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2013年2月14日 (木)

【ご紹介】菅久他『独占禁止法』(商事法務)

出ましたね。

菅久修一他『独占禁止法』(商事法務)

公取委の現役または元職員の方々による著作です。

まだ仕事ですぐに必要なところと、関心のあるところをちょっと読んだだけですが、すごい本が出たものです。

「はしがき」には、執筆方針として、

「中心的な読者として、独占禁止法について既にかなりの知識を持っているビジネス・パーソン(たとえば、法務部での経験の長い人)ではなく、むしろ、日頃は営業等に携わっているが、法務部門から示されるコンプライアンス・プログラムや報道等によって、独占禁止法について多少は知っている人たちを想定し、そのような人たちが独占禁止法の全体像を把握できるような入門書とする。」

と、とても控えめに書いてありますが、全然そんなことはことはありません。

もちろん、そのような想定読者が読んでも得るところは多いでしょうが、実は非常にプロ向きです。

例えば、不当な取引制限の課徴金について、

「違反者が違反者を通じて需要者に販売しているケース」(p212)

という、入門書としては相当マニアックな、でも実務的には極めて重要な論点に触れています。

同じ頁で、カルテルの課徴金算定の

「実行期間の終期については、違反行為の終了した日の前日となることが多い。」

との記載があり、言われれば当たり前ですが、「前日」とはっきり書いてあることや、「多い」と慎重な言い回しをしているところなど、読んでいてピリピリとした緊張感を感じさせます。

優越的地位の濫用に対する課徴金についても、複数の被害者がいる場合の違反行為期間は、濫用行為を

「一連の取引先を対象として行っていると評価される場合」には、「ある取引先に対して行い始めてから、一連の取引先に対する行為をすべてやめるまでの期間が1つの違反行為期間となる。」(p226)

という、注目すべき記載もあります。

あと、混沌としていてとらえどころのない不公正な取引方法を、「取引拒絶型」、「不当対価型」、「拘束条件型」、「取引強制型」、「搾取濫用型」、「取引妨害型」というふうに整理しているのも斬新であり、こういう視点で公取委は考えているのだとすると、今まで不可解だった執行方針についても、なるほどと納得できるかもしれません。

例えば取引妨害について、

「競争者に対する妨害と評価できる行為であれば、不公正な取引方法の他の類型に該当するものであっても取引妨害として問題としうる」(p177)

との記載があり、妨害という悪い行為をしているから、排他条件付取引ではなく、取引妨害で立件するのだ(モバゲーの事件など)、という発想がよく見えます。

というわけで、地頭所他著『新しい独占禁止法の実務』(商事法務研究会・1993年)がさすがに古くなってきた今、間違いなくこの本が独禁法実務のバイブルです。

もちろん、当局に反論する立場にある在野法曹としては、この本だけで用が足りるわけではないのですが、これからの独禁法実務は、この本を目を皿のようにして読むことからスタートすることになりそうです。

400頁ちょっとで分量はそこそこですが、この内容で4000円(税別)は、バーゲンプライスです。

おそらく、絶版になった後には値上がりするのではないかと予想します。

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