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2011年12月

2011年12月29日 (木)

カルテルを一人にでも「強制」したらリニエンシー失格か。

独禁法7条の2第17項3号では、

「・・・当該事業者が他の事業者に対し・・・第一項に規定する違反行為をすることを強要し、又は当該違反行為をやめることを妨害していたこと。 」

が、リニエンシーの失格事由とされています。

では、ここで強要またはやめることの妨害(以下「強要」でまとめます)をするのは、他のカルテル参加者全員に強要する必要があるのでしょうか、それとも1人に対してでも強要すれば失格なのでしょうか。

結論としては、1人に対してでも強要すれば失格と考えてよいでしょう。

まず、そう解するのが文言に素直です。

次に、全員に対して強要する場合に限って失格とするのでは、甘すぎます。強要されなくても喜んでカルテルに参加する者もいるでしょうから(というか、そういう参加者がむしろ多いでしょうから)、全員に「強要」しないと失格しないとすると、ほとんど失格することがなくなってしまいます。

それから、一人だけにしか強制できない、という場合もあります。例えば、リニエンシー申請者がある特定の参加者に対して、「カルテルに参加しないと、お前のところの商品を特許侵害で訴えるぞ」と脅すような場合です。

脅しの手段は何もカルテル対象商品の市場に関係するものに限らないわけで、極端に言えば、「お前のところの社長のスキャンダルをマスコミにばらすぞ」とかいうのでもいいわけですから、リニエンシー申請者が特定の参加者に対してだけ脅しのネタを持っているということはいくらでもあります。

(競争法を学んでいると、カルテルの強要というと、どうしても、カルテル参加拒否者が参加する入札には徹底的に安値入札で対抗するというような、競争の枠内で強要する場合をイメージしてしまうのですが、実際にはそういう場合ばかりではありません。強要する側が業界のリーダーであったりする必要がないのも当然です。)

ちなみに、政府の法令英訳では、

「... the said entrepreneur coerced another entrepreneur to commit the violation provided for in paragraph 1 or blocked another entrepreneur from discontinuing the said violation.」

と、強要されるのは一人(another)でも失格事由であることが明確にされています(さすがですね)。

蛇足ですが、こう考えると、一昨日書いた、「カルテルを強要した者がリニエンシーを受けられない理由」のところで紹介した、強要が失格事由とされる理由を

「違反行為への参加の強制や離脱の妨害を行っているような事業者は、他の参加者を強制して、減免申請の可否や時期、順位等を自己に有利なように操作することができるから、減免の趣旨にそぐわないと考えられたからである」

と考える見解は、やっぱりおかしいことになりますね。1人に対して強制しただけでは、減免申請の可否等を自己に有利に操作できるとは限らないからです。

どうもこの見解は、リニエンシー申請者が他の参加者全員に睨みを利かせているような場面だけをイメージしているような気がしますが、法律の文言は必ずしもそうではありません。

2011年12月28日 (水)

リニエンシーの第三者への開示は失格事由か。

リニエンシーの申請者が申請の事実を第三者に開示することは、正当な理由がない限り禁止されています(課徴金減免規則8条)。

(なお、公取委担当者の解説によると、

「既に公正取引委員会の審査活動が概ね終了し、減免申請を行ったことを公表することが審査活動に影響を与えないタイミングであれば、自社が課徴金減免申請を行った旨を公表することも正当な理由があるものとして通常は問題とならないものと考えられます。」(品川他「独占禁止法における課徴金減免制度」47頁)

とのことですので、永久に開示が禁止されるわけではありません。)

では、それにもかかわらず第三者に開示した場合、どのような不利益があるのでしょうか。

極端な場合、リニエンシーの資格を喪失することがあり得るのでしょうか。

この点、明文上のリニエンシーの失格事由としては、

①申請書および資料の内容が虚偽であった場合(独禁法7条の2第17項1号)

②公取委の追加報告要求に応じないか、虚偽の回答をした場合(同項2号)

③他の違反者に違反を強要し、または他の違反者が違反をやめるのを妨害していた場合(同項3号)

が挙げられています。

さらに、独禁法7条の2第7項2号その他で、

④申請後も違反を継続していたこと、

が挙げられています。

ここまでは、条文上ほぼ明らかです。

そこでリニエンシーの第三者への開示についてですが、狛他編著「カルテルとリニエンシーの法律実務」p94では、円滑な審査に支障を及ぼすという理由で、明文は無いけれど、「隠れた欠格事由になるものと解せざるを得ない」との見解が述べられています。

