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2012年7月16日 (月)

加入者数に格差がある電話会社間の接続料の収支

ある電話会社S社の加入者が別の電話会社N社の加入者に電話をかける場合、かける側の電話会社(S社)は、受ける側の電話会社(N社)に対して接続料(アクセス・チャージ)を支払います。逆の場合もまたしかりです。

ここで、N社の加入者数がS社の加入者数よりもずっと多い場合、接続料の受け取り総額はどちらの電話会社の方が多くなるでしょうか。

接続料は受信側の電話会社が受け取るので、直感的には、契約者数が多いN社の方が、たくさん通話を受ける分、接続料もたくさん受け取るような気がします。

しかし、ちょっと考えると、両社が受け取る接続料の総額には、基本的に差がないことが分かります。

理由は簡単で、確かにS社の方は受信する人数は少ないのですが、少ない契約者に対してかけてくるN社加入者の数が圧倒的に多いので、受信回数のトータルで見るとN社とバランスするからです。

このことを数式で示しましょう。

N社の契約者数をP人、S社の契約者数をp人とします。(P >> p)

そして、一定期間中(たとえば1年)に、N社とS社のすべての加入者が、自分を除く他のすべての加入者(N社の加入者かS社の加入者かを問わず)に、1回だけ電話をかけると仮定します。

この前提で、N社が受け取る接続料を計算してみましょう。

N社の加入者は、1人あたりp回、S社の加入者から電話を受けることになります。(S社の加入者がp人なので、当然ですね。)

(なお当然ですが、N社の加入者が、自分以外の他のN社加入者から受ける電話については、接続料の支払いは生じません。)

N社の加入者数はP人なので、N社が受け取る接続料の総額は、

接続料総額 = N社加入者1人あたりのS社からの着信数 × N社の加入者数

=p×P ・・・①

となります。

同様に、S社が受け取る接続料の総額は、

S社加入者1人あたりのN社からの着信数 × S社の加入者数

=P×p ・・・②

となります。

このように、①=②なので、加入者数の格差にもかかわらず、両社が受け取る接続料は同額になります。

ただし、以上の議論には、各契約者が同じ数だけ受信と着信をすることなど、一定の前提があります。

たとえば、インターネットサービスプロバイダー(ISP)はほとんどもっぱら受信するだけなので、そういう契約者を多数かかえる電話会社は、接続料もたくさん受け取ることになります。

(参考: ABA Telecom Antitrust Handbook p52)

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