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2012年10月 2日 (火)

受領後6ヶ月を超える返品(下請法)

9月21日の公取委のプレスリリースによると、ニッセンが下請法違反で勧告を受けたそうです。

同プレスリリースでは、

「ニッセンは、下請事業者の給付を受領した後・・・下請事業者に責任がないのに・・・受領後6か月を経過した商品を下請事業者に引き取らせていた。」

とされています。

気になるのは、(注)で、

「商品に瑕疵が発見されたとして返品を行ったが、受領後返品までに6か月を経過していた。受領後6か月経過後は、商品に瑕疵を発見した場合であっても返品はできない(商法第526条)。

と記載されている点です。

しかし、商法526条を根拠にするのは誤りでしょう。

確かに商法526条(買主による目的物の検査及び通知)では、

「商人間の売買において、買主は、その売買の目的物を受領したときは、遅滞なく、その物を検査しなければならない。

 前項に規定する場合において、買主は、同項の規定による検査により売買の目的物に瑕疵があること又はその数量に不足があることを発見したときは、直ちに売主に対してその旨の通知を発しなければ、その瑕疵又は数量の不足を理由として契約の解除又は代金減額若しくは損害賠償の請求をすることができない。売買の目的物に直ちに発見することのできない瑕疵がある場合において、買主が六箇月以内にその瑕疵を発見したときも、同様とする。

とされていますが、もちろんこれは当事者が別段の定めをすることが可能な任意法規です。

なので、「返品はできない」と言い切ってしまうのは商法の解釈として間違いです。

(さらに重箱の隅をつつくような議論をすれば、商法526条はその効果として解除、代金減額、損害賠償ができないといっているだけなので、返品がこれに含まれるのかもにわかに明らかではありません(解除(の結果の原状回復)に読み込むのかもしれませんが、解除の結果の原状回復は回復請求者の権利だというのが標準的な解釈だと思うので、回復を請求される側の権利として認められるのか否かというような議論の立て方は、やはりおかしいと思います。))

百歩譲って商法526条が強行法規だとしても、民事(あるいは商事)法規の違反が当然に公法たる下請法違反になるわけではないので、いずれにせよ論理的にはおかしいと思います。

以前、ある契約条項が優越的地位濫用か下請法の相談を受けたときに、

「民法の任意規定どおりの内容なら、優越的地位濫用といわれるリスクはほとんどないであろう。」

というような意見を述べたことがあります。

それは感覚としては間違っていないと今でも思うのですが、

任意法規に適合している→優越的地位濫用(あるいは下請法違反)ではない

とはいえても、

任意法規に違反している→下請法違反(あるいは優越的地位濫用)

とはいえない(論理の飛躍がある)のではないでしょうか。

ちなみに、瑕疵があっても受領後6か月を超えると原則として返品できないというのは下請法運用基準4(1)エに定めがあり、

「委託内容と異なること又は瑕疵等のあることを直ちに発見することができない給付について,受領後6 か月・・・を経過した場合」

には、瑕疵があっても返品は認められないとされています。

そもそも法律には書かれていないことを運用基準という一通達で定めてしまうのはいかにも前時代的な気がしますし、個人的には運用基準のこの部分は法律違反で無効であると考えますが(6ヶ月も経ってから返品というのはいかにも遅すぎるというのは、心情的には理解できますが・・・)、実務が運用基準に従って回っている以上、それに従うほかないでしょう。

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