「明文が無いのに失格という解釈も何だかなぁ~」と思ったら、白石先生の「独占禁止法(第2版)」p565では、よりはっきりと、

「この秘匿義務に違反した場合は、〔独禁法7条の2第〕7項〔現行10項〕1号等にいう『公正取引委員会規則で定めるところにより』に反していることになるから、7項1号等を満たさず、したがって減免対象外となる。」

と解説されていました。

つまり、独禁法7条の2第10項では、

10  公正取引委員会は、第一項の規定により課徴金を納付すべき事業者がの各号のいずれにも該当する場合には、同項の規定にかかわらず、当該事業者に対し、課徴金の納付を命じないものとする。

 公正取引委員会規則で定めるところにより、単独で、当該違反行為をした事業者のうち最初に公正取引委員会に当該違反行為に係る事実の報告及び資料の提出を行つた者・・・であること。

 当該違反行為に係る事件についての調査開始日以後において、当該違反行為をしていた者でないこと。 」

とされており、1号の下線の部分の要件を満たさない、ということですね。

正直、こういう条文を丹念に読み込んだ解釈は実務家好みなので、これを読んだときは「むむむ、さすが・・・」と思いましたが、第三者に開示すると一律に失格となるというのも何だか厳しすぎる気がするので、私なりになんとか別の解釈を考えてみたいと思います。

まず文言解釈として、1号は、

「公正取引委員会規則で定めるところにより・・・公正取引委員会に当該違反行為に係る事実の報告及び資料の提出行つた者」

となっているので、まず、「報告及び資料の提出」に関しては「公正取引委員会規則で定めるところ」によらなければならない(例えば、所定の書式を使うとか)、ということを定めているに過ぎず、「報告及び資料の提出」そのものとは関係のない、例えば秘匿義務については、何ら定めていない、と解釈することができるのではないかと思います(おそらく、規則を起案した人も、秘匿義務の8条までここでカバーするとは想定していなかったのではないか、という気がします。あくまで想像ですが。)

また、「行った」と、過去形なので、「公正取引委員会規則で定めるところにより」の要件を満たすか否かは、「行った」と同時かそれより前の時点で判定されると解するのが自然では無いかという気がします(ちょっと苦しいか・・・)。

それにもし、「公正取引委員会規則で定めるところにより」というのが、減免規則で書いてあることは全て守らなければ失格になるという意味だとすると、何かと不都合です。

例えば、調査開始前の申請は『1号様式』でしなければなりませんが(減免規則1条1項)、『1号様式』の「記載上の注意事項」では、

「商品名等をどのように記載したらよいか分からないときは、日本標準産業分類・・・に掲げる大分類F・・・に準拠すること。」

とか、

「代理人により報告書を作成する場合は・・・代理人が押印すること。」

といったことまで書いてあり、「公正取引委員会規則で定めるところにより」というのがこれらを全部守らないと失格という意味だとすると、厳しすぎるように思います。

以上はたんなる「記載上の注意」なので、我ながらややこじつけの感がありますが、減免規則の中でも、例えば9条2項では、

「第三条及び第四条の規定により委員会に提出する資料が日本語で作成されていないものであるときは、当該資料に日本語の翻訳文を添えなければならない。 」

とされていますが、外国語の資料が大部である場合には、抄訳でも受け付けられるのではないか、という気がします(あくまで、実務的な感覚です)し、それが妥当と思います。

このように色々考えると、「公正取引委員会規則で定めるところにより」というのを、規則で書いてあることは全部守らないと失格するという意味に解するのは妥当でないと考えます。

ということで、第三者への開示は失格事由ではないと解すべきことになりますが、絶対に失格しないというのも、何だか据わりが悪いのも確かです。第三者への開示が、調査の妨げになることは確実にあり得るからです。

しかし、この点は立法の不備(←というほど大げさなものではないかも)だといわざるを得ないのではないでしょうか。

もし、日本の法律に、リニエンシーでの一般的な協力義務でも定めてあれば(そして、かかる義務を履行することがリニエンシーの要件であれば)、調査妨害にあたるような第三者への開示は失格になる、と解することも可能でしょう。

しかし、日本の法律では、公取委から追加の資料要求があればこれに応じないといけないとされているだけで(独禁法7条の2第16項、17項)、一般的な協力義務があるわけではありません。

