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2011年11月 9日 (水)

経済学に関するジョーク

マンキューの経済学の教科書か何かで見た記憶なのですが、経済学者に関する以下のようなジョークがあります。

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無人島に、物理学者、化学者、経済学者の3人が流れ着いた。

食料の詰まった缶詰はあるものの、缶切りがない。

物理学者:「缶詰を高いところから落下させて開けよう。」

化学者:「缶詰を火にかけて、熱で膨張させて開けよう。」

経済学者:「ここに缶切りがあると仮定しよう。」

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経済学者というのは、何でも仮定(assumption)を置いて議論し、その仮定が時に現実を無視したものであることを皮肉ったジョークです。

英語の経済学の教科書を開くと、「It is assumed ...」というフレーズが連発されているので(しかも、さらっと書いてあって実はとても大事だったりする)、このジョークは私にはとても腑に落ちました。

確かに、経済学のモデルでは、前提をどのように置くかによって、結論が天と地ほど違ったりすることがあります。

例えば、

Philip Crooke, Luke Froeb, Steven Tschantz and Gregory J. Werden, "Effects of Assumed Demand Form on Simulated Postmerger Equilibria"

という論文をみると、需要関数をどう仮定するかで合併シミュレーションの結論がどれほど異なるかがよく分かります。

ある市場での需要関数を計測した先行研究でもあれば別ですが、これほど結論が前提にされるものを良く平気で使えるなぁというのが、非エコノミストの抱く素朴な感覚ではないでしょうか。

(ちなみに、もし訴訟になったら、裁判官は2人の専門家証人の間を取る可能性が高いです(←半分冗談です)。)

とくにアメリカで、独禁法の訴訟で経済学が用いられる場合、お決まりのように、「リアリティ・チェックが必要だ」といわれます。

つまり、経済学のモデルに従って導かれた結論(予想)が、現実離れしていないかチェックせよ、というのです。

でも、私は「ちょっと待て」といいたいです。

経済学で出た結論が現実離れしていたらその結論は棄却し、現実離れしていなかったら採用する、というのでは、「現実」以外に経済学を用いるメリットは何なのでしょう?

もちろん、どのようなモデルを用いても、どのような前提を置いても、ある程度似たような結論がでるのであれば、その予想は信頼性が高い、ということになるのかもしれません。

また、ピンポイントで答えが出なくても、ある程度幅のある答えでも結論を出す(例えば合併を禁止する)かどうかを決めるためには充分に参考になる、ということもあるかもしれません。

しかし、それでも、より根本的な問題として、どのような場合にリアリティチェックの必要が高く、どのような場合に低いのか、という目安みたいなものを、経済学は示す必要があるのではないでしょうか。

そもそもエコノミストの人には、法律家(あるいは、経済学の素人)であれば当然抱くようなこのような疑問に答えなければならないという発想がそもそも乏しいのではないか、と私には思えてなりません。

・・・と、経済学をこけおろしてばかりではいけません。

何と言っても、世界には経済学者についてのジョークより、弁護士についてのジョークの方がずっと多いのですから

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