« 下請法の「情報成果物作成委託」について | トップページ | 届出前相談のタイミング »

2011年7月16日 (土)

ポイントカードやマイレージと景表法

「ポイントカード」や「マイレージサービス」が、景表法の規制に服するのか、という論点があります。

結論からいえば、抽選でポイントやマイレージを与える場合を除いては、一般的には景表法の規制には服さないのですが、説明はちょっと複雑です。

順番に説明しましょう。

実は論点は2つあって、

論点A:ポイントカードやマイレージは景表法上の「景品類」に該当するか、

論点B:景品類に該当するとして、景表法の制限に服するか、

ということを、それぞれ考えないといけません。

まず、論点A(景品類該当性)をみるために、条文の確認から始めましょう。

景表法2条3項では、「景品類」は、

「顧客を誘引するための手段として、・・・

事業者が自己の供給する商品又は役務の取引・・・に付随して相手方に提供する

物品、金銭その他の経済上の利益であつて、

内閣総理大臣が指定するものをいう。」

と定義されています。

そこで、内閣総理大臣が指定している(ただし、平成21年改正附則4条の経過規定により、改正前に公取委が指定したものが有効)、

不当景品類及び不当表示防止法第二条の規定により景品類及び表示を指定する件」(昭和37年6月30日公正取引委員会告示第3号)(「定義告示」)

をみると、

「〔景表法〕第2条の規定により、景品類・・・を次のように指定する。

1 ・・・景品類とは、顧客を誘引するための手段として・・・事業者が自己の供給する商品又は役務の取引に附随して相手方に提供する物品、金銭その他の経済上の利益であつて、に掲げるものをいう。

ただし,正常な商慣習に照らして値引又はアフターサービスと認められる経済上の利益

及び

正常な商慣習に照らして当該取引に係る商品又は役務に附属すると認められる経済上の利益は、含まない

・・・

(以下、1号から4号は、金銭、物品、便益、とか、あらゆる物を列挙していて意味がないので、省略します。)」

とされています。

定義告示の本文はほとんど景表法2条3項と同じなので、定義告示は、但し書きの、

「正常な商慣習に照らして値引又はアフターサービスと認められる経済上の利益

及び

正常な商慣習に照らして当該取引に係る商品又は役務に附属すると認められる経済上の利益」

が景品類に含まれない、という点だけに、意味があることになります。

ここで、もしポイントカードやマイレージが定義告示の但し書きの

「値引」

に当たるのなら(アフターサービスや附属の利益ではなさそうですし。。。)、景品類ではない、ということになります。

ところで定義告示の解釈については、

景品類等の指定の告示の運用基準について」(通称、「定義告示運用基準」)

という、公取委事務局長通達があります。

そして、同通達6(1)では、

「『値引と認められる経済上の利益』に当たるか否かについては,

当該取引の内容,その経済上の利益の内容及び提供の方法等を勘案し,公正な競争秩序の観点から判断する。」

とされています。

・・・さすが通達、わけが分かりませんね(笑)。

でもこれにはもう少し続きがあって、同通達6(3)には、

「正常な商慣習に照らして値引と認められる経済上の利益」

の3類型が挙げられています。

つまり、

①相手方がこれから支払う代金を減額してあげること、

②相手方が既に支払済みの代金を割り戻してあげること、

同一の商品役務を、追加支払無しで付けてあげること、

です。

①が支払前の減額、②が支払後の減額、③が同一商品の追加、です。

ポイントカードは、ポイント発行店で次に買い物するときに代金を減額するものであれば、①ですね(次の買い物からの、値引)。

マイレージも、マイレージを付与した航空会社への次回搭乗分から値引する場合には、同様に①ですね(次の搭乗からの、値引)。

よって、ポイントカードも、マイレージも、発行者自身の商品役務から次回の購入時に値引をする場合には、「値引」にあたり、景品類ではない、ということになります(論点A。よって、そもそも景表法上の適用の余地はありません)。

ちょっと注意すべきなのは、①~③の値引の3類型には例外があり、

(1)懸賞(つまり、くじなど)により①~③を行う場合、

(2)①で減額または②で割戻した金銭の、使途を制限する場合

(3)同一の企画において①~③と景品類を併用する場合、

には、「値引」とはみなされず、「景品類」になる、とされています(同通達6(4))。

たんなる通達なので、告示の解釈としても問題ないかを念のためみておくと、(1)は、「懸賞だと値引とはみなさない」ということでしょうが、まぁ妥当でしょうね。くじで当たる値引というのは、世の中で普通に考える値引というのとは、だいぶ隔たりがあります。

(2)の、値引きした代金の使途を制限する場合も、やはり「値引」とはいえないでしょう。

(3)は、値引と景品類を併用する場合には、値引も景品類とみなされる、ということです(値引と景品類を相手方に選択させる場合が、同通達に例として挙げられています)。これについては異論もあるかもしれません。

ですので、ポイントカードへのポイントを抽選で与える場合には、(1)の例外に当たってしまい、値引とはみなされず、景品類になってしまいます。

以上をまとめると、ポイントカード、マイレージは、

(A)ポイントまたはマイル発行者自身からの次回の購入額を割り引くもので、かつ、

(B)抽選でポイントやマイルを与えるのでなく、かつ、

(C)同一企画で景品類と併用するのでない、

という場合には、「景品類」に該当しないことになります。

でも、(B)や(C)はまだしも、世の中のマイレージは他社との共通マイレージが常識です。ポイントカードも、いろんなお店の間でポイントが併用できる場合もあります(例えばコンビニでためたポイントがガソリンスタンドで使えるなど)。