ですので、第三者への開示は失格事由ではないと割り切るほか無いと思います。

それでも、あえて調査妨害になるような第三者への開示(極端な例では申請の事実を記者会見を開いて公表するとか)をするような申請者は通常いないでしょうから、実際には大して大きな問題ではない、ということかも知れません。

2011年12月27日 (火)

カルテルを強要した者がリニエンシーを受けられない理由

課徴金減免制度(リニエンシー)では、他社にカルテルを強要した者は、課徴金の減免を受けられないことになっています。

すなわち、独禁法7条の2第17項は、

「当該事業者〔=減免申請をした事業者〕がした当該違反行為に係る事件において、

当該事業者が他の事業者に対し・・・

第一項に規定する違反行為〔=不当な取引制限で、課徴金の対象になるもの〕をすることを強要し、

又は

当該違反行為をやめることを妨害していたこと。 」

を、減免の不適用事由(失格事由)としています。

さて、このような失格事由が定められた理由として、「注釈独占禁止法」(2009年・有斐閣)p191では、以下のように説明されています。

「これ〔上述の失格事由〕は、違反行為への参加の強制や離脱の妨害を行っているような事業者は、他の参加者を強制して、減免申請の可否や時期、順位等を自己に有利なように操作することができるから、減免の趣旨にそぐわないと考えられたからである。行為の悪性に着目して減免を認めないことにしたものではない。」

しかし、私はこの説明は正しくないと思います。

まず、素朴な感覚に反します。

この規定を見た人は、普通、他社にカルテルを強要するような悪い奴に減免の利益を得させるのは正義に反するからこういう規定があるのだ、と思うのではないでしょうか(私もそうです)。

次に、減免申請の時期等を操作できる者に減免の利益を得させるのが制度趣旨に反するというのであれば、条文ではっきりと、「減免の時期等を操作した者は減免を得られない」と定めれば足りるのではないでしょうか。

実際に「操作した」とすれば、減免申請の別の要件である、「単独で」の要件(単独申請の要件。7条の2第10項1号)を満たさないおそれが出てきそうですが、それはさておくとしても、実際に「操作した」ことではなく、「操作することができる」というだけで失格になるというのは、理屈の問題として、厳しすぎるのではないでしょうか。

カルテルは強要してないけど、減免の時期などを操作することはできる、という場合はあり得、そのような場合に減免を認めないのは厳しすぎると思うのです。

「だから強要した場合に失格事由を限定したのだ」とすると、結局、強要すること自体が悪いことなのだ(行為の悪性)という説明と変わらなくなりそうです。

また、やや実質的な(つまり、事案処理で結論が異なり得る)批判として、もし「申請の時期等を操作することができる」ことが失格の理由だとしたら、失格事由である、

「強要し」、あるいは、

「やめることを妨害していた」

というのが、申請の時期等を操作することができる程度の「強要」または「妨害」を意味する、と解釈するのが自然ですが、そこまでに至らない「強要」、「妨害」というのはあり得、その程度の「強要」、「妨害」でも減免申請の利益を得させるのは正義に反する、という場合はあり得ると思います。

要するに、条文の素直な読み方から外れた解釈をすると、細かいところで、何かと不都合が出てくるのです。

ちなみに、公取委担当者の解説である、品川他「独占禁止法における課徴金減免制度」(2010年・公正取引協会)p115では、

「この規定〔=現行の7条の2第17項〕の趣旨は違反行為を行う意思の無い事業者に対してこれを強要したような事業者に対して課徴金を減免するのはおかしいのではないかという観点からこのような事業者を減免の対象から除くことにありますので・・・」

と説明されており、やはり強要という行為の悪性に着目しているのではないかと思われます。

2011年12月26日 (月)

アメリカンニードル事件(米国判例)

今年のABA春季大会でも話題になっていたアメリカの事件に、アメリカンニードル事件というのがあり、プロスポーツリーグの共同行為がどのような場合に独禁法違反になるのか、という点が議論されていて、とても興味深いです。

(American Needle, Inc. v. National Football League, 130 S.Ct. 2201 (2010))

アメリカンニードル社というのは、NFLから商標のライセンスを受けてNFLのチームの帽子などのグッズを製造していた会社なのですが、2000年に、NFL側が、それまでの複数社(アメリカンニードル社を含む)へのライセンスをやめて、リーボック社に独占的ライセンスをすることにしました。

(なお、NFLは以前からNational Football League Properties (NFLP)という団体を作って、NFLPを通じて各チームの商標をライセンスしていました。)

