インターネット広告表示ガイドラインについて
昨年10月28日に消費者庁が公表した、
「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」
について、ちょっと気が付いたことを記しておきます。
同ガイドラインでは、口コミサイトで問題となる事例として、
「グルメサイトの口コミ情報コーナーにおいて、
飲食店を経営する事業者が、
自らの飲食店で提供している料理について、実際には地鶏を使用していないにもかかわらず、
『このお店は△□地鶏を使っているとか。さすが△□地鶏、とても美味でした。オススメです!!』
と、
自らの飲食店についての『口コミ』情報として、
料理にあたかも地鶏を使用しているかのように表示すること。」
というのが挙げられています。
この例をみて分かるのは、表示の内容が事実に反する場合に限って景表法違反になるのであって、たんに第三者を装って書き込みをすること自体は景表法違反ではない、というのがどうやら消費者庁の見解だ、ということです。
つまり、上記事例は、
表示: 「△□地鶏(を使っているとか。)」
実際: 地鶏を使っていない。
という齟齬が、有利誤認(景表法4条1項1号)だ、というわけです。
これに対して、たんに第三者の口コミを装って投稿すること(表示の主体を偽ること)は、有利誤認ではない、ということです。
ですので、口コミを装っても、具体的な事実に触れることなく漠然と、
「とっても美味しかったです。」
と投稿するだけでは、景表法違反にはならないでしょう。
(理屈の上では、実際にはとっても不味い料理を「とっても美味しかった」と表示すれば
「実際のものよりも著しく優良であると示し」(景表法4条1項1号)
に該当し得ますが、美味しいか不味いかの基準は人それぞれなので、この程度の漠然とした表示で有利誤認というのは無理でしょう。)
でも、素朴な感情からすれば、この手の「やらせ」の投稿で何が一番問題かといえば、まさに、利害関係のない第三者の口コミであるかのような振りをしてお店自身が書き込みをした点にあるので、その意味で、どうもこのガイドラインの事例は、ちょっと的が外れているような気がします。
そもそも素材に何を使っているのかはお客さんには分からないはずのことで(お客さんは店の言うことを信じるしかない)、口コミで、
「このお店は△□地鶏を使っているとか。」
と書いたって、もともと信憑性は低いはずです(設例では、「とか」なので、さらに伝聞っぽいですし)。
むしろ、(真面目に商売をしている世の中の多くのお店を前提とする限り)お店自身が地鶏を使っているというからこそ、お客さんは信じるのであって、口コミサイトだけをみて「地鶏を使ってるんだ」信じるほうがおかしいと思います。
逆に、
「とても美味でした。」
というのは、お店自体が言っても何の信頼性もないでしょう。
(理論的には、口コミサイトの「美味でした」という投稿の信頼性だって、「地鶏使ってます」という「口コミ」と同程度に怪しいものであるはずですが、少なくともお店自身の広告に「美味です」と書くよりは、口コミサイトのコメントのほうが信用できそうに見えるでしょう。)
というように、ガイドラインの設例は、本来規制すべきこと(第三者へのなりすまし)については不問にして、もともと信頼性の低い表示(第三者による使用食材の食材)の虚偽性を問題にしており、どこかずれた感じがするのです。
とはいえ、景表法の解釈としては、これでやむを得ないのでしょう。
というのは、景表法で禁止される不当表示というのは、
「商品又は役務の品質、規格その他の内容について・・・実際のものよりも著しく優良である」
と示すことなので(つまり、「内容」の偽りが問題なのであって)、主体の偽りは問題にしていない(というより、主体は「事業者」であることが明示されてしまっている)からです。
なので、口コミサイトへのなりすまし投稿(第三者にお店が依頼する場合も含む)を規制するためには、景表法4条1項3号(「商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの 」)として内閣総理大臣が指定するほかないと思います。
指定すべきかどうかの判断は、
「所詮口コミサイトなんてその程度のものなのだから、法律で規制するまでもない」
と考えるか、
「やっぱりサクラの投稿は許せない!」
と考えるか、の違いでしょう。
また、テレビ通販とかで、あたかも体験談のような演出をしつつ役者に効能が優れていると語らせるのとどう違うのか?と考えれば、インターネットだけ厳しい規制をするのは不適当、ということになるのでしょう。
個人的には、やっぱりビジネスは正直ベースでやるべきだと思いますので、指定に賛成です。口コミサイトの信頼性を上げたい方は、ぜひ、政治家の方に働きかけてみてはいかがでしょうか。
あと余談ですが、このガイドラインでは、インターネットのサービス提供は「限界費用が低い」と、ちょっと経済学チックな書きぶりをしてたり、米国FTCのガイドライン(「広告における推薦及び証言の使用に関するガイドライン」"Guides Concerning the Use of Endorsements and Testimonials in Advertising")に言及していたり、公取委出身の表示課の人ががんばっているのが垣間見えて、個人的には嬉しいです。
ぜひ、消費者庁全体を公取委に再度飲み込むくらいの勢いで、がんばって頂きたいものです。
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