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2011年8月23日 (火)

一度きりの入札談合

入札談合というと、公共工事の入札談合のような、同じメンバーが繰り返し行うものを一般的にはイメージしますが、目的物が1個の場合や、被害者が1人だけの場合でも、談合で違法であることに変わりはないので注意が必要です。

例えば、破産管財人が破産者の財産である不動産(1個でも複数でもいいです)を売却しようとしている場合に、複数の買手候補者である不動産会社の間で話し合って誰が落札するか決めれば、立派な(?)談合です。

「入札」という形式を取らずに、買取希望価格を提出させる相見積もりの方法であっても、同様です。

談合の被害者は、自治体には限らないわけです。

私もむかし破産管財人とかをしていたころ、「なんか怪しいなぁ」という経験をしたことがありますが、ひょっとしたら談合だったかもしれません。

他には、例えば子会社を入札(ビッド)で売却するようなM&Aの場面も、複数の買収候補者の間で話し合って落札者を決めたりしたら、談合になります。

実際、投資銀行が仕切っているビッドでは、入札参加者は談合してはいけないとか、談合した場合には損害賠償請求義務を負うとか、入札要綱に書いてあったりもします。

このように、1回きりの談合でも、目的物が1個だけの談合でも、談合になりますので、注意して下さい。

(目的物が、市場で取引されているものでなくても談合(カルテル)になるのは、当然です。)

では、そういったケースが公取委に実際に摘発されるリスクがどのくらいあるのか?といわれれば、リスクは高くないのかもしれません。

ただ、それはたまたまバレなかっただけ(あるいは、バレても、公取委の人手が足りなかっただけ)の話であり、違法でなくなるわけではありません。

ただし、例えば入札参加者がたくさんいて(例えば10社以上)、そのうち2社だけで話し合ったに過ぎない、という場合には、競争の実質的制限がないということで、違法でない可能性はあります。

(ただこの反論は危険で、「なら、どうして2社だけで話し合ったんだ。それは、2社が最有力の落札候補者だったからのではないのか?」という疑念が、常に生じます。)

これに対して、入札参加者が3社だけで、そのうち2社で話し合いをした、という場合には、相当な確率で違法になる(競争の実質的制限あり)と思います。

同じくらい有力な入札参加者が5社ぐらいで、そのうち2社で話し合ったららどうか?というとちょっと微妙ですね。

残り3社は自由に競争しているわけで、そうすると、談合した2社が落札できるとは限らないので、競争の実質的制限はない、と言える場合もありそうです。

でも談合が成立するには、2社の期待利益が高まれば充分(実際に、この1回の入札で談合参加者が落札できなくてもいい)と考えるべきではないでしょうか。

もし談合しなければ、競争価格で5分の1しか落札できないのが、談合すれば、落札できる可能性は下がるものの、落札価格は高くなる(買う競争の場合)可能性があるのであり、トータルで落札価格も高めになることはあり得る、と言えると思います。

少なくとも以上のように考えるべき場面はあると思います。

例えば、同じような顔ぶれで何度も入札が行われるような場合です。

このような場合には、一発勝負ではないので、談合する者からしてみると、必ず今回の入札で落札できなくてもよく、将来どこかで落札できる可能性があり、そのときに、競争価格よりも有利な価格(買う競争なら安い価格、売る競争なら高い価格)なら充分ペイする、ということがあり得ると思います。

つまり、一部でだけ談合することによるマージンの拡大による利益の増大と、落札できる可能性が下がることのトレードオフです。

経済学の理屈の上では、同じコスト構造の3社が入札に参加すれば、2社が談合しても、残り一社が落札するので競争は制限されない、ということかもしれません。

しかし、理屈どおりに事が運ばないのが現実の世の中であり、上記のようなトレードオフが生じる場面というのはあると思います。

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