そこで、ライセンスを切られたアメリカンニードル社が、

「NFLの各チームがNFLPを通じて共同で商標のライセンスをしているのは、シャーマン法1条(共同行為)に違反する」

などとして訴えたのが本件です。

この件でNFL側の議論が面白かったのですが、NFLは、NFLという団体と、各チームと、NFLPは、全体として一つの企業なのだから、相互に独禁法違反の合意の当事者にはなり得ない、と主張しました。

しかも一審と控訴審はNFL側の主張を認めました。

しかし、最高裁は、NFLの各チームはそれぞれ独自の意思決定主体であり、全体で一つの企業とは認められないから、NFL側の主張は失当である、として原判決を破棄しました。

ぱっとみると何が問題の本質なのか分かりにくいですが、まず形式論としては、本件における独禁法の競争として、

①各チームによる商標のライセンスの競争がなされているとみるのか、

それとも、

②NFL全体の商標ライセンスが、他の商標(プロ野球とか、プロバスケットボールとか)のライセンスと競争しているのか、

という問題と思われます。

そして、本件で一審、控訴審と最高裁の間で判断が分かれるほど微妙であった(私は、本件はどう見ても最高裁が正しいと思いますが)理由は、プロスポーツリーグというのは、リーグ全体で一つの企業として機能しているという面がある、もっと言えば、リーグ全体で一つの企業として機能する場面がむしろメインである、という事情があると思われます。

つまり、独禁法に馴染みのない人に、プロ野球における「競争」というのは何かと問えば、おそらく、

「阪神と巨人が甲子園球場で対戦しているのが『競争』である」

という答えが返ってくると想像されますが、これは間違いです。

明らかに、独禁法上の「競争」というのは、「試合」というプロダクト(あるいはサービス)を、お客さんに見せて、対価として入場料をもらう、というものです。

この場合、阪神と巨人は、「試合」というプロダクトを共に作っているのであり、さらには、セリーグ全6球団が「ペナントレース」というプロダクトを共に作っているという関係にあります。

アメリカンニードル事件のNFLも、確かに、このように共同して「フットボールの試合」というプロダクトを作っているという関係にあるのですね。

一審も控訴審も、おそらく、このようなプロスポーツリーグの特殊性に引っ張られて、本件での商標ライセンスもNFL全体による単独の行為と考えたのでしょう。

しかし、本件で問題になった商標のライセンスを見てみると、別に各チームで商標を共同してライセンスしないとライセンス事業が成り立たないということはありません。

そこで、最高裁は、問題となる行為に各チームがどのように関わっているのか、という「機能的考慮」(functional consideration)を重視する、と言いました。

これを簡単に言うと、プロスポーツリーグの活動のには様々な活動、様々な面があり、それらはまだら模様で、それぞれの活動ごとに、各チームが独立の競争主体として「競争」しているのか、リーグ全体として(他の類似サービスと)「競争」しているのか、を判断すべき、ということなのだと思います。

その中で最高裁は、各チームの行為が独立の意思決定主体(independent centers of decision making)を市場から奪うことになる場合には、独禁法違反の共同行為である、としています。

そこで本件で問題になった商標のライセンスですが、商標のライセンスなんて、各チームがいくらでも単独でできますよね。

(全チームで共同しないとライセンスができない、あるいは、全チーム共同でライセンスした方が消費者の利益になる、という事情でもあれば、結論は違っていたかも知れませんね。)

なので、最高裁の判断は、当然だと思います。

さて、もう少し微妙な問題として、日本のプロ野球のドラフト制度があります。

つまり、ドラフト制度を独禁法違反と考える見解は、各チームが自由に競争して(例えば、高額の契約金を提示して)選手を獲得するのが本来の競争の姿なのに、ドラフト制度はそのような競争を各チームが共同で制限している、と考えます。

しかし、この見解は間違っていると私は思います。

確かに、「選手」は、各チームが提供する「試合」というプロダクトの投入要素(インプット)である、という面はありますので、単純に見れば、ドラフト制度は買手カルテルのように見えなくもありません。

阪神巨人戦の例でいえば、もし、阪神と巨人が甲子園で対戦して勝ち負けを争うこと自体が独禁法の「競争」なら、ドラフト制度は、その投入要素たる選手についての購入カルテルということになるでしょう。

