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2011年12月15日 (木)

ブラジル独禁法改正(2012年5月29日施行)

ブラジルの独禁法が改正されます。施行日は来年5月29日の予定です。

ブラジルは、案外(といっては失礼ですが)、まじめに競争法を執行している国なので、実務上は、けっこう重要です。

改正のポイントは3つす。

まず、今まで3つあった当局が、CADE一つに統一されます。

SDEがCADEに吸収されて、SEAEには競争法の観点からのアドバイザリー的な役割(competition advocacy)だけが残ります。

2つめは、企業結合に事前届出制度が導入されます。

これは、現行の事後届出制度から変更されるものです。

現行の事後届出は審査期間に制限がなく、当局が追加情報の要求をする限り半永久的に審査が続く制度だったのですが、事前届出になると審査期限に制限が付きます。

具体的には、原則審査期間は240日(←いつから起算されるのかが問題ですが。。)で、当事者かCADEが要求すれば、60日から90日延長されます(つまり、最大330日)。

なお、現行の届出では、当事者の合計シェアが20%以上であることが届出要件の1つでしたが、これは廃止されて、売上一本になります。

3つめは、カルテルに関する改正で、まず、罰金の上限額が、現行法の売上の30%から20%に減額されました。

このご時世に減額というのは珍しいのですが、計算の基準となる「売上」が、「関連市場」の売上から、「独禁法違反が生じた産業」での売上、というふうに改正されて、結果的に罰金額が増えるか減るかは運用をみないと分からないようです。

さらに刑罰が重くなり、禁固2~5年となります。さらに8年にする改正も準備されています。

リニエンシーに関しては、カルテルの首謀者(ringleader)も、申請できるようになります。

あと、現行法では、立入検査には裁判所の令状か24時間前の当事者への通知が必要とされていますが、改正法では、これらがなくても立入検査が行えるようになります。

ところが、この改正については批判が多く、SDEでは、繰り返し、現行の運用を維持する(文書の原本は差し押さえずコピーを取る、24時間前に通知する、営業時間内に行う)との声明を発表しています。

なお改正とは関係ありませんが、最近ブラジルの弁護士さんに聞いたところによると、ブラジルでは、リニエンシーに関して当事者が提出した書類は、他の被疑者に限って、全部見られる上、コピーまでできるそうです(EUは閲覧のみでコピーは認めない)。第三者は見られません。

これは、被疑者の防御権を尊重しているためだそうです。

日本も見習ったら良いのにと思いますが、別の見方をすると、日本では得られない情報がブラジルでは得られるかもしれません。

あと、以前は立入検査の時にマシンガンを持った警察官が立ち会うことがあったけれど、今はそれもなくなっているそうです。

でも、ブラジルに関して困るのは、国際カルテルが米国やEUでは既に調査が終了して決定も出ているのに、その後になって調査が開始されることが多い点ですね。

なので、他の当局から5年以上遅れて調査が開始される、なんていうこともあります。

ブラジルでは、他の国の結果を見てから調査を開始する、というのは、当たり前なんですね。

リニエンシーを申請した企業も、調査が終了するまで付き合わされることになりますから、本当に気が長い話です。

でも、改正後は当局の人員も倍増するそうなので、カルテルの調査も早くなるかもしれません。

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