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2013年6月24日 (月)

広告宣伝から分かる競争の実態

企業結合審査で競争の実態を知る目安として、その商品がどのように広告宣伝されているか、というのが重視されることがあります。

例えば、競争が全国的に行われているのか、各地域(例えば店舗から半径10キロメートル以内とか)で行われているのか、を判断するために、価格に関する広告宣伝が全国規模で行われているのか、それとも各地域ごとにおこなわれているのか、が考慮される、という具合です。

もう少し具体的にいえば、例えばスーパーなどの価格広告は、店舗の近辺で配布する新聞折り込み広告で行われることが多いでしょう。

とすると、価格競争は店舗近辺を中心に行われているのだな、と考えるわけです。

逆に例えばコンビニエンスストアでは、「おにぎり全品20円引き」みたいなテレビCMを見ることが多いですが、そうすると、価格競争は全国規模で行われているのではないか(少なくとも事業者は、全国規模での競争圧力にのみ反応していて、一地方でライバルが安値競争をかけてきても反応しないのではないか)というふうに考えられます。

また例えば、携帯電話の料金プランも、全国統一料金で、広告も全国同一のものが行われていれば、競争は全国単位で行われているのだな、と理解できるわけです(日本の場合は、全国規模のキャリアが3社あるだけですので、こう書いても当たり前のように見えますが、アメリカでは地域限定のキャリアが存在したりするので、競争の地理的範囲というのは現実的な争点になったりします)。

ガソリンスタンドなどは、店頭での価格表示が広告宣伝の中心でしょうから、競争はスタンド近辺の地域ごとになされている、と理解できます。

またあるいは、ある金融商品と別の金融商品を、同じような見せ方で、同じような需要者層にアピールするようにウェブサイトで宣伝広告していると、両商品は同一の商品市場に属するのではないか、と考えたりします。

このように、宣伝広告の方法で競争の実態を推測することのメリットは、細かい価格変動のデータ(POSデータ等)を取らなくても、おおよその競争の実態が想像できる、ということです。

そして、宣伝広告というのは企業が競争上一番気を遣う要素の1つであり、どのようにアピールすれば最も需要者に受け入れられるかを綿密に考えて行っていることは間違いないですから、その意味でも、宣伝広告の方法というのは、競争の実態を知るための信頼性の高い指標になり得る、といえます。

そして、似たような商品でも、事業者の事業形態によって、広告宣伝の方法は異なり得ます。

例えば同じ例の繰り返しですが、同じ食料品を売る場合でも、コンビニの場合は、テレビCMで「20円引き」といった、具体的な価格まで宣伝することが多いように思われます。

これに対してスーパーでは、テレビCMでは「今週水曜日は大安売り。詳しくは明日の新聞折り込みチラシで」というにとどめる、ということが可能であるように思われます。

その理由としては、スーパーの主な顧客層である主婦は価格に敏感なので新聞チラシまでチェックすることが期待できるけれども、コンビニの主な顧客層はそんな手間をかけたりしない、という事情があることが予想できます。

別の例で、例えばマクドナルドが「100円バーガー」とかCMで宣伝することは考えられますが、「ハンバーガー割引。詳しくはウェブで。」とかいったCMでは、アピール力が弱いでしょうし、だれもわざわざ近所のマクドナルドの価格をウェブサイトでチェックしたりしないでしょう。

このように、同じ商品を売る場合でも、ターゲットにする需要者層によって宣伝広告の方法が変わり、そのために、全国統一価格にせざるを得ない(地域別価格を採用することが、著しくコスト高になる、あるいは非効率的な広告になる)ということが起こり得ます。

全国展開する小売店が、全国統一料金を取るか、地域別料金を取るのか、という選択をする際の考慮要素として、このような広告宣伝の効率性ということがかなり重視されているのではないかと思われます。(利益最大化だけを考えれば地域別料金の方が合理的である可能性が高いはず。ほかには、全国的な評判を重視するか、とか、地域別料金を管理する管理コストが大きいか小さいか、といった事情も考慮されるでしょう。)

というわけで、広告宣伝はもっともらしい経済分析よりも雄弁に競争の実態を語る、といえそうです。

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