しかし、そもそもそこでの「試合」というのは、チーム間の戦力の均衡とか、諸々の取り決めの上に成り立っている、いわばフィクションの上に成り立っているものです。

そいういう「フィクション」がなければ、プロ野球というエンターテインメント自体が成り立たないか、あるいは、著しく魅力が乏しいものになってしまうでしょう。

ドラフト制度を独禁法違反という見解は、このような「フィクション」の上に成り立っているエンターテインメントと、商品市場で本当に競争している企業活動との区別がついていないのではないかと思います。

前述のように、この手の問題は、まだら模様の行為をどのように色づけるかという問題なので、クリアーに答えが出にくいこともあり得ます。

しかし、ことドラフト制度に関しては、明らかに市場の競争を保護する独禁法の問題ではないと考えます(独禁法以外の考慮要素で、ドラフトを止めるべき、という議論はあるかもしれません)。

ところで、本件については、同僚である青柳良則弁護士が「判例 米国・EU競争法」という本の中で解説を書いているので、ご興味の湧かれた方はぜひご覧下さい。

日本での議論が簡潔に紹介されているのも、大変興味深いです。

2011年12月22日 (木)

リニエンシー受理の通知(減免規則2条)と報告完了通知(法7条の2第15項)

リニエンシーの申請書をファックスして受理されると、次の日くらいには、受理をしたことの通知が公取委から送られてきます(減免規則2条)。

内容は、だいたいこんな感じです。

「通知書

私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律・・・及び課徴金の減免に係る報告及び資料の提出に関する規則・・・第2条の規定に基づき、下記のとおり通知します(なお、本書面で通知した順位は、あくまでも仮の順位であり、様式2号及び資料が提出されることにより、課徴金減免制度の適用についての正式な順位が決定されます。)。

1 貴社から報告を受けた違反行為の対象商品又は役務及び当該行為の態様

○○に係る価格カルテル

2 規則第1条第1項に基づく報告書の提出の順位

第○位

3 規則第1条第3項に定める公正取引委員会が様式1号による報告を受信した時

平成○年○月○日 ○時○分

4 様式2号による報告及び資料の提出を行うべき期限

平成○年○月○日 〔だいたい提出日から3~4週間後くらい〕

5 次の場合には、様式第1号による報告は失効します。

(1)前記4の期限内に様式第2号による報告及び資料の提出がない場合

(2)貴社が様式第2号による報告及び資料の提出を行う日以前に、当委員会が、調査(独禁法第47条第1項第4号又は同法第102条第1項に規定する処分)を開始し、又は独占禁止法第50条第6項において準用する同法第49条第3項に定める事前手続を行った場合

(備考)

本通知書の内容に関して御質問のある場合には、次の連絡先にお問い合わせ下さい。

連絡先 ○○」

その後申請者は、2号様式を期限までに提出しますが、2号様式と資料の提出が完了すると、報告を完了した旨の通知(通称、15項通知。以前は10項通知)が送られてきます。

内容は、だいたいこんな感じです。

「通知書

私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律・・・第7条の2第15項の規定に基づいて、下記のとおり通知します。

1 公正取引委員会は、貴社から、課徴金の減免に係る報告及び資料の提出に関する規則・・・様式第2号による報告及び資料の提出を受けました。

2 貴社は、独占禁止法第7条の2第〔10〕項第1号に規定する報告及び資料の提出を行った者です。

3 貴社から報告を受けた違反行為の対象商品又は役務

○○

4 貴社から報告を受けた違反行為の態様

価格カルテル

なお、本通知は、公正取引委員会が貴社から報告を受けた行為について措置を採る場合の課徴金の減免に関する通知であり、報告を受けた行為について必ず措置が採られるということを通知するものではありません。

(備考)

本通知書の内容に関して御質問のある場合には、次の連絡先にお問い合わせ下さい。

連絡先

○○」

それぞれの通知の法的な意味については案外ややこしくて、諸説あるところですが、またの機会に書いてみたいと思います。

2011年12月21日 (水)

非係争義務(NAP)と独占ライセンスの関係

独禁法とは関係あるようで関係ない話題を一つ。

公取委の知財ガイドラインでは、「非係争義務」という一項目を設けて、以下のとおり規定しています。

「ライセンサーがライセンシーに対し、ライセンシーが所有し、又は取得することとなる全部又は一部の権利をライセンサー又はライセンサーの指定する事業者に対して行使しない義務(注17)を課す行為は、