そういう、他社からの商品役務の購入時に割引が受けられるようなポイントカードやマイレージ((A)を満たさない)は、どう考えればいいのでしょうか。

ここで、論点B(景品類に該当するとして、景表法の適用の有無)が問題になります。

そこで、くどいですが、また景表法の条文から確認しましょう。

景表法3条(景品類の制限及び禁止)では、

「内閣総理大臣は、不当な顧客の誘引を防止し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を確保するため必要があると認めるときは、景品類の価額の最高額若しくは総額、種類若しくは提供の方法その他景品類の提供に関する事項を制限し、又は景品類の提供を禁止することができる。」

とされています。

この景品類の提供の制限または禁止として公取委が定めたのが、

一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限」・・・①

懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」・・・②

です(いずれも、「制限」で、「禁止」まではしていません)。

まず、問題になることが多そうな、①(総付景品)から。

①の告示2項では、

「次に掲げる経済上の利益については、

景品類に該当する場合〔なので、上記「値引」に該当する場合は、「景品類」ではないので、そもそも同告示2項は不適用〕であつても、

前項の規定〔注:景品類の価格は取引額の20%(当該金額が200円未満なら200円)を超えないこと〕を適用しない。」

とした上で、その3号では、

自己の供給する商品又は役務の取引において用いられる割引券その他割引を約する証票であつて、正常な商慣習に照らして適当と認められるもの」

とされています。

自己の供給する商品又は役務の取引において用いられる・・・割引を約する証票」

なので、自分の供給する商品役務から割り引く割引券だけを指すのかな、と思いきや、実は、

『一般消費者に対する景品類の提供に関する事項の制限』の運用基準について」(「総付運用基準」)

というのがありまして、同通達の4項

「4  告示第二項第三号の『自己の供給する商品又は役務の取引において用いられる割引券その他割引を約する証票』について」

の(2)で、

「(2)  『証票』には、

①金額を示して取引の対価の支払いに充当される金額証(特定の商品又は役務と引き換えることにしか用いることのできないものを除く。)

並びに

②自己の供給する商品又は役務の取引及び他の事業者の供給する商品又は役務の取引において共通して用いられるものであって、同額の割引を約する証票

を含む。」

と明記されています。

つまり、②の、他の事業者と共通して用いられるもの、というのが、共通マイレージ、共通ポイントを想定しているわけです。

ただし、②に該当するためには、「同額」の割引をするものでなければいけません。

なので、ポイント制ではあまりないとは思いますが、例えば、「20%割引き」のような、同率の割引をするものである場合には、②には該当しません(つまり、総付制限告示の対象になります)。

他社と共通で使えるマイレージというのは、もし同額の値引きをするのではない場合(例えば、自社利用と他社利用で同額を引くのではなく、同じマイル数を飛べるようにする場合は、必ずしも同額の値引きにはなりません)には、総付制限告示の対象になりそうです。

結局、共通マイレージ、共通ポイントは、自店と他店で同額の割引をするものである限り、告示第2項第3号(←これは、景表法3条の正式な委任あり)の

「自己の供給する商品又は役務の取引において用いられる割引券その他割引を約する証票」

に該当し、結局、告示から適用除外されていることになります。

(しかし、正式な告示に、「自己の供給する・・・」と明記してあるのに、他社の供給する取引に用いるものまで含めるという、実質的な告示の改正を、通達でやってしまうというのは、何とも前時代的でオソロシイ気がします。

ほかにも、総付運用基準は、上記「証票」の①と②の整理が論理的か、とか、体系的な美しさを重んじる論理家の目から見たら、つっこみどころ満載です。)

以上は総付でポイントとマイルをあげる場合(総付景品)の説明でしたが、最後に、懸賞による景品類の提供にあたる場合は、どうなるのでしょう。

前述のように、懸賞でポイントやマイルをあげる場合は、(仮に自店でのみ使用できるものでも)「値引」ではありません。

よって、「値引に該当して景品類ではないので景表法は適用されない」という理屈(論点A)は使えません。

そこで、「景品類」に該当するとして、とはいえませんので、再度、

論点B:景品類に該当するとして、景表法の制限に服するか、

を考えることになります。

懸賞の場合の景品類の提供についての、

懸賞による景品類の提供に関する事項の制限」・・・②

を見てみると、ポイントカードやマイレージに関する特例はありません。

同運用基準にも、何ら記載はありません。

したがって、抽選で与えるポイントやマイルについては(他店と共通のものでなくても)、「景品類」となり、②の告示の制限に服することになります(取引価格の20倍(10万円を超える場合は10万円。同告示2項)。

最後にまとめをしておくと、

ポイントカードやマイレージ・サービスは、

①自社だけで使えるのは、懸賞で与えない限り、「値引」となり、景表法不適用、

②他店共通のものは、「値引」ではないが、総付であって自店と他店で同額の割引きをするものである場合、総付告示が通達により不適用となり、景表法不適用(同率の値引きの場合等は、総付告示の適用あり)、

③懸賞で与えれば、(自社のみか他店共通かを問わず)「値引」ではなく「景品類」となり、懸賞告示が適用(取引価格の20倍か10万円、いずれか少ない方)、

ということになります。

« 下請法の「情報成果物作成委託」について | トップページ | 届出前相談のタイミング »

景表法」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。その時に金額の減額をする事だけでしたら、
大丈夫なのでしょうか?
その際下げる金額などに制限はありますか?
教えて頂けると助かります。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1240660/40835988

この記事へのトラックバック一覧です: ポイントカードやマイレージと景表法:

« 下請法の「情報成果物作成委託」について | トップページ | 届出前相談のタイミング »