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2013年6月17日 (月)

総額表示義務の緩和を利用した「消費税還元セール」禁止の回避

消費税転嫁特措法が6月5日に成立しました。

同法8条では、

「一 取引の相手方に消費税を転嫁していない旨の表示

二 取引の相手方が負担すべき消費税に相当する額の全部又は一部を対価の額から減ずる旨の表示であって消費税との関連を明示しているもの

三 消費税に関連して取引の相手方に経済上の利益を提供する旨の表示であって前号に掲げる表示に準ずるものとして内閣府令で定めるもの

が禁止されることになりました。(いわゆる、「消費税還元セール」という表示の禁止)

それとともに、同法10条では、

事業者(消費税法(昭和六十三年法律第百八号)第六十三条に規定する事業者をいう。以下この条において同じ。)は、

自己の供給する商品又は役務の価格を表示する場合において、

今次の消費税率引上げに際し、消費税の円滑かつ適正な転嫁のため必要があるときは、

現に表示する価格が税込価格・・・であると誤認されないための措置を講じているときに限り、

同法第六十三条の規定にかかわらず、税込価格を表示することを要しない

ということで、消費税法63条の総額表示義務が緩和されました。

そこで、この総額表示義務の緩和を利用して、例えば本体価格10,000円の商品の価格を、

「10,000円+5%」

という表示をすることは、問題ないでしょうか。

まず、特措法8条の「還元セール」禁止との関係では、国会審議の過程で、「であって消費税との関連を明示しているもの」の部分が加わったことから、「消費税」というコトバを用いない限りはOKという方向に落ち着きそうです(消費者庁のガイドライン待ち)。

なので、「10,000円+5%」という表現も、OKとなるのでしょう。

やや問題なのが、特措法10条との関係でしょう。

つまり、特措法10条では、総額表示義務が緩和される要件として、

現に表示する価格が税込価格・・・であると誤認されないための措置を講じているときに限り

という絞りがかかっています。

つまり、消費税引上げ後に、

「10,000円(税抜)」

と表示しておけば、「現に表示する価格」(=「10,000円」)が、「税込価格・・・であると誤認」されないことは明らかでしょうから、10条の要件を満たしてOKということになるでしょう。

さらに、

「10,000円+税」

という表示も、「+税」という部分が、「現に表示する価格」(=「10,000円」)を「税込価格・・・であると誤認」させないための措置と認められるのでOKといって良いでしょう。

そこで、上記設例の、

「10,000円+5%」

ですが、結局この問題は、消費税が8%に上がったあとに「+5%」という表示を加える措置をとることで、現に表示する価格」(=「10,000円」)が、「税込価格・・・であると誤認されないための措置」という要件を満たすか、という問題に帰着します。

私は、厳しく見れば、「現に表示する価格が税込価格・・・であると誤認されないための措置」という要件を満たさないのではないかという気がします。

常識的に(=一般消費者の目から)見れば、「10,000円+5%」という表示は、

「1万円のものに、本当は8%の消費税がかかるところを5%だけにして、3%の増税分は転嫁していないのだな。」

と理解できるように思うのですが、そうでないと考える人もいるかもしれません。

別の切り口から説明すれば、「還元セール」に関する特措法8条は景表法の特則なので一般消費者の目が基準になりますが、総額表示義務の緩和は消費税法の特則なので、一般消費者の目が基準にならない可能性があります。

なのでせめて、

「10,000円(税抜)+5%」

という表示をすべきでしょう。

というのは、

「10,000円(税抜)」

だけでもOKなのは前述のとおりなので、それに、

「+5%」

という表示を加えても、「(税抜)」という表現が「現に表示する価格が税込価格・・・であると誤認されないための措置」という要件を満たさなくなるはずはないと考えられるからです。

要は、

「10,000円+5%」

という表示をすると、「10,000円」の部分が税抜価格なのか何なのか、消費税法の観点からは疑義が生じるおそれがあるかもしれない、ということです。

ま、「消費税」というコトバを使わないとセールス上のインパクトは弱いでしょうから、わざわざ「10,000円+5%」という表現を使う事業者もいないかもしれませんが、困った時は常に条文に遡る姿勢は持ちたいものです。

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