ライセンサーの技術市場若しくは製品市場における有力な地位を強化することにつながること、

又は

ライセンシーの権利行使が制限されることによってライセンシーの研究開発意欲を損ない、新たな技術の開発を阻害すること

により、

公正競争阻害性を有する場合には、

不公正な取引方法に該当する(一般指定第12項)。

〔中略〕

(注17)ライセンシーが所有し、又は取得することとなる全部又は一部の特許権等をライセンサー又はライセンサーの指定する事業者に対してライセンスをする義務を含む。」

さて、ライセンシーがこのような非係争義務を受け入れることと、同じライセンシーが、自己の特許権を(ライセンサーとして)他者に独占的ライセンスをすることとの関係が問題になることがあります。

具体例で説明しましょう。

A社が、B社に、特許権Xを独占的にライセンスしているとします。

①  A → (X独占ライセンス) → B

次に、A社が、C社から、特許権Yのライセンスを受けようとしており、C社はA社に対して、非係争義務を受け入れることを要求しているとします。

② C → (Yライセンス。非係争要求) → A

上記ガイドラインによれば、非係争義務とは、

「ライセンシー〔②のA〕が所有・・・する・・・権利をライセンサー〔②のC〕・・・に対して行使しない義務」

であり、

「ライセンシー〔②のA〕が所有・・・する・・・特許権等をライセンサー〔②のC〕・・・に対してライセンスをする義務

を含む、とされています。

しかし、もし、Aが既にBに対して、特許権を独占的にライセンスしていたとすると(①)、その上さらにCに対して非係争義務を負うこと(②)は、仮に②の「非係争義務」のためにAが①の特許権をCに主張できないことになるとすると、①の契約上の「B以外にはライセンスしないという義務」に違反するのではないか、というのがここでの問題です。

とくに、上記ガイドラインでは、「非係争義務」に、「ライセンスをする義務を含む」と明記しているので、一層悩みが膨らみます。

問題の本質は、

「特許権を行使しない」

ということと、

「特許権をライセンスする」

ということとは、本質的には同じことである、という点に尽きます。

もちろん、通常のライセンス契約には、ライセンサーの技術指導義務とか、ライセンシーのロイヤリティ支払義務とか、もろもろの付随的な義務が付いてくるわけですが、それらの余分なものを取り去った「ライセンス」とは、まさに、特許権者(ライセンサー)がライセンシーに対して特許権を行使しない、ということにほかならないのです。

・・・という本質論を重視すれば、②の非係争義務は、①の独占的ライセンス契約に違反する、ということになりそうです。

しかし、そう言いきって良いのかは、やや(正直言うと、かなり)躊躇を覚えます。

割り切った言い方をすれば、この問題は、①の独占的ラインセンス契約の解釈の問題です。

ですので、疑義が生じるのを避けるためには、①の独占権の定めのところに、

「ただし、非係争義務を負うに過ぎない場合は除く。」

とか書いておけば、解決することです(ただ、何がそこでいう「非係争義務」なのかについて、さらに疑義が生じうるところですが・・・)。

そして、そのような明示の除外規定が無い場合でも、①のAもBも、普通は、非係争義務の場合まで独占権違反だとは考えていないのではないか、と思います。

ですので、むしろ、①の独占権の定めのところに、「非係争義務を負う場合を含む」と明記していない限り、②の非係争義務は、①の独占の定めには反しない場合が多いのではないかと思います。

でも、実際に、②の非係争義務のために、①のBが、独占だと思って支払った高いロイヤリティが台無しになるというような場合(例えば、②のCが、もろにBの競争者であって、当該特許を使ってBの競合品をどんどん売り出したような場合)には、何ら明記されていなくても、②の非係争義務は①の独占の定めに違反すると考えるべき、という場合もあるかもしれません。

いずれにせよ、契約解釈の問題なので、明確な答えはなかなかありません。

この点、米国司法省とFTCの

「Antitrust Enforcement and Intellectual Property Rights: Promoting Innovation and Competition」

には、あるパネリストの発言として、

「非係争条項は、別の契約の独占的ライセンス義務に違反することを避けるために用いられることがある」

との記載があります(90頁、注25)。

なので、NAP義務は独占の定めには抵触しない、という解釈は、それほどおかしなものではないようです。

2011年12月16日 (金)

欧州企業結合の「優先ルール」(Priority Rule)と買収阻止策

欧州委員会では、同じ業界で2つの企業結合の届出がなされて並行して審査する場合、先に届け出た企業結合については、後の企業結合は存在しないという前提で判断する、という立場を採っています。

