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2012年8月25日 (土)

競争者間の取引(OEMなど)は全て不当な取引制限の問題か?

OEMなど、競争者間で取引がなされる場合、公取委の相談事例集などでは、わりとあっさりと「不当な取引制限が問題となる」と分析しています。

競争者間なのでカルテル(=不当な取引制限)の問題だ、という発想自体は割と一般的なものなのですが、「条文に照らして本当にそんなに単純に考えて良いのか?」、より具体的には、「相互拘束があるといえるのか?」という問題提起をしたい、というのが今回のお題です。

事例としては、例えば有名なヤフーとグーグルの業務提携に関する平成22年相談事例でもこのこと(競争者というだけで「相互拘束」か?)が問題になるのですが、数として多いのはOEMの事例です。

例えば平成22年度相談事例集事例3は、相談者X社が一部の検査機器について自社による製造をとりやめ、その全量を競争者Y社からOEM供給をうけることが問題になった事例(結論は問題なし)ですが、

「本件は,X社が,検査機器Aの販売市場において競争関係にあるY社から検査機器Aの全量OEM供給を受けるものであり,このような取組によって,一定の取引分野における競争が実質的に制限される場合には,不当な取引制限(独占禁止法第2条第6項,第3条)として問題となる。」

と、あっさりと不当な取引制限の問題だと位置付けています。

しかし、「相互拘束」(独禁法2条6項)といえるためには、文字通り、「相互」の「拘束」である必要があるはずです。

例えばこの事例で、Y社からOEM供給を受けるに際して、X社が「自分では今後検査機器Aは作らない」という合意をしたら、明らかに「相互拘束」でしょう。

確かにOEMでは、OEMを受ける側が「自分では作らない」ことが含意されていることが多いでしょうが(そうでなければ、普通はOEMを受ける必要がない)、そうでない場合もあるのではないでしょうか。

また、「含意されている」といっても、OEMを受ける側が一方的にそう思っているというだけで「相互拘束」といえるのかといえば、少なくとも文言解釈としてはかなり微妙な問題だと思います。むしろ、OEM供給側としては、相手が買ってくれるなら自前で製造しようがしまいが関心はない、というのがホンネではないでしょうか。

上で引用した相談事例集の問題設定でも、不当な取引制限の問題であると位置付ける理由としては、

「競争関係にあるY社」

との取引であるという点しか挙げられていないように読めます。

同様の例として、平成21年度相談事例集事例4は、化学製品の原料メーカーである相談者X社が、新規に開発した添加剤の販売拡大を図るため、競争業者であるY社に当該添加剤をOEM供給することが問題となった事例(結論は問題なし)ですが、

「本件は,X社が,添加剤Bの販売市場において競争関係にあるY社に対して添加剤B3をOEM供給するものであり,このような取組によって,一定の取引分野における競争が実質的に制限される場合には,不当な取引制限(独占禁止法第3条)として問題となる。」

という問題の設定をしています。

ここでも同様に、「競争関係」という事実から一足飛びに「不当な取引制限」の問題と位置付けられてしまっており、「このような取組によって」一定の取引分野における競争が実質的に制限される場合に不当な取引制限になるという理屈であり、「相互拘束」が認められるのか否かについて言及がありません。

「相互拘束」の合意というのは、明確に契約書の中に書いている必要はなく、暗黙の了解でも認められるので、OEMを受ける側が自社生産は止めることが両当事者で暗黙の了解になっている限りは、「相互拘束」を認めて差し支えありません。

しかし、そのようなことが暗黙の了解にすらなっていない場合は現にあり得るわけで、この点を意識していないと、「競争者間の取引」が即「不当な取引制限」の問題であるとの論理になってしまい、「相互拘束」の要件を見落としてしまいがちです。

実際、上記の相談事例集では、「相互拘束」の存在はまったく意識されていない(OEM供給という、通常の売買取引に近いものが、たんに「ヨコの関係」で結ばれるだけで、カルテルの問題になると錯覚している)ような気がしてなりません。

とはいえ、このような実務が定着している以上、競争者間の契約は「ヨコの拘束」(=不当な取引制限)と性格付けられてしまうことを前提に考えるのが無難といわざるを得ないと思います(もちろん、原材料の売買や、競合しない商品の売買など、不当な取引制限の問題とは関係ないケースも多いでしょうが)。

例えば、競争者間の代理店契約の場合には、独占的代理店契約(総代理店契約)の場合は、メーカー側が自ら直接販売しないという合意を代理店側とすることになるので「相互拘束」といえますが、非独占の代理店契約の場合には、本来は微妙なはずです。

同じ議論がOEMの場合にも可能なはずで、その意味で、OEMは競争者間でなされるから常に(相互拘束があることを前提に)不当な取引制限の問題だとするのは、理論的には疑問に思われます。

こういう点を意識すると見えてくる問題として、例えばOEMの各事例で、もし

「OEMを受ける側は将来にわたって同種製品を製造しない」

なんていう条項を契約書に入れたら、本当にセーフだったのか、という点です。

逆に言えば、そのような合意が、明示的にも黙示的にも存在しない(少なくとも潜在的、将来的には、OEMを受ける側の再参入(自前での製造)の可能性がある)という点が、反競争性を否定する上で実はかなり重要な要素なのではないか、と思うのです。

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