【閑話休題】複雑な条文の読み方・再論
このブログを書き始めて間もないころ、このような記事を書いておりました。
その当時はアクセス数も少なかったし(笑)、今では一橋大ロースクールで学生さんに教えていたりして、多くの学生さん(に限りませんが)に読んでもらえないかなぁと思い、自分の記事で恐縮ですが、ここで再度紹介させていただきます。
若干補足しますと、このマーカーの仕方の大前提にあるのは、六法の条文を、(普通の本を読むように)上から下に読んでいくのではなくて、条文中のまとまったかたまりをブロックとして画像として頭に焼き付ける、というイメージがあります。
たとえて言えば、条文を右脳で読むイメージです。
(なかなか文章ではうまく表現できないのですが、この着想は、以前受講した「フォトリーディング」という速読セミナーから得たものです。寺下和也先生、お元気にされているでしょうか。)
このイメージは、条文が長ければ長いほど、有効です。
また、上記の記事の中で、「『及び』と『又は』をハイライトする」といっている個所がありますが、もし「並びに」が出てくるような条文だったら、「並びに」と「又は」をハイライトすべきでしょう。
というのは、(条文の書き方の決まりですが)「並びに」と「及び」が両方出てくる場合には、「並びに」が一番大きな括りになるからです。
なので、「並びに」をマークすると、「並びに」の前後で大きな並列関係がある、ということがはっきりとイメージできます。
「並びに」と「及び」が出てくるときに、「及び」もマークすると、どの語とどの語が並列関係にあるのか、分かりにくくなってしまうので、お勧めしません。
これに対して、「又は」と「若しくは」が両方出てくる場合には、「又は」の方が大きな括りなので、「又は」だけをマークします。
さらに1つポイントを追加しますと、条文の中で他の条文に言及しているものって、よくありますよね。
こういうときは、言及されている条文のページを開いて、その数字の部分だけでもマークしておきましょう。そうすると、六法の中で迷子にならずに済みます(笑)。
他にもいろいろあるのですが、例で示した方が分かりやすいでしょうね。例えば金商法27条の2(発行者以外の者による株券等の公開買付け)をマークすると、このようになります。
「その株券、新株予約権付社債券その他の有価証券で政令で定めるもの(以下この章及び第二十七条の三十の十一(第四項を除く。)において「株券等」という。)について有価証券報告書を提出しなければならない発行者又は特定上場有価証券(流通状況がこれに準ずるものとして政令で定めるものを含み、株券等に限る。)の発行者の株券等につき、当該発行者以外の者が行う買付け等(株券等の買付けその他の有償の譲受けをいい、これに類するものとして政令で定めるものを含む。以下この節において同じ。)であつて次のいずれかに該当するものは、公開買付けによらなければならない。ただし、新株予約権(会社法第二百七十七条 の規定により割り当てられるものであつて、当該新株予約権が行使されることが確保されることにより公開買付けによらないで取得されても投資者の保護のため支障を生ずることがないと認められるものとして内閣府令で定めるものを除く。以下この項において同じ。)を有する者が当該新株予約権を行使することにより行う株券等の買付け等及び株券等の買付け等を行う者がその者の特別関係者(第七項第一号に掲げる者のうち内閣府令で定めるものに限る。)から行う株券等の買付け等その他政令で定める株券等の買付け等は、この限りでない。
一 取引所金融商品市場外における株券等の買付け等(取引所金融商品市場における有価証券の売買等に準ずるものとして政令で定める取引による株券等の買付け等及び著しく少数の者から買付け等を行うものとして政令で定める場合における株券等の買付け等を除く。)の後におけるその者の所有(これに準ずるものとして政令で定める場合を含む。以下この節において同じ。)に係る株券等の株券等所有割合(その者に特別関係者(第七項第一号に掲げる者については、内閣府令で定める者を除く。)がある場合にあつては、その株券等所有割合を加算したもの。以下この項において同じ。)が百分の五を超える場合における当該株券等の買付け等
二 取引所金融商品市場外における株券等の買付け等(取引所金融商品市場における有価証券の売買等に準ずるものとして政令で定める取引による株券等の買付け等を除く。第四号において同じ。)であつて著しく少数の者から株券等の買付け等を行うものとして政令で定める場合における株券等の買付け等の後におけるその者の所有に係る株券等の株券等所有割合が三分の一を超える場合における当該株券等の買付け等
三 取引所金融商品市場における有価証券の売買等であつて競売買の方法以外の方法による有価証券の売買等として内閣総理大臣が定めるもの(以下この項において「特定売買等」という。)による買付け等による株券等の買付け等の後におけるその者の所有に係る株券等の株券等所有割合が三分の一を超える場合における特定売買等による当該株券等の買付け等
四 六月を超えない範囲内において政令で定める期間内に政令で定める割合を超える株券等の取得を株券等の買付け等又は新規発行取得(株券等の発行者が新たに発行する株券等の取得をいう。以下この号において同じ。)により行う場合(株券等の買付け等により行う場合にあつては、政令で定める割合を超える株券等の買付け等を特定売買等による株券等の買付け等又は取引所金融商品市場外における株券等の買付け等(公開買付けによるものを除く。)により行うときに限る。)であつて、当該買付け等又は新規発行取得の後におけるその者の所有に係る株券等の株券等所有割合が三分の一を超えるときにおける当該株券等の買付け等(前三号に掲げるものを除く。)
五 当該株券等につき公開買付けが行われている場合において、当該株券等の発行者以外の者(その者の所有に係る株券等の株券等所有割合が三分の一を超える場合に限る。)が六月を超えない範囲内において政令で定める期間内に政令で定める割合を超える株券等の買付け等を行うときにおける当該株券等の買付け等(前各号に掲げるものを除く。)
六 その他前各号に掲げる株券等の買付け等に準ずるものとして政令で定める株券等の買付け等」
なお、政令委任事項の「期間」とか「割合」をマークしているのは、政令に目をやったときに目が迷子にならないためです。
なので、「政令」をマークしてもよいのですが、同じ項に政令委任事項が複数あると、「政令で定める期間」とか「政令で定める割合」の中の、「場合」や「期間」の部分で特定するしかないので、「場合」や「期間」の方をマークしています。でもこれは好みの問題でしょう。
パソコンの画面で打つと、この方法のご利益が今一つよくわからないかもしれませんが、六法で試してみて下さい。条文が速く読めて、しかも読み間違えが減ること請け合いです。
また、この方法は、長い条文を読むときだけではなくて、長文の契約書(英文契約書を含む。)を読むときにも有効だと思います。
その他に、3色のマーカーで色分けしたり、括弧の部分を線で囲んだりする方法もありますが、手間がかかります。
上の方法だと、イエローのマーカー一本あれば、用が足ります。
そして、イエローのマーカーは、向きを縦にしたり横にしたりすることによって、細い線も太い線も引けるので、使い分けをするのもよいでしょう(細字と太字の両方の線が引ける商品もありますが、持ちかえたり、キャップを着けたり外したりするのが面倒です)。
みなさんも、いろいろ工夫してみて下さい。
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