逆に、後に届け出られた企業結合については、先に届け出られた企業結合が存在する、という前提で判断します。

これを、「優先ルール」(priority rule)と呼んでいます。

届出が1日早いだけでも、先に届け出た方は、後の企業結合の存在を無視して審査を受けられるわけですから、大変なメリットです。

プレスリリースの日や、合併期日の前後ではなく、届出の前後で決まってしまうところがポイントです。

具体例で説明しましょう。

ある業界に、A社(シェア30%)、B社(30%)、C社(20%)、D社(10%)、E社(10%)の5社があるとします。

そして、A社がD社との合併を発表したとします(合計シェア40%)。

これをみたB社が、E社との合併を思い立ち(あるいは、秘密裏にADの合併と並行して合併交渉していたところ)、E社との合併を欧州委員会に、ADよりも先に届け出た場合、どうなるでしょうか。

この場合、「優先ルール」によると、BEの合併は、ADの合併が存在しないことを前提に審査されることになります。

つまり、統合後の業界は、

BE社(40%)、A社(30%)、C社(20%)、D社(10%)

という4社体制になることを前提に判断されます。

これに対して、欧州委員会への届出が遅れたADは、BEの統合が存在することを前提として審査されるので、

AD社(40%)、BE社(40%)、C社(20%)

と、業界が3社寡占になるとの前提で判断されることになります。

これは明らかに、遅れて届け出たAD社にとって不利です。

このことから、実務上どういう注意点が考えられるかというと、

欧州に届け出る必要のある企業結合は、プレスリリースをしてから速やかに企業結合の届出を行う必要がある、

あるいは、同じことですが、

企業結合の届出の準備ができるまではプレスリリースはしない、

というようにする必要があります。

そうしないと、ADのプレスリリースを見たBEに追い抜かれてしまうことになるからです。

極端に言えば、ADの統合を阻止したいと考えたB社は、ADの統合がなければ別にやりたいと思っていなかったEとの統合を、ADを阻止するためにやろうと思い立つ、ということがあり得ます(一種の買収阻止策)。

これからは、世界規模の寡占化が進む業界が増えるでしょうから、元々寡占的な業界でM&Aのスケジューリングをする際には、要注意です(とくに、プレスリリースのタイミング)。

なお、日本の公取は、過去の銀行や保険会社の統合の例では、いずれの合併を審査する際も他の合併が存在することを前提に審査しています。

つまり、欧州のような「優先ルール」は採っていません。

米国のFTCも、「優先ルール」は採っていません。

2011年12月15日 (木)

ブラジル独禁法改正(2012年5月29日施行)

ブラジルの独禁法が改正されます。施行日は来年5月29日の予定です。

ブラジルは、案外(といっては失礼ですが)、まじめに競争法を執行している国なので、実務上は、けっこう重要です。

改正のポイントは3つす。

まず、今まで3つあった当局が、CADE一つに統一されます。

SDEがCADEに吸収されて、SEAEには競争法の観点からのアドバイザリー的な役割(competition advocacy)だけが残ります。

2つめは、企業結合に事前届出制度が導入されます。

これは、現行の事後届出制度から変更されるものです。

現行の事後届出は審査期間に制限がなく、当局が追加情報の要求をする限り半永久的に審査が続く制度だったのですが、事前届出になると審査期限に制限が付きます。

具体的には、原則審査期間は240日(←いつから起算されるのかが問題ですが。。)で、当事者かCADEが要求すれば、60日から90日延長されます(つまり、最大330日)。

なお、現行の届出では、当事者の合計シェアが20%以上であることが届出要件の1つでしたが、これは廃止されて、売上一本になります。

3つめは、カルテルに関する改正で、まず、罰金の上限額が、現行法の売上の30%から20%に減額されました。

このご時世に減額というのは珍しいのですが、計算の基準となる「売上」が、「関連市場」の売上から、「独禁法違反が生じた産業」での売上、というふうに改正されて、結果的に罰金額が増えるか減るかは運用をみないと分からないようです。

さらに刑罰が重くなり、禁固2~5年となります。さらに8年にする改正も準備されています。

リニエンシーに関しては、カルテルの首謀者(ringleader)も、申請できるようになります。

あと、現行法では、立入検査には裁判所の令状か24時間前の当事者への通知が必要とされていますが、改正法では、これらがなくても立入検査が行えるようになります。

ところが、この改正については批判が多く、SDEでは、繰り返し、現行の運用を維持する(文書の原本は差し押さえずコピーを取る、24時間前に通知する、営業時間内に行う)との声明を発表しています。

