載の下請代金との関係

下請法講習テキストp44には、

「・・・歩引き、リベート、システム利用料など発注前に下請事業者と協議して合意した金額であったとしても、その内容が下請事業者の責任のない理由により3条書面に記載された下請代金から減じるものであれば〔4条1項3号の〕減額として問題となり得る・・・」

と記載されています。

これを文字通り読むと、代金減額(4条1項3号)の場面では、下請代金の額は3条書面で決まる(3条書面が決定的)というように読めます。

さらに輪をかけて、粕渕他『下請法の実務(第3版)』p130では、

「例えば、親事業者が下請事業者の同意を得て、今後は3条書面に記載された下請代金から一定比率を値引くこととして発注する場合であっても、3条書面に記載された下請代金をそのまま変更しなければ、減額として問題になるという趣旨である。

3条書面は、下請取引において発注内容、下請代金、下請条件等を明確に記載し、それを証する重要な書面であり、あらかじめ値引くことに合意したのであれば、それを3条書面に記載する『下請代金』の額に反映させる必要がある。」

と記載されています。

つまりここでも、代金減額の場面では3条書面記載の下請代金の額が決定的である、と説明されています。

しかし、これらの記述を文字通り受け取るのは疑問で、これらの記述は、「合意した金額を3条書面に記載するという、本来あるべき姿を前提にすれば」という限定付きで読むべきでしょう。

例えば、辻他『詳解下請代金支払遅延等防止法(改訂版)』p132では、

「3条書面が交付されず、あるいは〔3条〕書面に下請代金の額が記載されていない場合でも、いったん取り決めた下請代金の額を減額することは・・・認められない・・・」

と、至極まっとうな説明がなされています。

講習テキストのほうはまだしも、粕渕他の記述は、さすがに言い過ぎでしょう。

つまり、

「親事業者が下請事業者の同意を得て、今後は3条書面に記載された下請代金から一定比率を値引くこととして発注する」

ということは、発注前には減額の合意ができているわけで、発注後に減額する4条1項3号の場面とは根本的に異なるように思われます。

つまり、時系列でいえば、

①3条書面記載の請負代金から減額することを合意したにもかかわらず、

②減額後の金額を記載した新たな3条書面を交付しないまま、

③減額後の請負代金で発注した、

という場合には、3条書面の不交付の罪(下請法10条1号)が成立することはあっても、4条1項3号違反は成立しないと考えるべきです。

実際、公取委も、3条書面の金額と現実の合意金額が異なる場合には現実の合意金額を基準にする(現実の合意金額から減額すれば4条1項3号違反が成立する)と考えていることは、竹田印刷に対する勧告(2005年9月21日。公正取引661号49頁)からもうかがえます。

この事案は、竹田印刷が、

①その100%子会社を自社の下請取引での発注業務に関与させることの対価として、

②「事務手数料」の名目で、

③下請事業者と合意した下請代金の5%を下請事業者から徴収することとし、

③合意した下請代金から5%差し引いた額を3条書面の下請代金として記載していた、

という事案です。

公取委担当者の解説では、

「・・・合意金額と発注書面〔3条書面〕上の金額が異なっているとしても、本来、下請事業者の給付に対して支払うべき下請代金は、竹田印刷と下請事業者との間で発注内容の対価として取り決めた合意金額であるため、本件では合意金額を下請代金と認め(た)」(公正取引661号50頁)

と、合意金額が基準となると説明されています。極めて妥当だと思います。

むしろこの解説で興味深いのは、

「本件では、外形上、発注書面どおりの金額が支払われているため、合意金額と発注書面上の金額のどちらが『下請代金』に該当するのかという点が問題となる。」

という問題の立て方をしていることです(同号p50)。

普通の法律(民法)の発想であれば、「合意金額が「下請代金」なのは当たり前じゃん。」という感じがしますし、下請法2条10項の、

「この法律で「下請代金」とは、親事業者が製造委託等をした場合に下請事業者の給付・・・に対し支払うべき代金をいう」

という定義に3条書面のことが一言も出てこないことからしても、合意金額が「下請代金」の額と考えるほかないと思うのですが、上記の問題の立て方からも、公取委には3条書面を基準にするという発想が根強くあるんだろうなあということがうかがえます。

3条書面と伝票を突き合わせている公取委の調査の様子が目に浮かびます。

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