なお改正とは関係ありませんが、最近ブラジルの弁護士さんに聞いたところによると、ブラジルでは、リニエンシーに関して当事者が提出した書類は、他の被疑者に限って、全部見られる上、コピーまでできるそうです(EUは閲覧のみでコピーは認めない)。第三者は見られません。

これは、被疑者の防御権を尊重しているためだそうです。

日本も見習ったら良いのにと思いますが、別の見方をすると、日本では得られない情報がブラジルでは得られるかもしれません。

あと、以前は立入検査の時にマシンガンを持った警察官が立ち会うことがあったけれど、今はそれもなくなっているそうです。

でも、ブラジルに関して困るのは、国際カルテルが米国やEUでは既に調査が終了して決定も出ているのに、その後になって調査が開始されることが多い点ですね。

なので、他の当局から5年以上遅れて調査が開始される、なんていうこともあります。

ブラジルでは、他の国の結果を見てから調査を開始する、というのは、当たり前なんですね。

リニエンシーを申請した企業も、調査が終了するまで付き合わされることになりますから、本当に気が長い話です。

でも、改正後は当局の人員も倍増するそうなので、カルテルの調査も早くなるかもしれません。

2011年12月 4日 (日)

役員兼任に関するクレイトン法8条の域外適用

米国反トラスト法の1つであるクレイトン法8条(15 U.S.C. §19)は、競争会社間の役員兼任の制限について定めています。

ざっくり説明すると、一定以上の資産規模(資本金+剰余金+未処分利益 が約2700万ドル超)の、2社以上の競争会社の役員を兼任することが、原則として禁じられます(ただし銀行等は除く)。

ただし、これには例外があって、

①いずれかの会社について、競合売上(両社で競合する商品役務の売上のことです)が約270万ドル未満、または、

②いずれかの会社について、競合売上が総売上の2%未満、または、

③双方の会社について、競合売上が総売上の4%未満、

のいずれかを満たす場合には、適用除外になります(つまり、兼任ができます)。

ただ、条文をみると、兼任が禁止される会社が、

any two corporations」

となっており、米国の会社には限られていません。

また、適用除外の要件のキモである、「競合売上」の定義(クレイトン法8条(a)(2))をみても、

「the gross revenues for all products and services sold by one corporation in competition with the other, ...」

となっており、米国内の売上に限定されていません。

とすると、日本の会社が日本国内で競合売上を有するに過ぎない場合でも、クレイトン法8条に違反する、ということになりかねません。

しかし、さすがにそれは変でしょう。

そんなこと、司法省もFTC(連邦取引委員会)も、アメリカ人の誰も考えていないと思います。

ですので、クレイトン法8条は、基本的には、アメリカの会社だけに適用があると考えるべきでしょう。

ただ、日本の会社が米国内で競合売上を有する場合には、クレイトン法8条違反になる可能性は否定できないように思います。

(あくまで、常識論の域を出ませんが。。。)

ちなみに、役員兼任のことを英語では、

「interlocking directorate」

といいます。

interlockとは、

「to fit or be fastened firmly together」(堅く結びついていること)

という意味です。

なので、ニュアンスとしては、両社の取締役が堅く結びついているイメージなので、例えば10人の取締役のうち1人が兼任しているくらいではinterlockしている感じはしませんが、ともかく、interlocking directorateという言葉で通じています。

【2011年12月12日追記:

私も会員になっているABA Section of Antitrust Lawの

「Interlocking Directorates: Handbook on Section 8 o the Clayton Act (2011)」

という本の78頁以下では、概要、

「はっきりした判例法はないけれど、外国会社同士の役員兼任にクレイトン法8条を適用するのは難しいだろう」

というようなことが書いてありました。

(参考判例として、Borg-Warner Corp., 101 F.T.C. 863, modified, 102 F.T.C. 1164 (1983), rev'd on other grounds, 746 F.2d 108 (2d Cir. 1984))

個人的には、会社の設立準拠法がどこかという問題ではなくて、米国内市場で競合しているかが問題なんじゃないかなぁと一瞬思いましたが、クレイトン法8条は極めて形式的な規制(市場の競争への影響の有無を問わない)なので、規制対象も米国法人か否かという形式的な基準で決める、というのが、実は穏当な解釈なのかもしれません。】

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